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北海道公営住宅等安心居住推進方針 平成16年4月 北 海 道

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北海道公営住宅等安心居住推進方針 平成16年4月 北 海 道
北海道公営住宅等安心居住推進方針
− ユニバーサルデザインの視点に立った公営住宅等の整備
平成16年4月
北
海
道
−
は
じ
め
に
21世紀を迎え、少子高齢化が急速に進行しており、特に、今後高齢単身世帯や高齢者夫婦のみの世帯、
要介護者が増加することが予想され、高齢者や障がいのある方などが安心して居住できる環境づくりが急務
となっています。
このため、道では、北海道第八期住宅建設五箇年計画(平成 13∼17 年度)の基本目標のひとつである「子
どもからお年寄りまで安心して暮らせる住まいの実現」を目指し、重点施策として「安心居住プロジェクト」
を推進しており、この一環として、平成15年度、公営住宅について入居者や介護支援者などからの評価に
より設計仕様の検証を行いながら、新たに、ユニバーサルデザインの視点に立って、誰もが安心して暮らせ
る公営住宅等の整備のあり方について検討を行うことにしました。
これまで、高齢者や障がいのある方などが自由に行動し生活できることを目指し、このような方々の行動
を妨げる障壁をなくそうといった考え方である「バリアフリー」の取り組みを進めてきましたが、この考え
方をさらに前進させて、年齢や性別、障がいの有無など様々な理由によって利用者を差別しない「すべての
人のためのデザイン」である「ユニバーサルデザイン」の考え方を公営住宅等において取り入れることにし
たものです。
住宅においては、加齢によって身体状況が変化しても住み続けられる住まい、あるいは介護が必要になっ
たときにも在宅での介護が可能な住まい、子育て環境に配慮した住環境などの実現が求められており、公営
住宅等においては、特に身体状況や家族構成が異なる方々が入居されることから、子どもからお年寄りまで
安心して豊かに暮らせる住まいの実現を目指し、ユニバーサルデザインの導入が必要と考え、検討を進めて
きました。
検討にあたっては、北海道住宅対策審議会に対して、知事から「ユニバーサルデザインの視点に立った公
営住宅等の整備について」の意見を求め、審議会では建築や福祉などの専門家で構成された安心居住専門部
会を設置し、安心居住推進のあり方及び具体的な整備のあり方について審議をしていただきました。
この審議会における意見を基に、ユニバーサルデザインの視点に立った公営住宅整備の今後の方向性を示
した「公営住宅等安心居住推進方針」を策定したものです。
この方針は「安全で安心して暮らせる住宅」
、「自立した生活がおくれる住宅」
、「いきいきとすこやかに暮
らせる住宅」を基本方針とし、今後、供給する住宅はユニバーサルデザインの視点に立ち、
「あらかじめバリ
アを除いたシンプルなつくり」
、「在宅介護にも配慮した暮らしやすい部屋の広さを確保」、
「多様な住まい方
に対応できる柔軟性への配慮」といった基本性能を有する共通的な仕様とすることを基本としています。
また、社会福祉施設の活用など福祉施策等との連携に努めるとともに、公営住宅等の整備にあたっては「安
全」
「安心」「自由」「簡単」「連続」「交流」
「快適」といった7つの視点に配慮することとしています。
道では今後、この方針に基づき、道営住宅の整備を進めることとしており、さらに多くの地域で公営住宅
等の整備においてこの方針を参考としていただき、ユニバーサルデザインの視点に立った取り組みが促進さ
れることを期待するものです。
平成16年4月
北海道建設部住宅課長
福
田
聖
治
[
目
次
]
北海道公営住宅等安心居住推進方針 .........................................................1
方針の解説 ...............................................................................2
第1
方針の目的 .....................................................................3
第2
適用の考え方 ...................................................................5
第3
基本方針 .......................................................................6
第4
基本仕様 .......................................................................8
第5
福祉施策等との連携 ...........................................................10
第6
公営住宅等の設計方針 .........................................................12
参考資料 ...............................................................................14
1
具体的な整備のあり方について ...................................................15
(1)公営住宅における基本性能の具体的な考え方 .....................................16
(2)標準的な住戸プランについて ...................................................17
2
住宅施策を取り巻く社会的背景 ...................................................20
(1)本格化する少子高齢社会 .......................................................21
(2)ノーマライゼーション社会への対応 .............................................23
(3)ユニバーサルデザインの普及 ...................................................24
(4)北海道福祉のまちづくり条例の改正 .............................................25
3
公営住宅等の現状とこれまでの取り組み .............................................26
(1)公営住宅入居者の実態 .........................................................27
(2)公営住宅等のあゆみ ...........................................................28
(3)公営住宅における高齢化対策 ...................................................30
(4)道営住宅における取り組み .....................................................31
4
ユーティリティ廻りに係る検証実験結果 .............................................32
(1)北海道住宅対策審議会における審議経過 ............................................
[北海道公営住宅等安心居住推進方針]
第1 目的
この方針は、子どもからお年寄りまで安心して豊かに暮らせる住まいの実現を目指し、居住者の年齢や
