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Agilent ICP-MS ジャーナル
2007 年 10 月 - 第 32 号
本号の内容
2-3
新製品! Agilent 高マトリクス導入キット(HMI)
4-5
ジルコンの U-Pb 年代測定用の新しい標準物質、
Glitter ソフトウェアのアップグレード
6
新刊スペシエーションハンドブック、
コリジョン/リアクションセル ICP-MS についての
EPA の見解、B.03.05 版 ICP-MS ChemStation
7
Agilent Enterprise Content Manager による
ICP-MS ChemStation の 21 CFR Part 11 対応
8
ICP-MS 販売 20 周年特別記念セミナー、2000 号機は
カナダへ、4500 公式サポート終了、新資料紹介、
イベントスケジュール
新製品!
Agilent 高マトリクス
導入キット(HMI)
回収率(%)
杉山尚樹、田野島三奈
化学分析事業部
アジレント・テクノロジー
Don Potter
Agilent Technologies Ltd.、イギリス
はじめに
図 1. 無希釈 NASS-5 での減感の例
従来の ICP-MS では、マトリクスによ HMI の機能
る信号のドリフトと抑制を最小限に抑
えるために、サンプルの TDS (Total Agilent 7500cx (ce) を HMI 仕様にす
Dissolved Solids) 濃度を約 0.1 ∼ るには、スプレーチャンバとトーチの
0.2% に制限することが必要でした。 間からメークアップガスを導入しま
Agilent 7500 シリーズは、高濃度 す。ネブライザの効率を下げるために
TDS (最高 0.3%) のマトリクスサンプ ネブライザガス流量を減らし、トーチ
ルをルーチン分析する装置として開発 インジェクタを流れる総ガス流量を一
されました。高効率 27 MHz デジタ 定に保つようにメークアップまたは
ルドライブ RF 発生装置、大口径の 「希釈」ガスを添加します。このよう
2.5 mm トーチインジェクタ、低流量 にしてプラズマに導入されるサンプル
に最適化されたサンプル導入系などに エアロゾル量を制御、減少させ、高
より、7500 シリーズはロバストなプ TDS 濃度のサンプルが導入された場
ラズマを実現しました。セリウム酸化 合でもプラズマがサンプルマトリクス
物イオンの生成比 (CeO/Ce) が ICP- で過負荷にならないようにします。プ
MS のプラズマのロバスト性の指標と ラズマへ導入されるサンプルエアロゾ
して使用されることがあります。この ル量の低下は、プラズマに運ばれる溶
値は、他の ICP-MS では通常 2% ∼ 媒や水の蒸気量の低下も意味します。
3% であるのに対し、7500cx では 1% このため、プラズマはより高温でロバ
の 低 い 酸 化 物 イ オ ン 生 成 比 を 与 え ストなものとなります。このロバスト
性の向上は、高濃度 TDS のマトリク
ます。
スサンプルをルーチンでかつ正確に分
前述した TDS 濃度の制限を満たすた 析するための ICP-MS 能力向上の鍵
めに、高マトリクスサンプルは希釈す となります。次に、 HMI が効果を発
る必要があります。この希釈作業は、 揮する分析事例をご紹介します。
Zn では 85% に達しました。 7500cx
のプラズマは 0.1 ∼ 0.2% の TDS 濃
度サンプルには十分にロバストです
が、無希釈海水 (TDS ≒ 3%) では 50
∼ 65% の抑制が起きます。しかし
HMI を 用 い る と 減 感 率 は 全 元 素 で
15% 以下に抑えることができました。
この実験では、内標準補正を使用して
いません。これは、 HMI を用いるこ
とで無希釈海水を 1% 硝酸の標準液で
分析できることを意味します。このよ
うに、 Na のようなイオン化ポテン
シャルの低い元素がマトリクスとして
多量に含まれている場合にも、 HMI
によりロバスト性が向上されます。
次に、HMI を使用した場合の Zn マ
トリクスによる各元素の減感を、 Zn
の濃度を変えて (最高で Zn が 10,000
ppm 存在) 測定した結果を図 2 に示
します。HMI 使用時には 1% の Zn マ
トリクスが存在しても減感は 20% 未
満に抑えられています。さらに、すべ
ての元素は同様な減感率を示し、質量
依存性はありませんでした。減感が少
サンプル汚染リスクの増大、希釈誤差
なく、質量依存性がないため、内標準
の発生、サンプル前処理時間の追加な 図 1 は 、 無 希 釈 海 水 標 準 試 料 中 元素の選択が容易で、かつ精度の高い
