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鉄バクテリア集積物による自然水域からの リン回収における木炭の可能性
研究ノート 農業農村工学会論文集 ID R E J o u r n a l No .2 8 9 ,pp.5 5∼ 5 6( 2 0 14. 2) 鉄バクテリア集積物による自然水域からの リン回収における木炭の可能性 AP r o b a b i l i t yo fC h a r c o a la sWoodyC a r r i e ri nPhosphorusRecovery fromN a t u r a lWaterB o d i e sUsingB i o g e n i cI o n O x i d e s 山根達弘** 武田育郎* 宗村広昭* 佐藤裕和* 深田耕太郎* *島根大学生物資源科学部,干 6 9 0・ 8 5 0 4松 江 市 西川 |津 町 1 0 6 0 判 鳥 取 県 庁 , 干6 8 0”85 70鳥取市東町 1丁目 2 2 0 キーワー ド 鉄バクテリア,木質担体, 自然水域, リン回収,木炭 2 . 方法 はじめに 地下水や浸透水の流入が多い水路やため池などの自然水 使用する木質担体として これまで報告してきたスギの 域の底部では,しばしば赤褐色または黄褐色を呈する浮泥 ノコクズ(スギ担体)と,粉砕機で 5分間粉砕した木炭( V 状の柔らかな沈殿物の堆積がみられるが,これらの多くは 社製高波動炭)について, 2m mの簡でふるったものを用い 鉄バクテリアの作用によって集積した鉄バクテリア集積物 た. これらを 2gずつ,縦 7cm,横 9cmの微細孔のある不 (リン吸着能をもっ酸化鉄の集合体)である目このような水 織布の袋に入れ,鉄バクテリア集積物の堆積が常時観察で 路では,水中のリン濃度は下流へ行くにしたがい次第に低 きる,水田排水河川である島根県東部の A川に浸J 責させた 下す ることがあるが,その理由の っとして,水中のリン なお,欽バクテリアの中性付近での良好な生育条件は,酸 が底部の鉄バクテリア集積物に吸着していることが挙げら 化還元電位= O∼500mV 程度である( Mouc h e t ,1 992)ので, れる( Takeda叩 dFukushima, 2006). しかしながら,鉄バ 担体を入れた容器が水面から露出することなく,また,底 クテリア集積物は浮遊性に富むので,降雨時なと。の増水で、 質中に埋没しないようにした.そして浸漬後 3週間と 5週 容易に流亡することとなり,したがって,上述の水質低下 間後にこれらの木質担体を回収し,炉乾燥の後,担体が収 は一時的な現象左いうことができる 方,枯渇資源でわ 集した酸化鉄をフェナントロリン法(日本分析化学会北海 が国が専ら輸入に頼っているリンは,循環に乏 しい元素で 道支部, 1994)で,リンについては,植物に利用可能な画 あり,水域から陸域への移行過程は極めて限定的である(武 分である Br a y2リン酸(土壌標準分析 ・ 測定法委員会,198 6 ) 田 , 2010). そこで著者らは,木質材料を用いた担体を自然水域に浸 を測定した.一連の浸漬と鉄およびリンの測定は 2010年 8 月∼ 1 2月に 9回行った . 漬させて鉄バクテ リア集積物を収集し,これをリン酸肥料 また,担体として供したスギ担体と木炭の比表面積につ またはリン吸着材としてそのまま利用できる形態で回収す いては,試料 l gについて 1 05 ℃で 1 5時間脱ガス処理を行 ることを試みているその結果,浸漬期間が 3∼5週間で回 った後,比表面積測定装置 ASAP2400 (島津製作所)を用 収された木質担体は,水田土壌の高リン酸区に分類される いて測定した. 肥沃度の 3倍程度の可給態リン(土壌リンのうち溶存態と さらに,木質担体の浸漬を行った河川のリン酸態リン なって植物に利用可能な画分)を保持し,抽出工程なしで ( P 0 4P)の水質と担体が回収したリンの量( Bray2 リン酸) 植物体へのリンの供給源となること(武田 ・宗村, 2008; の関係を調べるため,週 l回の頻度で、河川水を採水し, J I S Takedae ta l . , 2010),また,面源から流出するリンの負荷削 法(並木, 2008)に準拠して水質を測定した . 減にも寄与しうること(武田ら, 2011)などを報告した . しかしながら , これまで用いてきた木質担体は針葉樹(ス 3 . 結果および考察 ギとヒノキ)のノコクズであり,中空の細長い細胞である 仮道管による大きな比表面積が期待できるものの,さ らに F ig. 1i こ浸漬後の担体が収集した鉄とリンの量を示す.鉄 大きな吸着面積を提供するものとして,水質浄化材などと の収集量の平均値は,スギ担体 8.54mg/kg,木炭 9 . 42mg/kg して用い られることの多い木炭(たとえば,山岡 ・ 凌 , 2004) であり,リンの吸着量の平均値は,スギ担体 0. 254mg/kg, が考えられた. このようなことから本報告では,木炭について,これま 木炭 0 . 293mg/kgであった .鉄とリンの平均値のいずれも木 炭の方がスギ担体よりも大きくなったが,その差はわずか でと同様の方法で自然水域において浸漬試験を行い,木質 であり,統計解析( s t u de n t’ st t e s t)の結果,両者に有意差 担体としての利用可能性について考察した. は認められなかった . 農業農村工学会論文集 2 8 9( 8 21 ) 5 5 ) 農業農村工学会論文集第 289号(第 82巻第 l号 56 5 1 E︶酬縦長芯 \凶 ︵凶 uA )鉄収集量 a ( IOμm 0 1 5 。 スギ担体 木炭 4 . 