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開かれた政府統計のあり方

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開かれた政府統計のあり方
日本統計学会誌
第21巻 ,第 3号
277頁 ∼282頁
(増 刊号),1992年
開 か れ た 政 府 統 計 の あ り 方†
水
山
貞
貝J*
The Role of Omcial Statistics and Data Dissemination
Sadanori Nagayama*
近年の統計デー タの利用 は,コ ンピュー タの発達 とともに,従 来 とは比較 にならないほど
多
様化 してきている。 この統計需要の多様化 に政府統計 はいかに対処すべ きかを,政 府の収集す
べ きデータの範囲の問題 と,集 めたデー タをどう提供すべ きか とい う問題 と
,二 つについて考
える。前段の問題 に関 しては,政 府統計の役割 を国の行政 目的 に資するためでな く,国 民の必
要 とする統計情報 をサービスすることも政府 の役割 であるとはっきり位置付 ける。後段の問題
では,政 府統計機関は ready― madeの 結果表だけでな く,tailor― madeの 統計 の
作成 を積極的
に行 うべ きである。その対応 として,(1)個 票テープの目的外使用,(2)標 本テープの
提供,
(3)統 計作成機関による受託集計,(4)第 3者 機関 による受託集計,の 四つの方法を提
案する。
近 年 ,政 府 統 計 の 利 用 へ の 関 心 が 一 段 と強 ま っ て きて い るが ,そ の 最 も大 きな
要因 はコン ピ
ユ ー タ の 発 達 で あ ろ う.コ ン ピ ュ ー タ ,特 に パ ソ コ ン の
普 及 に よ っ て ,複 雑 な 統 計 処 理 が 誰 で
も可 能 とな っ て くる と,統 計 デ ー タ の 分 析 が 一 層 緻 密 に な り,そ れ だ け に
政 府 統 計 へ の期 待 が
強 くな っ て きて い る と考 え られ る.こ の よ うな 統 計 利 用 の 情 勢 の 変 化 に た い して
,政 府 統 計 は
ど う対 処 した ら よ い か を考 え て み た い .
政 府 統 計 の あ り方 と して ,(1)政 府 は どの 範 囲 の デ ー タ まで 収 集 す べ きか , とい う問
題 と,
とい う二 っ の 段 階 の 問題 が あ る.こ こで は主 と
して 後 者 の 問 題 を と りあ げ るが ,は じめ に 前 者 の 問 題 も簡 単 に触 れ て お こ
う.
(2)集 め た デ ー タ を どの よ うに提 供 す べ きか ,
1。
政府統計 の とるべ き範囲
政府統計 の とるべ き範囲 を一 般的に定義 づ ける こ とは難 しいが,た とえ定義 づ けて もその解
釈如何 によって大 きな影響 をお よぼす
一例 をあげると,英 国 で は 1981年 に D.Raynerが 政府 の統計 サー ビスについての レ
ポー ト
の中で,「 政府 は政府 自身 が政策上必要 とす るデータのみを収集すべ きである とい う
」
,い わゆ
Rayner Phi10sOphy"を 示 した。 ときの英国政府 はこれ をよ りど ころとして
る“
,通 商産業省 に
お ける Business surveyの 調査対象 の規模 を大 幅 に縮小 し,産 業統計 が大 き く
後退 して しまっ
た。1989年 には ArmstrOng― Reesの 勧告 で,さ らに対象 の規模 も,ま た報告書等 も縮小 された
.
.
