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インドでの取り組み - World Bank

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インドでの取り組み - World Bank
世界銀行
国際開発協会
インドでの取り組み
本冊子はインド政府との協力で作成されました。
これまでの実績とパートナーシップ
IDA は長年にわたりパートナーとしてインドの前進を支援してきました。インドは、1961 年に
IDA が活動を開始した際、最初に IDA 支援を受けた国の1つでした。
当時、インドは農業を主体とする経済で、大規模な食糧不足に見舞われ、貧困が深刻で、識字率が
極端に低く、保健指標は憂慮すべき水準でしたが、その後の進歩により、今や食糧は自給され、絶
対的貧困状態にある人々の人口比率は劇的に低下し、識字率は上昇し、保健指標も向上しています。
インドは現在、世界でも屈指の急成長国であり、グローバル・プレイヤーとして台頭しつつあります。
インドの成長に伴い、インドにおける IDA の役割も発展してきました。当初は農業などの基本的ニー
ズに重点が置かれていましたが、貧困が集中する、より困難な領域での IDA 支援が求められるよう
になっています。こうした取り組みは大きな成功をもたらしています。また、世界の貧困対策のた
めに素晴らしい教訓も提供してきました。本冊子の例が示すとおり、IDA からの資金が役に立って
いると同時に、インド国内や世界の他の国々からのベストプラクティスの移転によりそれ以上の成
果が上がっています。
現段階では、貧困が削減され、インドは堅調なペースで前進していますが、いくつかの困難な課題
が残されています。こうした課題への取り組みでも IDA は引き続き中心的な役割を果たしていくこ
とになります。インドの貧困人口は今も世界最大であり、そのためインドは世界の貧困対策の重要
な舞台となっています。インドの全人口 10 億人のうち、約3億人は依然として貧困ライン以下の
生活をしています。インドの貧困ラインは現在、1日1ドルに設定されていますが、これが引き上
げられると貧困人口はさらに増大することになります。1日2ドルを基準とした場合、インドの人
口の約半数にあたる5億人以上が貧困ライン以下に該当することになります。
インドは、その規模の大きさゆえに、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けた国際的な取り
組みにおいても最前線に位置しています。小児の栄養不良は 50%以上と、憂慮すべき水準にあり、
サブサハラ・アフリカの水準をも上回っています。格差も根強く残っています。今なお大多数の国
民が住んでいるインドの農村部には貧困が集中しており、農業が深刻な危機に見舞われています。
多数の貧しい人々が経済的機会を求めて都市部へと移動し、都市部での貧困も侮り難い課題として
浮上しつつあります。これを受け、急成長が環境に大きな打撃を与えつつあり、都市部と農村部、
富裕層と貧困層、そして地域間の格差が、これまで高い評価を得てきたインドの成功に深刻な影を
落としています。
こうした課題に対し、新たなアプローチを見出し、試行し、検証することが求められています。イ
ンドが万人のための開発という目標を達成するためには、これまで同様、新たな知識やベストプラ
クティスの移転を通じた IDA の影響がインドとパートナーシップを維持するに当たってきわめて重
要となります。取り組まなければならない大きな課題が残る中、インドの使命は引き続き IDA の使
命でもあり、取り組みの過程において IDA 自身の使命を促進するものです。以下の例で、その理由
をご説明しましょう。
インドにおける IDA の取り組み
1995 年以降、IDA はインドに対し 62 件のプロジェクトに 110 億ドルの支援をしています。IDA
融資の4分の3は、農村開発(28%)、保健・栄養(26%)
、教育(20%)に対するものです。
IDA は成長促進と貧困削減のために政策改革も支援しています。研究、分析、技術協力のための資
金援助も行い、それらが中央レベルでも州レベルでも改革プロセスの土台となっています。
農村部の道路
道路が通じた村々での一般的な
効果
農村所得:平均で 50 ~ 100%上
昇する。農業生産性が大幅に向上
し、農産物が良い値で売れるよう
になる。賃金率が上昇し、雇用が
増大する。
識字率:就学率が上昇し、識字率
が約 10%上昇し、男女間格差が
