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食器洗浄の現場検査法の検証

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食器洗浄の現場検査法の検証
学校給食部会
食器洗浄の現場検査法の検証
∼脂肪性残留物検査法に用いる試薬を中心に∼
愛知県学校薬剤師会理事
木全
勝彦
1.はじめに
食器類の洗浄が確実に行われているかを現場で簡単に肉眼的に検査をする方法と
し て 、で ん ぷ ん 性 残 留 物 と 脂 肪 性 残 留 物 の 検 査 が あ る 。で ん ぷ ん 性 残 留 物 の 検 査 法
では試薬でヨウ素又は希ヨードチンキに精製水を加えて3∼5 倍に薄めたものを使
用することでヨウ素−でんぷん反応を利用した方法が一般的に行われています。
し か し 、脂 肪 性 残 留 物 の 検 査 法 で は 試 薬 に 用 い る 色 素 が 脂 溶 性 の も の で あ れ ば よ
いことから以前よりさまざまな色素が用いられてきましたが、近年、発がん性や臓
器障害性等があるとの理由から食品添加物より削除されるなどで使用できる色素
が限られてきたこと、また現在、学校給食会等で一般的に採用されているクルクミ
ン を 用 い る 方 法 で は 紫 外 線 照 射 が 必 要 で あ る こ と か ら 、他 に 利 用 で き る 試 薬( 色 素 )
に つ い て の 問 い 合 わ せ が H・ P の Q & A コ ー ナ ー な ど に も 寄 せ ら れ て い ま す 。 こ う
したことから、食器類の脂肪性残留物の検査法についてクルクミン、パプリカ等で
の方法を実際に比較検討することで現場検査の検証を行うことにしました。
2.脂肪性残留物の検査法について
食 器 に 残 留 付 着 し て い る 脂 肪 を 、油 分 に 溶 け 込 む 性 質 の あ る 色 素 に よ っ て 染 色 し 、
肉眼で脂肪の残留を判別するものです。日本学校薬剤師会発行の「学校給食の食品
衛 生( 1995 新 訂 版
別 冊 )」( ※ 以 後「 別 冊 」と 呼 ぶ )に よ れ ば 、色 素 と し て は 、バ
ターイエロー、オイルイエロー、オイルレッド、パプリカ、クルクミンを使用する
方法があるが、バターイエローは明らかな発癌性が立証されており、またオイルイ
エ ロ ー OB( 食 用 黄 色 3 号 ) は 弱 い 発 癌 性 等 に よ り 、 オ イ ル イ エ ロ ー AB( 食 用 黄 色
2 号 )、 オ イ ル レ ッ ド XO( 食 用 赤 色 5 号 ) は 種 々 の 臓 器 障 害 性 に よ っ て 昭 和 41 年
に食品添加物から削除された経緯があるので、残留検査の後水洗して十分に色素を
洗い落とさなければならない。また、合成樹脂製食器はバターイエロー等で食器自
体 が 着 色 す る の で 、ク ル ク ミ ン を 用 い る の が よ い 。と し て 、ク ル ク ミ ン 、パ プ リ カ 、
バターイエローの3方法の検査方法の記述があります。
3.検査方法の検証
(1)クルクミン法
試
薬 : ① ク ル ク ミ ン 試 薬 ( 関 東 化 学 : Cat.No. 07531-60 )
②ターメリック(食品:S&B)
調
整:クルクミンアルコール溶液
① クルクミン試薬を使用
ク ル ク ミ ン 0.1g を 95% ( 又 は 無 水 ) エ タ ノ ー ル 100ml に 溶 か す 。
② スパイスとして市販されているターメリック(ウコン)を使用
タ ー メ リ ッ ク 0.5∼ 1 g を 95% ( 又 は 無 水 ) エ タ ノ ー ル 100ml に 溶 か す 。
