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CSR経営・コンプライアンス経営における お客様と社員の役割

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CSR経営・コンプライアンス経営における お客様と社員の役割
CSR経営・コンプライアンス経営における
お客様と社員の役割
「お客様と社員の声が企業を救う」シンポジウム
2014年3月7日
(独)国民生活センター理事長 松本恒雄
1
講演の概要
1
2
3
4
消費者政策の歴史と手法
企業の社会的責任とコンプライアンス
お客様の声-消費者相談・苦情
社員の声-公益通報
2
1 消費者政策の歴史と手法
3
消費者の権利宣言から半世紀
l
l
2013年11月19日 キャロライン・ケネディ駐日大
使赴任
1962年3月15日 ジョン・F・ケネディ大統領の連
邦議会に対する「消費者の利益保護に関する大
統領特別教書」
• 「安全を求める権利」
• 「知らされる権利」
• 「選ぶ権利」
• 「意見を聞いてもらう権利」
l
3月15日は世界消費者権利の日(1983年から)
4
1962年はどんな年?
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景品表示法の制定
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家庭用品品質表示法の制定
特殊法人国民生活研究所設立
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• きっかけは、偽牛缶事件
• 独立行政法人国民生活センターの前身
橋幸夫・吉永小百合の「いつでも夢を」が日
本レコード大賞
• 国民が夢を持てた前向きの時代
5
日本の消費者政策の歴史
前史
50 年 代
以前
第1の波
60年代 行政中心 行政規制+行政による ハードローの時
被害相談・あっせん
代
第2の波
90年代 司法重視 裁判所等での権利の
行使
第3の波
00年代 市場重視 市場を利用した消費者 ソフトローの活用
保護
の時代
他の目的の法規の執
行による結果
ついでの消費者
保護の時代
民事ルールの時
代
6
市場を利用した消費者政策
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企業と消費者の対立型から協働型へ
•
•
l
自主行動基準
•
•
l
市場の力で悪い事業者を淘汰し、良い事業者をチャンスを
与える
消費者と事業者の双方得(ウィンウィン)の実現
自主行動基準とは、企業が自らやるべきことを決めてそれを
遵守すること
自主行動基準の内容と遵守状況についての消費者の評価
企業の社会的責任(CSR)の重視
•
•
企業による報告・説明と消費者や市民によるその評価
「CSR経営」、「コンプライアンス経営」
7
製品安全の分野から
l
製品安全のための強制規格
l
製造物責任法(PL法)
l
規制緩和と標準化
• 行政規制
• 消費生活用製品安全法、電気用品安全法等
• 政府認証
• 欠陥製品による消費者被害の賠償
• 強制規格による任意規格の引用
• 政府認証から第三者認証へ、自己適合宣言へ
• 仕様規格から性能規格へ(電気用品安全法改正)
取引の適正化の分野から
l
種々の業法・規制法・取締法
l
民事ルールの導入
• 証券取引法、保険業法、特定商取引法等
• 参入規制、行為規制
• 消費者契約法
• 不適切な勧誘の場合の契約の取消し
• 金融商品販売法
• 説明義務違反の場合の損害賠償
l
自主的取組みの促進
• 金融商品の勧誘方針の策定と公表義務
• 自主行動基準の策定と遵守
• マネジメントシステム規格
2 企業の社会的責任とコンプライア
ンス
10
「企業の社会的責任論」の展開
l
初期の社会的責任論(60-70年代)
l
現在の社会的責任(00年代以降)
• 公害(環境破壊)についての企業の責任
• 石油ショック(70年代)の際の買い占め・売り惜しみ
• 「法的責任」ではない責任
• 「対社会的責任」
• ステークホルダーの広がり
• 「公共」の担い手の拡大
11
企業を取り巻くステークホルダー
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株主
投資家
従業員
消費者
顧客・取引先
地域住民
融資金融機関
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l
監督官庁・規制当局
税務当局(国・自治体)
外国政府
原材料供給国の生産者
(次世代の人々)
(動物・自然環境)
その他
12
ISO26000とは
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「社会的責任の手引」
国際標準化機構(ISO)の第3世代規格
•
•
•
第1世代 製品規格
第2世代 マネジメントシステム規格
第3世代 社会的責任についてのガイダンス文書
2005年から開発開始、2010年発行
開発プロセスの特徴
•
•
•
多数の途上国の参加、世界各地で8回のWGを開催
産業界、労働、消費者、NGO、政府、その他のマルチ・ス
テークホルダーで
99カ国及び42の連携国際組織からの参加
2012年 JIS Z 26000 としても制定
13
ISO26000における社会的責任の定義
組織の決定及び活動が社会及び環境に及ぼす影