縮小する。教員の出勤率および生
徒の出席率が高まり、多くの村に
学校が新設される。
保健:農村部での健康状態が向上
する。
借り入れアクセス:借り入れがし
IDA はインドの村々で道路を建設することにより農村所得
の増大と保健サービスや教育サービスへのアクセス向上に
取り組んでいます。
やすくなったことで経済活動の幅
が広がる。
農地価格:平均で約 60 ~ 80%上
昇する。
道路建設は農村部の貧困削減に絶大な影響をもたらすことが明
らかになっています。それでも、インド国内にある 60 万の村
のうち約 40%は今なお、自動車での行き来に適した、天候に
左右されず利用できる道路が通っていません。過去 15 年間で、
IDA 融資は、ヒマチャルプラデシュ州、ジャルカンド州、ラジャ
スタン州、ウッタルプラデシュ州、アンドラプラデシュ州、アッ
サム州など多くの州で約2万 km 分の農村道路の建設を支援し
てきました。
市場アクセスの向上により農村所得が増大:市場のある町への
アクセスの向上が刺激となり、高価値の換金作物への多様化や
耕作強度の増大が促進されています。
国際開発協会(IDA)
:インドでの取り組み
出典:IDA プロジェクトで実施された農
村交通調査
農村部の道路
種子や肥料などを入手しやすくなったことで、平均収穫量が増大しています。移動時間
が短縮されたので輸送コストが減少し、生鮮食品の損傷が最小限になりました。中間業
者をなくすことにより農民の収入が増大しました。近くの町に出やすくなったことによ
り、農村部の人々が農閑期にそうした町で仕事を求めるようになっています。町に出や
すくなったことはまた、農村部の生活の質を向上させ、農地価格も上昇させています。
登校しやすくなったことで識字率と女子就学率が上昇:道路が整備されたことにより、
近隣からも教員が農村部の学校に通勤しやすくなり、また、農村部の子供たちの出席率
も上昇しました。これにより、道路の通った村々での識字率が上昇しました。学校に通
える女子が増加したことにより、識字率の男女間格差も縮小しました。
医療センターへの迅速なアクセスにより農村部における健康状態が向上:道路により、
農村部の人々、特に妊婦や重病患者が難産や救急疾患などの際に医療センターに迅速か
つ容易にアクセスできるようになりました。また、医療従事者も農村地域にアクセスし
やすくなりました。
教育
成果
就学していない子供:2005-06 年
で 1000 万 人 ――2003 年 の 2500
万人から減少。
初等教育総就学率:2005-06 年で
104 % *――1995-96 年 の 76 % か
ら上昇。
初等教育純就学率:2005-06 年に
85%――1993 年の 68%から上昇。
男女間格差の縮小:小学校で男子
児童 100 人に対して女子児童 92 人。
社会的格差の縮小:指定カースト
の子供の就学率が、全人口に占め
る指定カースト人口の割合と同等
になっている。
IDA は、2010 年までに6~ 14 歳の子供すべてを就学させる
ことによりインドの膨大な人的資源の開発を助けています。
IDA 資金は、2010 年までに6~ 14 歳の子供すべての就学を目
指したインド政府の意欲的な Sarva Shiksha Abhiyan(SSA)プ
ログラムを支援しています。また、やはり 2010 年までに6~
*100%を超えるパーセンテージは、1~
5学年に本来の対象年齢(6~ 10 歳)よ
りも年下もしくは年上の子供も就学して
いることを示している。
出典:人材開発省、2006 年家計調査
14 歳の子供すべてに 1 ~8学年を修了させることも目指してい
ます。これは、この種のプログラムとしては世界有数の規模で
展開されています。
IDA は、このプログラムの総費用 35 億ドルのうち5億ドルを拠出しました。融資に加えて、訓練、
キャパシティ・ビルディング、技術的支援、監視・評価、財務管理、情報配布、メディア・キャン
ペーンなどを通じて教育を支援しています。
インドの就学率が上昇:このプログラムの結果、インドで初等教育を受ける子供の数が上昇しまし
た。学校に通っていない子供の数は減少し、上級初等教育の就学率も、
2003 年以降、
年間 10%のペー
スで増加しています。
国際開発協会(IDA)
:インドでの取り組み
教育
女子児童の数が増加:初等学校に通う女児が増加し、男子児童 100 人に対し女子児童
は 92 人になっています。上級初等教育では、2005-2006 年に男子 100 人に対し女子
84 人に増えています。
不利な立場にあるグループの子供の就学率が上昇:指定カースト(SC)および指定部
