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-th接尾辞と r-み」接尾辞の派生制約※
1 5 -t h接尾辞と r -み」接尾辞の派生制約※ 高橋勝忠 o .序 形容詞の基体に添加し名詞に変化させる接尾辞として英語には田n e s s, i t y , t h がある ( e . g .t r u e→ t r u e n e s s,* t r u i t y ,t r u t h ;f a l s e→ f a l s e n e s s,f a l s i t y ,* f a l s( e ) - t h )。一方、生産性の観点からこれらの接尾辞と対応する日本語の接尾辞とし て、「ーさ」と 1 -み」がある ( e . g .強い→強さ、強み;正しい→正しさ、*正し み ) 。 1 -み」の生産性については n e s sと i t y ,日本語の「ーさ」と 英語における - n e s sは i t yより、「ーさ」は これまで議論がなされて来た。結果として、 - 1 -み」より生産性が高いと一般に言われている。 I このような一般化がなされると、 n e s s派生は「ーさ」派生に平行し、ーi t y派 生は 1 -み」派生に並行すると捉えられるかもしれないが、事実は必ずしもそ うではない。なぜなら、「一み」派生語の基体の形容詞 ( e . g . 暖かい、深い、 強い)に、ーi t yは決して添加しないからである ( * w a r m i t y ,* d e e p i t y ,* s t r o n g i - e p t h,s t r e n g t hの形は認められるので t y )。一方、 warmth,d によって生成されると捉えられるかもしれない。しかし、 t h派生語はこの 3語に限定され、それ以外の 1 -み」は t h派生 1 -み」を意味する 1 -み」派生語は -ness派生に よって生成されることが意外と多いことに気づく ( 第 1節の ( 5 )を参照)。言い 例文のチェックを E i l e e nW副首位さんにお願いした。ここに記して、感謝の念を表 ※ します。 1 n e s sとi t yの生産性についてはAr o n o f f(1976),Ans h e nandAro n o f f(1988),島村 ( 1 9 9 0 ) を、「ーさ」と「一み」の生産性については影山 ( 1 9 9 3 )、伊藤・杉岡 ( 2 0 0 2 ) を参照のこと。 1 6 英 文 学 論 叢 第4 8号 換えると、「一み」派生語は i t yでもなく、ーt hでもなく、 n e s sによって生成され ることになる。このことは、「ーさ」派生語も n e s sによって生成されるので、 1 -み」派生がなぜ生産性が高い -ness派生によっ t h派生が 1 -み」派生と直接関係がないとす て生成されるのかが疑問となる。 - 生産性が低いと考えられる t h派生語それ自体は ( e . g .b r e a d t h , l e n g t h , w i d t h ) 本来どのような意味を れば、 生み出すのであろうか。 1 -みJの接尾辞がどのような派生制約を持っているの かを調べることであるが、「一み J派生が i t y派生や t h派生と必ずしも関係す t hと 本稿の目的は、 - るのではないことを明確にするために、まず第 1節ではこれまであまり議論が なされていなかった生産性の低い i t y 曲 ,t h ,1 一み」の接尾辞を比較検討し、これ らの接尾辞の生産性の違いを指摘する。 t hと 第 2節では、第 1節の分析の結果を受けて、すなわち、 - 1 -み」の生産 性が異なる理由を明確にするために、 t h派生の基体の成立条件として有標・無 標という意味的概念が関係することを示す。その上で、 t h接尾辞は数直線上の 尺度を表す無標の形容詞にのみ添加することを提案する。一方、 1 -み」派生は 2 0 )を参照)、 有標・無標の両方の形容詞に添加することも可能であるが(第 2節 ( 一般的には、 1 -み」派生は無標の形容詞が語葉化し、対象に対する 3次元的 n e s s (=立体的)な意味合いで単語が生成されることを提案する。語棄化される の一部の派生を除くと、 n e s sや「ーさ」派生は生産性が高く規則的に生成さ 1 -み」派生は生産性が低いのでどちらも最終的にはレキシコンに登 録されると仮定する。 3節において、 t h接尾辞が 1 -みJ接尾辞より生産性が れ 、 t hや 低くなる理由をまとめとして述べる。 