性別、身体状況等の相違に係わらず、できるだけ多くの人を対象とするユニバーサルデザインの視点に立
った公営住宅等の整備の方向性を示すことにより、間近に控えた本格的な少子高齢社会に対応した居住環
境の創出を図ることを目的とする。
第2 適用の考え方
この方針は、主として公営住宅に適用する。
道では、この方針に基づき、道営住宅の整備を図るとともに、市町村営公営住宅等における活用を促進
するため、市町村への周知を図る。また、広く民間へ普及を図るため、事業者等に対し、情報提供を行う。
第3 基本方針
公営住宅等の整備にあたっては、子どもからお年寄りまでできるだけ多くの人を対象に身体状況や家族
構成等の変化などに対応できるよう、在宅介護にも配慮した暮らしやすい部屋の広さや移動の容易性とい
った基本性能を有する良好な居住環境づくりの実現を図るため、次の3つを基本方針とする。
○ 安全で安心して暮らせる住宅
○ 自立した生活がおくれる住宅
○ いきいきとすこやかに暮らせる住宅
第4
基本仕様
今後、供給する住宅は、建物及び外構をユニバーサルデザインの視点に立った共通的な仕様とすること
を基本とし、あわせて入居者自らが、身体状況等に応じ軽微な改善が図れるよう配慮すること。
基本となる住戸仕様に加え、シルバーハウジング住宅においては、緊急通報システムや団らん室などの
高齢者生活支援機能を付加し、障がい者向け住宅は、基本住戸仕様から入居者の身体特性に応じた変更を
行った住宅を供給する。
また、既設住宅についても、全面的改善事業や高齢者向け改善事業により、可能な限りこの基本仕様と
するよう努める。
第5
福祉施策等との連携
公営住宅等の整備を推進するにあたり、福祉部局等と密接に連携し、入居者に対して必要な福祉、保健・
医療サービスが提供されるよう努める。
○ 生活援助員の派遣
○ 在宅支援サービス等の活用
○ 社会福祉施設の活用
第6
公営住宅等の設計方針
公営住宅等の整備にあたっては、建物及び外構について、次に示す視点に配慮した設計を行う。
○ 安全 災害や事故など危険につながらないこと
○ 安心 防犯や緊急時の対応など安心できること
○ 自由 生活する上での自由度が高いこと
○ 簡単 わかりやすく使い勝手がよいこと
○ 連続 行動の連続性が確保されていること
○ 交流 入居者間や地域とコミュニケーションがしやすいこと
○ 快適 四季を通じて快適に暮らせること
-1-
方針の解説
-2-
第1
方針の目的
この方針は、子どもからお年寄りまで安心して豊かに暮らせる住まいの実現を目指し、居住者
の年齢や性別、身体状況等の相違に係わらず、できるだけ多くの人を対象とするユニバーサルデ
ザインの視点に立った公営住宅等の整備の方向性を示すことにより、間近に控えた本格的な少子
高齢社会に対応した居住環境の創出を図ることを目的とする。
【解説】
(1)子どもからお年寄りまで安心して豊かに暮らせる住まいの実現
道では、平成13年に北海道住宅対策審議会の答申を受け策定した北海道第八期住宅建設五箇年
計画において、多様化・高度化する道民ニーズや地域課題に的確に対応した北国の住みよい生活環
境を創出するため、『道民や地域自らの選択と自助努力の基で良質な居住を確保できる環境を整え
ること』を目標とし、「誰もが安心して暮らせる住みよい社会を形成すること」を目指して、
①
子供からお年寄りまで安心して暮らせる住まいの実現
②
多様なニーズに対応した良質な住宅ストックの形成
③
地域の活性化や市街地の再編に寄与する住まいづくり
④
自然環境との共生を重視した住まいの実現
を基本目標とし、住宅施策を推進することとしている。
(2)安心居住プロジェクトの推進
今後も急速に進展する高齢化に対応し、高齢者が安心して居住できる環境づくりを実現するため、
北海道第八期住宅建設五箇年計画(平成13∼17年度)においては、福祉部局との連携を図りな
がら、高齢者世帯のニーズに応じた住宅の提供とその方策を検討するため「安心居住プロジェクト」
を創設し、福祉部局や関係機関と連携しながら、具体施策の内容や展開方策について総合的に検討
し、実現化に努めている。
このプロジェクトは、高齢社会において必要とされる高齢者向けの良質な賃貸住宅の供給促進や、
高齢者居住に関する市場環境の整備並びに高齢者が居住する持家のバリアフリー化の推進を目的
に平成13年に制定された「高齢者の居住の安定確保に関する法律」の趣旨を踏まえ、総合的な施
策展開を図ろうとするものである。
このプロジェクトの一環として、公営住宅等について、新たにユニバーサルデザインの視点に立
って、高齢者などが身体機能の低下が生じた場合においても、住み続けることができるような配慮
した住宅の供給を促進する必要がある。
-3-
安心居住プロジェクトの枠組み
情報提供・相談
体制の整備
高齢者の安心居住や多様な居住ニーズに
対応した住情報を提供するとともに、住宅
改善に関する相談体制を整備する。
○各種情報の収集・提供体制の検討
○関係職種の連携と人材育成
○相談窓口の設置
適切な住宅の
供給促進
高齢者向け賃貸住宅の供給の促進、持家
のバリアフリー化の推進や公共賃貸住宅と
福祉施策との連携による地域コミュニティ
の形成について検討する。
○高齢者向け公営住宅の供給促進
○高齢者向け優良賃貸住宅の供給促進
○持家のバリアフリー化の推進
高齢者居住法の制度を活用し、福祉部局
等と連携した、安心して入居できる住宅
市場の整備を図る。
○高齢者の入居を拒まない賃貸住宅登録推
進
安心居住の推進
・不動産関係団体などと連携し、高齢者の入居を拒ま
ない賃貸住宅(高齢者円滑入居賃貸住宅)の登録を
推進し、高齢世帯が安心して入居できる賃貸住宅市
場を整備
○高齢者円滑入居賃貸住宅の賃貸人と連携
した在宅支援・安否確認・緊急時対応
・登録情報を福祉サービス提供団体と共有化し、賃貸
人の協力のもとで、在宅支援を広げる。
・安否確認や生活相談などについて登録住宅に対応を
広げる(LSA制度の活用)
-4-
第2
適用の考え方
この方針は、主として公営住宅に適用する。
道では、この方針に基づき、道営住宅の整備を図るとともに、市町村営公営住宅等における活
用を促進するため、市町村への周知を図る。また、広く民間へ普及を図るため、事業者等に対し、
情報提供を行う。
【解説】
道は、この方針に基づき、具体的な設計のあり方を示した「道営住宅設計指針」を策定し、ユニ
バーサルデザインの視点に立った道営住宅の整備を推進する。
市町村に対しては、ユニバーサルデザインの視点に立った公営住宅整備に関する普及手引き書の
作成配布や説明会の開催を通じて、この方針の周知徹底に努め、この方針に基づく公営住宅、改良
住宅及び特定公共賃貸住宅の整備を促進する。
民間事業者に対しては、特定優良賃貸住宅や高齢者向け優良賃貸住宅の制度の普及を行うなかで、
ホームページなどを活用しユニバーサルデザインの視点に立った住宅整備に関する情報提供を行
い、方針への理解を求める。
-5-
第3
基本方針
公営住宅等の整備にあたっては、子どもからお年寄りまでできるだけ多くの人を対象に身体状
況や家族構成等の変化などに対応できるよう、在宅介護にも配慮した暮らしやすい部屋の広さや
移動の容易性といった基本性能を有する良好な居住環境づくりの実現を図るため、次の3つを基
本方針とする。
○
安全で安心して暮らせる住宅
○
自立した生活がおくれる住宅
○
いきいきとすこやかに暮らせる住宅
【解説】
(1)安全で安心して暮らせる住宅
地震などの自然災害や火災に対する対応はもとより、家庭内事故の抑制など『安全』の確保は住
宅として必要な基本的な品質であることから、高齢者や車いすを利用する人などに対するより一層
のバリアの排除のほか、子どもや背の高い人、低い人、妊婦など多くの人にとってのバリアをあら
かじめつくらない住宅整備を行う。
また、防犯への対応、見守りが必要な高齢者への緊急時対応など『安心』して暮らせる住宅への
配慮も行う。
(2)自立した生活がおくれる住宅