どいくつかの不利な点があります。ア (NASS-5) 中の 10 ppb 多元素スパイ 内標準補正を実現します。このように
ジレントはこれらの欠点を回避し、高 ク の 回 収 率 (%) を 示 し て い ま す 。 HMI を用いると、標準液のマトリク
マトリクスサンプルを容易に扱うため 7500cx を用い、CeO/Ce = 2% (一般 スマッチングの必要がなく、生産性の
に「エアロゾル希釈」を開発しました。 的な ICP-MS の分析条件)、CeO/Ce = 向上が期待できます。
この技術を利用した高マトリクス導入 1% (7500cx の分析条件)、CeO/Ce =
キット (HMI: High Matrix Introduction 0.2% (HMI を使用した場合の分析条
kit) により、7500 cx(ce)にて、 件) の 3 つのプラズマ状態を比較しま
TDS 濃度 1% (マトリクスによっては した。CeO/Ce = 2% の条件下では海
それ以上 ) のサンプルを直接導入し、 水マトリクスにより大きな減感が観察
分析することが可能になり、希釈ス さ れ ま し た 。 減 感 率 は Sc 、 Ba で
テップに起因する問題を排除します。 50%、イオン化電位の高い元素である
プラズマのロバスト性は従来の ICPMS から大幅に向上し (CeO/Ce ≒ 「HMI は、これまでの ICP-MS では分析困難だった高マトリクスサンプルを
0.2%)、信頼性の高い、高マトリクス
分析するためのキーとなるでしょう。
」
アジレント・テクノロジー、シニアサリサーチャー、阪田健一
サンプルの分析を可能にします。
2
Agilent ICP-MS ジャーナル 2007 年 10 月 - 第 32 号
www.agilent.com/chem/icpms
ソフトウエア上に最適化されたパラ
メータを読み込んで使用するため、
HMI のセットアップと操作は極めて
簡単です。 HMI を取り付けた後も、
「通常の 7500cx 」としても分析を行
うことができ、分析中にモード条件を
自動的に切り替えることも可能です。
「HMI」モードでは「エアロゾル希釈」
により感度が低下しますが、無希釈も
しくは低希釈率のサンプルを導入でき
なり、Mo の存在下での Cd の分析の
確からしさを大幅に向上することがで
き ま す 。 2 ppm の Mo 存 在 下 で
1 ppb の Cd の測定は、7500cx の標
準条件下では MoO の干渉により正確
な定量ができません。しかし、 HMI
を用いると MoO が減少し、 2 ppm
の Mo を含むサンプル中の 1 ppb の
Cd を正確に測定することが可能です。
地質学関連のアプリケーションでは、
HMI の対象アプリケーション:
• 高純度金属中の不純物
• 土壌 (ICP-OES prep)
• 無希釈海水の直接分析
• RoHS サンプル
• 埋立地浸出水 (TCLP prep)
• 地質学関連サンプル
• 高 TDS を含む地下水
• 食品
• 医薬品
• 高塩濃度の緩衝液を用いる
HPLC-ICP-MS アプリケーション
オーダー情報と互換性
HMI は、Agilent 7500cx のオプショ
信号変化率(%)
ンとしてオーダーできます。また
7500ce と 7500cx 用のアップグレー
ドも用意されています。
Zn マトリクス (ppm)
図 2. Zn マトリクス存在下における各元素の減感率
るため実際の検出下限は同じか向上し
ます。重要なことは、希釈作業に起因
する汚染が排除されることです。
酸化物イオン生成比を下げることによ
り、低質量数の希土類元素 (REE) 酸
化物による干渉が大幅に減少できるた
め、中質量数から高質量数の REE の
分析値の信頼性が向上します。
まとめ
図 3. MoO の Cd への干渉の影響
酸化物イオン生成率が低いことの
利点
プラズマのロバスト性の指標であるセ
リウム酸化物イオン生成率が低いとい
うことは、干渉を減らすという分析上
の利点もあります。図 3 は MoO の
Cd への干渉の影響を示しています。
「通常の 7500cx」では CeO/Ce = 1%
ですが、HMI では CeO/Ce = 0.2% と
www.agilent.com/chem/icpms
マトリクスによる減感の抑制は、
ICP-MS にとって大きな進歩です。こ
れは、減感を補正するためにマトリク
スマッチングが必要ないことを意味し
ます。変動する未知マトリクスサンプ
ルを測定する場合の分析精度は大幅に
向上し、内標準の選択が容易になりま
す。多くの場合において、 ICP-OES