1990年 になって ECと の連携 の問題 もあ り,ま たその間 の統計 の質 の低下 に す る
対
批判 も大 き
かつたため,政 府 も企 業 に対 して基礎 デー タを提供す るとい う姿勢 に転換 し
,調 査 の規模 も多
少 は復活 されたが,lo年 間 の後退 は埋 め られなか った とい う報告 が ある(Astin[1])。 もっと
もこの転換 の時期 に,英 国 で は統計機構 の大改革が行われ,同 時 に Business surveyも
貿易産
*早 稲 田大学政治経済
学部 ,〒 169-50東 京都新宿 区西早稲 田 1-6-1
論文 は,日 本統計学会 60周 年記念事 業 の一 環 として,1991年 11月 15日 東京で行われ た シンポジウム
での発表 をまとめた もので ある。
. :本
278
日本 統 計 学 会 誌
(増 刊号)1992
第 21巻 第 3号
て い るので,他 にも事情 があるか もしれ ないが
業省 か ら大蔵省 の中 の中央統計局 に移管 となっ
一つの調 査 が政府 の姿勢 でゆれ動 く例 として考 えられ よう
の ように狭 く解釈 すれば,“ 企業 が
この “政策上必要"と い う言葉 はかな り曖味 で,英 国 の例
い"と い う ことになる.一 方,“ 企業 の活動 を促
必要 とす る統計 は民間 の企業 自身が集 めれ ばよ
であ り,し か も企業 が必要 とす る市場 の詳細 な
進 し産業 を発展 させ る ことは政府 の重要 な政策
い"と い う論法 で ゆけば,“ 政策上必要"の 範囲 は拡
情報 を包括的 に提供 で きるのは政府 しかな
,
.
大 され る
の
目的 に資 す るためだけでな く
このような動揺 を避 けるた め には,政 府統計 の役割 を国 行政
ことも政府 の役割 である とはつきり位置付 ける こと
国民 の必要 とす る統計情報 をサ ー ビスす る
の必要 とする統計情報 "の 範囲 を ど
が必要 である (4.討 論 の項 (1)参 照).す る と問題 は “国民
を充分聞 いて,個 別 の統計毎 にその範囲 に
うす るかである。 これ は政府 が民間 の利 用者 の意見
.
,
ついて公平な判断 をす る ことが必要 であろう
の企画段階 で,政 府関係者 の他 に も,学 者
我 が 国 で は政府 の統計機 関 の多 くは,統 計調 査
の判断 の場 として いるが,必 ず しも充分 と
て
民間利 用者 か らの意見 を聞 く研究会等 を設 け ,そ
のニーズを把握 し,民 間 の要望 す
て
は言 い難 い.政 府 は積極 的 に民間 との交流 の場 を通 じ 国民
か もコス ト的 に可能 であ り
個人 的関心 か らで はな く公共 的 な価値 があ り,し
る調査項 目等 が“
の段階 でその採用 を検討すべ きであ ろ
か つ調 査 目的 に反 しない"も のであ るな らば,調 査設計
.
,
,
つ.
2.デ ー タの提供
(Dissemination)の 問題
2.1 利用者 の立場 にた つたデ ー タの提供
べ きか,と い う問題 に移 ろう
次 に政府 は集 めたデータをどの ように提供 す
の共有 の財産 であ り,従 つて統計 データを利用
統計調査 によつて得 られ た統計 デー タは国民
である,と い う認識 が必要 である
者 に使 いやす い形式 で提供 す る ことは政府 の責務
利 用者 に使 いやす い
て きて はい るが,こ の “
従来 か ら政府 の統計 デー タ は積極 的 に提供 され
いい難 い.使 い易 く提供 す る ことによつて統計 の利用
形式 で"と い う配慮 は必ず しも充分 とは
いて は統計調 査 に対す る国民 の協力 の改善
が広 まれば,国 民 の統計 に対 す る理解 が深 まり,ひ
査環境 の改善 を通 じて統計作成機 関
につ なが る.従 つて統計 データを使 い易 くす る努力 は,調
自身 に還元 され て くるのである
十
2.2 ready― madeと tai10r― made CD多腱署
を統計作成機関 が集計 して
これ までの政府統計 の提供 (Dissemination)は ,“ 一 定 の結果表
データの利用 は,前 述 のように コン
の
印刷物 で刊行 す る"の が基本 であつた.し か し現代 統計
して きて い る.従 つて統計機 関
ピュー タの発達 とともに,従 来 とは比較 にな らないほど多様 化
たす ことは無理 であ り,ま たあらゆ
の作成 す る ready― madeの 結果 表 だけで は,到 底需要 を満
つて利用者 の注文 に応 じてつ くる
る
る需要 を想定 して膨大 な集計 をす る ことは無駄 で もあ .従
って きて いる
tailor― madeの デー タ提供 の問題 が重要 とな
madeの 統計 作成 の要求
そ こで,(1)ready― madeの 統計 デー タの提供 の問題 と,(2)tai10r―
に どこまで応ず るべ きか,と い う問題 を分 けて検 討す る
.
.
.
.
.