在宅介護機会の増加から、加齢による身体状況の変化が生じても住み続けられるように寝室や便
所、通路幅など介護に必要な広さを確保した住宅整備を行い、あわせて日本人の体格の向上や生活
道具の増加などへの対応も見直すこととする。
また、だれでも『簡単』に使いやすい設備や住宅部品の選択、生活上のバリアがなく住戸内部か
ら団地内外部空間まで行動の『連続』性の確保など、身体状況の変化が生じても可能な限り、自立
した生活ができる住宅整備を行う。
(3)いきいきとすこやかに暮らせる住宅
住宅は、親子関係や近隣関係などコミュニティの場であり、健全な子どもの成長に不可欠な家族
運営の基礎といえる。このため、子どもの人数や成長、入居者のライフスタイルなど多様な住まい
方に対して間仕切りの変更など柔軟に対応できる『自由』度を持った住宅整備を行う。
また、家族をはじめ、入居者間や地域の人との『交流』空間の整備や、良好な室内の温熱環境の
確保、緑環境など豊かな外部空間づくりなど四季を通じて『快適』に暮らせる住宅整備を行う。
-6-
(4)基本性能
これまでも公営住宅等の整備については、居住水準の向上や地域性の創出、バリアフリー化によ
る高齢化への対応などを図ってきているところであるが、身体状況や家族構成など異なる方が入居
する公営住宅において、今回、ユニバーサルデザインの導入を図るにあたり、在宅介護や安心して
子供を産み育てられる住環境づくりの実現を図るため、次の基本性能を重視して基本方針を設定し
ている。
○あらかじめバリアを取り除いたシンプルなつくり
[具体の設計例:住戸平面の統一、開放的で動きやすい平面、段差解消や座って使える洗面台
など移動や使いやすさへの配慮]
○在宅介護にも配慮した、暮らしやすい部屋の広さを確保
[具体の設計例:主寝室のベット廻り3方介護や便所の介助スペースの確保]
○多様な住まい方に対応できる柔軟性への配慮
[具体の設計例:移動可能な間仕切り、取り外し可能な便所間仕切りの採用、手すり下地など
入居者が身体状況に応じて軽微な住宅改造が可能となるよう配慮]
-7-
第4
基本仕様
今後、供給する住宅は、建物及び外構をユニバーサルデザインの視点に立った共通的な仕様と
することを基本とし、あわせて入居者自らが、身体状況等に応じ軽微な改善が図れるよう配慮する。
基本となる住戸仕様に加え、シルバーハウジング住宅においては、緊急通報システムや団らん
室などの高齢者生活支援機能を付加し、障がい者向け住宅は、基本住戸仕様から入居者の身体特性
に応じた変更を行った住宅を供給する。
また、既設住宅についても、全面的改善事業や高齢者向け改善事業により、可能な限りこの基
本仕様とするよう努める。
【解説】
(1)新設一般住宅
供給する住宅は、「あらかじめバリアを取り除いたシンプルなつくり」「在宅介護に配慮した空間
の確保」
「多様な住まい方に対応できる柔軟性への配慮」を基本性能としたユニバーサルデザイン住
宅を道営住宅のスタンダードと位置付けて供給の促進を図る。
また、入居者の身体状況に応じて福祉用具の活用や手すり設置など福祉施策等を活用した軽微な
住宅改造などにより生活改善が図れるようあらかじめ配慮した仕様とする。
(2)シルバーハウジング住宅
平成8年度に策定した「北海道公営住宅シルバーハウジング推進方針」に基づき、道営シルバー
ハウジング住宅をモデル的に実施してきているところであるが、今後、道営シルバーハウジング住
宅の仕様としては、基本住戸仕様に緊急通報システムを追加するほか、高齢者生活相談所や集会所、
団らん室など団地内入居者のコミュニティ形成の場となる共同施設整備を行う。
(3)障がい者向け住宅
基本住戸仕様では、自立した生活をおくることが困難な方々を対象に障がい者向け住宅を供給す
る。
障がい者向け住宅の住戸仕様としては、基本住戸仕様から、浴室と一体となった水廻りの整備や、
上下可動式流し台の採用、バルコニーから避難スロープの設置といった入居者の身体特性に応じた
変更を行った住宅を供給する。
(4)既設公営住宅
全面的改善事業においては、躯体を残して間取りや設備等を大規模に改修することが可能である
ことから、既存躯体の制約の範囲内で可能な限り新設基本住宅仕様に準じた整備を行う。
また、個別改善事業においては、補助対象項目や入居者が住まいながらの工事が多いといった制
約が想定されるが、可能な限りユニバーサルデザインの考え方に配慮した住宅性能を確保するよう
努める。
(5)高齢者向け優良賃貸住宅
高齢者向け優良賃貸住宅は整備基準への適合を図るとともに、事業者に対してこの方針に基づく
ユニバーサルデザインの視点に立った住宅整備への理解を求める。
-8-
入居者
住宅種別
・乳幼児、児童
一般
住戸
・妊婦
基本仕様
ユ ニ バ ー サ ル
デザイン公営住宅
[ 基 本 性 能 ]
あらかじめ
バリアを除いた
シンプルなつくり
・成人男女
シルバー
ハウジング
住宅
・高齢者
在宅介護に
配慮した
空間の確保
・要介護高齢者
+
[高齢者生活支援機能追加]
・緊急通報システムの設置
・高齢者生活相談、団らん室、LSA
+
[身体特性への対応強化]
・水廻り仕様の変更
・避難スロープの追加 等
・視聴覚不自由者
障がい者
向け住宅
・肢体不自由者
図1−1
多様な住まい方に
対応できる柔軟性
ユニバーサルデザインの視点に立った住宅供給の考え方
-9-
第5
福祉施策等との連携
公営住宅等の整備を推進するにあたり、福祉部局等と密接に連携し、入居者に対して必要な福
祉、保健・医療サービスが提供されるよう努める。
○
生活援助員の派遣
○
在宅支援サービス等の活用
○
社会福祉施設の活用
【解説】
(1)生活援助員の派遣
道営シルバーハウジング住宅において、居住する高齢者等の生活相談、緊急時対応、安否確認、
一時的な家事援助、関係機関との連絡、入居者間のコミュニティ形成支援等を行う生活援助員(ラ
イフサポートアドバイザー)を市町村が派遣する。
シルバーハウジング住宅において、高齢者が持続的に安心した暮らしを営むためには、入居者間
のコミュニティを醸成し相互扶助の関係を築くことが重要であることから、団らん室などの活動指
導などを通じて高齢者同士や入居者間とのコミュニティ形成の促進を図ることを、生活援助員の主
要な業務に位置付ける。
生活援助員は、シルバーハウジング住宅のほか、高齢者の居住の安定確保に関する法律による高
齢者向け優良賃貸住宅および高齢者円滑入居賃貸住宅(登録住宅)等を対象に派遣が可能であるが、
「高齢者住宅等安心確保計画」の策定や生活援助員等の訪問活動に従事する者や市町村等からなる
「高齢者住宅等安心確保連絡協議会」の設置が必要であることから、市町村の住宅施策に位置付け
る際には留意する。
(2)在宅支援サービス等の活用
入居者の身体特性に応じたきめ細かい対応や、また、過度の建設投資を避けるため、福祉施策に
ある住宅改造や福祉用具の活用を図る。
また、生活に不安を抱く高齢者に対して、電話回線等を利用した緊急通報システムなどは、ほと
んどの市町村で実施していることから、シルバーハウジング住宅以外の道営住宅入居者にあっても
これらサービスの活用は可能である。
(3)社会福祉施設等の活用
要介護者の入浴サービスやいきがい・交流の場としてなど通所型福祉施設や子育て支援としての
保育所等の活用・連携を想定した住宅整備を行う。また、100戸以上の道営住宅の整備にあたっ
ては保健福祉部を通じて、市町村の要望を確認し、併設の検討を行う。
- 10 -
公営住宅等の整備
福祉施策等
介護保険制度
・通所デイサービス
ユニバーサル
デザイン
公営住宅
・ホームヘルプ、訪問介護・看護など
入居者個人
・個人の身体状況等に
応じたサービス利用
市町村独自事業
民間福祉事業
シルバーハウジング全体
シルバー
ハウジング
住宅
・緊急通報事業
・安否確認事業など
・配食サービス
・移送サービスなど
LSAの派遣
・入居者コミュニティの支援
共用空間整備
入居者個人
緊急通報システム
・日常交流による
相互扶助
団地全体・地域
社会福祉
施設等の
併設・合築
・交流機会、安心感の提供
