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恋愛から結婚へと主導権 を握る女性: 『ヴェニスの商人』
恋愛から結婚へと主導権 を握る女性: 『ヴェニスの商人』 名古屋大学・国際言語文化研究科 鈴木 繁夫 (教授) 内在的アプローチ:グループ分け (1)兄弟愛の連帯:ヴェニスにとって中心 名前_____________________ (2)宗教の連帯:ヴェニスにとって内部の外部 名前_____________________ (3)女性の連帯:ヴェニスにとって異邦人 名前_____________________ (1)兄弟愛の連帯:ヴェニスにとって中心 アントーニオ バッサーニオ グラシア-ノ, ロレソゾ 「もうすこしお相手をし て、きみの心を浮きたた せたいのだが、あんな立 派な友達が現れた以上、 その必要もなくなっ た。」1幕1場 (2)宗教の連帯:ヴェニスにとって内部の 外部 シャイロック チュバ 「やつさえヴェニス にいなければ、思い のままに商売ができ るのだ… …行け、 テユバル、あとで礼 拝堂で会おう」 3幕1場 (3)女性の連帯:ヴェニスにとって異邦人 ポーシャ ネリッサ + ジェシカ 内在的アプローチ:グループ分け (1)兄弟愛の連帯:ヴェニスにとって中心 アントーニオ, バッサーニオ, グラシア-ノ, ロレソゾ (2)宗教の連帯:ヴェニスにとって内部の外部 シャイロック,チュバ (3)女性の連帯:ヴェニスにとって異邦人 ポーシャ, ネリッサ, ジェシカ 内在的アプローチ:エピソード分け (1)三つ箱の婿選び: ペアの名前___________と____________ (2)人肉裁判: ペアの名前___________と____________ (3)駆け落ち: ペアの名前___________と____________ (4)指輪の揉め事 ペアの名前________と_________ ________と_________ 内在的アプローチ:エピソード分け (1)三つ箱の婿選び: バッサーニオ,ポーシャ (2)人肉裁判: アントーニオ,シャイロック (3)駆け落ち: ロレソゾ, ジェシカ (4)指輪の揉め事 バッサーニオ,ポーシャ グラシア-ノ,ネリッサ グループとエピソード 兄弟 女 宗教 エピソードの進行 接触・ 交換 グループとエピソード 「だがポーシャ、…ぼ くは親友から金を借り ていたのです。しかも、 兄弟 その金は、ぼくが友だ ちに頼んでその敵の懐 女 宗教 から借りてもらったも のなのだ。」(3幕5場) エピソードの進行 接触・ 交換 交換からみた2つの社会体タイプ • 共同体(ゲマインシャフト): – 土地・血・職などの縁による結びつき – 友人の勤め:自己犠牲があっても仲間同士援助しあう • 経済体(ゲゼルシャフト): – 貨幣を媒介とした商品交換によって成立している貨幣経済 による結びつき – 商人の仕事:商品交換→共同体とその外部との異邦人と の間で行われる マックス・ウェーバー『法社会学』 交換からみた2つの社会体タイプ • 共同体(ゲマインシャフト): – 「慈悲は強いられるべきものではない。恵みの雨のごとく、天 よりこの下界に降りそそぐもの。そこには二重の福がある。与 えるものも受けるものも、共にその福を得る。」 • 経済体(ゲゼルシャフト): • 「たしかに証文の期限は切れている。シャイロックがこれを楯に 要求していることは法的に正しい。この商人の心臓すれすれ に一ポンドの肉を切りとるというわけだ。」4幕1場 連帯は閉じずに接触・交換する • ゲマインシャフト – 兄弟的連帯を続ける→利潤が必要 • ゲゼルシャフト 敵対し合いな がら相互依存 – 別な社会・異邦人との接触・交換を通じて利潤を 得る 社会体は他の社会体を必要とする ゲマ イン シャ フト 兄弟愛 女 ゲゼル シャフ ト 宗教 人肉裁判:社会体への救済 • ゲマインシャフトとゲゼルシャフトとの対立激化 • ゲゼルシャフトの論理を徹底することでゲマイン シャフトを救う。 人肉裁判:ゲマインシャフトへの救い 社会体対立 「憎い、だ から殺した くなる、人 間なら誰し もそうだろ うが?」4幕1場 ゲ ゼ ゲマ 兄弟愛 イン ル シャ フト シ 女 宗教 ャ フ ト 社会体対立の止揚 「この男の財 産の一半にた いする罰金も、 免じてやって くだされば何 よりとぞんじ ます。」 4幕1場 ゲ マ 兄弟愛 イ ン シ 宗教 女 ャ フ ト ゲ ゼ ル シ ャ フ ト 駆け落ち • ジェシカによる持ち逃げと浪費 – ゲマインシャフトとゲゼルシャフトとの対立激化の解消 • ゲゼルシャフトの蓄積(死蔵)をゲマインシャフト内 に流通(活性)させる。 「そのジェノアで、娘さん、なんでも一晩に八十ダ カット使っていたそうだぜ。」3幕1場 社会体対立の止揚:交流の向上 ゲ マ 兄弟愛 イ ン シ 宗教 女 ャ フ ト ゲ ゼ ル シ ャ フ ト 指輪の揉め事:止揚の顕示 • バッサーニオから取り戻した指輪をもう一度バッ サーニオに贈り直す。 • 妻である自分は止揚しうる存在であること(2つ の共同体をまたげる存在)であることを示す。 社会体対立の止揚:交流の確認 ゲ マ 兄弟愛 イ ン シ 宗教 女 ャ フ ト ゲ ゼ ル シ ャ フ ト 対立の止揚 (1)三つ箱の婿選び:ゲマインシャフトの確認 (2)人肉裁判:ゲマインシャフトを救済 (3)駆け落ち:二シャフトの交流度を向上 (4)指輪の揉め事:二シャフトの交流可能性確認 夫婦という社会体 兄弟 女 宗教 夫婦という社会体:家父長の力 兄弟 男性の力が 優位 女 宗教 夫婦という社会体:女性家父長の力 兄弟 女性の力が 優位 女 宗教 ベニスの商人:女性の力の優位 兄弟愛 女 宗教 『ベニスの商人』の原作 • セル・ジョヴァンニ『バカデカ羊』(Il Pecorone, 1558) – 女性:未亡人の住む町ベルモントの噂 → 「有能で美しい婦人で、『到着するものは婦人と寝て、も しも婦人を楽しませたら、妻として迎え、この湾岸町とそ の周囲の町々の主となるべし』という法を定めている。」 原作の女性:<恐るべき女> • はげたかのように財産を 食い、死の国に男性を 追いやる。(ノイマン『太母』) 翼を付けたゴルゴン (ギリシア壺絵) ギュスターヴ=アドルフ・モッサ (Gustav-Adolf Mossa) 「彼女」1906年 ノイマン『太母』 慈悲深き聖母 バルトロメオ・ヴィヴァリーニ「慈悲深き聖母」 1473年 ポーシャにはこの2つ の性格が備わってい る。 両義的な妻 •これ以降のスライド は授業とは関係あり ません