1 .t hとー i t yと「一み」の生産性 S i e g e l( 1 9 7 4 ),All e n( 1 9 7 8 ),阻parsky ( 1 9 8 2 ) 等によって提唱されるレベル i t yや t hは ( 1 ) のように基体の強勢移動や音韻変化 順序づけ仮説に従うと、 を受ける結果、レベル 1に位置づけられる 02 -t h接尾辞と「一み」接尾辞の派生制約 ( 1 ) 1 7 a .r E a l→ r e Al i t y( c f .r E a l n e s s ),s i m u l tAn eous→ s i m u l t a n E i t y( c f . s i m u l tAne o u s n e s s ) b .broad→ b r e a d t h( c f .b r o a d n e s s ), wide-width ( cf .wideness) ー i t yや t hはレベル 1に位置づけられるのでレベル 2の n e s sより基体に対する 制限が厳しくなり生産性が低くなると言われているがJ しかしーi t yと 曲t hは同 じ程度に生産性が低いのであろうか。 Ca 紅r s 坑t 羽 a i r s うに派生過程において語葉的ギギ、ヤツプが生じるのでで、 問 n e s 部s恰 ( e . g .r i c h n e s s, g r e y - e s sg e n e r a l ) と考えるが、ーi t yは n e s s ) より形式的に・般的でない (muchl i v e .a b l e.i b l e .a l .a r.i c.i d.o u sの接尾辞で終わる形容詞を可能な 基体として持ち ( e . g .s e l e c t i v e, c a p a b l e, v i s i b l e, l o c a l, p o l a r , e c c e n t r i c, l i q u i d , vぽ F i o u s )、単音節の形容詞を取る t hの基体の制限より規則的に派生できることを 指摘する。 単音節の形容詞は実際多く存在するので、どのような単音節の形容詞を t h が取るかがここでは問題となるが、この問題を考える前に、 t h は実際に単音 節の形容詞に限定されるのかどうか具体例を見てみよう J 2 キャピタル・レターは第一強勢の位置を示し、イタリックは音韻変化を受ける部分 l a ) のs i m u l t a n E i t yはーo u s切り取り規則も適用されている。 o u s切り取り を示す。 ( o n o f f (1976:40) を参照のこと。 に関してはAr 3 . Ar o n o f f (1976:36) は n e s s と・i t y派生語の生産性に触れ、必ずしも辞書的な数が 生産性を決定するのではなく、基体に課される制限を考慮しなければならないことを 指摘する。例えば、 X i v e n e s sは X i v i t yより 5倍の数が W a l k e r (1936) の辞書に載せら れているが、Xi l i t yはXile n e s sより遥かに数が勝る。さらに、島村 ( 1 9 9 0 :3 2 3 4 ) では実 際の辞書的数と使用頻度(トークン頻度)を比較すると i t yの派生が n e s sの派生より も使用頻度が高くなることが指摘されている。 4 . L e h n e r t (1971) から具体例を取上げた o f i l t h , h e a l t h , w e a l t hも歴史的には形容由来名 調であるが、共時的には派生語として認識されないのでリストから除外している。な お 、 W a l k e r ' sRhymingD i c t i o n a r yo f t h eE n g l i s hL a n g u a g e (1983) には c o o l t hの語は載 せられていない。 1 8 英 文 学 論 叢 第4 8号 ( 2 ) a .c o e l a c a n t h (シーラカンス), h y a c i n t h (ヒヤシンス), mammoth (マンモス) b .d o z e n t h,e l e v e n t h,hundredth,m i l l i o n t h,s e v e n t h,t h o u s a n d t h c .b r e a d t h( b r o a d ),c o o l t h( c o o l ),d e p t h( d e e p ),g r e e n t h( g r e e n ), l e n g t h( lo n g ),s t r e n g t h( s t r o n g ),t r u t h( t r u e ),warmth (warm), width ( w i d e ),youth ( y o u n g ) ( 2 a ) における例は、 2音節か 3音節の単語であるが形容詞から派生されたも のではない。 ( 2 b ) はいわゆる序数で、 ( 2 c ) の派生語とは区別されるものであ る口したがって、ーt hが単音節の形容詞を基体に取るというのは正しく、 ( 2 c ) の1 0例しか見つからない点とーt hは多音節の形容詞には添加しないことから判 断すると t hは i t yより生産性は低いものと考えられる。 5 Bauer ( 1 9 8 3 :4 9 )に よると、ーt hは共時的には ( 3 ) のような新しい形容詞に添加して名詞形を生じ させない特徴があり、 warmthのような語は語棄化されているとみなす。 ( 3 ) * cameoth,* f u n k J 花h,* m a x i t h,* p s y c h e d e l i c t h,* s u r r e a l t h この点、 t hは接尾辞の「ーさ」より 1 -み」に近いものと考えられる。なぜな ら、「ーさ」は ( 4 ) に見られるように最近の若者言葉の形容詞に自由に添加で きるが、 1 -み」はその同じ形容詞に添加して名詞形を生み出さないからであ る06 ( 4 ) ナウさ(*ナウみ)、ダサさ(*ダサみ)、ケバさ(*ケバみ)、 キモさ(キキモみ) 「ーさ」と 1 -みJの接尾辞は形容詞から名詞に変える共通性と生産性の関係 5i t yも単音節の形容詞を基体に取るが ( e . g .c l a r i t y , o d d i t y , p u r i t y , r a r i t y , s a n i t y ) 生産 性は低く、例外的な o d d i t yを除くと基体の形容詞はラテン系の起源に制限される。 6 伊藤・杉岡 ( 2 0 0 2 :1 6 6 ) の例に、 1 -み」の派生語を筆者が加えたもの O t h接尾辞と「一み」接尾辞の派生制約 1 9 から n e s sと i t yに対応するものとしてこれまで捉えられてきた。しかし、 1 -み」と -ityはレキシコンにおいて厳密には対応していないことが ( 5 ) に挙 げた例から分かる。 s t r e n g t h強さ;強度;濃さ;強み;兵力 ( 5 ) 強み * s t r o n g i t y, ( cf .s t r o n g n e s s強さ) 弱み * w e a k i t y, *weakth ( c f .weakness 弱さ;弱み;不十分;大好物) 深み * d e e p i t y, depth深さ;深み;色・音の低さ ( c f .deepness深さ;深遠さ) 浅み * s h a l l o w i t y, * s h a l l o w t h .s h a l l o w n e s s浅さ;浅はかさ) ( cf warmth暖かき;興奮;温かみ;色の暖かさ 温かみ *warmity, ( c f .warmness=warmth) , * h e a v i t hc f .weight重さ;重荷;重み) 重み * h e a v i t y ( c f .h e a v i n e s s重さ;無気力;重荷) 高み * h i g h i t y , * h i g h t hc f .h e i g h t高さ;高み;最高潮 ( c f .h i g h n e s s高いこと;高価;殿下) 低み * l o w i t y, *lowth ( c f .lowness低いこと;身分の低いこと;元気のないこと) , * s w e e t t h 甘み * s w e e t i t y ( c f .sweetness甘さ;甘味;愛らしさ;快適) , * b i t t e r t h 苦(し)み * b i t t e r i t y ( c f .b i t t e r τ l e s s味の苦さ;苦しみ;恨み) * s a d t h 悲しみ * s a d i t y, ( c f .sadness悲しさ;悲しみ;悲しいこと) 青み * b l u e i t y, * b l u e t h ( c f .b l u e n e s s青さ;下品;青み) 赤み * r e d i t y, * r e d t h ( c f .r e d n e s s赤いこと;赤色;赤み) 1 高み J. i 低み」を除くと、むしろ 「強み」・「深み」・「浅み」・「重み J. i-み 」 の派生語は n e s s接尾辞によって生成されている。 7 また、その中で、「強み」・ 7 I 浅み」と「低み」は場所を意味するが、 s h a l l o w n e s sとl o w n e s sにはこの意味が出 て来ないようである。 英 文 学 論 叢 第 48号 20 「深み」・「重み」・「高み」の表現は批y ではなくて s t r e n g t h,d e p t h,w e i g h t, h e i g h tで形成されている。したがって、 1 -み」派生は i t y とは全く関係しな 1 -み」派生に関与 -み」派生 するが、これらの語も基本的には尺度を表す派生語と見なされる。 