・団地管理の支援
社会福祉施設等
・社会福祉協議会
・民間サービス事業者など
入居者個人
・在宅介護などの提供利用
・施設利用(入居施設、交流機能)
図1−2
福祉施策等との連携イメージ
- 11 -
第6
公営住宅等の設計方針
公営住宅等の整備にあたっては、建物及び外構について、次に示す視点に配慮した設計を行う。
○
安全
災害や事故など危険につながらないこと
○
安心
防犯や緊急時の対応など安心できること
○
自由
生活する上での自由度が高いこと
○
簡単
わかりやすく使い勝手がよいこと
○
連続
行動の連続性が確保されていること
○
交流
入居者間や地域とコミュニケーションがしやすいこと
○
快適
四季を通じて快適に暮らせること
【解説】
基本方針にある「安全で安心して暮らせる住宅」
「自立した生活がおくれる住宅」
「いきいきとす
こやかに暮らせる住宅」の整備に向けて、
「安全」
「安心」
「自由」
「簡単」
「連続」
「交流」
「快適」の
7つの視点に配慮した住宅整備が必要である。
7つの視点はユニバーサルデザインの7原則を基に、基本方針に掲げる住宅の品質確保のため必
要な視点として整理したものである。
「安全」「安心」は基本方針の「安全で安心して暮らせる住宅」づくりのための視点であり、ユ
ニバーサルデザインの7原則
あること
うっかり間違った操作などをしても危険につながらないデザインで
に対応する視点である。
「簡単」「連続」は基本方針の「自立した生活がおくれる住宅」づくりのための視点であり、ユ
ニバーサルデザインの7原則 誰もが公平に利用できること
となっていること
ること
必要な情報がすぐ理解できること
使い方が直感的にわかる使用方法
無理な姿勢や強い力なしに楽に使用でき
接近して使えるような寸法・空間になっていること
に対応する視点である。
「自由」
「交流」
「快適」は基本方針の「いきいきとすこやかに暮らせる住宅」づくりのための視
点であり、ユニバーサルデザインの7原則
使う上での自由度が高いこと
に対応するほか、原則
に呼応するものではないが、集合住宅におけるコミュニティ形成の重要性や積雪寒冷という本道の
地域特性においても快適な住環境に配慮すべきと考えられることから、視点に加えたものである。
なお、ユニバーサルデザインは継続的に進化が必要であることに留意し、具体の設計にあたって
は常に見直し、改善していく姿勢が重要である。
快適
交流
安全
連続
安心
簡単
自由
- 12 -
配慮すべき視点
災害や事故など危険につながらな
安
全
いこと
項目
・地震や火災など災害に対する配慮
・住戸内、屋外空間における事故防止
・室内空気質汚染に対する配慮
具体的な整備項目
住棟
住戸
屋外空間・共同施設
・家具などの転倒防止のための下地材設置
・建物の耐震性・耐火性能の確保
・人車動線の分離
・燃えにくい材料、すべりにくい材料、仕上げ
・すべりにくい材料、仕上げ
・すべりにくい床仕上げの採用
・子どもなど窓からの落下防止措置
・窓からの落下防止措置
・落雪空間の確保
・便所、浴室に手すりの設置、必要な箇所への手
・廊下、階段への手すり設置
すり設置のための下地補強
・住戸前アルコーブの確保
・電磁調理器が使える200V電源確保
・建築材料のシックハウス対策
防犯や緊急時の対応など安心でき
安
心
ること
生活する上での自由度が高いこと
自
・不審者や防犯に対する配慮
・緊急時の避難や安否確認に対する配慮
・ライフスタイルの多様性や身体機能の低下に
対応できる可変性や広さへの配慮
由
・使い方を選べるよう配慮されていること
・インターホンの設置または配管
・見通しのよい住棟配置
・共用部の明るさの確保
・防犯格子の設置、防犯性の高い鍵の採用
・共用部の明るさの確保
・緊急車両や福祉車両の住棟アプローチ確保
・浴室やトイレの緊急時の扉開放
・二方向避難経路の確保
・高齢者生活相談所、LSA執務室の設置(シル
・緊急通報システムの設置(シルバーハウジング住宅)
・エレベーター扉への防犯窓
・介護空間を考慮した寝室・便所等の広さ、プロ
・複数の階段、EVなど複数の移動手段が選べる
ポーションの確保
・取り外せる引き戸の採用
バーハウジング住宅)
・多目的に利用できるオープンスペースの確保
こと
・複数の住棟出入り口設置
・生活ニーズに対応する可変間仕切りの採用
・手すり下地の設置
・座って使える洗面台・流し台への改善対応
わかりやすく使い勝手がよいこと
簡
単
・設備や部品など無理なく使えること
行動の連続性が確保されているこ
連
続
・設備や部品など使い方や情報がわかりやすい
と
・アクセスしやすいスペースや広さの確保
・生活上のバリアがないこと
・レバーハンドル、ワイドスイッチの採用
・ひらがな併記等情報がわかりやすいサイン類
・ひらがな併記等情報がわかりやすいサイン類
・シングルレバー混合水栓の採用
・使いやすいEV操作パネル
・余裕のある駐車場寸法
・住戸内床段差の解消
・3階建て以上にEVの設置
・道路から住棟入り口まで段差の解消
・玄関段差の解消
・ゆったりした寸法の階段
・各部屋を結ぶゆとりある通路幅の確保
・車いすやの通行に配慮したゆとりある通路幅の
・無理なく使えるコンセント、スイッチ高さ
・十分な開口部高さ、高さ
・またぎ高さに低い浴槽の採用
廊下
・連続した廊下、階段手すりの設置
・低い単純段差のバルコニー出入り口
入居者間や地域とコミュニケーショ ・家族の気配を感じられる間取り
交
流
ンがしやすいこと
・居間・食堂を中心とした間取り
・周辺環境に配慮した色彩、デザイン
・入居者間や地域との交流を促す児童遊園整備
・視界の広いシンプルな平面計画
・立ち話ができるコモンスペースの確保
・集会所や共同菜園など集える場所の確保
・共用掲示板の設置
・屋外通路や児童遊園へのベンチ設置
・団地内入居者間や地域との交流が図れる場所
の確保
・団らん室など集える場所の確保(シルバーハウジン
グ住宅)
・必要に応じて子育て支援スペースの整備
・緑化など魅力ある屋外空間の創出
四季を通じて快適に暮らせること
快
適
・適切な温熱・音環境を得られること
・積雪に対しての配慮
・次世代省エネ基準に適合した断熱・気密・換気
性能
・採光、通風が得やすい間取りであること
・適切な収納空間の確保
・隣戸、上下階への防音によるプライバシー確保
・堆雪スペースの確保
・積雪や風雨にさらされない廊下、階段
・冬でも遊べる児童遊園
・必要に応じ、雁木などによる冬期歩行空間確
保
- 13 -
参考資料
- 14 -
1
具体的な整備の
あり方について
- 15 -
(1)公営住宅における基本性能の具体的な考え方
ユニバーサルデザイン住宅の基本性能
1 あらかじめバリアを除いたシンプルなつくり
○住戸平面の統一
900
1−① 主要動線の考え方 1−② 建具寸法の考え方 1−③ 玄関の段差の考え方 ・基本住戸仕様により、一般住戸、シルバーハウジ
椅子設置スペース
乳母車等収納スペース
ング住戸、障がい者向け住戸の間取り共通化
900
1,200
床見切
(レベル差なし)
85cm
上がり框
1,200以上
・居間中心で居室が居間に面するプランを採用
1,200
○開放的で動きやすいシンプルな平面
下足箱
(床見切)
<車いすが斜めからでも進入が容易>
○移動のしやすさ
<車いすと横向きの人とのすれ違い>
<二本杖使用者の歩行時の振り幅>
750程度
800程度
900程度
①主要動線は、1,200を確保
1−④ 洗面台高さの考え方 1−⑤ ユニットバスの考え方 1−⑥ 住戸内木製建具の引き手及びコンセント、
スイッチ高さの考え方
▽FL
▽FL
<椅子仕様の場合> <健常な大人> <子供>
イッチ高さ
一般コンセント・
TVアンテナ・電話
1,000
⑤段差がなく、またぎ高さの低い浴室
シャワーハンガと
スライドバー兼用手摺
700
730
④座って使える洗面台
500程度
○使いやすさ
⑥だれでも使いやすい建具引き手、コンセント、ス
インターフォン
スイッチ
450程度
③玄関の上がり框、扉下枠の段差解消
400
