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1. 粉末特性の基礎 静岡大学 鈴 木 久 男 粉末冶金は,金属を主成分と
1. 粉末特性の基礎 静岡大学 鈴 木 久 男 粉末冶金は,金属を主成分とした粉末を成形し加熱することで,求められる形状や特性を備え た部材を製造する技術である.セラミックスプロセッシングと類似したプロセスを経ることか ら,これらの間には共通点が多い.何れも粉体を原料とするので,粉末及び粉体の基礎特性を理 解することは非常に重要である.そこで本講座では,粒子と粉末あるいは粉体の概念を考えた後 に粉末の基礎特性について述べる. 粉末の基礎特性を評価するとき種々の測定方法があるが,近年ではナノメートルサイズの粉末 も市販されるようになってきたので,種々の特性評価にもサイズの効果を反映する必要も生じて きた. 本講では,装置を含めた種々の評価方法だけでなく,粉末を構成する物質やサイズなどの違い を踏まえて,基礎特性をどの様に考えたらよいかについても解説する.また,いわゆる粉体の基 礎特性以外に物質の由来に帰因する物性の違いについても簡単に解説する予定である. 2. 粉末成形の基礎 大阪大学 今 井 久 志 粉末冶金では,原料となる粉末に形状を付与することで,製品としての性能を発揮する.ニヤ ネットシェイプ成形や鋳造法では実現しえない複合材料の作製など様々な特徴を有するが,必要 な密度を保持する成形体を利用しなければ,以後の焼結過程で不良を生じ,良好な製品とはなら ない. 本講では,金属粉末の金型成形を中心に粉末形状がタップ密度に与える影響をはじめ,バイン ダーを利用した射出成型,塑性加工を利用した金型成形における潤滑効果などについて説明す る.また,加圧焼結や積層造形,3D プリンティング技術などにも触れ,最近の成形の動向につ いて説明する. 3. 粉末焼結の基礎 九州大学 品 川 一 成 粉末成形体の焼成では,粉末粒子同士の接触部が接合し,接合面積が拡大していくと同時に, 収縮,緻密化が進行する(焼結現象).焼結体の形状寸法,気孔率や微細組織を制御するために は,焼結現象のメカニズムならびに緻密化と組織形成との関係等を理解することが重要である. 本講では,固相焼結および液相焼結について,球状粒子モデルを用いて基本的な焼結機構を説 明する.特に,固相焼結のモデル化,速度式の導出を通し,駆動力としての表面自由エネルギー, 物質移動機構としての空孔拡散などの考え方を解説する.また,焼結中の粒成長と気孔組織との 関係についても説明する. 4. 粉末冶金用原料粉 ヘガネスジャパン㈱ 廣 瀬 徳 豊 自動車や家電製品等に多くの粉末冶金製品が使用されている.色々な原料粉が存在するが,圧 倒的に鉄粉が使用されている.そこで本講では,鉄粉の製造からその特徴およびその特徴が製品 にどのように影響するか,またその鉄粉の特性を向上させるためのどのような副資材が選択され ているかを紹介する.副資材の種類および製法も合わせて説明する. 粉末冶金用原料粉を取り扱う際に発生する問題点,特に偏析に焦点を絞り,その原因と対策を 示し,それに対しどのような偏析防止粉が開発されているかを紹介する.偏析防止粉の一種であ る合金粉や拡散接合粉の成形工程への影響,焼結過程での合金成分の挙動,そして焼結組織がど のように強度へ影響するかも説明する. 最後に今まで製造困難であった部品が,原料粉の開発や,副資材の選択で実現した事例を示し, 最新の原材料についても紹介する. 5. 焼結機械部品と含油軸受 ㈱ファインシンター 本 郷 淳 一 焼結機械部品や含油軸受は,自動車,家電をはじめ各種産業機械など幅広い分野で使用されて いる.粉末冶金法は,高い設計自由度と優れた経済性をもっており,多種多様な材料や製造工法 の選択,またそれらの組み合わせにより,高機能な材料や高精度な部品を作れるといった特徴が ある. 本講では,焼結機械部品や含油軸受の材料及び製造工法について概説する.ほかに,粉末や粉 末冶金の特徴を活かした材料や製造工法である MIM や磁性材,最近の技術動向も含めて紹介する. 6. 粉末冶金の製造設備 ㈱ダイヤメット 川 上 淳 粉末冶金の基本的な工程は原料粉末の混合,成形,焼結である.代表的な例では,複数の原料 粉末を混合機に投入・混合された粉末を成形プレスで加圧成形することで成形体が製造される. 得られた成形体を焼結炉で加熱,保持,冷却することで焼結体となる.その後,製品に要求され る機能に応じて再圧縮,機械加工,熱処理,表面処理など行う事により必要な特性が付与される. 本講では,製造に使用される設備の概要について紹介する.各工程で使用される設備は製品に 要求される特性に応じて装置の仕様を選択して購入,既に購入された設備については仕様追加, 改造工事がされる事で性能をフルに発揮する事が可能となる.その方法は多岐に渡るのが設備の 基本的な特徴とメリット,デメリット,及び最近の動向について紹介する. 7. 硬質材料 住友電気工業㈱ 津 田 圭 一 切削工具や耐摩工具および鉱山土木工具等に使用される硬質材料には,粉末冶金技術により製 造される超硬合金,サーメット,セラミックスおよびセラミックス被膜をコーティングしたコー ティング材料,さらに超高圧技術により製造されるダイヤモンド,立方晶窒化ホウ素などがある. 昨今の切削加工は従来以上の高速・高送りによる高能率加工化や加工寸法精度の高精度化が求め られている.また被削材の高強度化に伴い,難削化傾向になりつつあり,切削工具に求められる 要求性能はますます厳しいものとなってきている. 本講では,これら硬質材料の開発の歴史,製造方法や物性的な特長,使用用途について基礎か ら解説するとともに,切削工具に関しての最近の開発動向や最新技術についても併せて紹介する. 8. 磁性材料 日立金属㈱ 槙 智 仁 磁性材料はその磁気的性質によってハード(硬)磁性材料とソフト(軟)磁性材料とに大別さ れ,ハード磁性材料はモータや発電機用の永久磁石として,ソフト磁性材料はコイルやトランス などの磁心として多く用いられる.近年の地球温暖化にともなう CO2 排出量削減の動きやエネ ルギー問題を受け,自動車の低燃費化や家電,情報通信機器の低消費電力化のために磁性材料の 高性能化・低コスト化が強く求められている.磁性材料の多くは粉末冶金プロセスを利用して製 造されており,粉末冶金の知識は磁性材料開発に欠かせないものとなっている. 本講では,これら磁性材料の基本的な性質を説明するとともに,主要なハード磁性材料やソフ ト磁性材料についての特徴・用途・製法などを最近の技術動向を交えて紹介する.