1 いことが分かる。 t h派生の wannth, d e p t h , s t r e n g t hの3語は に帽n e s s接尾辞が導入されたのは、 ( 5 ) の比較から分かるようにレベル 1で生 成されるーi t yや t h派生語の欠如から来るものと考えられる。 伊藤・杉岡 ( 2 0 0 2 :9 ) では、生産性の高い n e s s接尾辞の派生語の weakness は「弱さ」の意味に加えて「特別な好み J( e . g .1haveaweaknessf o rc h o c o l a t e ) の語葉化した意味があることを指摘する。さらに、「弱点・弱み・短所 J( e . g . Thec a rh a sas e r i o u sweakness) の特殊な意味も weaknessに追加されよう。ま た 、 h i g h n e s sのように基体の意味が不透明となる「殿下」という意味が n e s s 派生語に見られる ( e . g .T h i si si n d e e danhonor , yourH i g h n e s s )。この意味では h i g h n e s sは複数形でも用いられる。また、 Thep l a nh部 s t r e n g t h sandweakn e s s e s (その計画には長所と短所がある)の文に見られるように t hや n e s s 接尾辞のあとに複数形の sや e sが来ている例も見受けられる。 阻p 訂 sky ( 1 9 8 2 :5 ) のレベル順序づけ仮説に従うと t hはレベル 1に 、 n e s s はレベル 2に、規則的な複数形はレベル 3で生成されるのでーt h sや n e s s e sの順 序づけに問題は生じないが、レベルを用いないで派生と屈折を同様に扱う強語 葉論派 ( S t r o n gL e x i c a l i s t ) にとっては ( 6 ) のように二股枝分かれ構造制約 ( B i n a r yB r a n c h i n gC o n d i t i o n ) の違反となるので問題となる。 lノ ρ0 、 、 a , /、 ‘ ‘ 代 I I ¥ / h i g hn e s se s weakn e s se s いずれにしても、語葉化した意味を持つ n e s s派生語はデフォルト規則に拠 るのではなくレキシコンの中で登録されているものと考えられる 08 8 デフォルト規則は本来、屈折接辞に適用される概念であるが、島村 ( 1 9 9 5 :5 0 6 1 ) や伊藤・杉岡 (2002, 第 4章)では派生接辞への応用を試みる。 -t h接尾辞と「一み」接尾辞の派生制約 2 1 2 .ー t h接尾辞と「ーみ J接尾辞の成立条件 第1 節の ( 2 c ) において、 t h接尾辞の派生は 1 0個に限られ、現在では新しい 3 ) で見てきた。本節で 形容詞に添加しない新造力のない接尾辞であることを ( h派生語の基体に共通の意味概念が存在することを示し、 はーt 1 -み」接尾辞 との比較を行う。再度、 ( 2 c )のt h接尾辞の派生語を ( 7 ) として取上げ、辞書 的意味を考えてみよう。 ( 7 ) b r e a d t h 1 ) 幅;見識や心の広さ 2 ) (布などの)一定の幅 c o o l t h d e p t h 1 ) 涼しさ;冷静;冷淡 1 ) 深さ;濃さ;深み 2 ) 奥地;どん底 ) (草木の)緑;新緑 g r e e n t h 1 ) (幅や時間の)長さ l e n g t h 1 2 ) 期間;プールの縦の長さ s t r e n g t h1 ) 強さ;強度;強み 2 ) 長所;兵力 t r u t h 1 ) 真実;正確さ 2 ) 事実 ) 暖かさ;温かみ;熱狂 warmth 1 m札d t h 1)幅;理解や知識の広さ 2 ) 一定の幅 y o u t h 1 ) 若さ;青春 2 ) 青年 1 ) では抽象的意味を並べている。ほぼ、日本語の[ーさ」に対応し、 g r e e n 出 を除くと物の長さや深さの尺度、温度や色や強さの基準、理解の広さや正確さ などを表す。 2 ) では 1 ) より具体的な意味を並べ、複数形も可能な意味合いを 持つものを挙げている。 ( 7 ) のーt h派生で気づくことは、対立する意味の形容詞を持つ場合に、 warmthとc o o l t hを除いて基体の意味が正反対となる形容詞を取らないことで ある。 2 2 英 文 学 論 叢 第4 8号 ( 8 ) *narrowth ( c f .b r e a d t h, w i d t h ) * s h a l l o w t h( c f .d e p t h ) * s h o r t t h( c f .l e n g t h ) c f .s t r e n g t h ) *weakth ( f .t r u t h ) * f a l s e t h( c * o l d t h( c f .y o u t h ) 安井・秋山・中村 ( 1 9 7 6 :1 8 1 1 8 3 ) や HofmannandKageyama ( 1 9 8 6 :1 3 1 6 ) において、有標・無標という概念が導入されている。