族
(ST)の子供の就学率が上昇したことで、社会的格差も縮小しています。初等教育では、
指定カーストの児童就学率は 2005-06 年に 18.64%まで上昇しています(人口比率は
16.2%)。同様に、指定部族(ST)の児童就学比率も 2005-06 年に 9.02%まで上昇し
ています(人口比率は 8.2%)。
IDA は政府の技術教育改善を支援:各州の経済的要件に従い、アルナチャルプラデシュ
州、ジャンム・カシミール州、メガラヤ州、ミゾラム州、ナガランド州、シッキム州、
トリプラ州、アンダマン-ニコバル諸島連邦直轄領における技術専門学校の教育の質向
上を支援する IDA プロジェクトが行われています。新たに9つの技術専門学校が設立
されたほか、既存の 12 校の能力が強化されました。大規模な IDA プロジェクトにより
13 の州の 128 校で技術・工学教育の質的向上が支援されています。IDA は最近、イン
ド国内の 400 の工業訓練機関(ITI)で提供される職業訓練の質向上についても、イン
ド政府に対する支援を開始しました。
HIV/ エイズ
成果
妊婦の HIV 感染率:
タミルナドゥ州:2006 年に 0.62%
――1998 年の 1.0%から減少。
マ ハ ラ シ ュ ト ラ 州:2006 年 に
1.02 % ――1998 年 の 2.00 % か ら
減少。
アンドラプラデシュ州:2006 年
に 1.60 % ――1998 年 の 2.25 % か
ら減少。
リスクの高いグループの HIV 感染率:
タミルナドゥ州:2006 年に 10%
――1998 年の 16.30%から減少。
写真:DFID
IDA はインド国内での HIV/ エイズの蔓延抑制と影響緩和を
支援しています。
インド政府は、6番目のミレニアム開発目標(MDGs)に設定さ
れている期限である 2015 年を前倒しして 2011 年までに HIV/
エイズの蔓延を食い止め、減少に転じるという意欲的な目標に
マ ハ ラ シ ュ ト ラ 州:2006 年 に
12.9%――1998 年の 16.00%から
減少。
カルナタカ州:2006 年に 9.19%
――1998 年の 16.70%から減少
出典:国家エイズ管理機構(NACO)
向けた取り組みに着手しています。
成果:過去 12 年間にわたり、IDA プロジェクトはインド政府による HIV/ エイズ対策の策定およ
び強化を支援してきました。この持続的な取り組みは多くの成果を上げています。HIV について自
発的に相談・検査を受けるためのセンターの増設、リスクの高い行動をとるグループを対象とした
NGO 管理による予防プログラム、効果的な血液の安全性確保プログラム、性感染症の治療を行う
診療所の増設、母子感染防止サービスの設立、HIV 感染者の介護・支援・治療などです。こうした
取り組みにより HIV 感染率はインドの成人人口の1%未満に維持されています。
インドの国家エイズ管理プログラムの第 III 段階を計画する過程で、世界銀行は、このプログラム
に対する開発パートナーからの支援の調整をするなど、大きく貢献しました。
国際開発協会(IDA)
:インドでの取り組み
HIV/ エイズ
世界銀行を通じた日本からの PHRD グラント資金が、インド政府によるこのプログラ
ムの計画立案に役立てられました。英国国際開発省(DFID)から提供された資金が、
このプログラムを支援するために IDA 資金と共にプールされています。
今後の課題:このような成果が上がっているものの、HIV とエイズが依然として重大な
脅威であることに変わりはありません。HIV/ エイズは高リスク・グループに集中して
いますが、女性や農村地域での HIV 感染率が上昇傾向にあることは、一部の州で感染
が一般化しつつあることを示しています。流行は特定の地域に集中しています。インド
の全人口の 30%が暮らす6つの州では、HIV 感染率が高いとみなされる水準にすでに
到達しています。
今後の取り組み:IDA の NACP III:2億 5000 万ドルが投じられる IDA の第3次国家
HIV/ エイズ管理プロジェクト(NACP III)は、インドの国家エイズ管理プログラム
(NACP)を支援するものです。IDA によるこのプログラム支援では、
HIV/ エイズの予防、
介護、支援、治療のほか、監視と調査にも重点が置かれます。また、国家エイズ管理機
構(NACO)、州エイズ管理協会、そしてこのプログラムに関連する NGO の技能の養成
と強化も目指しています。