不純物を含み沈殿を生ずるが検査において特に問題はない。
使 用 機 器 : Handy UV Lamp ( SLUV-6)
検 査 手 順 : 検 査 し よ う と す る 食 器 の 表 面 に ク ル ク ミ ン ア ル コ ー ル 溶 液 を 約 5 ml 加 え 、 食
器を軽く揺り動かして表面全体に色素溶液がゆきわたる様にした後、色素溶液
が残らなくなるまで軽く水洗し、着色部分があるかどうかを観察すると共に、
検 査 部 分 に 紫 外 線 ( 365nm) を 照 射 し て 蛍 光 を 観 察 す る 。 残 留 脂 肪 が あ る と き
は黄緑色∼緑色の蛍光が認められる。
判
定:新しい食器では色素溶液は水洗でほとんど洗い流され、残留脂肪があれば黄色
に染色されると共に、UV照射で蛍光を発することが確認できる。しかし、食
器が古くなるほど(キズ等で)軽い水洗ぐらいでは色素が落ちにくく全体に薄
い黄色を帯びるようになり、UV照射にも全体に薄く反応することがあるので
判定には注意が必要となる。2段階で確認できる利点があります。なお、検査
に慣れてくると紫外線を照射しなくても判定できると言われていますが水洗で
色素がきれいに落ちないようになると判定が難しくなる検査法といえます。
(2)パプリカ法
試
薬 : ① パ プ リ カ 色 素 ( 関 東 化 学 : Cat.No. 33162- 33 )
②パプリカ(食品:S&B)
調
整:パプリカアルコール溶液
「別冊」ではメタノールを用いているが、医薬用外劇物であるメタノール使用
の是非が問題視される点も考慮し、今回はエタノールを用いて調整を行った。
① パプリカ色素
試 薬 で 市 販 さ れ る パ プ リ カ 色 素 は 加 工 に よ り エ タ ノ ー ル 、メ タ ノ ー ル に は 溶 け
ず 一 時 的 に 分 散 す る が 溶 解 せ ず 使 用 で き な い 。( ア セ ト ン に は 溶 解 )
純粋な
カプサンチンが手に入れば利用可能だが、市販では手に入らないと思われる。
② パプリカ
食 品 と し て 市 販 さ れ て い る パ プ リ カ 0.5∼ 1 g に 95%( 無 水 )エ タ ノ ー ル を 加
え て 色 素 を 溶 出 さ せ る 。使 用 す る 量 は 多 少 多 い が 低 価 格 な の で 問 題 な い と 思 わ
れる。また、不純物が多く沈殿を起こすが上澄みを使用することで問題ない。
検 査 手 順 : 検 査 し よ う と す る 食 器 に パ プ リ カ ア ル コ ー ル 溶 液 を 約 5 ml 加 え 、 食 器 を 軽 く 揺
り動かして表面全体に色素溶液がゆきわたる様にした後、色素溶液が残らなく
なるまで軽く水洗し、検査部分の着色を観察する。残留脂肪があるときはその
箇所がオレンジ色に着色する。
判
定:クルクミンほど色素に粘着性といったものがなく感度も多少落ちるが検査可能
と 考 え る 。水 洗 で 色 素 溶 液 は よ く 落 ち 残 留 脂 肪 が あ れ ば オ レ ン ジ 色 に 着 色 す る 。
(3)バターイエロー法
試
(現在使用されていないと思われる)
薬 : メ チ ル イ エ ロ ー ( 関 東 化 学 : ジメチルアミノアゾベンゼン、 CAS 番 号 60-11-7 )
※ 特定化学物質第2類、発ガン性評価で2B(発癌性の可能性のある物質)
に 指 定 さ れ て お り 、現 場 で の 使 用 は さ け る べ き で あ る 。試 験 室 等 で 使 用 し 、
食器等を検査後廃棄するというならば検査可。但し、取り扱いには十分注
意する必要がある。また、環境中への排出に注意を要する。
調
整:バターイエローアルコール溶液
