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鉄バクテリア集積物による自然水域からの リン回収における木炭の可能性

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鉄バクテリア集積物による自然水域からの リン回収における木炭の可能性
研究ノート
農業農村工学会論文集
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No
.2
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,pp.5
5∼ 5
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鉄バクテリア集積物による自然水域からの
リン回収における木炭の可能性
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山根達弘**
武田育郎*
宗村広昭*
佐藤裕和*
深田耕太郎*
*島根大学生物資源科学部,干 6
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4松 江 市 西川
|津 町 1
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判 鳥 取 県 庁 , 干6
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0”85
70鳥取市東町 1丁目 2
2
0
キーワー ド 鉄バクテリア,木質担体, 自然水域, リン回収,木炭
2
. 方法
はじめに
地下水や浸透水の流入が多い水路やため池などの自然水
使用する木質担体として
これまで報告してきたスギの
域の底部では,しばしば赤褐色または黄褐色を呈する浮泥
ノコクズ(スギ担体)と,粉砕機で 5分間粉砕した木炭( V
状の柔らかな沈殿物の堆積がみられるが,これらの多くは
社製高波動炭)について, 2m mの簡でふるったものを用い
鉄バクテリアの作用によって集積した鉄バクテリア集積物
た. これらを 2gずつ,縦 7cm,横 9cmの微細孔のある不
(リン吸着能をもっ酸化鉄の集合体)である目このような水
織布の袋に入れ,鉄バクテリア集積物の堆積が常時観察で
路では,水中のリン濃度は下流へ行くにしたがい次第に低
きる,水田排水河川である島根県東部の A川に浸J
責させた
下す ることがあるが,その理由の
っとして,水中のリン
なお,欽バクテリアの中性付近での良好な生育条件は,酸
が底部の鉄バクテリア集積物に吸着していることが挙げら
化還元電位= O∼500mV 程度である( Mouc
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,1
992)ので,
れる( Takeda叩 dFukushima, 2006). しかしながら,鉄バ
担体を入れた容器が水面から露出することなく,また,底
クテリア集積物は浮遊性に富むので,降雨時なと。の増水で、
質中に埋没しないようにした.そして浸漬後 3週間と 5週
容易に流亡することとなり,したがって,上述の水質低下
間後にこれらの木質担体を回収し,炉乾燥の後,担体が収
は一時的な現象左いうことができる
方,枯渇資源でわ
集した酸化鉄をフェナントロリン法(日本分析化学会北海
が国が専ら輸入に頼っているリンは,循環に乏 しい元素で
道支部, 1994)で,リンについては,植物に利用可能な画
あり,水域から陸域への移行過程は極めて限定的である(武
分である Br
a
y2リン酸(土壌標準分析 ・
測定法委員会,198
6
)
田
, 2010).
そこで著者らは,木質材料を用いた担体を自然水域に浸
を測定した.一連の浸漬と鉄およびリンの測定は 2010年 8
月∼ 1
2月に 9回行った .
漬させて鉄バクテ リア集積物を収集し,これをリン酸肥料
また,担体として供したスギ担体と木炭の比表面積につ
またはリン吸着材としてそのまま利用できる形態で回収す
いては,試料 l
gについて 1
05
℃で 1
5時間脱ガス処理を行
ることを試みているその結果,浸漬期間が 3∼5週間で回
った後,比表面積測定装置 ASAP2400 (島津製作所)を用
収された木質担体は,水田土壌の高リン酸区に分類される
いて測定した.
肥沃度の 3倍程度の可給態リン(土壌リンのうち溶存態と
さらに,木質担体の浸漬を行った河川のリン酸態リン
なって植物に利用可能な画分)を保持し,抽出工程なしで
(
P
0
4P)の水質と担体が回収したリンの量( Bray2 リン酸)
植物体へのリンの供給源となること(武田 ・宗村, 2008;
の関係を調べるため,週 l回の頻度で、河川水を採水し, J
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Takedae
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.
, 2010),また,面源から流出するリンの負荷削
法(並木, 2008)に準拠して水質を測定した .
減にも寄与しうること(武田ら, 2011)などを報告した .
しかしながら , これまで用いてきた木質担体は針葉樹(ス
3
. 結果および考察
ギとヒノキ)のノコクズであり,中空の細長い細胞である
仮道管による大きな比表面積が期待できるものの,さ らに
F
ig.
