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多重債務と 自己破産 #7
#7 安易に借金を繰り返すと… ギャンブラーだったなんて、信じられない! これで俺は大当たりしたのさ。 さあ、俺の手腕を見てくれ! 勝手にすればいいんだわ! と 多重債務 自己破産 らませていくことになります。こうして借入金額が多 くなっていけば、 「信用」が低下し、高い金利で、少額 しか借りられなくなり、多数の業者から借りざるをえ ローンやクレジットを利用する際には、無理のない なくなっていきます。 返済計画を立て、借り過ぎや使い過ぎに注意するとと このようにして多数の業者からお金を借り、返済が もに、借金返済のためには絶対に利用しないことです。 困難になっている人を「多重債務者」といいます。 たじゅうさいむしゃ 借金返済のために新たな借金をするのは、返済を先 送りにするだけでなく、利息が増える分だけ借金を膨 ◆借金で借金を返済していると 26 多重債務におちいってしまったら のどちらからでもできますが、債務者が個人の場合に はほとんどが債務者が自ら破産の申し立てを行う「自 己破産」という方法がとられています。� 多重債務者のように、どのように努力しても返済で きない状況になってしまったら、何らかの形で債務を 整理する必要があります。 多重債務におちいる原因 一般的には次の方法が考えられます。 にんいせいり 多重債務におちいってしまう原因として次のような (1)任意整理 弁護士などを通じて業者と話合い、返済額や返済方 例があります。 法を決める方法。貸主と借主の当事者(代理人含む)間 ●クレジットで無計画に買い物をかさねてしまう。 で債務を整理します。 ●生活苦・低所得のために借りてしまう。 みんじ ちょうてい (2)民事(特定)調 停 ●友達や知り合いに頼まれて、安易に連帯保証人<→ 裁判所に調停(仲介)を申し立て、調停の場で調停委 p15 >となってしまう。 員を挟んで業者と話合い、返済額や返済方法を決める ●借金の金利などを計算せずに借りてしまう。 方法で、当事者の合意が必要です。なお、話合いの場に ●返済や取り立てに追われ、その場しのぎで別のロー は調停を申し立てた本人が出席することが基本です。 ンを借りて、借金で借金の返済をしてしまう。 みんじさいせい (3)民事再生手続き ●悪質なヤミ金融業者<→ p32>の被害に遭ってしまう。 将来の継続的な収入から借入金を返済する計画を 立て、その計画に債権者の多数が同意し、それを裁判 多重債務におちいってしまった人に、最初からそう 所が認めれば、残りの債務が免除される手続き。平成 なることがわかっていた人はいません。 13 年 4 月には、個人を対象とした特則(個人再生手続 はじめは「チョットだけ」と気軽な気持ちで借りて き)が設けられ、借入金が 5,000 万円以下(抵当権を設 しまい、借りる額もたいしたものではなかったものが、 定された住宅ローンなどを除く)で、将来の継続的な 「もうちょっとぐらいはいいだろう」「今月は出費が多 収入が見込めるなどの条件を満たす人は、一部債務の かったから仕方がない、後から我慢すればいいや」など 返済によって、残りの債務が免除され、生活の再建が と安易な気持ちで借り続けているうちに、いつのまに すみやかにできるようになりました。また、この特則 か返済が厳しくなっていたという例が多いようです。 施行と同時に住宅を手放さずに生活の再建を図ること 一度ラクをしてしまったり、レベルの高い生活をし (住宅ローン特則)も可能となりました。 はさん (4)破産手続き開始の申し立て #7 てしまったりすると、元に戻すのは難しいもの。多重 債務におちいる危険性は誰にでもあるんだということ 裁判所に対し、 「破産手続き開始の決定」を下すよう を自覚し、無計画にローンを利用することは絶対にや に申し立てる方法。破産の申し立ては債権者と債務者 めましょう。 ◆債務整理のための要件と注意点 27 特定調停は、平成 12 年2月に施行された法律(特 裁判所広報誌「司法の窓」平成 14 年 10 月号)。 定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法 従来の民事調停との違いは主に次のとおりです。 律)に基づいて行われるもので、民事調停の特例と ●担保などの保証がなくても、調停が終了するまで 位置付けられています。 