人口の 99%以上が未感染であることから、予防がこのプロジェクトの最優先課題となっ
ています。目標となるのは、5年間で最もリスクの高い人々の 80%に働きかけることで
す。このプロジェクトでは、売春婦と客との危険な交渉を減少させ、男性同士で関係を
持つ人々に安全な方法について教育し、注射を使う麻薬使用者や移住民の間での HIV 伝
染を減少させるための介入策の規模拡大を支援します。リスクの高い行動をとるグルー
プ間での努力では感染を予防できていない状況では、HIV 感染者に対する介護、支援、
写真:DFID
治療の提供がプロジェクトの重要な要素となります。
保健
成果
結核:推奨されている DOTS 戦略
が広範に提供され、インド国内の
すべての地区に普及している。
平均症例発見率:世界目標である
70%に近づく。
治癒率:2003 年以来、世界目標
である 85%を一貫して達成。
出典:TBC インド、保健家族福祉省
白内障:対象地域における発生率
が半分以下に減少。
出典:IDA の白内障管理プロジェクト
ハンセン病:インドのハンセン病
罹病率は1万人に1人未満まで減
IDA プロジェクトはインド国民の健康状態の改善に取り組
んでいます。
少し、ハンセン病は国家レベルで
の重要な保健課題から外された。
出典:保健家族福祉省
IDA プロジェクトは、妊婦および小児の健康状態の改善と、人々
を貧困に追い込む消耗性の伝染病の抑制に取り組んでいます。
IDA は、保健サービスの提供、質、アクセスを向上させるため、
より幅広い保健システムの強化も支援しています。
母子の健康状態が向上:IDA は、インドの「性と生殖に関する健康・小児保健プログラム」や小児
の栄養問題に取り組む総合的児童育成プログラムに対する継続的な支援により、高水準となってい
る母子死亡率の引き下げを支援しています。母子死亡率や小児栄養不良を示す指標はすでに着実な
改善があったことを示していますが、より効果的なサービスを提供することにより、そのペースを
速める必要があります。
結核の発見率と治癒率が上昇:インドでは結核が、伝染病による成人の罹病および死亡の一番の原
因となっていますが、その管理については大きな進歩が見られます。新たなサービス提供モデルで
ある DOTS(直接監視下治療法)治療がインド国内のすべての地区に普及し、この治療を受けられ
る人の数口は現在 10 億人以上に上っています。これまでに 630 万人以上の患者が DOTS 治療を
受けており、110 万人以上の命が救われました。このように強力なアプローチが急速に拡大して
いますが、しっかりとしたサービス提供が維持されています。
国際開発協会(IDA)
:インドでの取り組み
保険
白内障が減少:IDA はインドにおける白内障対策で主要なパートナーとして、眼病の外
科的介入を全国的に改善するのを支援しています。合計 1530 万件の白内障手術が実施
され、多くの人々が失明を免れました。対象地域では白内障の発生率が半分以下に減少
しています。政府以外のサービス提供者を関与させるために革新的なアプローチが導入
されています。
ハンセン病:IDA のハンセン病管理プロジェクトの期間中、ハンセン病の症状が見られ
る 200 万人以上が診察を受け、120 万人以上の感染者が治療を受けました。インドに
おけるハンセン病罹病率は1万人に1人未満に減少し、ハンセン病は国家レベルでの重
要な保健課題から外されました。
マラリア:インドでは2億人以上がマラリアの発生が多い地域に住んでおり、毎年 300
万人の症例が報告されています。IDA プログラムは、屋内残留噴霧から効果的で環境に
優しい介入策の幅広い組合せへと重点を移行させるのを支援しています。このプログラ
ムでは、早期発見と迅速な治療、殺虫剤処理した蚊帳の使用、捕食性の魚の放流による
蚊の繁殖抑制なども実施しています。現在、IDA は薬剤耐性菌に対してより効果の大き
な新治療をインド政府が導入するのを支援しています。
州の保健システムの強化:IDA は、政府病院や、地区レベル、行政区画レベル、コミュ
ニティレベルの医療センターの建物、設備、訓練に資金拠出することによってヘルスケ
アの改善を支援しています。これらの施設は貧困層に本格的なヘルスケアを安価で提供
しており、農村部で公的機関として緊急産科医療の主要な提供者となっています。現在、
IDA はインドで最も貧しいいくつかの州と協力し、国家農村保健計画といった新たな国
家的活動と共に、保健提供システムや一次医療サービスの強化を図っています。
農村部上下水道
成果
安全で持続可能な給水へのアクセス:
カ ル ナ タ カ 州:2006 年 に 全 世
帯の 71%――プロジェクト前の
16%から上昇。
ケ ラ ラ 州:2006 年 に 全 世 帯 の
84%――プロジェクト前の 56%
から上昇。
学校の衛生設備:カルナタカ州:
子供用に設計されたトイレ 1300
個を農村部の学校に設置。
安全な衛生設備:ケララ州:家庭
用井戸の汚濁を回避するため 2 万
3000 以上の伝統的な深掘り式トイ
上下水道プログラム――写真:Sojid Darakhan(南アジア地区)
IDA はインドの村々に上下水道を提供しています。
レを安全で衛生的なトイレに転換。
給水の所要時間:対象となった村
ではほとんどかからなくなった。
インドの最も貧しい農村地域に住む 1800 万人以上の弱い立場の
水媒介性疾患の発生率:対象となっ
人々に飲み水や下水サービスへの高度で持続的なアクセスを提
た村では衛生状態が劇的に向上し、
供するために、7億ドル以上の IDA 資金が役立てられています。
IDA はインドで世界最大規模の農村部上下水道改革プログラム
を支援:1991 年以来、IDA は、インド政府によるインド全土で
水媒介性の疾患が大幅に減少。
出典:各州の IDA プロジェクト管理部門。
データはいずれもプロジェクト地域に関す
るもの。
の農村部上下水道(RWSS)改革プログラムの試験的実施とそれ
に次ぐ本格実施を支援しています。インドの RWSS プログラム
は世界有数の規模を誇っています。
上下水道システムの設計や実施における受益者の積極的な参加を促進:IDA による試験的実施が成
功したことを受け、政府の改革プログラムでも RWSS プロジェクトの設計および実施への受益者
の積極的な参加が促進されています。サービスの提供を地方政府機関に分散化し、制度改革ならび
に政府やコミュニティのキャパシティ・ビルディングを実施し、非政府組織や代替サービス提供者
を関与させ、コスト回収を促進しました。
国際開発協会(IDA)
:インドでの取り組み
農村部上下水道
ケララ州とカルナタカ州でプロジェクト対象となったほとんどの村ではシステムが機能
し、会計が記録され、料金が定期的に支払われている:IDA の RWSS プロジェクトはカ
ルナタカ州北部の 11 地区で実施されているほか、ケララ州で 4 地区から拡大されて同
州の全地区が対象となっています。マハラシュトラ州でも 33 地区のうち 26 地区で実
施されており、ウッタルカンド州とパンジャブ州でも最近開始されました。ケララ州の
プロジェクト地域では家庭用水道の接続料として各世帯が月額 40 ルピーを支払い、カ
ルナタカ州のプロジェクト地域では月額 25 ~ 30 ルピーを支払っています。独立した
評価によると、ケララ州のプロジェクトの 90%、カルナタカ州のプロジェクトの 80%
が持続可能であり、システムが機能しており、会計が記録され、料金が定期的に支払わ
れています。
波及効果として女性へのエンパワーメントとコミュニティの積極的な参加が進む:これ
らのプロジェクトは、目に見える物理的な効果に加え、女性へのエンパワーメントやコ
ミュニティの積極的な参加が促進され、それ以外の共通目標の追求においてもコミュニ
ティがまとまり、地方政府に対する発言力が高まっています。
州政府はこうしたプロジェ
クトをそれぞれの州で拡大していくことを望んでいます。
Swajal
1990 年代、IDA はウッタルプラデシュ州およびウッタルカンド州の州政府
のためにパイロット・プロジェクト「Swajal」を支援しました。このプロジェ
クトはインド政府の農村部上下水道(RWSS)プログラムのモデルとなりま
した。Swajal プロジェクトは、過去の慣習を打ち破って、コミュニティへの
給水システムの計画、建設、運営に当該コミュニティを参加させました。そ
の後、この参加型モデルは全国的なプログラムへと規模が拡大されました。
ウッタランチャル州では、Swajal の対象は 859 村に上り、需要主導の RWSS
アプローチの成功が実証されました。
農村開発
成果
カルナタカ流域開発プロジェクト
作物の多様化:プロジェクト地域
では4~9種類の作物を栽培――
かつての2~5種類から増加。
平均年間家計所得:プロジェクト
地域で 46 ~ 92%増加。
収穫量:プロジェクト地域で平均
約 24%増加。
出典:Antrix Corporation、インド宇宙研
究機構
IDA プロジェクトはインドの農村地域を活性化しています。
農業生産性が向上:IDA の革新的な農業開発プロジェクトにより、ウッタルプラデシュ州やアッサ