0 E︶棚網邸入 ﹁ ︺ ︵凶者凶 b)リン吸着量 ( 3 木質担体と鉄ノ〈クテリア集積物 . g i F s e d i x o n o r ci i n e g o i randb e i r r a Woodyc 3 . 0 2 0. とは,リ ン回収量の若干 の増加につながるものの,炭化に よる比表面積の増大に匹敵する効果はみられなかった.こ 1 . 0 の理由は, Fig.3に示すように,鉄ノくクテリア集積物は木質 。 担体(木炭では全体が黒くなるため,この写真ではスギ担 0 . スギ担体 木炭 ) 9 = 1 浸漬試験の結果(平均値と標準誤差,n . g i F ,n=9) r o r r de r a d n a t t(meanands s e sofimmersiont t l u s e R . 。 0 8 . 0 0 7 . 0 4hg︶酬栂邸入口 ︵凶 0 6 . 0 木炭 スギ担体 一一一ー線形(木炭) ーーー・線形(スギ担体) 0 5 . 0 0 4 . 0 0 3 . 0 0 2 . 0 0 1 . 0 .. g j d レ . \ . 0 0 0 . 0 7 o . 6 0 0 . 5 0 0 . 4 0 0 . 3 0 o . 02 O l 0. o . 0 O 0 . 0 水質(mダL) P 4 0 P P水質とリン吸着量 4 0 2 浸漬期間中の P . g i F dP e b r o s d nanda o i t a r t n e Pconc 4 0 pbetweenP i h s n o i t a l e R 体)を包む よう にフロック状に集積することにあると考え られた. 謝辞: 本論文の一部は,科学研究費補助金(20380179)の助成を 受けた.記して謝意を表します. 引用文献 土壌標準分析・測定法委員会 (1986) 土壌標準分析・ 測定法,樽 友社, 130・131. n o r emovalofi lr a c i g o l o i ob lt a n o i t n nve ):Fromco 2 9 9 1 .( Mouchet,P 釦 s k r o rW e 匂t l ofAmerican 研 a n r u o ,J e c n a r nF ei s d m釦 E釦 e 167. 58・ ,1 84 , n o i t a i c o s s A 並 木 博 (2008) 要説工場排水試験方法,日本規格協会 . 9 8 1 日本分析化学会北海道支部 (1994):水の分析,化学同人, 185・ t n a t u l l o np si e g n a h mc r e t g ):Lon 6 0 0 2 .( ,A .andFukushima ,I a d e k a T hed s r e t a dw l e i napaddyf ni o i t c n u nf o i t a c i f i r u sandp w o l f t u do a o l 578. ・ ,569 ) 3 ( 0 ,4 h c r a e s e ,~匂ter R m e t s y ns o i t a g i r r ri a l u c r i gac n i s u 武田育郎, 宗村広昭(2008)・間伐材と鉄バクテ リアを用いた自然 ), 5 水域から のリ ンの回収とその農業利用,環境技術, 37( . 1 5 3 7 4 3 23m2/g)は木炭 比表 面積についてみると,スギ担体( l. . 4 8 武田育郎(2010):よくわかる水環境と水質,オーム社, 82・ こ比べて極めて小さな値でしかなかった.これ g) 1 / 2 (330m s u r o h p s o h ):Recoveryofp 0 1 0 2 .( ,Y ,Somura,H.andMori . ,I a d e Tak は,木炭では炭化過程によって微細な孔隙構造が形成され aandwoody i r e t c a gb n i z i d i x o n o r gi n i s su e i d o rb e t lwa a r u t a fromn るのに対し,スギ担体では,仮道管のみが比表面積の増大 に寄与していることによるものであると考えられた. p濃度の平均値と担体が回収 したリン ・ 浸漬期間 中の P04 2),統計 . g Fi (Bray-2 リン酸)の関係について整理すると ( p水 質 的な有意性 は認められなかったものの,河川の P04・ が高くなるにつれてリンの回収量も多くなる傾向がみられ . 9 6 0 1 ,36,1064・ g n i r e e n i g n lE a c i g o l o c E biomass, ) :鉄バクテリアと木質バイ 1 1 20 武田育郎, 宗村広昭,佐藤裕和 ( オマスによる面源のリン負荷削減 と循環利用,用水 と廃水, 7 6 9 53(12),961- 山岡 賢 , 凌 祥 之 (2004) 木炭による畑地濯瓶用水の浄化,農 6. 1 ・ 0 , 1 ) 1 業および園芸,79( た.そして 2本の回帰式の傾きはほぼ同じで,木炭の回帰 式は,スギ担体の回帰式よりもわずかに上に位置していた. なお,水質調査時に測定 した水温は, 9.4∼30.5℃の範囲で 3℃であった. . 1 平均すると 2 これらの結果より,本方法の担体として木炭を用いるこ 56 閲読了〕 . 27. , 2013. tI 受稿 .7.23. 3 1 20 〔 , 氾字以内 α I, この研究ノートに対する公開の質疑あるいは討議( 〔 , 2014年 8 は 農業農村工学会論文集企画 ・編集委員会あて) 〕 月 24日まで受付け ます. 14 0 b.2 e lF a n r u o DREJ /