2.3 ready― madeの 統計 の提供 一印刷物 と磁気媒体
書 のほか に,磁 気 テープによる提供 も比
ready― madeの 統計 デー タは,印 刷物 による統計報告
をもつ一部 の機関 に限 られ て い た.し か
較的早 くか ら行 われ て いたが,そ の利用 は大型計算機
して きたのに応 じて,フ ロ ツ ピーデ
し近年 パ ソコンが,企 業 ,学 校 ,一 般家庭 にまで広 く普 及
ロ ピーによる提供 を積極的 にお こなえば,裾 の
ィスクによる提供 が少 しず つ現 れ始 めた.フ ツ
開 か れた政府統計 の あ り方
広 い統計不U用 の拡大 に役立 つ
.
さらに は CD― ROM Iこ ょる提供 も一般化 す るで あ ろうが, CD― ROMは 禾u用 の
便禾Uさ とと も
に,図 書館 等 で国勢調査 の よ うな膨 大 な統計報告書 に置換 えて,収 納 スペ ース を
節約す る効用
もある.従 って統計作成 者 は調査企画 の段階 か ら,印 刷物 の統計表作成 の計画 と じウエ
同
イト
で,磁 気 テープ,フ ロ ッピー,CD― ROMそ れぞれによる結果 の提供 を総合的に計
こと
をす
る
画
が望 まれ る
.
2。
4 tailaor― madeの 集計の対応
利用者の注文 に応 じた tailaor― madeの 集計 には,幾 つかの対応 が考 えられ る.そ こで
,(1),
個票テープの 目的外使用,(2)標 本 テープの提供 ,(3)統 計作成機関 による受託
集計,(4)第
二者機関 による受託集計,の 四 つ の可能性 について分 けて論 じよ う
(1)個 票 テープによる集計―統計 目的外使用 の問題
統計法で は,調 査票 の統計 目的外使用 の規定 によって,個 票 テープ を使用す る道 は いてい
開
るが,そ の適用 はきわめて厳 し く,利 用 は国,地 方公共 団体 に限 られ
,学 術的な目的であって
.
も,民 間 で は利用で きないのが現状 で ある.指 定統計で は,答 申者 に
申告義務 を課す代 りに
個票 の秘密 を守 る義務 が ある.従 って個票 の秘密保持 は,統 計調査者 と答申者 との の
間 信頼関
係 脅つ な ぐ最大 のポイ ン トで あ り,統 計機関が この規定 を厳格 に運用 して きたの も理 が
由 ある
しか し統計結果の活用 を考 える と,そ の承認 の範囲 を国及 び地方公共団体 のほかに
,民 間 で
も公益性 の強 い大学,研 究機関の よ うな公益 法人が,研 究 目的 に使用する場 は
合 ,統 計 目的外
使用の 申請 をみ とめ,審 査 の うえで個票 テープによる集計 の道 を開 くこ とが考 えられ る
,
.
.
指定統計調査調査票使用申請要領 (昭 和 40年 2月 27日 ,行 政管理庁 告示第 14号
,改 正 昭和 59
年 9月 14日 ,総 務庁 告示第 9号 )の 事務処理要領 によれば,使 用者の承認 の範囲 には
,公 務員以
外 で も,学 校 ,病 院,研 究所等 の民間の施設 の職員 も含 まれ る とされてい るが
,実 際 には “調
査票 の使用 目的 が公益性 の高 い もので ある こと"と い う基本的基準 に わない と
合
云 うこ とで
民間の利用 は認 め られてい ない.そ のため,国 立 の機関 が個票 テープ を使 って分析 した
研究論
文 を,他 の学者 が追試 しよ うとして もその道 が閉 ざされてい るとい う不 満 が生 じてい
る.し た
が つて民間の機関 で も,使 用 目的が公益性 の高 い もので あれば承 認 を
考慮 して もよいのではな
いか と考 える.こ れ は次の標本 テープの利用 と関係 して くる
,
.