響に対して、次のような透明かつ倫理的な行動を
通じて組織が担う責任。
ー 健康及び社会の繁栄を含む持続可能な発展に
貢献する
ー ステークホルダーの期待に配慮する
ー 関連法令を順守し、国際行動規範と整合してい
る
ー その組織全体に統合され,その組織の関係の中
で実践される
注記2 関係とは、組織の影響力の範囲内の活動を指す
14
社会的責任の7つの原則
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説明責任
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透明性
倫理的な行動
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• 不正行為が行われた場合の責任も含む
• 正直、公平、誠実
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ステークホルダーの利害の尊重
法の支配の尊重
国際行動規範の尊重
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人権の尊重
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• 「加担」を避けることも含む
15
社会的責任の7つの中核主題
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組織統治
• ガバナンスがしっかりしていることが社会的責任を果た
•
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していることであるとともに、他の主題に取り組むため
の基盤でもある
外食産業の偽装表示問題の根源の1つはここ
人権
労働慣行
環境
公正な事業慣行
消費者課題
コミュニティへの参画及びコミュニティの発展
16
7つの中核主題の関係
17
企業の社会的責任とコンプライアンスの関係
l
コンプライアンスとは
• 何かの要望に応えること
• 「責任」の英語responsibilityの動詞形respondも何か
に応答すること
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「何の要望」か
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「だれの要望」か
• 狭義では、法令を遵守すること
• 広義では、企業倫理も遵守すること
• 最広義では、自主的に決めたことも遵守すること
• ステークホルダーの要望
• この点でCSRの問題と連結
18
社会的責任としての法令順守の意味
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l
法令順守だけでよいわけではないが、法令順
守は不可欠
社会的責任の核心の一つは、ステークホル
ダーエンゲージメントを通じてのステークホル
ダーの期待への配慮
•
•
•
ステークホルダーの期待・要望のうち最低限を定めた
ものが法令
法令の背景にあるステークホルダーや社会の要請を
踏まえた企業活動が必要
「そのルールが何のためにあるのか」を無視して、
ルールだから守るという形式的法令順守では、脱法
行為を抑止できない
19
ステークホルダーは監視の担い手でもある
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監督官庁・公取委 - 監視・摘発・処分
株主
- 株主代表訴訟
投資家
- 社会的責任投資(SRI)
従業員
- 公益通報者保護
消費者
- 主務大臣への申出権
消費者団体
- 消費者団体訴訟
取引先
- サプライチェーン・マネジメント
競争事業者 - カルテルの通報による課徴金減免
20
3 お客様の声-消費者相談・苦情
21
消費者ステークホルダーとの付き合い方
l
ステークホルダーの期待への配慮
l
層としての消費者
l
個人としての消費者
• CSRの根幹の1つ
• ステークホルダー・エンゲージメント
• どのような個人・団体と対話をするか
• マーケティングの際の偏りのない情報提供
• 苦情対応・相談窓口
• 企業の社会的責任としての消費者教育
22
苦情処理及び紛争解決の促進(その1)
l
「事業者は、第2条の消費者の権利の尊重
及びその自立の支援その他の基本理念に
かんがみ、その供給する商品及び役務に
ついて、次に掲げる責務を有する。」 (消費
者基本法5条1項)
• 1~3 (略)
• 4 消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速
に処理するために必要な体制の整備等に努め、
当該苦情を適切に処理すること
23
製品事故情報の収集義務
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1 消費生活用製品の製造、輸入又は小売販売の事
業を行う者は、その製造、輸入又は小売販売に係る
消費生活用製品について生じた製品事故に関する情
報を収集し、当該情報を一般消費者に対し適切に提
供するよう努めなければならない。 (消費生活用製品
安全法34条1項)
2 消費生活用製品の小売販売、修理又は設置工事
の事業を行う者は、その小売販売、修理又は設置工
事に係る消費生活用製品について重大製品事故が生
じたことを知つたときは、その旨を当該消費生活用製