分析用に調整された高マトリクスサン
プルを HMI を搭載した ICP-MS で測
定することができます。また、ロバス
トなプラズマによりサンプルマトリク
スも効率よく分解されるため、インタ
フェースとイオンレンズのメンテナン
ス頻度の減少も期待できます。
Agilent ICP-MS ジャーナル 2007 年 10 月 - 第 32 号
3
ジルコンの U-Pb 年代
測定用の新しい標準
物質
赤 - 40
黄-2
茶-2
緑グレー - 2
黄ピンク - 2
グレー黄 - 2
S.Elhlou、E.Belousova、
W.L.Griffin、N.J. Pearson、
S.Y.O’Reilly
GEMOC ARC National Key Centre
Department of Earth and Planetary
Sciences, Macquarie 大学、オーストラリア
はじめに
レーザーアブレーションによるジルコ
ン U-Pb 年代測定には、元素分別と同
位体分別を補正するために信頼性の高
いマトリクスマッチングされた内標準
が必要です。最も一般的に使用される
ジルコン標準物質 91500 はほとんど
枯渇しており、GEMOC では U-Pb 年
代測定用に最適な代替ジルコン標準物
質について検討を行ってきました。
G&J Gem Merchants 社 (シドニー)
に、東アフリカ産ペグマタイトと思わ
れる大きなジルコン岩石断片 (直径 1
cm まで) を提供していただきました。
赤、ピンクがかった赤、黄緑、茶色な
どの色の幅があります。現場での UPb 年代測定用のジルコン標準物質と
して、この GJ ジルコンの適合性につ
いて調べました。
分析手法
GJ ジルコンの内部構造を、カソード
ルミネッセンス (CL) と電子マイクロ
プローブアナライザ (EPMA) の後方
散乱電子 (BSE) 画像により視覚的に
評価しました。主成分と微量成分元素
の測定を EPMA で行い、均質性の確
認をしました。
Nd:YAG 213 nm レーザーを装備した
New Wave 社製 New Wave Merchantek
UV とアジレント社製 Agilent 7500s
図 1. 色の違う GJ 粒中の微量元素と REE のパターン
ICP-MS(LAM-ICP-MS)により、ジルコ
ンの U-Pb 年代測定と微量元素の定量を
行いました[ 1 ]。同じ 213nm のレー
ザーシステムとマルチコレクタ型の Nu
instruments 社製 Nu Plasma ICP-MS
(LAM-MC-ICP-MS)により、Hf の同位
体測定を行いました。
測定結果
元素濃度 (ppm)
表 1 には、6 個の GJ 粒の LAM-ICPMS 分析結果を示します。
Pb と Th について GJ 赤色ジルコン
は、他の色の GJ ジルコンと比較して
わずかに高い濃度レベルを示していま
す。適度な U 含有量があり、他の GJ
粒よりも Th と Pb を多く含むことか
ら、赤色を U-Pb 年代測定用の基準と
して選択しました。
の、同じ微量成分と希土類元素
(REE) のパターンを示していること
がわかります。
LAM-ICP-MS による GJ 赤色
ジルコンの U-Pb 年代測定
91500 ジルコンを標準として LAMICP-MS により測定した結果、GJ 赤
色ジルコンの 206 Pb/ 238 U 年代値は
609.7 ± 1.8 Ma (2 σ) でした (Ma は
100 万年を表す単位 ) 。この結果は、
表面電離型質量分析法 (TIMS) で測定
した年代値 608.5 ± 0.4 Ma の誤差範
囲内でした [1] 。図 2 には、 LAMICP-MS による測定結果を示します。
LAM-ICPMS により 4 つの異なる GJ
赤色粒の年代測定を行いました (n =
43) 。粒間で、 U-Pb 年代値に若干の
違いがありました。それぞれに微妙な
差があることから、各個別のジルコン
粒をジルコンの U-Pb 年代測定の標準
図 1 のグラフから、色の違う粒間で、
として使用する前に、TIMS で年代決
わずかな濃度レベルの差はあるもの
定する必要があります。
GJ 色
Y
Ce
Yb
Lu
Hf*
Pb
Th
U
赤
267 ± 24
20 ± 1
71 ± 5
13 ± 1
7800
36 ± 2
18 ± 3
287 ± 13
黄
287 ± 12
15.3 ± 0.5
72 ± 4
14 ± 1
4630
23 ± 1
11 ± 1
384 ± 42
茶
304 ± 15
15.7 ± 0.5
81 ± 6
14 ± 1
8310
21 ± 3
10 ± 1
398 ± 48
緑 - グレー
343 ± 43
18 ± 0.2