彼らに従うと、形容詞が 肯定的 ( p o s i t i v e ) なものと否定的 ( n e g a t i v e ) な意味が対立する場合、前者を 一般的な無標の表現として捉え、後者を一般的でない有標な表現であると考え る。この有標・無標の概念は形態的、統語的な現象を説明する。 n 接頭辞は形容詞の基体を取る際に肯定的な意 例えば形態的な事実として、 u 味を持つ基体の派生語 ( 9 a ) を許すが、否定的な意味を持つ基体の派生語 ( 9 b ) を許さない特徴を持つ。すなわち、 u n -は無標の形容詞を常に基体に取ることに なる。 ( 9 ) a .u n w e l l, unloved, unhappy , unwise, u n c l e a n, u n o p t i m i s t i c u n f o o l i s h,* u n f i l t h y,* u n d i r t y ,*unpesb .* u n i l l,*unhated,*unsad,* s i m i s t i c 統語的な事実として、 HofmannandKageyama ( 1 9 8 6 :1 4 )は ( 1 0 ) ,( 1 1 ) の例を挙げている。 ( 1 0 a ,b ) が自然な表現となるのは Howの次に肯定的な形 , 容詞が使用されているからである。一方、否定的な形容詞が使用された(l1a b ) は、話し手がすでに yourb r o t h e rや yours i s t e r に対して「若いこと Jや 「背の低いこと」を事前に知っていて、さらにそのことを尋ねる状況でない限り 不自然な表現となる 09 9 Hofmanna n dK a g e y a m a( 1 9 8 6 :4 ) に従うと、!印は特別の文脈でなければ意味を成さ ない表現であることを示す。下線部は以降、強勢を表す。 -t h接尾辞と 1 -み」接尾辞の派生制約 23 ( 1 0 ) a .howo l di syourbr 旦h 旦? b.how国 1 i syour亘旦主主? ( 1 1 ) a .!how担 皿gi syourbr 旦her? b.!how辿旦且 i syour豆旦旦? 安井・秋山・中村 ( 1 9 7 6 :1 8 2 1 8 3 ) によると、 ( 1 0 ) のような表現は年齢や 背の高さを前提としない中立的な状況で使用される。また、(12 ) のように how に強勢が置かれる場合は、 ( a ) で「長い」という前提があり、 ( b ) で「短い J という前提があって使用されると主張する。 .Ho 聖 l o n gi si t ? ( 1 2 ) a b .Hows h o r ti si t ? 要するに、 ( 1 0 ) のように o l dや t a l lに強勢があれば無標の形容詞として使用 され、 ( 1 2 ) のように howに強勢があればある種の前提が伴い、有標の形容詞 として使用される。興味あることは、 ( 1 1 ) のように形容詞が否定的な意味を 持つ場合(厳密に言うと、 o l dや t a l lに対してマイナスの方向の意味を持つ場合) は 、 ( 1 3 ) に示すように有標となり不自然となる。 10 ω ( 句 1 3 制 ω 3 ω ) Howbroad (~斗*吋切}ド句ミ 'r Howwide h 立 ミ na n 町 】 70W) 担 i st 出 h i 抱 sr i v e r ? ( 作 〉 埼 * ド Howdeep ( * 匂 s h a l l o w )泊 i st h esnow? Howl o n g( * s h o 此) i st h ef l i g h tt oLondon? Hows t r o n g( * w e a k )i sam o t h e r ' sl o v ef o rherc h i l d ? ( 1 3 ) の有標・無標の文法性の差異は ( 1 4 ) のように、形容詞が名詞形になっ 1 5 ) のように度量句 (measurep h r a s e )11 として形容詞 ても見られる。また、 ( 1 0 ここでは、 howに強勢が無く、形容詞に強勢が有る場合を前提にしている。なぜな ら 、 ( 1 3 ) において howに強勢を置くとアステリスクの付いた例文が ( 1 2 b ) のように、 ある種の前提を伴って正しくなるからである。 1 1 八木 ( 1 9 8 7 :22, 5 4 5 5 ) を参照。 24 英 文 学 論 叢 第 48号 が後続する場合にも無標の表現が使用される。