(2)“ 標本 テー プ"の 一般提供 の問題
次の段 階 は個票 テープのアイデ ン トを消去 し,か つ個体 の識別 が不可能 な処理 をしたテープ
を一般 に提供 (販 売 )し ,利 用者が 自分 の 目的 に応 じて 自由 に分析可能 な を
道 開 くこ とで ある。
この個体 の識別不可能 な処理 を したテープ を個票 テープ と区別す るために
,以 下 では"標 本 テ
ープ"と 呼 ぶ こ とにす る (討論 (4)参 照 ).こ の標本 テープな らば
個票 の秘密 を犯す こ とには
な らないので提供 は可能であるが,問 題 は,般 の人がその通 りに理解 して くれ るか どうかにか
かつてい る
.
欧米諸 国 で はすでに人 ロセ ンサス等 か ら抽 出 した標本 テープ等 を販 売 して い る が
例 多 くみ ら
れるが,日 本 で は,必 ず しもこの問題 を外国 のよ うに割 り切 って考 えて い る とは
限 らな いので
充分 な理 解 が えられ るよ うに慎重 に準備 を進 めるべ きで ある.し か し一 方,利 用者 の
要望 はつ
よ く,ま た国際機 関 か らも所得分布 の国際比較 の基礎 となる標本 テープの
提供 が求め られてい
る等,早 急な対応が必 要である
そ こで可能 な手llkと して は,一 部 の標本調査 の “
標本 テープ"の 提供 か ら始 め,そ して国民
の理解 が進 むに応 じて,そ の範囲 を広 げてゆ くのが妥当な手1頁 と考 えられ る
,
.
.
(3)統 計作成機関 による集計―政府統計 のマ ーケテ ィング
280
日本 統 計 学 会 誌
第 21巻
(増 刊号)1992
第 3号
が注文 に応 じて tai10r― madeの 集計 をす る方
利用者 が集計能 力 のない場合 は,統 計作成機関
団体 の委託 をうけて集計 を行 う ことが設置法
法 がある.現 在総務庁統計局 は,国 及 び地方公共
サ ー ビスを行 う こと制度上困難 で あ る
上認 め られ てい るが,民 間 に対 して有料 の集計
マー ケツテイング"と い うテーマ のセ ツシヨンで
今年 (1991年 )の ISIで は “政府統計 の
ルギ
され た.オ ース トラ リア,ニ ユージーラン ド,ベ
統計 サ ー ビスの販売 の問題 がかな り議論
的 に導入 して,統 計結果 の販売 ,有
ー等 の国で は,政 府統計 のマーケ ツテ イングの考 えを積極
の
ー ベ ースのサ ー ビス等 を行 つて,そ の収入 を統計予算
料 の集計 サ ー ビス,オ ンライ ンのデ タ
た
係者
つて潜在的 な統計需要 が把握 され,ま 統計関
中 に組 入れ てい る報告が あ つた.こ れ によ
が
国 のような慎 重論 の国 もあ つた [2]
にイ ンセテ イブを与 える等 のメ リッ トが強調 された ,英
決 しなければな らないが,国 ,民
∼ [6].い ず れに して も日本 の場合 は,制 度的 な問題 をまず解
な 計 であるな らば,統 計作成機関が積極 的 に
間 を とわず外部 か らの要望 が一般性 のあ る有用 統
とい う観点 か らは望 ましい。
追加集計 して公表す る方が,統 計 データの有効利 用
で利用者 の意見 を聴取 して も,集 計 に関 し
実際問題 として,統 計作成機 関 が調 査 の企画段階
が公表 された後 で,再 度,作 成者 と利
て は具体的 な要望 が 出て こない といわれ る.む しろ結果
な要望 が得 られるであろうし,そ の中 の公益性
用者 の間 に情報交換 の場 が あれば,よ り具体 的
る余力 をの こしてお くことが望 ましい。
の高 い要望 について は,統 計作成機 関 が追加集計 をす
(4)第 二者機関 による集計
る ことが 困難 な場合 ,そ れ に代 る特定 の団体
政府 の統計作 成機関が民間 か らの集計 を受託 す
に じて有料 で tailor― madeの 集計 をす る
を指定 して個票 テープの使 用 をみ とめ,民 間 の要請 応
して は万全 の措置 が必要 である.)こ の方式 な ら
方法 が考 えられ る。 (こ の場合 ,秘 密保 持 に関
ば,比 較的早 く結論 がで ると思われ る
.
,
.