80 ± 1
16 ± 3
8225
26 ± 7
12 ± 1
429 ± 104
黄 - ピンク
291 ± 16
17 ± 1
91 ± 13
14 ± 1
7890
25 ± 2
11 ± 1
355 ± 14
グレー - 黄
272 ± 29
13 ± 4
76 ± 3
13 ± 1
8225
17 ± 8
8 ±4
381 ± 30
表 1. LAM-ICP-MS による GJ 6 粒の分析結果
4
Agilent ICP-MS ジャーナル 2007 年 10 月 - 第 32 号
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Glitter ソフトウェアの
アップグレード
Dr. Norman Pearson
Macquarie 大学、オーストラリア
※本ソフトウエアは、英語版のみです。
レーザアブレーションシステムでよく
使用されている、Glitter ソフトウエ
ア (英語版) の最新版 Glitter 4.4.1 が
Access Macquarie 社よりリリースさ
れました。このバージョンでは、
Agilent 4500 や 7500 で得られたす
べてのデータファイルを読み込むこと
ができます。
年代
入手方法:
Access Macquarie 社の Glitter テク
ニカルサポート (technicalsupport@
glitter-gemoc.com) までお問い合わ
せください。
図 2. LAM-ICP-MS により GJ 赤色ジルコンの 206Pb/238U 年代測定を行った結果 - 609.7 ± 1.8 Ma
(2 σ) - ジルコン 91500 を標準として用いた。
Hf 同位体組成
本研究におけるデータは、GJ 赤色ジ
ルコンは同位体的に均質で、他の研究
機関の結果とも不確かさの範囲内で一
致することを示唆しています。このこ
とから、GJ 赤色ジルコンは同位体的
に不均質であったジルコン 91500 [3]
に替わる有用な Hf 同位体標準物質に
なりうるでしょう。
まとめ
GJ 赤色ジルコンは化学的および同位
体的に均質であることから、U-Pb 年
代測定に適したジルコン標準物質とし
て推奨されます。また、レーザアブ
レーション ICP-MS による微量元素
と Hf 同位体分析用の標準としても適
しています。
サンプル
N
2sd
30
176Hf
/177Hf
0.282015
LAM-MC-ICP-MS
GJ 赤色ジルコン
LAM-MC-ICP-MS
91500 ジルコン
632
TIMS*
91500 ジルコン
LAM-MC-ICP-MS
すでに Glitter ソフトウエアをお使い
の場合は、無償でこの最新版へのアッ
GJ 赤色ジルコンは現在、世界中の 22 プグレードが可能です。ただし、IDL
のラボに配布されており、GEMOC よ 5.x を用いた旧版の Glitter をお使い
り少額のサービス料で提供されていま の 場 合 は 、 イ ン ス ト ー ル す る 前 に 、
す (問い合わせ先: Elana Belousova、 www.ittvis.com から IDL 6.X への
e-mail: [email protected])
更新が必要です (費用別途)。
参考文献
1. Jackson, S.E., Pearson, N.J.,
Griffin, W.L., Belousova, E.A.
The application of LA-ICP-MS to
in-situ U-Pb zircon chronology.
Chemical Geology 211 (2004) 47-69
2. Wiedenbeck, M., Allé, P., Corfu,
F., Griffin, W.L., Meier, M.,
Oberli, F., Von Quadt, A.,
Roddick, J.C. and Spiegel, W.
Three natural zircon standards
for U-Th-Pb, Lu-Hf, trace element
2sd
0.000038
178Hf
/177Hf
1.46727
0.00007
176Lu
/177Hf
0.00025
0.282307
0.000058
1.46707
0.00069
7
0.282290
0.000014
1.46714
2190
0.282523
0.000043
1.46718
and REE analyses. Geostandards
Newsletter (1995), 19 (1), 1-23.
3. Griffin, W.L., Pearson, N.J.,
Belousova, E.A. and Saeed, A.