有標・無標の文法性の差異は日 本語にも観察され、「無標 j という概念は実際の言語使用における普遍的な意味 的概念として捉えられる。 ( 1 4 ) Wha ti st h eb r e a d t h( * n a r r o w n e s s )o f t h er o a d ? 道路はどのくらいの広さ(*狭さ)ですか。 Wh a ti st h ew i d t h( * n a r r o w n e s s )o f t h i sr i v e r ? この川はどのくらいの広さ(*狭さ)ですか。 Wh a ti st h ed e p t h( * s h a l l o w n e s s )o ft h esnow? 雪の深さ(*浅さ)はどのくらいですか。 Wh a ti st h el e n g t h( * s h o r t n e s s )o f t h ef l i g h tt oL o n d o n ? ロンドンまでのフライトはどれぐらいの長さ(*短さ)ですか。 Wh a ti st h es t r e n g t h( * w e a k n e s s )o fam o t h e r ' sl o v ef o rh e rc h i l d ? 子供に対するお母さんの愛情の強さ(*弱さ)はどのくらいですか。 ( 1 5 ) Theboxi so n l y2 0c e n t i m e t e r sb r o a d l w i d e( * n a 町o w ) . その箱はほんの 20cmの横の広さ(*狭さ)しかない。 Thepondi sn i n ef e e td e e p( * s h a l l o w ) . 池は 9フィートの深さ(*浅さ)です。 Thes o f ai ss i xf e e tl o n g( * s h o r t ) . ソファーは 6フィートの長さ(*短さ)です。 T h i sr o p ei st h r e et i m e s* s t r o n g( * w e a k ) .12 このロープは 3倍の強さ(*弱さ)です。 1 9 7 6 :2 6 0 ) によると、 ( 1 3 ),( 1 5 ) むように形容詞が無 安井・秋山・中村 ( 標の形で、 how疑問文と度量表現の両方が使用できるタイプとして ( 1 6 a )の 形容詞があり、 how疑問文は可能で、あるが度量表現の形容詞としては使用でき 1 6 b ) の形容詞があることを指摘する。 ないタイプとして ( T h i sr o p ei st h r e et i m e sぉ s t r o n g本 (w e a k )掛 t h a to n e (このロー プはあのロープの 3 惜の強さである)のように、~ t i m e sa s~ a sの表現や T h e担 m y w a s5, 000s t r o n g(軍隊は総勢 5千人だ、った)のように勢力人数を表す場合は可能となる。 1 2 ただしここでは、 -t h接尾辞と 1 -み」接尾辞の派生制約 2 5 t a l l( s h o r t ), h i g h( l o w ), t h i c k( t h i n ), ( 1 6 ) a .deep ( s h a l l o w ), l o n g( s h o 抗), wide ( n a r r o w ), o l d( y o u n g ) Howo l d( * y o u n g )i syours o n ? あなたの息子は何歳ですか。 H e ' st h r e emonthso l d( * y o u n g ) . 彼は 3ヶ月です。 b .b i g( s m a l l ), heavy ( l i g h t ), b r i g h t( d i m ), l a r g e( l i t t l e ), f a t( t h i n ), s t r o n g( w e a k ) Howheavy ( * l i g h t )i si t ? どれぐらいの重さ(*軽さ)ですか。 stwopounds ( * h e a v y / * l i g h t ) . I ti 2ポンドの重さ(*軽さ)です。 安井・秋山・中村 ( 1 9 7 6 )は ( 1 6 a ,b) の形容詞に見られる統語的分布の違 いがなぜ生じるかに言及していない。 ( 1 6 a ,b) の意味の違いを考えてみると、 ( a ) の形容詞は縦・横・高さなどの長さの尺度を表し ( b ) では大きさや強さ など尺度的には捉えられない形容詞に属している。したがって、度量表現の形 容詞として後続できないのは、計測することができない漠然とした対象である ことに起因するのではなかろうか。なぜなら、計測できなければ数値も出てこ ないことになるからである。