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電子技術,抱合研究所

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電子技術,抱合研究所
研究グループ紹介
拶
電子技術総合研究所
高エネルギープラズマラボとクラスターラボ
1.はじめに
子は一度に多くの光子と相互作用し高いエネルギーを得
今までのこの欄では,一つずつの研究グループが紹介
るようになります.それによって,エネルギーがeVと
されていましたが,今回は二ついっしょに紹介しましょ
小さな光子でも集団的相互作用によって,従来は加速器
う.KrFレーザーラボの紹介(本学会誌74巻5号,1998
でしか実現できなかったMeVやGeVの領域での様々
年)にあるように,電子技術総合研究所(電総研)では,
な現象に,加速器に頼らず直接的にアクセスできる可能
1997年度に研究室制に代わってラボ制に移行しました.
性があります.また,非常に強力なレーザーパルスの下
このラボは「研究課題に直接結びついた明瞭な使命を持
では,すべての原子は電離してプラズマ状態になり,そ
ち,研究課題の開始に伴って組織され終了に伴って解散
れを構成する電子は相対論的効果などに起因する光との
される仕事をする単位(組織上の単位ではない)」と定
極端な非線形相互作用をして,多くの新しいプラズマ現
義されています.実際には,予算の仕分けの一番小さな
象をもたらします.私たちは,超高強度・超短パルスレー
単位とラボを一対一対応させており,五百数十人の研究
ザーを応用した小型の高エネルギーシステムの実現をめ
員に対して二百数十ものラボがあります.ここで紹介す
ざして,プラズマの相互作用の実験を行っています.主
るラボは,「逆磁場ピンチ」や「KrFレーザー」と違っ
な道具はチタンサファイアレーザーで出力は約1.3TW
て,人数の少ない泡沫ラボに分類されるのでしょうが,
でパルス幅は150fs程です.レーザーは,図1のように,
身軽に動き回れるという利点があります.
出力の割には5×1.5m2と小型なのですが,テーマの発
「高エネルギープラズマラボ」と「クラスターラボ」
足当初(1994年)は狭い部屋にしか入ることができず,室
のメンバーはほとんど同じです.前者では,超高強度・
内はカニのように移動し,実験は限られたことしかでき
超短パルスレーザーとプラズマの相互作用を中心に研究
ませんでした.その後,部屋配分の見直しがあり,この
を行い,後者では,レーザーアブレーション法によるク
4月に今までの倍の広さの部屋に移ることができました.
ラスタービーム生成過程を中心に研究を行っています.
移動を機会にレーザーの整備などをしていたので,なか
現在は別々の装置で実験を行っていますが,クラスター
なかプラズマ生成実験まで進めず,夏休み前になってや
の電離やクラスターを基にしたプラズマの面白い応用が
っと実験ができるようになったところです.
考えられるので,近い将来,超高強度・超短パルスレー
現在は,高強度レーザーパルスによるプラズマ生成と
ザーをいろいろなクラスターに照射したときの様々な現
その中でのパルス伝播に関して実験を行い,明確なプラ
象も調べたいと思っています.なお,「高エネルギープ
ズマチャンネルが観測されています.当面の課題は,そ
ラズマラボ」のメンバーは,小山和義,谷本充司と東京
の発生条件と機構を明らかにすることにあります.その
理科大との連携大学院制度で参加しているDlの間 久
後は,レーザーによる高エネルギー粒子源などの具体的
直の3人,「クラスターラボ」のメンバーは,谷本充司,
目標を掲げた研究を進めることにしています.そのため
斎藤直昭,岩崎 晃,小山和義の4人です.
には,レーザーパワーを約一桁高くする必要があります.
そのためのレーザー技術はポピュラーなものになりつつ
2.高エネルギープラズマラボ
ありますが,コンパクトなシステムにするためには,工
レーザー集光強度を1018Wcm−2位にすると,水素原
夫が必要です.ところで,今の予算は今年が最終年度で
子中に光子が100個以上という高い光子密度になり,原
あり,形式的には当ラボは今年で終了ということになり
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1054
電子技術総合研究所 高エネルギープラズマラボとクラスターラボ
研究グループ紹介
ます.次もまた同じラボ名にするかもしれませんが.
御の可能性を研究しています.今後は,プラズマを積極
的に利用し,プラズマによるエネルギー注入(安定な強
3.クラスターラボ
い結合を生じさせるのに必要なエネルギーの供給とア
正しくは「クラスター成膜材料ラボ」といいます.わ
ニーリング効果)と,電荷変換(電荷依存の構造形成過
れわれも混乱しがちですが,来年度からは,ほぼ同じメ
程)を行い,特定の範囲のクラスターを選択的に生成で
ンバーで「励起クラスターラボ」も発足する予定です.
きるような技術の開発も行い,様々な側面からクラス
クラスターは数個から数千個の原子が結合した超微粒
ター物性を調べてゆく予定です.電総研にはほかにもク
子で,原子と巨視的な固体の中問にあって,原子とも固
ラスターを研究しているグループはありますが,プラズ
体とも異なる特異な性質を持ちます.たとえば,構成原
マでのクラスターの挙動を調べているのは,私たちのグ
子の大半が表面にあるので,しばしば高い表面活性を示
ループだけです.
します.また,電子の拡がりがクラスター寸法により局
クラスターラボも,今年度になって独立した部屋を確
在化されるので,電子的特性が変化します.このような
保できました.部屋の中には,材料を蒸発させるための
特性は,クラスター構成原子数(クラスターのサイズ)
レーザーと,図2のような,クラスターの成長・励起の
によって大きく変化します.クラスターの応用にあたっ
ための容器と,分析のためのちょっと特殊な形の質量分
ては,クラスター物性のサイズや構造依存性を知らなけ
析器が入っています.現在,粒子源と分析器の調整など
ればなりません.能率良く物性を調べるためには,狙っ
を兼ねて実験を行い,生成されるクラスターサイズの励
たとおりのクラスターを大量に生成する技術が必要にな
起レーザー強度依存性を測定し,価数とサイズの関係な
ります.一方,プラズマを利用した成膜は半導体工業な
ど面白い結果が得られつつあります.
ど様々な分野で応用されつつありますが,大面積で高性
今回は,二つのラボを紹介した形になりました.最初
能の薄膜を作るためには,プラズマ中でのクラスターの
にも書きましたように,超高強度・超短パルスレーザー
発生を抑制する必要があります.
をいろいろなクラスターに照射したときの様々な現象も
私たちは,プラズマ中のクラスター成長にはクラス
調べたいと思っていますが,今の課題をこなすだけでも
ターの電荷状態が大きな影響を及ぼすと考え,クラス
人が足りません.長期・短期を問わず一緒にやってみた
ターの帯電と成長の機構とプラズマ条件がこれらの過程
い人がいれば大歓迎です. (文責 小山和義)
にどのような影響を与えるかを調べ,クラスター成長制
TW−LaserSyste搬
響
盤・一イ・
1.3
Tw
l60f客
図2 クラスター生成・分析装置
図1 テラワットレーザー装置全景
1055
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