ム州などさまざまの州で農業生産性が向上しています。
流通改革により農業従事者の所得が増大:生産性向上と共によりよい流通の重要性を強調するこ
とにより、IDA プロジェクトは、インド政府による農業生産・流通法の自由化を通じた重要な流
通改革の促進を支援しています。こうしたプロジェクトの成功は、全国規模への拡大につながっ
ています。
技術革新により土壌条件が改善:モデル・プロジェクトであるウッタルプラデシュ州の塩質地プロ
ジェクトは、不毛の土地を緑化する技術革新の先駆けとなっています。他の州でも同様のプロジェ
クトの需要が高まりつつあります。
マイクロファイナンスにより農村部の生計が多様化:アンドラプラデシュ州での2件の貧困削減プ
ロジェクトにより、農村部の貧しい人々は生計を多様化させ、所得を増大させることができるよう
になりました。農村部に住む 800 万人近くの貧しい女性が自助グループに加わっています。グルー
プのメンバーが相互に保証人となった結果、農村部の貧困層に対する銀行融資額はプロジェクト前
の 20 倍になっています。2000 年以降の商業銀行からの融資累積額は 11 億ドルに達しています。
その結果、土地、家畜、機械などが広く所有されるようになり、平均所得は6年間で 275 ドルか
ら7倍の 2000 ドルまで増加しました。
市場とのつながりや現地での付加価値の向上により農産物の価格が上昇:農村部における IDA プ
ログラムは、貧しい生産者が現地での付加価値や市場とのつながり強化によって所得を増大させる
のにも役立っています。
国際開発協会(IDA)
:インドでの取り組み
農村開発
カルナタカ流域開発プロジェクト
この IDA プロジェクトは、カルナタカ州内で干ばつの起こりやすい7地区にある荒廃した流域
地での農業生産性を高めることにより、農村部に住む人々の生計の向上を支援しています。こ
れらの地域の人口は約 100 万人に上ります。
水を利用できる期間が伸び、農業所得が増大:27 万ヘクタールに及ぶ土壌・治水工事が地元の
農業従事者に恩恵をもたらしています。戦略的に配置された堤防により井戸の涵養が行われ、
地下水面が上昇しています。その結果、年間で4~6ヵ月は水を利用できるようになりました。
これにより多様な作物、とりわけ換金作物の栽培ができるようになり、多くの地域で二毛作が
可能になりました。平均収穫量も約 24%増加しました。家畜に関する支援は、牛乳生産高の約
15 ~ 20%の増加につながりました。プロジェクト地域の平均年間家計所得は 46 ~ 92%増加
しました。公共用地での植生も拡大しています。所得が増加した結果、仕事を見つけるために
コミュニティを出て行く若者が減少し、そうした地域からの人口移動が約 70%減少しました。
天然資源、特に水の計画・開発にコミュニティが積極的に関与:7000 の村落コミュニティに
おける流域管理に約 4300 の農民グループが参加しています。プロジェクト支援を受けて、自
助グループ(SHG)の活動が活発になっています。新たに誕生した約 6600 の SHG で合計 500
万ドル近くの貯蓄が動員され、中小企業の設立に役立っています。こうしたグループのメンバー
の大半は女性です。現在、こうした SHG の 60%以上が商業金融機関とつながっており、その
借入能力は 750 万ドルで、より大規模な企業の開業資金のための融資を獲得しています。こう
したコミュニティでは貸金業者がもはや強い影響力を持たなくなっています。
遠隔探査と地理情報システム(GIS)が改善の監視に有益:インド宇宙研究機構(ISRO)の独立チー
ムは、従来型の現地調査に加え、最先端の遠隔探査システムおよび地理情報システムを利用し
て進捗状況を継続的に監視・評価しています。このプロジェクトは、州政府の総合衛生キャン
ペーンと連動してすべての対象コミュニティに新たなトイレを建設し、ヤシャスウィニー計画
と共に安価な健康保険を 4000 人に提供しています。
IDA はデカン高原の農村地域で、一般に「タンク」と呼ば
れている従来の水域の復活を支援しています。
IDA プロジェクトは、カルナタカ州、タミルナドゥ州、
アンドラプラデシュ州で、大昔からデカン高原におけ
る農業および飲料水の主要な水源となってきた従来の
村落タンク・システムの復活と再建を支援しています。
オリッサ州
成果
貧困率:2004-05 年に 27.5%――
1993-94 年の 36%から減少。
出典:計画委員会
乳児死亡率:2005 年に出生 1000
件 当 た り 75 人 ――1995 年 の 同
103 人から減少。