1i
こ浸漬後の担体が収集した鉄とリンの量を示す.鉄
大きな吸着面積を提供するものとして,水質浄化材などと
の収集量の平均値は,スギ担体 8.54mg/kg,木炭 9
.
42mg/kg
して用い られることの多い木炭(たとえば,山岡 ・
凌
, 2004)
であり,リンの吸着量の平均値は,スギ担体 0.
254mg/kg,
が考えられた.
このようなことから本報告では,木炭について,これま
木炭 0
.
293mg/kgであった .鉄とリンの平均値のいずれも木
炭の方がスギ担体よりも大きくなったが,その差はわずか
でと同様の方法で自然水域において浸漬試験を行い,木質
であり,統計解析( s
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t)の結果,両者に有意差
担体としての利用可能性について考察した.
は認められなかった .
農業農村工学会論文集 2
8
9(
8
21
)
5
5
)
農業農村工学会論文集第 289号(第 82巻第 l号
56
5
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E︶酬縦長芯
\凶
︵凶 uA
)鉄収集量
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(
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。
スギ担体
木炭
4
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E︶棚網邸入 ﹁
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︵凶者凶
b)リン吸着量
(
3 木質担体と鉄ノ〈クテリア集積物
.
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0.
とは,リ ン回収量の若干 の増加につながるものの,炭化に
よる比表面積の増大に匹敵する効果はみられなかった.こ
1
.
0
の理由は, Fig.3に示すように,鉄ノくクテリア集積物は木質
。
担体(木炭では全体が黒くなるため,この写真ではスギ担
0
.
スギ担体
木炭
)
9
=
1 浸漬試験の結果(平均値と標準誤差,n
.
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,n=9)
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4hg︶酬栂邸入口
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木炭
スギ担体
一一一ー線形(木炭)
ーーー・線形(スギ担体)
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水質(mダL)
P
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P
P水質とリン吸着量
4
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2 浸漬期間中の P
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体)を包む よう にフロック状に集積することにあると考え
られた.
謝辞: 本論文の一部は,科学研究費補助金(20380179)の助成を
受けた.記して謝意を表します.
引用文献
土壌標準分析・測定法委員会 (1986) 土壌標準分析・ 測定法,樽
友社, 130・131.
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並 木 博 (2008) 要説工場排水試験方法,日本規格協会
.
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日本分析化学会北海道支部 (1994):水の分析,化学同人, 185・
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武田育郎, 宗村広昭(2008)・間伐材と鉄バクテ リアを用いた自然
),
5
水域から のリ ンの回収とその農業利用,環境技術, 37(
.
1
5
3
7
4
3
23m2/g)は木炭
比表 面積についてみると,スギ担体( l.
.
4
8
武田育郎(2010):よくわかる水環境と水質,オーム社, 82・
こ比べて極めて小さな値でしかなかった.これ
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(330m
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,Somura,H.andMori
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は,木炭では炭化過程によって微細な孔隙構造が形成され
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るのに対し,スギ担体では,仮道管のみが比表面積の増大
に寄与していることによるものであると考えられた.
p濃度の平均値と担体が回収 したリン
・
浸漬期間 中の P04
2),統計
.
g
Fi
(Bray-2 リン酸)の関係について整理すると (
p水 質
的な有意性 は認められなかったものの,河川の P04・
が高くなるにつれてリンの回収量も多くなる傾向がみられ
.
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,36,1064・
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biomass,
) :鉄バクテリアと木質バイ
1
1
20
武田育郎, 宗村広昭,佐藤裕和 (
オマスによる面源のリン負荷削減 と循環利用,用水 と廃水,
7
6
9
53(12),961-
山岡 賢 , 凌 祥 之 (2004) 木炭による畑地濯瓶用水の浄化,農
6.
1
・
0
, 1
)
1
業および園芸,79(
た.そして 2本の回帰式の傾きはほぼ同じで,木炭の回帰
式は,スギ担体の回帰式よりもわずかに上に位置していた.
なお,水質調査時に測定 した水温は, 9.4∼30.5℃の範囲で
3℃であった.
.
1
平均すると 2
これらの結果より,本方法の担体として木炭を用いるこ
56
閲読了〕
. 27.
, 2013. tI
受稿
.7.23.
3
1
20
〔
,
氾字以内
α
I,
この研究ノートに対する公開の質疑あるいは討議(
〔
, 2014年 8
は
農業農村工学会論文集企画 ・編集委員会あて)
〕
月 24日まで受付け ます.
14
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b.2
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