3。
ま とめ
つて行 われ た ものであるか ら,そ の成果 としての
統計 調 査 は膨大 な予算 と,国 民 の協力 によ
デー タを より有効 に活用 してゆ くために はど
統計 デー タ は国民 の共有 の財産 である.そ の統計
madeの 集計 に関 して,四 つの方法 を提案
のような方法 を とるべ きか,と い う観点 か ら tailor―
な もの と考 えてい る.こ の ように
した.こ の四 つの方法 はいづれか一つで はな く,相 互補完的
が共通 の もの となって前進 し
い ろい ろな可能性 を繰返 し議論 をしてゆ くうちに,関 係者 の意識
てゅ くもの と思われ る
つて個票 データを再利用 す るケー
いず れ にして も今後 ,統 計調査 は集計完 了後 で も過去 に遡
tai10r― madeの 集計 が容易 にで きる
スはます ます増加す ると思われ る.従 つて統計作成機 関 は
的 な話 になるが,例 えば 1990
ような体制 と,磁 気 テープ等 の整備 に工夫 が必要 である.多 少技術
査票 のマー クシー ト上 の産業 ,職 業等 の具体
年国勢調査 で試 み られ た Image Capture方 式 (調
てテープに入力す る方式 )で は,将 来,コ ー
的 な手書 きの文字情報 を,そ のままイ メージ とし
らな くて もテープのイ メージか らコー ド
ド化 されて い ない分類集計 が必要 な場合 ,調 査票 に戻
る と思われ る
化 が可能 とな り,再 集計 の可能性 に大 き く貢献 す
.
.
4. シンポジウムにおけ る討論
ムにお いて報告 をした ものであるが,討 論者の腰原
本論 は統計 学会 60周 年記念 シンポ ジ ユウ
いただいたので,私 の意見,お よび竹 内 啓 ,奥 野
久雄 氏 か らは次 の ような有益 な コメ ン トを
い
忠一 ,渋 谷政昭各 氏 の意見 とあわせて ま とめてお きた
な機能 を持 つべ きであ るが,作 成
は公共財的
(1)腰 原氏 は官庁統計 の性格 について,官 庁統計
てお り,一 方利 用者側 は分析技術 の精緻化 によ
者側 は行政 目的 に適合 す る ことが強調 され過 ぎ
.
281
開かれた政府統計のあり方
って非常 に個別 的 な情 報 を も とめて きて い る.こ の公 共性 と個別性 を どう調和 して ゆ くの か ,
,利 用者 の個別 的要望 とを どう調和 して ゆ
くの かが 問題 で あ る.官 庁 統計 が 公共財 的 な もの として提供 す べ き部 分 と,一 方 ,商 品 として
個 別 的 に対応 す る部 分 とは ど うい う ものか を,作 成者 と利 用者 の 間 で十分 議論 が行 われ るべ き
で あ る と述 べ られ ,官 庁統計 の積 極 的 な対応 と ともに,利 用者 の過 度 な要求 に対 して も限界 を
そ して作成者側 の負担 (同 時 に被調 査 者 の 負担 )と
示 され た.
また竹 内氏 は基 調報 告 の 中 で ,統 計 の性格 に つ いて,“ 政府 は国民 のた め に必 要 な情報 サ ー ビ
ス をす る こ とで あ る"と い う発想 も必 要 で はな い か と述 べ られ て い る.私 も両氏 とほぼ 同 じ意
見 で あ る.
(2)腰 原氏は,tailor― madeの 四つの方法の中では,第 3の 統計作成機関による集計がもっとも
望ましい.そ れは,① 統計作成機関が統計需要の動向を直接把握できること,② 秘密保持が徹
底 しやすいこと,③ また有料化をすれば統計作成についてのインセンティブが働 くこと (た だ
し公共財 として提供する部分が減るおそれがある)を 理由に挙げておられる
た しかに政府機関 が tailor― madeの 統計 を追加 集計 の形 で作成 して くれれば,そ の結果 は公
表 され,要 望者以外 の人 で も広 く利用 が可能 となるので最善 で ある ことはたしかで ある.し か
しそれには統計作成機関 の余力 の問題 ,ま た有料 とす るな らば制度的 な問題 をク リアー しなけ
.
ればな らな い
.