ただし、この捉え方は重量の測定は重量計ででき るので*Iti stwopoundsheavyはなぜ非文になるかを説明しなければならない。 1 6 a ) の無標の形容詞は(15 ) のような度 ここで、問題を整理してみよう。 ( 1 7 ) の派生名詞形としての用法 量表現の形容詞として使用されると同時に、 ( も併せて可能である。 ( 1 7 ) Thepondi sn i n ef e e ti nd e p t h/ * d e e p n e s s . Themountaini s3, 000m e t e r si nh e i g h t J * h i g h n e s s . h/ * l o n g n e s sand2f e e ti nw i d t h/ * w i d e n e s s . Thedeski sf o u rf e e ti nl e n g t Thew a l li sf i v ei n c h e si nt h i c k n e s s /b r e a d t h/ * b r o a d n e s s / w i d t h/ * w i d e n e s s . ( c f .Thew a l li sf i v ei n c h e st h i c k l * t h i n . ) 江t yye訂 so fa g e / * o l 出l e s s . Hei sp a s ts 2 6 英 文 学 論 叢 第4 8号 一方、 ( 1 6 b ) の形容詞は w e i g h tの場合を除いて度量表現の派生名詞形としての 用法はなさそうである。 13 ( 1 8 ) Hei s2metersi n* s i z e / * b i g n e s s / * l a r g e n e s s . Hei s1 0 0k i l o g r a m si nw e i g h t l * h e a v i n e s s / * f a t n e s s . Hei s400k i l o g r a m si n* s t r e n g t h/ * s t r o n g n e s s . ( c f .Theye q u a t e dusi ns t r e n g t h . ) Thel i g h ti s5l u c e si n* b r i g h t n e s s . これまで議論してきたことを基に、 t h接尾辞の基体の制約を考えてみよう。 ( 8 ),( 14 ),( 1 7 ),( 1 8 ) の結果から、 t hの基体となるのは「尺度を表す無標の 1 6 a ) のようなタイプの 形容詞で、しかも数直線上に値で示すことができる ( 形容詞である j と仮定する。ただし、 ( 1 6 a ) において、 t a l l,h i g hの派生名詞形 e i g h tによって、 t h i c kは b r e a d t hあるいは widthによって、 o l dは a g eによっ はh t h派生が阻止されるとみなす。したがって、これらの形容詞に て先取りされ は田t h接尾辞が添加しないと仮定する。 14 同様に、 ( 1 6 b ) において*Iti stwo pounds heavy の 代 わ り に I ti s twopounds i nweightの 表 現 は 可 能 な の で weightが heavyを阻止すると仮定できるかもしれない。しかし、この考えは ( 1 6 a ) のタイプの形容詞には当てはまらない。なぜなら、 Hei ss i xf e e tt a l lや Shei ss i xy e a r so l dの t a l lや o l dがそのままの形で使え、 Hei ss i xf e e ti nh e i g h tや Shei ss i xy e a r so fageの h e i g h tや a g eによって t a l lや o l dが阻止されると言えない からである。憶測の域をでない仮定であるが、度量表現として後続できない ( 1 6 b ) の形容詞の意味のタイプを考えると重量・強度・光度であることから、 1 3 安井・秋山・中村 ( 1 9 7 6 :6 3 ) によると、(1 7 ) や (1 8 ) における派生名詞形 ( d e p t h, h e i g h t , l e n g t h, b r e a d t h , w i d t h, a g e, s i z e, w e i g h t ) は中立的な意味を持つため t h i c k n e s sを除いてそれらの n e s s派生語は常に対立的な意味合いになるとしている ( e . g . 吋n e s s l l i g h t n e s so ft h ebox ,箱が重い/軽いこと)。 