Comment: Hf-isotope
heterogeneity in standard zircon
91500. Chemical Geology (in
press, online March 2006)
2sd
0.00002
176Yb
/177Hf
0.00742
2sd
0.00074
0.000317
0.000054
0.01145
0.00502
0.00001
0.000288
0.000014
0.00040
0.000105
0.000095
0.00455
0.00454
汚泥タンク
表 2. HF 同位対比測定値、* TIMS は Weidenbeck 等 [2] からの結果
www.agilent.com/chem/icpms
Agilent ICP-MS ジャーナル 2007 年 10 月 - 第 32 号
5
新刊
スペシエーション
ハンドブック
メソッド 200.8 (ICP-MS) による
飲料水の分析
また、Region 2 の有機および無機化学
部門チーフの John Bourbon 氏は、
2007 年 6 月 18 日のアジレントに対す
る返信で以下のように述べています。
EPA の Office of Water 発行のメモ
(2006 年 7 月 14 日 ) に 、 Safe
Drinking Water Act (飲料水安全法) 「 Region 2 で は 、 EPA メ ソ ッ ド
の EPA メソッド 200.8 による飲料水 200.8 のセクション 9.2 「 Initial
分析についての見解が述べられていま Demonstration of Performance (性
す。この中では、 ICP-MS について、 能の初期実証 ) 」の要件が満足されて
多原子イオン干渉を抑制するためのコ いるならば、NPDES に基づいて収集
リジョン/リアクションセル (CRC) 技 されたサンプルの分析にコリジョン /
術の使用を認めていません。したがっ
て、コリジョン / リアクションセル機
能を OFF にした状態で ICP-MS を使
用する必要があります。なお、 EPA
では 1 年に渡って、飲料水分析に対
する CRC ICP-MS の有効性を評価し、
現在、その結果をまとめているところ
です。
CRC-ICP-MS を用いた飲料水以外
リアクションセルテクノロジーを搭載
し た ICP-MS を 使 用 す る こ と は 、
EPA メソッド 200.8 に準拠している
とみなしています。これは、NPDES に
適用する公定法を担当する USEPA の
Office of Water、Office of Science
and Technology、Engineering and
Analysis Division の意見と一致して
います。」
の分析
このハンドブック (英語版) では、ク
ロマトグラフと ICP-MS とを結合し
たシステムによる、元素スペシエー
ション分析に関する情報を幅広く紹介
しています。
一般的な分離方法である、液体クロマ
トグラフィ (HPLC)、イオンクロマト
グラフィ (IC)、ガスクロマトグラフィ
(GC) をはじめ、キャピラリー電気泳
動 (CE)、Field Flow Fractionation
(FFF)、マルチ MS などと組み合わせ
たシステムについても解析してい
ます。
また、この 68 ページに渡るハンド
ブックでは、様々な分野のアプリケー
ション例についても紹介しています。
詳細情報:
Handbook of Hyphenated ICP-MS
Applications (5989-6160EN: 英語
版) の pdf は、www.agilent.com/
chem/icpms からダウンロードでき
ます。
CRC-ICP-MS に関する
米国 EPA の見解に
ついて
両氏の回答の全文は、以下のアジレン
飲料水以外の公定法分析の大部分は、 トのウェブサイトでご覧いただけます
他の 2 つの EPA プログラムに属しま ( 英文 ) 。 www.agilent.com/chem/
す。ひとつは、 National Pollutant icpms「Additional Information」の
Discharge Elimination System 中の「ICP-MS Methods News」のリ
(NPDES、国家汚染物質排出防止シス ンクをクリックしてください。
テ ム ) 、 も う ひ と つ は Resource
Conservation and Recovery Act
(RCRA、資源保全再生法) で、いずれ
も米国における、廃水や廃棄物の処理
を規制するものです。
B.03.05 版 ICP-MS
ChemStation
山田知行
これらのプログラムでは、CRC ICPMS の使用に関する制限はありませ
ん。実際、この問題に関するアジレン
トからの質問に対し、ワシントン DC
の EPA Office of Solid Waste の無機
分析マネージャの Shen-yi Yang 氏は
以下のように述べています。
「... リアクションセルやコリジョンセ
ルの使用については、メソッド
6020A の最新版でも特に触れていま
せんが、微量元素分析の干渉除去に有
効であると認識しています。DQO
