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学習行動調査からみえてくるもの
2009年3月27日 IDE高等教育フォーラム 「学士課程教育の改革戦略」 学習行動調査からみえてくるもの 両角亜希子(東京大学) 1 発表内容 調査の概要 調査から明らかになったこと ` ` 1. 2. 3. 4. 5. 6. 2 多様な学生 学生の志向性と大学教育のマッチング 教育方法のインパクト 学び方と獲得した能力 授業外学習時間の規定要因 大学により異なる教育効果 CRUMP調査の概要 全国大学(学部)に依頼状 ` ` ` 参加学部で質問票を配布 調査結果は、各学部あてにフィードバック 実施 ` ` ` 第1回(平成18年度) 第2回、第3回、補充(平成19年度) サンプル数 ` ` ` ` 127大学 288学部 48,233人 大学類型、専門分野、学年等の詳細分析が可能 ` 3 枠組み 機関の効果 学生の 特性 4 学び方 成果 1.多様な学生 学生4類型(※) 教育の射程 Ⅲ 受容型 Ⅳ. 疎外型 Ⅰ 高同調型 Ⅱ 独立型 自己・社会認識の度合い 5 (※)金子元久 2007 『大学の教育力―何を教え、学ぶか』ちくま新書 学生タイプの分布 50.0 40.5 40.0 28.2 30.0 18.3 20.0 12.0 10.0 0.0 高同調型 高同調型 独立型 独立型 受容型 受容型 疎外型 疎外型 n=48.233 6 学生タイプと偏差値ランク 高(55~) 46.5% 中(45~55) 38.8% 低(~45) 36.4% 0% 20% 高同調型 ` 7 17.6% 19.1% 30.0% 18.4% 40% 独立型 26.0% 30.3% 60% 受容型 10.0% 12.1% 14.9% 80% 100% 疎外型 選抜度の高い大学でも適応していない学生は少なくない 学問分野別の学生タイプ 0% 人文 社会 理学 20% 40% 農学 37.5% 高同調型 ` 8 24.3% 17.6% 58.0% 35.4% 14.4% 30.0% 33.7% 20.2% 独立型 13.3% 7.3% 8.4% 4.5% 10.9% 44.4% 12.9% 28.2% 21.0% 54.1% 教育 11.5% 34.3% 79.8% 家政 その他 16.2% 28.0% 16.9% 保健 13.2% 31.2% 19.8% 40.6% 100% 29.7% 21.5% 31.1% 36.0% 80% 22.9% 34.2% 工学 芸術 60% 受容型 疎外型 分野による違いはきわめて大きい 17.4% 10.7% 6.9% 11.2% 10.8% 2.学生の志向と大学教育のマッチング 学生タイプによる学習行動の違い 90.0% 80.0% 70.0% 60.0% 50.0% 40.0% 30.0% 20.0% ` 9 高同調型 独立型 10.0% 受容型 0.0% 疎外型 学生の志向は行動の違いにつながっている。 学生タイプ別の学習時間 0.0 5.0 高同調型 20.0 17.1 4.8 受容型 17.2 4.8 15.9 授業関連学習 25.0 4.7 30.0 4.8 6.4 独立型 授業 10 15.0 18.4 疎外型 ` 10.0 4.4 2.8 3.3 授業と関係ない学習 類型により学習時間が大きく異なる 35.0 3.教育方法のインパクト 教育方法の違いによるインパクト ` さまざまな教育方法 ` ` ` 学習統制型 ` 出席を重視する ` 最終試験のほかに小テストやレポートなどの課題を課す 学生配慮型 ` 授業内容に興味がわくように工夫 ` 理解がしやすいように工夫 ` TAなどによる補助的な指導がある 学生参加型 ` グループワーク ` 授業中に自分の意見や考えを述べる ` 適切なコメントが付されて課題などの提出物が返却される • 異なる影響力 • しかも、学生タイプによって影響が異なる 11 経験した学習形態による勉強時間の変化(時間) 経験率 高同調型 独立型 受容型 疎外型 出席重視 88.0% -1.9 - -1.1 - 中間課題あり 88.0% - - - - 興味わくよう工夫 59.0% 1.6 1.0 1.5 1.0 理解しやすく工夫 65.0% 1.0 0.8 - - 補助的指導 28.0% 1.9 - 1.6 1.5 グループワーク 36.0% 1.7 1.3 1.7 2.6 意見を求める 36.0% 2.2 2.4 1.9 2.1 コメント付き返却 25.0% 2.9 2.2 1.8 3.0 (人文社会、1-3年生のみ) (※)浦田広朗氏の分析による。 金子元久、浦田広朗、大多和直樹、両角亜希子「大学生の学習参加の構 造」日本高等教育学会(2008年5月24日、東北大学)、発表資料より作成。 12 4.学び方と獲得する能力 4.学び方と獲得できる能力 学び方のタイプ ` ` ` 授業の出席率の平均は87.4%。 