出典: 2006-07 年および 1996-97 年のイ
ンド経済調査
農村地域の 12 ~ 23 ヵ月の乳幼児
の予防接種率:2005-06 年に 52%
――1998-99 年の 42%から上昇。
出典:世界銀行報告書
IDA 開発政策プロジェクトのプログラムがオリッサ州の急成長と貧困削減を支援しています。
オリッサ州では州の財政および公共セクターのガバナンスの改善に IDA 支援の重点が置かれてい
ます。また、州内の物的インフラや人的資本の構築のための資金も提供しています。
IDA がオリッサ州に対する取り組みを始める前の 1990 年代半ば、オリッサ州はインドの主要州の
中で最も貧しく、財政面が最も逼迫した州でした。債務返済、給与、年金が州のすべての歳入を
吸い上げていたのです。既存投下資本の生産性が低く、新規投資も不足しており、オリッサ州の
GSDP(州内総生産)成長率は年間 2.3%でした。農村地域では貧困率が 50%に達し、貧困にあえ
ぐ南部地域では 70%近くまで上昇しました。
財政の好転、急成長、貧困削減:現在、オリッサ州は財政が好転し、インドのすべての州の中で最
も堅調です。オリッサ州の財政赤字は 1999-2000 年の 10%から 2006-07 年には1%未満まで減
少しています。また、広範な政策改革プログラムに着手しており、インフラ・プロジェクトの予算
も3倍になっています。その結果、過去3年間にわたりオリッサ州の GSDP 成長率は 10%と、イ
ンド全体の平均を上回っています。1人当たり所得が 250 ドルから 350 ドルに増加し、農村部に
住む 200 万人が貧困から抜け出しました。
人間開発:人間開発でも、乳児死亡率(IMR)、子供の栄養失調の発生数、農村地域における予防
接種率などの分野で大幅な改善が見られます。教育へのアクセスも拡大しています。現在は6歳か
ら 14 歳の子供の 80%以上が学校に通っています。成人の識字率も約 14 ポイント上昇しました。
貧困層を取り残さない形で成長を実現するために、IDA は参加型管理の強化を目指した改革を支え
る社会的な運動を促進しています。これまでに約 28 万の女性団体、1 万 2000 の農業団体、9000
の森林保護委員会が設立されています。
国際開発協会(IDA)
:インドでの取り組み
アンドラプラデシュ州
成果
貧 困 率:2004-05 年 に 8.5 % ――
1999-2000 年の 15.8%から減少。
出典:計画委員会
乳児死亡率:2004 年に出生 1000
件 当 た り 59 人 ――1997 年 の 63
人から減少。
出典: 2006-07 年のインド経済調査
農 業 融 資 の 実 行 額:2004-05 年
に 1362 億 1000 万 ル ピ ー ――
1995-96 年の 60 億 3000 万ルピー
から増加。
出典:州経済調査
IDA はアンドラプラデーシュ州の目覚ましい好転を支援しています。
IDA プロジェクトは、インドで5番目に大きいアンドラプラデシュ州の開発目標に向けた大幅な歩
みを支援しています。3件の IDA 開発政策プロジェクト(DPL)が、アンドラプラデシュ州が目覚
ましく好転するのを支援しました。改革が最初に開始された 1995 年当時、アンドラプラデシュ州
は財政危機の真只中にあり、ガバナンスは脆弱で、1人当たり所得は 385 ドルと少なく、貧困率
は 22%と高く、初等教育を受けていない子供の比率が 40%と高い水準にありました。
その後 10 年にわたる改革を経て、2006 年には、アンドラプラデシュ州の経済成長率は年間 7.5%
まで上昇しました。1人当たり所得は 700 ドル近くまで上昇し、貧困率は 15%未満まで低下しま
した。初等教育就学率は約 96%になりました。経済成長の基礎としては、情報技術、業務プロセ
スのアウトソーシング、新たな製造業、急速な農業多角化などが新たに開発の原動力となっている
ことが挙げられます。
今や、
アンドラプラデシュ州の電力セクターはインドで最もよく管理されたものの1つに数えられ、
州の信用格付けは第3位で、投資環境も最も好ましい州の1つとみなされています。
農村地域における生計:アンドラプラデシュ州では土地を持たない農業労働者が耕作者に占める割
合が国内平均の 2 倍に上るという厳しい環境の中、IDA プロジェクトが貧困削減に対する新たなア
プローチを導入してきました。州全体にわたり、自助グループを通じて提供されたマイクロファイ
ナンスにより農村部に住む数百万人もの貧しい女性のエンパワーメントが実現し、そうした女性の