(Data Quality Objective、データ品
質目標) を満足し、実際のマトリクス
中の測定対象元素の分析が可能である
ことが確認できている限りは、リアク
ションセルやコリジョンセルの使用が
メソッド 6020A の範囲を逸脱してい
るとは見ていません。
」
化学分析事業部
Agilent Technologies
ICP-MS ChemStation - B.03.05 版の
新機能:
• 7500cx をサポート
• ヘリウムモード用半定量係数を搭載
• 高マトリクス導入 (HMI) キットを
サポート
• CETAC 社製オートサンプラ EXR-8
の制御
現在 B.0x.0x 版をお使いのユーザ様
は、Agilent ICP-MS ウェブサイトか
ら B.03.05 (注: Windows XP 専用)
へのアップグレード版を無料でダウン
ロードできます。
www.agilent.com/chem/icpms
Steve Wilbur
Agilent Technologies, Inc., USA
6
Agilent ICP-MS ジャーナル 2007 年 10 月 - 第 32 号
www.agilent.com/chem/icpms
Agilent Enterprise
Content Manager
(ECM) による ICP-MS
ChemStation の 21 CFR
Part 11 対応
Katja Kornetzky
Pharma QA/QC Solution manager、
Agilent Technologies、Waldbronn、
Germany
※本機能は、現在、英語版のみです。
はじめに
FDA 21 CFR Part 11 ガイドラインに
図 1: ECM での ICP-MS ChemStation データの保存、pdf レポート
準拠したデータ処理の必要性が、拡大
し続けています。そこでは、ラボの生
産性を低下させず、日常業務を効率
的に行いながら、コンプライアンスに
対応できるソリューションが求められ
ます。
• ユーザはウェブクライアント PC を
介して Agilent OpenLAB ECM に
アクセスし、データや pdf レポート
を確認できます (図 1 参照)。
• システムへのアクセスはユーザ名と
ICP-MS ChemStation (B.03.06 版)
では、OpenLAB Enterprise Content
Manager (ECM) と連携して、Agilent
7500 ユーザが ICP-MS ChemStation
データを 21 CFR Part 11 に準拠した
保存ができるようになりました。
な お 、 ECM と 連 携 し た 場 合 で も 、
ICP-MS ChemStation 自体の操作手順
は、大きく変わることはありません。
OpenLAB ECM とは
OpenLAB ECM は、データの安全な
保管/管理を提供するウェブサーバ
ベースのソフトウェアプラットフォー
ムです。
豊富な機能により、ユーザは業務上の
重要な情報の取り込み、管理、連携、
記録、再使用が可能です。
OpenLAB ECM:
ただの保管機能ではありません
ユーザアクセスコントロールパックお
よび ECM を組み合わせた ICP-MS
ChemStation では、データ作成直後
に、そのデータが ECM に自動的に保
存されます。そして、データは監査証
跡 管 理 (Audit trail) と 履 歴 管 理
(Revision control) されます。
パスワードで保護されます。
• 拡張検索機能によりデータ検索およ
び読み込みが可能です。
• ユーザは、 ECM 電子署名を用いて
データを認証することができます。
ICP-MS ChemStation/ECM では
次のことが可能になります。
• データセキュリティ:
– ICP-MS ChemStation と
OpenLAB ECM の両方のログオ
ンに対して Windows ユーザ
ID/パスワードが必須
– パスワードについて更新頻度や必
要文字数などを設定可能
– アカウントのロックアウトの設定
• データの完全性:
– 自動データ保存と履歴管理
– pdf 形式のオリジナルレポートを
含むすべての関連データの完全履
歴管理
– コンテンツ管理システムによる、
記録と長期保管
• データトレーサビリティ:
– 自動ユーザー毎の自動監査証跡
– 電子署名 (図 2 参照)
ラボ内や企業全体における
データの共有
Agilent OpenLAB ECM には、最高
5 人のユーザまで使用できるワークグ
ループバージョンと、ユーザ数無制限
のエンタープライズバージョンがあり
ます。
装置のバリデーション
コンプライアンスが求めるのは、デー
タの管理だけではありません。装置の
バリデーションも重要です。アジレン
トでは各種のサポートサービスを用意
し、Agilent 7500 装置単体はもちろ
んのこと、ICP-MS ChemStation と
ECM と 組 み 合 わ せ た ICP-MS
ChemStation に対しても、据付時適
格性確認 (IQ) と稼働時適格性確認/性
能確認 (OQ/PV) を提供しています。
詳細情報
アプリケーションノート:
OpenLAB ECM - Workgroup