単に授業に出るだけで、どこまで効果があるのか。 学び方のタイプ 授業外学習(1日1時間以上/未満) 授業外のみ 熱心 どちらも 消極的 13 授業も授業外 も熱心 授業への参加 (9割以上/未満) 授業のみ 熱心 授業のみ熱心の学生が大半 0% 経済学部 工学部 20% 40% 25.2 60% 80% 58.5 45.2 授業+授業外 100% 4.6 11.8 47.8 授業のみ 授業外のみ 1.9 5.1 両方消極 (経済学部 N=3386 工学部 N=4280 1-3年生のみ) 14 授業外の学習とプラスされ、成果アップ 3.20 3.00 2.80 2.60 2.40 2.20 2.00 15 経済学部 専門の理論 的理解 経済学部 問題発見・ 解決力 工学部 専門の理論的 理解 工学部 問題発見・解 決力 5.授業外学習時間の規定要因 授業関連の有無に分けて検討 興味わくよう工夫 理解しやすく工夫 補助的指導あり 出席重視 中間課題あり コ メント返却あり 意見や考え求められる グループワークあり 授業・実験に費やした時間 クラス・研究室の友達とよく話す 授業外での教員との接触【満足度】 図書館など学習施設【満足度】 実験・実習施設【満足度】 卒業後やりたいこと決まっている 大学での授業はやりたいことと関係 授業でやりたいこと見つけたい 調整済み R2 乗 サンプル数 授業に関連する授業外学習 授業に関係ない授業外学習 経済学部 工学部 経済学部 工学部 標準化 係数 標 準化係 数 標準 化係数 標準化係数 0.024 -0.007 0.022 0.070 ** -0.016 0.018 0.002 -0.021 0.077 ** -0.004 0.075 ** 0.005 -0.015 -0.036 * -0.034 0.021 0.036 * 0.072 ** 0.001 -0.011 0.071 ** 0.056 ** 0.034 0.023 0.051 * 0.051 ** 0.023 0.062 ** 0.067 ** -0.001 0.025 0.053 ** 0.295 ** 0.275 ** 0.105 ** 0.084 ** -0.007 -0.009 -0.014 -0.046 ** -0.040 * 0.022 -0.032 0.000 0.004 -0.080 ** -0.001 -0.033 0.011 -0.017 -0.034 -0.014 -0.004 0.062 ** 0.160 ** 0.113 ** 0.123 ** 0.057 ** 0.079 ** -0.014 -0.012 0.016 -0.079 ** -0.076 ** 0.154 0.105 0.078 0.045 3,386 4,280 3,386 4,280 (※)*は5%水準で有意、**は1%水準で有意 16 授業外学習の規定要因 ` 授業に関連する授業外学習 ` ` ` ` ` 参加型の授業など、授業方法によって延びる。 授業にまじめに参加することもプラスに働く。 満足度はマイナスに働く。つまり、教員や設備への不満から 自分で授業外学習をする学生がいる。 やりたいことのある学生ほど、授業外も勉強する。 授業に関連のない授業外学習 ` ` ` 17 授業方法の効果は、学部によって異なる。 授業にまじめに参加することもプラスに働き、クラスでの友人 が少ないと授業外の学習に向く。 やりたいことや大学教育への期待の薄さが、授業に関連のな い学習につながる原動力になっているようだ。 6.大学により異なる教育効果 1か月に読む本(冊数) C 類型大学 A 類型大学 読まない 4年生 16.6 3年生 1冊 21.6 22.2 2冊 17.4 27.6 2年生 33.7 1年生 35.7 3冊 13.3 20.1 30.5 30.1 読まない 4冊以上 4年生 31.1 10.8 19.4 14.2 9.8 12.9 7.3 11.8 14.1 1冊 2冊 41.6 18 27.2 3年生 38.3 27 2年生 39.7 26.1 1年生 43.3 (※)A 類型大学: 高同調学生の割合が40%以上の大学 C 類型大学: 阻害学生の割合が25%以上の大学 ピア効果 3冊 25.2 4冊以上 12.5 15.9 11.9 6.2 12.5 6 12.8 7.8 12.4 5.5 14.5 13.5 まとめ ` いくつかの分析結果の紹介 ` ` ` ` 学生タイプによって異なる教育効果 授業外学習をいかに引き出すか 大学によって異なる教育効果 今後の課題 ` ` 機関ごとのベンチマーキングがきわめて重要。 試行錯誤しているものの、分析上の課題も多い。 ` ` ` 19 多様なデータをどういかすか、方法論の検討も必要。 複数の大学で協力し、分析する体制を構築することが重要。 教育改革が十分に進んでいない段階では、興味深い事例を見つけ 出し、その効果の検討を重ねるしかない。