品の製造又は輸入の事業を行う者に通知するよう努
めなければならない。 (消費生活用製品安全法34条2
項)
24
製品の重大事故の報告義務
l
消費生活用製品の製造又は輸入の事業を行う
者は、
• 「その製造又は輸入に係る消費生活用製品について
重大製品事故が生じたことを知つたときは、当該消費
生活 用製品の名称及び型式、事故の内容並びに当
該消費生活用製品を製造し、又は輸入した数量及び
販売した数量を内閣総理大臣に報告しなければなら
ない。」 (消費生活用製品安全法35条1項)
l
l
医薬品には薬事法上、副作用の報告義務があ
る
食品や化粧品には重大事故の報告義務はない
25
企業のお客様対応窓口の役割
l
ISO26000の消費者課題の課題4の例
• 紛争解決、救済の仕組み、アフターサービス、サポー
•
l
l
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l
トの利用方法について明確に伝える
適切かつ効率的なサポートシステム、アドバイスシス
テムの提供
お客様の信頼をえるー消費者ステークホルダ
ーとの対話の1つ
業務改善・製品改善のヒント(平時)
危機対応(緊急時)
トップマネジメントにつなぐ仕組み
26
苦情処理及び紛争解決の促進(その2)
l
地方公共団体は、
• 「商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じ
た苦情が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に
処理されるようにするため、苦情の処理のあつせん
等に努めなければならない。この場合において、都
道府県は、市町村(特別区を含む。)との連携を図
りつつ、主として高度の専門性又は広域の見地へ
の配慮を必要とする苦情の処理のあつせん等を行
うものとするとともに、多様な苦情に柔軟かつ弾力
的に対応するよう努めなければならない。」(消費者
基本法19条1項)
27
苦情処理及び紛争解決の促進(その3)
l
国民生活センターは、
• 「国及び地方公共団体の関係機関、消費者団体等と
連携し、国民の消費生活に関する情報の収集及び提
供、事業者と消費者との間に生じた苦情の処理のあ
っせん及び当該苦情に係る相談、消費者からの苦情
等に関する商品についての試験、検査等及び役務に
ついての調査研究等、消費者に対する啓発及び教育
等における中核的な機関として積極的な役割を果た
すものとする。」(消費者基本法25条)
28
PIO-NET情報の収集と活用
② PIO-NET情報を
消費者への注意喚起に活用
情報提供
(HP・記者レク・出版物)
取材対応
約1,800件/年
報道機関
国民生活センター
(PIO-NET情報の収集・分析)
① PIO-NET情報を
相談処理に活用
消 費 者
消費生活
センター
相談
③ PIO-NET情報を
消費者政策の企画・立案、法執行
に活用
情報提供
(検索)
PIO-NET
(全国消費生活情報ネットワーク・システム)
消費生活
センター
助言・
あっせん
相談情報
消費生活
センター
約90万件/年
・相談内容
・事業者名
・相談者の属性
・処理結果 等
全国に
約1,000箇所
情報提供
・要望
事業者(業界)
・情報提供・要望
・照会への回答
行政機関
(約1,000件/年)
(中央省庁等)
照会への回答
法令照会
約800件/年
警察・適格消費者団体(注1)
裁判所・弁護士会(注2)
(注1)悪質な事業者の摘発や消費者契約法
による差止請求に貢献
(注2)民事裁判における公正な判断に寄与
指導・摘発
29
国民生活センターの注意喚起・要望の
最近の例(安全)
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スマートフォンの充電端子の焼損や本体の発熱に注意(2
月20日)
キャンドルブッシュを含む健康茶(1月23日)
豆乳等によるアレルギーについて(12月5日)
レーシック手術を安易に受けることは避け、リスクの説明を
十分に受けましょう!(12月4日、消費者庁と連名)
不良灯油による石油暖房機器の故障や異常に注意( 11月
21日)
自動車用緊急脱出ハンマーのガラス破砕性能( 11月7日)
柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供(9月19日)
防犯ブザーの電池切れや故障に注意!( 9月5日)
子ども用の花粉防御用眼鏡の安全性( 8月22日)
30
国民生活センターの注意喚起・要望の
最近の例(取引)
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消費税アップによる駆け込み需要でより混雑する?引っ越しサービス
に関するトラブルを防ぐために(2月20日)
「高い」、「期待したほど聞こえない」、あなたの補聴器選び大丈夫です
か?(2月20日)
“人助け”だと思って代わりに申し込んで!?親切心につけこむ「老人
ホーム入居権」の買え買え詐欺にご注意!(2月6日)
婚活サイトなどで知り合った相手から勧誘される投資用マンション販売
に注意!(1月29日)
「インターネット通販の前払いによるトラブル」が急増!(12月19日)
投資経験の乏しい者に「プロ向けファンド」を販売する業者にご注意!(
12月19日)
増え続ける子どものオンラインゲームのトラブル(12月12日)
年に1回、憧れの海外リゾートライフ?海外不動産所有権付きリゾート
会員権「タイムシェア」の契約は慎重に!(12月5日)