Through Enterprise、
5989-6978EN (英語版)
テクニカルノート:
Agilent ICP-MS
ChemStation –
Complying with 21 CFR
Part 11、
5989-4850EN (英語版)
図 2: トレーサビリティ: OpenLAB ECM の ICP-MS ChemStation データに電子署名が適用できます。
www.agilent.com/chem/icpms
Agilent ICP-MS ジャーナル 2007 年 10 月 - 第 32 号
7
ICP-MS 販売 20 周年
新しい Agilent ICP-MS ユーザの皆さまへ
特別記念セミナー開催
Agilent ICP-MS を導入いただいた皆様のユーザフォーラムへのご参加を心か
ら歓迎致します。Agilent ICP-MS ユーザフォーラム (英語版) は、Web をベー
スとした交流の場で、7500 に関する情報を交換できます。
山田知行
化学分析事業部
Agilent Technologies
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お使いの装置のシリアル番号の入力が必要です。ICP-MS ユーザフォーラムへ
のリンクは、以下のサイトから可能です。www.agilent.com/chem/icpms
4500 シリーズの公式サポート終了
Agilent 4500 シリーズ ICP-MS の公式サポートは、2007 年 10 月 31 日をもっ
て終了となりました。
詳しくは、アジレントの販売代理店または営業担当までお問い合わせください。
展示会と国際会議
初代のモデルは、 1987 年に発表され
ました。その販売開始から 20 周年を
2008 Winter Conference on Plasma Spectrochemistry (WPC)
記念して、4 月 26 日に特別セミナーを
2008 年 1 月 7 ∼ 12 日、米国カルフォルニア州 Temecula
開催し、120 人以上のお客様にご参加
いただきました。誠にありがとうござ
いました。
また、ご講演をいただいた、原口名誉
教授 (名古屋大学)、古田教授 (中央大
学 ) 、野々瀬先生 ( 産業技術総合研究
所)、井上先生 (関東化学) および辻本
先生 ( 関西環境管理技術センター ) に
心よりお礼申し上げます。
2000 号機はカナダへ
出荷台数 2000 台目の Agilent 7500
ICP-MS が、 2010 年冬期オリンピッ
2008 WPC での
Agilent ICP-MS ユーザミーティング
開催場所: The Pechanga Resort & Casino, 45000 Pechanga Parkway, Temecula, USA
ユーザミーティングは、学会が行われるホテルにて、2008 年 1 月 8 日 (火) PM7:00 ∼
PM9:00 に開催されます。
この Agilent ICP-MS ユーザミーティングは、毎年、WPC 期間中に開催されます。ここでは、最
新の ICP-MS 情報を入手できるだけでなく、ユーザ間のネットワークを築いていただける、また
とない機会です。また、アジレントの ICPMS チームのメンバーに、直接質問や相談をしていた
だくこともできます。今後とも、WPC にご参加の際は、ぜひ、お越しください。
Agilent ICP-MS 関連資料
ク の メ ダ ル 公 式 サ プ ラ イ ヤ で あ る 、 最 新 の 資 料 の 閲 覧 、 ダ ウ ン ロ ー ド は 、 www.agilent.com/chem/jp の
Teck Cominco Metals 社様に納入さ 「Library Information」から検索してください。
れました。Teck Cominco Metals 社様 • Handbook of Hyphenated ICP-MS Applications、5989-6160EN (英語版)
は、カナダ・バンクーバーに本社を置 • アプリケーションノート: HPLC-ICP-MS を用いた有機と無機セレン種の
く総合金属メーカーで、亜鉛や銅、金、 測定、5989-7073EN (英語版)
特殊金属のメーカーとして知られてい • アプリケーションノート: 7500cx ICP-MS によるモルト蒸留酒(ウイスキー)
ます。
中の微量元素測定、5989-7214EN (英語版)
www.teckcominco.com
表紙写真:
ICP-MS アプリケーションエンジニアで半導体分野のスペシャリスト、
溝渕勝男 (東京)
Agilent ICP-MS ジャーナル編集者
本誌に記載の情報は予告なく変更される場合が
あります。また、発行時点で終了しているキャ
ンペーン、イベントなどが含まれる場合があり
ます。
© Agilent Technologies, Inc. 2007
Printed in Japan、October 19, 2007
5989-7417JAJP
Karen Morton、Agilent Technologies
e-mail: [email protected]
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