メ チ ル イ エ ロ ー 0.1g を 95% ( 無 水 ) エ タ ノ ー ル 100ml に 溶 か す 。
検 査 手 順 : 検 査 し よ う と す る 食 器 に バ タ ー イ エ ロ ー ア ル コ ー ル 溶 液 を 約 5 ml 加 え 、 食 器
を軽く揺り動かして表面全体に色素溶液がゆきわたる様にした後、色素溶液が
残らなくなるまで軽く水洗し、検査部分の着色を観察する。残留脂肪があると
き は そ の 箇 所 が 黄 色 に 着 色 す る 。合 成 樹 脂 製 以 外 の 食 器 の 検 査 に 用 い る と よ い 。
判
定:残留脂肪があるときはその部位が黄色に染色される。食器が古くなるほど(キ
ズ等で)軽い水洗ぐらいでは色素が落ちにくい。また、合成樹脂製の食器では
食器自体に着色し落ちなくなるので判定ができない。
( 4 ) オ イ ル ブ ラ ッ ク 2 H B ( Solbent Black)
試
薬 : オ イ ル ブ ラ ッ ク 2 H B ( ソ ル ベ ン ト ブ ラ ッ ク 5 、 CAS 番 号 11099-03-9 )
※安全データシートによれば特別な有害性はないとされているが、変異原生が
陽性との報告もあり、用途が試薬、合成樹脂・革製品の着色に限定されてい
ることから現場での使用はさけるべきである。試験室等で使用し、食器等を
検査後廃棄するというならば検査可。但し、環境中への排出に注意!
調
整:オイルブラック2HBアルコール溶液
オ イ ル ブ ラ ッ ク 2 H B 0.1g を 95% ( 無 水 ) エ タ ノ ー ル 100ml に 溶 か す 。
検査手順:検査しようとする食器の表面にオイルブラック2HBエタノール溶液を約5
ml 加 え 、 食 器 を 軽 く 揺 り 動 か し て 表 面 全 体 に 色 素 溶 液 が ゆ き わ た る よ う に し
た後、色素溶液が残らなくなるまで軽く水洗し、検査部分の着色を観察する。
判
定:残留脂肪があるときはその部位が黒色に染色される。食器が古くなるほど色素
の黒色が残り水洗程度では落ちにくいため、検査後の食器利用を難しくする。
(5)スダンⅢ、オイルレッド 等
試
(現在使用されていないと思われる)
薬 : ① ス ダ ン Ⅲ ( ソ ル ベ ン ト レ ッ ド 2 3 、 CAS 番 号 85-86-9 )
※ 変異原生陽性、臓器障害性があり現場での使用はさけるべきである。試験
室等で使用し、食器等を検査後廃棄するというならば検査可。但し、取り
扱いには十分注意する必要がある。また、環境中への排出に注意!
② オ イ ル レ ッ ド ( ソ ル ベ ン ト レ ッ ド 2 4 、 CAS 番 号 85-83-6 )
※ 変異原生陽性、動物実験で催腫瘍性を示すことから現場での使用はさける
べきである。試験室等で使用し、食器等を検査後廃棄するというならば検
査可。取り扱いには十分注意する必要があり、環境中への排出に注意!
調
整:スダンⅢ又はオイルレッドアルコール溶液
ス ダ ン Ⅲ 又 は オ イ ル レ ッ ド 0.1g を 95% ( 無 水 ) エ タ ノ ー ル 100ml に 溶 か す 。
検査手順:他の検査法と同じ
判
定:残留脂肪があるときはその部位がオレンジ∼赤色に染色される。
4.まとめ
5.考
別表を参照のこと。
察
食器を食品の一部と考えればその検査に使用する試薬等の選定には食品と同様
の 注 意 を 払 う 必 要 が あ る と い え る 。今 回 の 結 果 か ら ク ル ク ミ ン 法 が 最 適 で あ り 簡
易型としてパプリカ法が利用できると考えられる。
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