所得が増大すると同時に、家庭やコミュニティにおける女性の地位が高まりました。2006 年には、
貧困家計の累積貯蓄額が2億 9200 万ドルに達しました。現在、農村部の貧困層に対する銀行融資
はかつての 20 倍に達しています。こうしたプロジェクトの大成功を受けて、
マディヤプラデシュ州、
ラジャスタン州、タミルナドゥ州、ビハール州でも同様のプロジェクトが行われ、オリッサ州から
も類似のプロジェクトが求められています。
国際開発協会(IDA)
:インドでの取り組み
各州に対する IDA の支援
IDA は、成長の促進、ガバナンスの向上、貧困の削減を目指した政策や制度を改善するため、さま
ざまな州政府による幅広い活動を支援してきました。こうした州レベルの改革は、経済の規制緩和
を始めているインドにおいて特に重要になっています。たとえば、IDA はウッタルプラデシュ州、
アンドラプラデシュ州、カルナタカ州、オリッサ州で支持的役割を果たしました。8件の開発政策
融資(DPL)により、これらの州が財政を再建し、投資環境を改善し、ガバナンスを向上させ、セ
クター改革を実行し、貧困対策プログラムの監視や評価を向上させるのを支援しました。その結果、
これらの州ではいくつもの分野でパフォーマンスが向上しています。
資源管理の改善:税務政策や行政の改善、予算管理、歳出の合理化、社会セクター支出の保護、財
政管理の改善などにより、各州が財政再建を達成するための努力が支援されています。
民間投資の促進:投資環境の改善により、事業コストの削減、農業部門における流通などでの競争
の促進、土地市場の歪みの減少が実現しています。IDA は個々の州やインド全土での投資環境評価
の実施を支援しています。こうしたことが、一層の重視が必要な領域を正確に割り出すのに役立っ
ています。
主要セクターにおける改革の促進:電力セクターなどの主要セクターは、全体としての迅速な進歩
の妨げとなることがよくあります。これらの州における電力セクター改革では、送配電損失の計測
と削減、内部相互補助の削減、電気事業者の部門整理と民営化などが行われました。
貧困の測定と監視:各州による貧困対策の監視と評価に対する支援が行われています。たとえば、
進行中のプログラムとその効果、ならびにプログラムの成果を向上させるための方法などについて
入念な評価が行われています。
広範な公共セクター改革の開始:政府機能の改善が、多くの改革プログラムの中心となっています。
関心や支援が向けられている主要分野としては、行政事務改革、説明責任の改善、ガバナンス、調
達改革、財政管理改革などが挙げられます(裏面の囲み記事を参照)
。
国際開発協会(IDA)
:インドでの取り組み
各州に対する IDA の支援
ガバナンスと財政管理の改善促進
IDA による支援は、中央政府や州政府が広範なガバナンス改革を通じて公共サー
ビスの提供を改善するために役立てられています。IDA 支援を受けたプロジェ
クトや、インド政府との幅広い協力が、公的資金使用の計画、支出、会計のた
めの手順やメカニズムの改善に充てられています。プロジェクトがより幅広く
持続可能な影響をもたらすよう、財政管理システムが強化されています。重要
な新機軸として、コミュニティやプロジェクト利害関係者自身を資金利用に対
する監督や成果の監視に関与させるという取り組みが行われています。多くの
場合、透明性の向上や資源の費用効果の高い利用を促進する努力に伴って、よ
り効率的かつ効果的な調達方法が採用されています。迅速で信頼のおける財務
報告・監査システムが、プロジェクト資源の使用に対する監視を向上させ、市
民からの情報要求に応えるのに役立っています。
財政管理の向上は現場での成果向上につながっています。IDA 支援を受けてい
る新たな領域としては、偶発債務や現金管理に対する効果的な管理と監視、中
央レベルや州レベルでの政府電子調達の採用などがあります。IDA が従事した
最近の支援により、州ばかりでなく自治体や Panchayati Raj 機関(選挙による
地方自治組織)においても歳出に対する管理や監視が改善しています。財源シ
ステム、内部監査、調達システムの改善に関係したものなど、公共財政管理シ
ステム全体にわたる活動はいずれも IDA が支援してきた事例での国際的な経験
から得られた教訓に大きく依存しています。
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本冊子はインド政府との協力で作成されました。
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