は差し押さえや競売などの強制執行を停止するこ 借金を払えなくなりそうな人や事業者(特定債務 とが可能。 者)が、自己破産することなく借金を返済しながら ●債権者側にも債務の発生状況や支払いの明細など 経済的に立ち直るための制度です。収入などを考慮 の事実関係書類の提出を義務付け。 して返済の方法や額について債権者と話合い、実情 ●調停委員会が、官庁(たとえば税務署)など、債務 に合った返済計画を立てていきます。 者の事業を把握することができる機関あるいは、 最近の経済情勢の悪化につれて借金の返済に困る 特定調停手続きに参加していない利害関係人など 人が増えてきたことに伴い、このような問題をでき に対し、特定調停のために必要な意見を求めるこ るだけスムースに解決することを目的として新設さ とも可能。 れ、民事調停事件の8割程度を占めています(最高 り、破産者が財産をもっていれば、生活に最低限必要 自己破産の申し立てと宣告 なものを除いてすべて換金され、債権者に平等に分配 されます。また、自己破産の申し立てはすべての債務 破産の申し立てが行われると、裁判所は、債務者と を対象とすることになり、一部の債務を除外する(た 債権者の財産状況を調査し、支払不能と判断すると「破 とえば、住宅ローンは除外して住宅の所有を続ける) 産手続き開始の決定」をします。 ことはできません。マイホームなどの財産を残したま 破産手続き開始の決定を受けた債務者は破産者とな ま債務整理をする場合は、①任意整理、②民事(特定) ◆個人の自己破産申立件数 28 ※資料:最高裁判所「司法統計年報」 調停、③民事再生手続きのいずれかを選ぶ必要があり ただし、この免責の効果は保証人〈→ p15〉には及ば ます。 ないため、お金を借りた本人は免責されても、保証人 なお、破産者が財産をもっていない場合には、破産 は破産者が返済できなかった債務を支払わなければな 手続き開始の決定と同時に破産手続きを終了します りません(逆に、家族であっても保証人になっていな (同時廃止)。 ければ債務の支払義務はありません)。 また、免責許可の決定を受けると金融機関などから めんせき 立ち直りの機会を与える免責制度 お金を借りることが難しくなるほか、免責決定後の 7 年間は、改めて自己破産の申し立てをしても、原則と して再び免責許可の決定を受けることはできなくなり 破産手続き開始の決定がなされても、債務は帳消し ます。 にはなりません。免責許可の決定を受けることが必要 です。免責は、破産手続きによってもなお残ってしまっ 自己破産をすると… た債務について、裁判所がその責任を免除することに よって、破産者に立ち直りの機会を与える制度です。 債務者による破産手続きの申し立てがあれば、原則 �破産手続き開始の決定がなされると、政府が発行す として免責の申し立てもあったものとみなされ、破産 る官報に掲載されます。また、本籍地の破産者名簿に 手続きと免責手続きは一体化されています。裁判所は 記載されますが、この名簿は一般の人は見ることはで とばく 免責を認めない理由(浪費や賭博などで著しく財産を きず、免責許可の決定によって抹消されます。 減少させた場合など、破産法で規定されています)が 破産手続き開始の決定後、免責許可の決定までの間 ないかどうかを調査し、これがなければ免責許可の決 は、株式会社や有限会社の取締役や監査役にはなれま 定をします。 せんし、証券会社の外務員、生命保険の募集人などの 職業にも就くことができないなどの制限を受けます。 自己破産が日々の暮らしに与えるもっとも深刻な問 ◆自己破産・免責の手続きの流れ 題は、個人信用情報機関〈→ p30〉に支払いの滞りなど #7 の事故情報※が登録されることにより(一般に5~7 年、個人信用情報機関によって異なります)、ローンと クレジットの利用が難しくなることです。 以上のように、通常の生活は営めるものの、社会生 活において一定の制限を受けることになりますし、 なにより精神面のダメージも相当なものとなること は容易に予想されます。そんなことにならないよう、 くれぐれもローンとクレジットは計画的に利用しま しょう。 ま た、万 一、返 済 が 苦 し く なって し まった 場 合 に は、財団法人 日本クレジットカウンセリング協会 (http://www.jcca-f.or.jp/)などに相談するように しましょう。 ※事故情報 = 返済や支払いが滞った、などの情報。 誤解を誤解で 返してしまった。 29