②住戸内の扉は有効開口850の引き戸を採用
2 在宅介護にも配慮した、暮らしやすい部屋の
広さを確保
①主寝室は3,000×3,500のプロポーションを確保
2−① 主寝室の広さの考え方 2−② WCの考え方 例1 : 単身者用ベットのまわりに最低750の三方
1,200
例2 : シングルベットを2台置き、1台のベット
ベビーベット
750
≧1,000
持込家具
3,500
3,500
ベッド
ベッド
750
3,500
750
3,500
廻りに最低750の三方介護スペースを確保
例3 : 夫婦用ダブルベットの横にベビーベット
750
介護スペースを確保
ダブルベッド
(900)
を置ける広さを確保
ベッド
3,000
3,000
3,000
<例 1>
<例 2>
≧700
3,000
≧600
例4 : 2段ベットを置き、子ども2人の勉強部屋
前面開放の場合
としても使用可能
<例 3>
<例 4>
側方入りの場合
<介助スペースの確保>
②便所は、介助スペースを確保
3 多様な住まい方に対応できる柔軟性への配慮
3−① 間取りのバリエーション例 3−② WC間仕切りを取り外した例 ①3枚引き戸と移動可能な間仕切りの採用により、
入居者の住まい方にあわせた間取りが可能
主寝室
収納
収納
LDK
<収納空間を大きく確保>
主寝室
LDK
<洋室間の通り抜けが可能>
LDK
<間仕切を撤去し洋室とLDKを一体化>
LDK
00
1,5
収納
1,000
就寝空間
寝室
寝室
1,200
寝室
②便所に取り外し可能な間仕切りを採用
<洋室の間仕切を撤去しワンルームとして使用>
- 16 -
(2)標準的なモデルプラン
[3LDK]
上り框・扉下枠の段差解消
座って使える洗面台
800程度
1,200
(寸法基準を設けない)
1,200
850
600
1,000
850
850
1,200
LDKと寝室(2)の一体利用
収納スペースに
より1.2m確保
2,850
3,500
(1,100)
7,800(参考寸法)
750
移動可能な間仕切
750
750
3,000
2,850
介護を想定したときの必要寸法
9,200(参考寸法)
二段ベッドによる二人部屋
- 17 -
3LDK
[2LDK]
上り框・扉下枠の段差解消
1,200
1,200
WC間仕切の撤去可能
1,000
850
850
850
(寸法基準を設けない)
600
750
移動可能な間仕切
1,200
0
1,000
0
1,5
750
3,500
750
7,800(参考寸法)
1,200
(900)
3,000
座って使える洗面台
7,500(参考寸法)
2LDK
- 18 -
[2DK]
上り框・扉下枠の段差解消
主要動線1.2m確保
1、200寸法(共通)
・北総研での検証で有効性が
確認できた
700
700
0
15
00
1,2
850
1,200
1,200
0
15
7,800(参考寸法)
・回転半径の小さな6輪車が
回転できる寸法
1,200
座って使える洗面台
750
750
3,500
間仕切りの移動
3,000
6,250(参考寸法)
2DK
- 19 -
2
住宅施策を
取り巻く
社会的背景
- 20 -
(1)本格化する少子高齢社会
本道における高齢者(65歳以上)の総人口に占める比率を見ると、全国を下回って推移してき
たものが、平成2年に全国とほぼ並び、平成7年には上回った。今後は、全国を上回るスピードで
高齢化が進展し、平成27年には高齢化率が約27%と4人に1人は高齢者となり(図−1)、特に
高齢単身、高齢夫婦のみの世帯増加が推定されている。
また、要支援・要介護高齢者は年々増加し、平成15年度において65歳以上人口に占める割合
は15%に達すると見込まれている。介護保険サービスの利用状況を見ると老人ホームなどの施設
サービスの利用は横ばいで推移するのに対し、訪問介護などの居宅サービスは年々増加し、平成1
9年度には65歳以上人口の約9.1%が居宅サービスを利用すると推計されている(図−2)。
これらのことから、高齢者が加齢によって身体機能が低下しても住み続けられる住宅の整備が求
められている。
35%
30.3%
29.3%
30%
26.9%
23.2%
25%
20.7%
18.0%
20%
10%
5%
5.8%
6.9%
4.2%
4.8%
6.3%
7.1%
7.9%
5.7%
S35
S40
S45
S50
8.1%
27.4%
H32
H37
19.6%
17.2%
12.1%
9.7%
26.9%
22.0%
14.9%
15%
25.2%
14.6%
12.0%
10.3%
9.1%
0%
S55
S60
H2
H7
北海道
図−1
H12
H17
H22
H27
全国
高齢者人口比率の推移と将来推計
[国勢調査及び国立社会保障人口問題研究所の推計]
18%
16%
14%
12%
10%
8%
6%
4%
2%
0%
H12( 実 績 )
H13( 実 績 )
H15
要支援・要介護者
図−2
H16
居宅サービス利用者
H17
H18
H19
施設サービス利用者
要介護者数の現状と見込み(65歳以上人口に占める割合)
[北海道高齢者保健福祉計画・介護保険事業支援計画
- 21 -
H14.3 月]
高齢者が増加する一方、出生率は年々低下し、本道おける合計特殊出生率(一人の女性が一生の
間に産む平均的な子どもの数を示す仮定値)を見ると平成12年には1.23となっており、都道
府県別では東京都の1.07に次いで低く、人口を安定的に維持していく上で必要なおよそ2.1
よりかなり低い水準となっている。
本道の出生率は、昭和30年代までは全国を上回っていたが、昭和40年代に全国を下回り現在
まで推移している(図−3)。
道の調査においても、理想とする子どもの数は「3人」という世帯が多いものの、実際に持ちた
いと思っている子どもの数は「2人」という世帯が多い。その理由として住居が狭いことをあげて
いる家庭が約16%を占めていることなどから、子どもと子育てに配慮した住宅の整備が求められ
ている。
3.0
2.72
2.5
2.37
2.17
2.00
2.0
2.14
2.13
2.13
1.93
1.91
1.82
1.75
1.64
1.5
1.76
1.61
1.54
1.43
1.42
1.31
1.36
1.23
1.0
0.5
0.0
S30
S35
S40
S45
全国
図−3
S50
S55
S60
H2
H7
北海道
出生率の推移[厚生労働省 人口動態統計]
- 22 -
H12
(2)ノーマライゼーション社会への対応
本道における身体障がい者手帳交付数は年々増加傾向にあり、平成13年度末で274,374
人となっており、平成7年度と比較すると約1.16倍となっている。
また、北海道の人口に占める割合も平成7年度の4.1%から、平成13年度末で4.8%と約
0.7ポイント増加している。
障がいの種類別に見ると、肢体不自由者が最も多く、平成13年度末現在で全体の59.8%を
占めており、次いで、内部障がい、聴覚・平衡機能障がい、視覚障がい、音声・言語・そしゃく機
能障がいの順となっている。
障がい種別の推移では、視覚障がいを除きすべて増加している状況にある。
近年、障がいのある人もない人も共に地域で暮らすノーマライゼーションの考え方が浸透してき
ており、また、地域生活支援体制として従来の措置制度から障がい者福祉サービスの新しい利用の
仕組みである支援費制度が導入され、
障がいのある人がライフステージに応じて自らの選択により、
必要なサービスを利用できるようになっている。
支援費制度など地域生活支援体制の充実とあわせ、住宅においても、より一層のバリアの解消に
努めるなど、ノーマライゼーション社会の実現に向けた取り組みの促進が求められている。
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
H7
H8
H9
H10
H11
H12
視覚障がい
聴覚・平衡機能障がい
音声・言語・そしゃく機能障がい
肢体不自由
H13
内部障がい