(3)ま た腰原氏 は,第 1に あげた民 間 で も公益性 のつ よい大学や研究機関 に個票テー プの統計
目的外使用 の可能性 を認 める方法 は,統 計 の利用者 の範囲が広 くなってい る現在 ,特 定部分 に
だけ提供す るのは望 まし くない ので はないか.第 2の 方法 の標本 テープの提供 は,ア イデ ン ト
を消去す る とリンケージがで きな くな り,分 析 の可能性 が狭 まって しまうので,そ の点 か らも
第 3の 方法 が望 ましい.さ ら第 4の 第 二者機関 による方法 は,第 3の 方法 に近 いが,統 計作成
機関 が統計需要 の動向 を直接把握 で きない,組織 が複雑化 して コス トがか るので はないか,秘
密保持 の点 で国民 の コンセ ンサスが得 られ るか,等 の点 について疑間 を呈 された
.
それぞれ今後十分 に検討すべ き問題 で あるが,第 1の 方法 は,現 在 ,承 認 の範囲 を国立か民
間 かで 区別 してい るが,本 来 は使用 目的 の公益性 で 区別 す るのが趣 旨で あるので,最 小限,民
間 の公益的機関 まで考慮 の対象 とした らどうか と考 えて い る.第 2の 方法 も,利 用者 の多様性
か ら考 える と,多 くの利用者 の場合 は,個 体 の識別不能 な標本 テープで も十分分析 が可能 と思
われ る.ま た第 4の 第 二者機関 の活用 は,統 計作成機関 による有料 の受託集計 が,実 際問題 と
して早急 な実現 は困難 と思われ るので,実 現可能 なアプ ロー チ として提案 した
私 としては,こ の四つのアプ ロー チはいづ れか一 つ とい うので はな く,政 府 はい ろい ろな手
.
段 を用意 して,民 間 の多様 な結果利用 の要請 に答 えてい くことが望 ましい と考 えて い る.腰 原
氏 も他 の方法 を排除す る とい う意図 はな く,ま た奥野氏 も,標 本 テープや第 二者機関 の活用な
ども含 めて具体的 に前進 させ るべ きである,と 述 べ られて い る
.
(4)渋 谷氏 か らは,個 票 テープの個体 の識別 を不可能 にす る方法 につ い ては,ア イデ ン トの消
去 だけで は不十分 で,い ろい ろな追加処理 の方法 を提案 された.私 もこの問題 は重 要 であ り
早急 に研究会等 を設 けて,疑 念 の残 らない処理方法 を確立す る こ とが必要 で ある と思 う。 と く
に米国 の ように,詳細 な小地域 の統計情報 が要求 されて くる と,個 体 の識別可能性 の検討 は重
,
要 で ある.た だ し標本調査 の場合 は,セ ンサ ス と異 なってその処理方法 は比較的 に簡略化 で き
ると思ゎれるので,そ の意味か らも,標 本調査の標本テープの提供 から逐次スター トするのが
望 ましい と思う。
日本 統 計 学 会 誌
参
[1]J.A.Astin:“ Statistical
第 21巻
考
文
第 3号 (増 刊号 )1992
献
ι
グ′
電 sげ 厖θ
Form― ■1ling by lndustry:Net Burden or Net Benent",P/a“
IS1 48励 Sassあ η,Sep.1991.
電s
*以 下 の [2]∼ [6]は いづれ も“Marketing in Omcial statistics"の テ ーマ での報告 の レジ ュメ.乃 α ′′
“
い
る。
されて
が
ゲ 厖′rsIィ ∂厖 sassあ π,Sep.1991.な お [7]│こ その要約 紹介
[2]Dennis Trewin,“ Strategic Directions in Marketing in a Government Statistica1 0fnce''(Australia)
[3] Len Cook,``Introducing a Marketing Culture within a Statistica1 0rganization"(New Zealand)
[4]David L.Pearce,`` Marketing Census Product"(United Kingdom)
[5]Bart Meganck,“ Commercialisation of Omcial statistics in Smaller Countries"(Belgium)
[6]Edward Spar,“ Sales and Marketing Uses of Decennial Census lnformation''(USA)
[7]三 浦 由己 「官庁統計 の普及 につ いて一ISIカ イ ロ大会報告」,雑誌統計 ,1991年 11月 号
[8] George T.Duncan and Robert W.Pearson(1991),“
Enhancing Access to Microdata While Protecting
,6,219-232.
Confldentiality¨ ・Prospects for the Future",S滋 病厖cα′Sε 厖%ει
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