「料金未支払があり、ほうっておくと裁判になる」などと脅す架空請求に
注意!(11月26日)
31
4 社員の声-公益通報
32
公益通報者保護制度をめぐるイメージの対立
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告発イメージ
l
通報イメージ
• 「内部告発」とは内部から外部への告発
• 企業性悪説、悪徳商法の摘発、知る権利
• 告発奨励のための報償金制度(アメリカ、韓国)
• 内部での通報重視
• 誠実たらんとする企業
• 企業のマネジメントシステムの一環としてのヘルプ
ラインの整備
33
通報対象事実
l
個人の生命又は身体の保護、消費者の利益
の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その
他の国民の生命、身体、財産その他の利益の
保護にかかわる法律(別表)に規定する罪の
犯罪行為の事実(2条3項1号)
• 政令で400余りの法令を指定
l
法律に基づく処分の違反が犯罪行為となる場
合における当該処分の理由とされている事実
(さらに、その処分の前提となる勧告等の理由
とされている事実を含む)(2条3項2号)
34
通報先ごとの保護の要件
l
l
l
内部通報-事実が生じ、またはまさに生じ
ようとしていると思料する場合
監督行政機関通報-事実が生じ、またはま
さに生じようとしていると信ずるに足りる相
当の理由がある場合
外部通報-事実が生じ、またはまさに生じ
ようとしていると信ずるに足りる相当の理由
があり、かつ次のいずれかに該当する場合
35
外部通報の場合の加重要件
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l
l
内部通報・行政機関通報をすれば解雇その他
不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当
の理由
内部通報すれば証拠堙滅、偽造、変造のおそ
れがあると信ずるに足る相当の理由
労務提供先から内部通報・行政機関通報しない
ことを正当な理由なく要求
内部通報後20日たっても調査を行う旨の通知
がないか、正当な理由なしに調査がなされない
生命・身体に危害が発生し、またはその窮迫し
た危険があると信ずるに足りる相当の理由
36
保護の内容
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解雇の無効(3条)
労働者派遣契約の解除の無効(4条)
降格、減給その他不利益な取扱いの禁止
(5条1項)
派遣の場合、派遣労働者の交代を求めるこ
とその他不利益な取扱いの禁止(5条2項)
37
公益通報者保護法のねらい
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① 通報した労働者の保護
• 法の制定前後から公益通報者保護法を意識した裁
判例があらわれている
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② 内部通報窓口の設置による自浄作用
l
③ コンプライアンス経営の動機づけ
• まだ形だけにとどまっている例が多い
• 労働者から信頼されていない
• 社会からの信頼を重視する経営者には効果的
• 利益至上主義の悪質経営者には無力
• このような企業、経営者には、罰金、課徴金、損害賠
償の団体訴訟等による利益の吐き出しが効果的
38
公益通報者保護法の効果
l
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公益通報者保護法は内部告発を奨励するもので
はない
しかし、聞く耳をもたない経営者のいる企業では、
内部告発は悪いことではないことを宣言
•
•
l
l
労働者の意識の変化に寄与
内部告発の件数の増加
2004年公布→2006年施行→2007年偽装表示
の報道の頻発→2009年消費者庁の設置
社内の目を意識したコンプライアンス経営を促進
39
企業として何をなすべきか
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l
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経営トップのコンプライアンス意識とコミットメント
組織・体制づくり
担当者の配置とヘルプラインの設置
周知・啓発・教育 → 体制から態勢へ
相談処理・調査
違法行為者に対する処分
モニタリング
公表
見直し
40
相談窓口(ヘルプライン)
l
社内コミュニケーションの重要性
l
社内窓口
l
社外窓口
l
通報・相談方法
• 風通しのよさ
• 窓口への信頼が決め手
• どの部署に設置するか
• 弁護士事務所
• 第三者機関
• 匿名による通報も受け付けるか
41
内部是正後のフィードバック
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l
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通報者へのフィードバック ー 法律が推奨
社内全体へのフィードバック ー 外部通報
の保護要件との関係で重要
社会へのフィードバック ー CSR報告書等
• 秘匿による信頼の維持
• 公表による信頼の維持
42
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