図−4
身体障がい者手帳交付数の推移[北海道障害者基本計画]
- 23 -
(3)ユニバーサルデザインの普及
ユニバーサルデザインは、アメリカのノースキャロライナ州にある「ユニバーサルデザイン研究
所」のロンメイス所長を中心に提唱されたデザインについての考え方で、
「すべての人のためのデザ
イン」といえる。そこには利用者を年齢、性別、人種、障がいの有無など様々な理由によって差別
しないという意味が含まれている。
多くの若い人は、自分が年を重ねるにしたがい身体機能が低下するとは考えないし、中年以上の
人も運動機能が極端に低下しない限り、自分は障がい者ではないと思って生活している。
ユニバーサルデザインの概念には「一生をとおして見ると、すべての人が障がいを持つ。そのた
め、どんな身体状況になっても、子どもからお年寄りにいたるまで区別されてはならない」という
前提がある。
ロン・メイス氏は「すべての人にとって使いやすいものをつくることが可能なのかどうかさえは
っきりしない。しかし、できるだけ多くの人にとって使いやすいものをつくることは可能である」
と言う。このことから「すべての人」を「できるだけ多くの人」あるいは、
「使いやすい」を「でき
るだけ使いやすい」といいかえて使っているのが一般的である。さらに、できるだけ多くの人に利
用しやすい、という考え方には、いすの高さが調整できる、といったような標準型を作っておいて、
それに複数の適合機能を用意し、利用する人の体型や能力など特性に合わせて対応することも含ま
れる。ユニバーサルデザインでは、その実現のために次の7原則と3つの補則を打ち出している。
[ユニバーサルデザインの7原則]
原則
① 誰もが公平に使える
こと
Equitable Use
② 使う上での自由度が
高いこと
Flexibility in Use
③ 簡単で直感的にわか
る使用方法となってい
ること
Simple and Intuitive Use
④ 必要な情報がすぐ理
解できること
Perceptible Information
⑤
うっかり間違った操
作などをしても危険に
つながらないデザイン
であること
Tolerance for Error
⑥ 無理な姿勢や強い力
なしに楽に使用できる
こと
Low Physical Effort
⑦ 接近して使えるよう
な寸法・空間になって
いること
Size and Space for
Approach and Use
説明
利用する人の能力によって使え
たり、使えなかったりしないよ
うにすること。
利用する人の様々な状況に適応
できること。
住宅におけるユニバーサルデザイン事例
・階段に手すりがついており、エレベーターも併設
・だれもが暮らしやすい部屋の広さ
・ライフスタイルに応じて変更できる間仕切り
不必要な複雑さがなく、使い方
がわかりやすいこと
・使い方が簡単でわかりやすい設備・備品
画像、音声、手触り、振動など
異なった手法によって必要な情
報が得られ、かつ、わかりやす
いものであること
うっかりエラーをしてしまった
り、思わぬ行動をしてしまって
も、重大な危険をもたらさない
こと。
・サインや案内板などの見やすい表示
・音声、点字など異なった手法により情報を伝達する
エレベーター
利用するにあたって、身体に対
する負担が最小限であること
・少ない力で水を出せるレバー式の蛇口など
・スイッチのワイド化や手すりの設置
・子どもなど窓からの落下防止手すりの設置
・汚れにくい、あるいは掃除しやすい仕上げ材
使う人の体格や姿勢、移動能力 ・流し台の下に空間があり、高さ調節もでき、立って
と関わりがなく、近づいたり、
も座っても利用しやすい洗面台
手が届いたり、利用したりでき、 ・ゆったりしたスペースが確保されている廊下やトイ
そのための十分なサイズと空間
レなど
が確保されていること
[3つの補則]
○ユニバーサルデザインは「継続的改善による進化」が必要
○標準化が必要
○ハンディキャップを解消するものであることが望ましい。
- 24 -
(4)北海道福祉のまちづくり条例の改正
北海道では、ノーマライゼーションの理念に基づき、誰もが暮らしやすい環境整備を進めるため
に、昭和61年「北海道福祉環境整備要綱」を策定し、その後、平成7年に対象施設の範囲の拡大
などの改正を行ってきた。
国においては、平成6年に「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進
に関する法律(ハートビル法)
」が制定され、地域社会における障がい者、高齢者、乳幼児を連れた
人などが社会活動に参加する上で、妨げとなる障壁を取り除く(バリアフリー)取り組みが進めら
れた。
このような各種対策が講じられる中、行政指導の実効性の確保が課題となり、福祉のまちづくり
のさらなる推進のためには、法的拘束力を有する条例とする必要性が検討されることとなり、北海
道では平成9年10月「北海道福祉のまちづくり条例」を制定し、道、市町村、事業者及び道民が
一体となった取り組みの促進を図ることとした。
しかし、条例制定から5年が経過し、この間
①高齢者、身体障がい者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通
バリアフリー法)の制定や、ハートビル法の改正により2,000㎡以上の特別特定建築物
の適合義務化や対象施設の拡大、整備項目等が見直されたこと
②社会福祉法の中に住民参加により福祉を進める地域福祉の推進に関する規定が盛り込まれ、
地域福祉計画に関する規定が平成15年4月から施行されたこと
③高齢化の進展やユニバーサルデザインの普及など、条例制定後の社会情勢が変化しているこ
と
などを踏まえ、平成15年8月に条例改正を行い、公共的施設のバリアフリー化などのハード面
に止まらず各種サービスやボランティア活動の充実などソフト面の取り組みを含め総合的に「福祉
のまちづくり」を進め、
「生活空間全体のバリアフリー化」の促進等を目指すこととし、平成15年
10月から全面施行している。
条例において公共的施設等の具体的な整備基準については、
①
ユニバーサルデザイン
②
積雪寒冷の気候特性
③
災害弱者への配慮
④
移動の連続性への配慮
といった観点から、障がい者団体などの意見要望や改正ハードビル法の整備基準との整合性を含
めて整理が行われている。
また、旧条例における整備基準は、基礎的基準と誘導的基準の2段階としていたが、改正ハート
ビル法で一定規模(2,000㎡)以上の建築物については適合義務化されたことを踏まえ、ハー
トビル法との整理の関係から、旧「誘導的基準」を包含した北海道独自の誘導的基準が新たな「整
備基準」として定められた。
- 25 -
3
公営住宅等の現状と
これまでの取り組み
- 26 -
(1)公営住宅等入居者の実態
本道の居住世帯のいる全住宅約216万2千戸のうち、公的借家に居住している世帯は約16万
7千戸であり全体の約7.8%を占めている(総務庁:平成10年住宅・土地統計調査)。
家計を主に支える者の男女別、年齢別、世帯人員別で見ると、公営借家は家計を主に支える人が
女性の割合が約33.8%と全道約20.5%に対して13.3ポイント高い。また、公営借家は
高年齢で単身女性の比率が高い、子育て世代と思われる35歳未満で3人以上世帯が多いといった
特徴が見られる。
女性
男性
75歳以上
65∼75
60∼64
55∼59
50∼54
45∼49
40∼44
35∼39
30∼34
25∼29
25歳未満
15%
10%
5%
0%
0%
5%
単身
図−5
10%
2人
15%
3人以上
男女別、年齢別、世帯人員別居住状況(全道)
[総務庁:H10住宅・土地統計調査]
女性
男性
75歳以上
65∼75
60∼64
55∼59
50∼54
45∼49
40∼44
35∼39
30∼34
25∼29
25歳未満
15%
10%
5%
0%
0%
5%
単身
図−6
10%
2人
15%
3人以上
男女別、年齢別、世帯人員別居住状況(公営借家)
[総務庁:H10住宅・土地統計調査]
- 27 -
世帯人員では公営借家は単身、二人世帯といった小規模世帯が多く、2人以下世帯で全体の約6
割を占める(図2−3)
また、65歳以上の高齢者の居住する世帯割合は全道、公営借家ともに約29.5%であるが、
その世帯属性を見ると公営借家では高齢単身者が4割を超えており、夫婦のみ世帯とあわせると約
8割が、65歳以上またはそれに近い年齢の同居者だけで暮らしている(図2−4)
。
公営借家
29.7%
全道
32.8%
26.5%
0%
30.0%
20%
1人
図−7
18.0%
40%
2人
18.8%
60%
3人
20.6%
全道
0%
80%
100%
5人以上
36.2%
34.0%
20%
単身
図−8
15.4% 9.3%
世帯人員[総務庁:H10住宅・土地統計調査]
43.5%
公営借家
4人
14.3% 5.3%
40%
夫婦のみ
20.3%
45.4%
60%
80%
100%
その他
高齢者が同居する世帯の状況[総務庁:H10住宅・土地統計調査]
- 28 -
(2)公営住宅等のあゆみ
ア
公営住宅
公営住宅は戦後の住宅難を背景に「住宅に困窮する低額所得者に対し、国及び地方公共団体が協
力して低廉な家賃の住宅を供給する」ことを目的に、昭和26年に公営住宅法が制定され、戦後の
越冬住宅を含めると道内でこれまで約23万7千戸が建設され、現在、管理している公営住宅は、
全道で約16万戸で全道の住宅数243万戸に占める公営住宅の割合は、7.8%と都道府県別では
全国一となっており、今日に至るまで、住宅に困窮する低額所得者の居住の安定と、居住水準の向
上の役割を果たしている。
昭和41年には、住宅の建設を強力に推進する目的で住宅建設計画法が制定され、以来、1期か
ら8期までの住宅建設5カ年計画を策定し、住宅施策を推進してきた。1期は「一世帯一住宅」
、2
期は「一人一室」の実現を目標に公営住宅等の建設が促進され、昭和48年には全ての都道府県に
おいて住宅数が世帯数を上回り、昭和50年代以降住宅政策は「量から質へ」と転換する。
これまでの画一的な団地供給から、地域性創出の気運が高まり、地域の気候風土や景観に配慮さ
れた団地が建設されはじめた。3期計画以降は、居室の最低面積や台所や浴室の設置などを規定し
た最低居住水準や誘導居住水準、住環境水準などが設定され、また、本格的な高齢社会を前に、平
成3年度から公営住宅の高齢者対応が標準化されるなど質の向上が図られてきた。
近年は、「地球環境への配慮」「ストック重視」「市場重視」といった課題に対して、環境共生公
営住宅の整備や既設住宅の建替・改善の促進、民間活力の導入による借上げ、買取り公営住宅など
多様な手法による住宅供給に取り組んでいるところであるが、在宅介護の時代となり、子育てがし
やすい環境整備とあわせ「本格的な少子高齢社会への対応」としてのさらなる質の向上が求められ
ている。
イ
高齢者向け優良賃貸住宅
高齢社会の進展の一方、住宅市場においては低廉な家賃で入居できる高齢者向けの良質な賃貸住
宅が不足しており、これらの需要に対し、すべてを公営住宅で供給するには財源的な問題があるこ
とから、民間活力を活用した高齢者向けの優良な賃貸住宅の供給促進を図るため、平成10年に高
齢者向け優良賃貸住宅制度が制定された。
この制度は、地方公共団体が直接供給する公営住宅制度に対し、民間活力を活用した供給促進策
であり、市場原理に委ねれば供給されがたい高齢者向けの良質な賃貸住宅の供給に対して整備に要
する費用の一部及び家賃の減額に要する費用の一部などに補助を行うことにより、民間の賃貸住宅
経営を誘導するものである。供給にあたっては、都道府県知事(政令市、中核市にあっては当該市
長)が計画認定を行い、地方公共団体が補助を行った場合に、国がその一部を補助することとなっ
ているため、道では知事が計画認定を行う場合の基準等を定めた制度要綱及び道が補助を行う場合
の補助要領等を制定している。
大量供給期
○戦後復興期
[S26 公営住宅法]
→戦後の住宅難の解消
○高度成長期
[S41 住宅建設計画法]
→1世帯1住宅の確保
→1人1室の確保
量から質への転換期
○居住水準等の設定
→最低居住水準、平均居住水準
→住環境水準
→誘導居住水準
○地域性の創出
→ふゆトピア
→北方型住宅、HOPE住宅
○長寿社会への備え
→バリアフリー対応・シルバーハウジング
- 29 -
量から質への転換期
○地球環境への配慮
→環境共生型住宅の整備
○ストック重視
→既設住宅の建替・改善促進
○市場の活用
→借上・買取など多様な住宅供給手法
本格的な少子高齢社会への対応
平成13年には、これまでの予算制度から「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づく法
律制度として、制定内容の拡充が図られた。
道内ではこれまで札幌市、旭川市を含め6市1町で280戸の供給計画が認定され、そのうち3
市1町で118戸が供給されている。
(3)公営住宅における高齢化対策等
ァ
住宅の高齢化対応
第六期住宅建設五箇年計画における「高齢化社会への対応」施策の一環として、高齢者の身体機
能の低下に対応した構造、設備等を有する住宅の建設を進めるため、平成3年度に公営住宅建設基
準が改正され、新たに建設する公営住宅は段差の解消や手すりの設置等が義務づけられた。
平成7年には国において「長寿社会対応住宅設計指針」が示されたことにより、公営住宅建設基
準が公営住宅整備基準として平成8年度に改正され、廊下や出入り口幅など高齢化規定の充実が図
られた。
平成13年には「高齢者の居住の安定確保に関する法律」が制定され、法律による基本方針に基
づき、高齢者が居住する住宅において、加齢等に伴って身体機能の低下が生じた場合にも、高齢者
がそのまま住み続けられることができるような住宅の設計に関する指針が定められ、平成13年度
からは公営住宅整備基準において、この指針による基本レベルでの整備が義務づけられた。
公営住宅においてバリアフリー化が義務づけられたことから、道内の公営住宅におけるバリアフ
リー化率は平成14年度末で約25%に達しているが、今後とも高齢者世帯の増加が見込まれるこ
とから、計画的な建替や全面的改善事業や高齢者向け改善事業により、バリアフリー化された公営
住宅ストックの促進が必要である。
イ
シルバーハウジング住宅の整備
高齢社会の到来を控え、急増する単身高齢者及び高齢者のみ世帯の在宅生活を支援する体制を整
えるため、福祉施策と住宅施策の密接な連携のもとに、高齢者の安全や利便に配慮した設備・設計
とするとともにライフサポートアドバイザーの派遣などによる適切な福祉サービスの提供などを
行うシルバーハウジングプロジェクトを推進している。
道内では、江別市道営大麻サンゴールドヴィラなど平成15年度までに29団地759戸のシル
バーハウジング住宅が管理開始されている。
シルバーハウジング住宅は、住宅マスタープラン等、当該市町村の総合的な高齢者住宅施策の下
に当該市町村の福祉施策との密接な連携の下で実施されるものであり、生活に不安を抱く高齢者の
増加が予想されることから、今後とも量の充実が必要である。
ウ
障がい者向け特定目的住宅の整備
障がい者向け公営住宅の整備は、昭和45年に制定された「心身障がい者対策基本法」の趣旨に
かんがみ、心身障がい者世帯に対する公営住宅への優先入居や建設面での配慮を加えることとして
道内各事業主体で取り組みが行われている。
道内においてこれまで、838戸の障がい者向け公営住宅が供給されており、そのほとんどが車
いす常用者向け住宅である。
- 30 -
(4)道営住宅における取り組み
道営住宅は、公営住宅整備基準、北海道環境共生公共賃貸住宅設計指針等を踏まえ、北海道営住
宅設計指針(平成12年度改定)に基づき整備を行っている。また、高齢化の進行や公営住宅法改
正に伴う単身者入居、住宅建設コスト縮減を踏まえた効率的な建設費の執行などへ対応するため、
世帯人員に応じた住戸面積を設定し、供給対象や地域の住宅需要の動向を勘案して適切な配分で型
別供給を実施している。
また、平成8年度に策定した「北海道公営住宅シルバーハウジング推進方針」に基づき、道営シ
ルバーハウジング住宅をモデル的に実施してきているところであり、平成15年度末で7団地16
1戸のシルバーハウジング住宅を管理している。
見守りが必要な高齢者は、今後も増加が予想されることから、引き続き、高齢者住宅施策に積極
的な事業効果の高いと認められる市町村と連携しながら、道営シルバーハウジング住宅の整備を行
うことで、全道的な市町村の取り組みを促していく必要がある。
障がい者向け住宅については、主に車いす常用者を対象に保健福祉部局を通じ、地域における住
宅事情や住宅需要に応じた要望を踏まえた供給を行っており、平成15年度末で13団地65戸の
障がい者向け住宅を管理している。
新設する住宅のほか、ストックの有効活用の観点から既設道営住宅について、全面的改善事業や
高齢者向け改善事業を積極的に行っており、平成15年度まで全面的改善事業は4団地176戸、
高齢者向け改善事業は2,250戸実施してきているところである。この結果、道営住宅ストック
におけるバリアフリー化率は約38.3%と全道平均と比較して高い数字となっている。
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
バリアフリー化(改善)
図−9
バリアフリー化
その他
道営住宅ストックにおけるバリアフリー化住戸
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H13
H11
H9
H7
H5
H3
H1
S62
S60
S58
S56
S54
S52
S50
S48
S46
S44
S42
S40
S38
S36
S34
S32
S30
S28
0
4
ユーティリティ
廻りに係る
検証実験結果
- 32 -
(1)検証実験の概要
ア 目的
ユニバーサルデザイン公営住宅実験は、基本性能のうち、特にトイレを中心としたユーティリティ廻
りについて、高齢者など様々な人が移動、排せつなどの生活行為を行うことが出来るがどうか、具体的
仕様の検証を行うことを目的に実施した。
イ 方法等
実験は北海道立北方建築総合研究所が実施した。ユーティリティ廻り(ユーティリティ、トイレ、浴
室)について三タイプの実寸モデルを作成し、具体的仕様の検証および各プランの評価を行った。実験
方法は、身体能力の低下した高齢者や介護の必要な車いす利用高齢者、車いす利用の障がい者などを被
験者とし、実寸モデルのトイレ等の使用実験から、使い勝手の評価や使用状況について確認した。特に
ユニバーサルデザイン公営住宅として、車いす利用者や要介護者にとってトイレの使用が可能か、また、
浴室へのアプローチが可能かについて検証した。主な検証項目を表1、また、被験者一覧を表2、標準プ
ランを図1に示す。検証実験は平成6年1月∼2月に行った。
表 1 主な検証項目
①トイレ
・ 便器前方空間
便器側方空間
600 ㎜
・ 便器側方空間
便器前方空間
1000 ㎜
②ユーティリティ可変の効果
・ トイレの間仕切り撤去するこ
とでの車いす対応、介護対応の
トイレの間仕切り
状況
を撤去
③動線上の幅員
・ 出入り口
− 850mm
・ 通路幅員
− 1,200mm
通路幅員
1200 ㎜
通路幅員
1200 ㎜
④プランによる使いやすさの違い
2DK
・ ユーティリティの出入り口の 2LDK
位置とトイレ、浴室の位置
3LDK
出入口
850 ㎜
出入口
850 ㎜
2プラン
2プラン
2プラン
・ トイレの出入り口の位置(縦入
り、横入り)
表 2 被験者一覧
分類
状態
被験者数
1高齢者・自立歩行 *1
軽度の障害、体力の低下があるが自立して生活
3
2高齢者・車いす自立 *2
車いすに乗る高齢者で排泄が自立できる状態
2
3高齢者・車いす介護 *2
車いすに乗る高齢者で排泄が要介護
2
4障害者・車いす *3
車いす利用の障害者で生活は自立
2
被験者協力
*1:ケアハウス リバーサイド
*2:特別養護老人ホーム 緑が丘あさひ園
*3:障害者問題を考える会
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① UT・WC・UB 並列プラン
1190 ㎜
洗面台
洗濯機
550 ㎜
手洗い
UB
450 ㎜
UT
有効開口幅
700 ㎜
1200 ㎜
UB
1080 ㎜
UT
1880 ㎜
WC
1216(側方入り)
浴室使用
動線
有効開口幅 850 ㎜
トイレ使用
動線
② WC・UB 前方入プラン
1240 ㎜
450 ㎜
1720
㎜
550 ㎜
WC
移乗
UB
WC
1216(前方入り)
UB
有効開口幅
680 ㎜
920 ㎜
浴室使用
動線
UT
有効開口幅
850 ㎜
トイレ使用
動線
1200 ㎜
手洗い
洗濯機
洗面台
UT
③ WC 側方入りプラン
1240 ㎜
225 ㎜
450 ㎜
600 ㎜
手洗い
洗面台
有効開口幅
850 ㎜
移乗 WC
WC
1085 ㎜
トイレ使用
動線
UT
有効開口幅
700 ㎜
1200 ㎜
出入り
UB
浴室使用
動線
UT
UB
1216(側方入り)
洗濯機
図 1 UD 設計指針に基づいた標準プラン案および実験時の動線
写真 1 検証風景
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WC
移乗
(2)検証結果
ア 具体的仕様について
①トイレ空間
車いす利用者や要介護者の利用にとって、同等のサイズで側方入りトイレの方が前方入りトイレより
も使い勝手が大幅に良い。
便器前方空間は一般的な500㎜以上ではなく新たに1000㎜以上としたが、車いすをWC内へ入れ便器の寄
りつけが側方入りプランでも可能となり、介護性能が大きく向上する。
便器側方空間は550㎜でも要介護者の利用に支障はないが、車いす側方からの介助者の回り込みやすさ
や、車いすからの移乗後の足下スペースの確保のため600㎜が有効であった。
②ユーティリティ可変の効果
プラン①および③では、トイレブース側方壁を取り外すことによるユーティリティ可変性を確保して
いるが、本実験ではプラン③について実際に壁を取り外し可変性の効果を検証した。その結果、車いす
で自走する「高齢者・車いす自立」および「障がい者・車いす」の移動動線が容易になる、介護者の動
きの自由度が増すなどの効果が確認された。
③動線上の幅員
具体的仕様として、動線上の有効幅員を1,200㎜、出入口は引き戸とし有効幅員850㎜を確保した。検
証では、出入り口幅員850㎜は介助者の通り抜けと車いすの通過に有効であること、通路幅員1,200㎜は介
護者による車いすの移動が安全、スムーズに行えることが確認された。
イ 標準プラン案について
標準プラン案として、具体的仕様を反映した①∼③の三タイプで検証実験を行ったが、検証の結果を
ふまえ、トイレへの動線が最も容易で、浴室へのアクセスにも支障のないなど、多くの被験者にとって
最も勝手の良い可変性のあるプラン③を標準プランとした。
表3 標準プラン案 検証実験結果
身体状況
高齢者自立
歩行
高齢者車い
写真 2 「高齢者・車いす自立」
被験者の実験風景
す自立
高齢者車い
す介護
車いす障害
者
出 入 り 通路幅
トイレ
口幅
①
②
拡大ト
イレ③
③
○
○
○*1
○*1
○*1
○
○
○
△*3
▲*2
○
○
○
○
○
△*2
△*3
○
○
○
▲ *4
(○)
▲*2,4
▲ *4
(○)
○:使用可能、△:多少問題があるが使用可能、▲使用に問題多い
*1:便器への座り込みに不安がある場合がある。広さの問題はない。
*2:開き戸の開閉が難しい。
*3:便器へのアプローチが普段と左右反対の場合使えない。
写真 3 「高齢者・車いす介護」
被験者の実験風景
*4:便器に対し側後方アプローチがとれないと使用困難。
- 35 -
○
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