t h eh e a 1 4 OEDでは h i g h t hやh e i g h t hの形が歴史的に存在したことを説明している。 1 3世紀に t hがるや g hのあとで tに変化したようである。この歴史的過程を踏まえると h e i g h t がh i g hを阻止するとは言えなくなる。 -t h接尾辞と「一み」接尾辞の派生制約 2 7 それらの意味を持つ形容詞は平面的・立体的に捉えることができない理由で度 量表現が阻止されるのかもしれない。一方、兵力 ( s t r o n g ) は平面的に捉えら 1 6 a ) における幅 (broad,long,wide) や奥行き ( d e e p ) や高さ ( h i g h, れ 、 ( t a l l ) は立体的な対象を捉える事象であるのでこれらの意味を持つ形容詞は度量 表現に後続することができるのかもしれない。問題は年齢や深さに関して生じ るが、これも 1次元的な座標を想定すると数直線上に表すことができるのかも しれない。 15 t hの基体となるのは尺度を表す無標の形容詞であると仮定すると、 ( 7 )の t h派生語で問題となるのは、有標の表現の c o o l t h,youthがなぜ、生じるかとい う点である。注の 4で指摘したように coolthは Walkerの辞書には載せていない 語であり、 OEDや RHDは古く稀で滑稽な ( a r c h a i c, r a r e, f a c e t i o u s ) 表現として いる。現在では、この語を容認する人は一部の方言を除いて殆どいないと考え られる。 16youthに関しては、 old対 youngにおける派生名詞形とみなすと youth は有標の表現であるが、「青春時代・青年」の語葉化した意味が「若さ J( t h e s t a t eofbeingyoung) の意味より優先され、今日では語長化した意味だけが辞書 7 また、 greenthは GeorgeE l i o tの詩の中で用いら に登録されていると考える。 1 れる特殊な語で、 *greythや *redthなど色彩語には辞書的ギャップが生じるのが 1 5 I 大きさ」は次元形容詞に属するが、度量表現としては b i g, 1 町 g e, f a tが漠然としてい c f .Wha ti sy o u rs i z e ? )S e u r e n( 1 9 7 8 : るため、具体的な数値が取れないと仮定する。 ( 3 3 7 3 3 8 ) によると、温度感覚や時間の長さを表す度量句は非文としている ( e . g .* 2 0 *Them e e t i n gw部 twoh o u r sl o n g )。これらの概念も数直線上に表されな d e g r e e sw a r r n, いものと考える。 1 6 Matthews ( 1 9 9 1 :7 9 ) によると、 c o o l t hは w a r r n t hから類推(加a l o g y ) によって生 成されると仮定する。生産性の高い接尾辞 ( e . g .n e s s,u n ) は潜在的な語葉素 ( p o t e n t i a ll e x e m e ) を規則で形成するが、 c o o l t hは生産性の低い接尾辞なので通時的 ( d i a c h r o n i c ) に捉えられ、以前は不可能であった派生が類推によって可能になると主 張する O 1 7 . Bochner ( 1 9 9 3 :5 6 ) によると、 y o u t hは l e n g t hよ り 語 葉 化 の 度 合 い が 高 い の で y o u n g n e s sの方が l o n g n e s sより容認性が高くなることを指摘している。 2 8 英 文 学 論 叢 第4 8号 一般的であるので、 t h派生に残された例外的なものと考えたい。 18 t r u t hは f a l s i t yに対する反対語であるが lengthや widthのように尺度を表さないので問題と して残る。 最後に、日本語の 1 -み」の派生制約について見てみよう。 1 -み」は形容詞 の語根に添加し、「ーさ」と違って語幹には添加しない。また、 ( 1 9 c ) の形容 名詞に 1 -み」は添加しないと言われている。 1 9 ( 1 9 ) a .重み(*軽み)、厚み(*薄み)、温かみ(*寒み) b .肌寒さ(*肌寒み)、奥深さ(*奥深み)、甘酸つばさ(*甘酸っぱ み) c .活発さ(*活発み)、元気さ(*元気み)、丁寧さ(キ丁寧み) ( 1 9 a )の 1 *寒み」のように、 1 *冷たみ J. 1 *涼しみ J.1 *暑み」と温度を表 す形容詞には,-み Jが添加しないようである。「暖かみ」という語は温度表現 ( e . g .*暖かみのある温度)というよりも「温かみのある言葉」ゃ「温かみのある c f .*硬み)は硬度表現 人」のように比聡的に使われる。同様に、「やわらかみ J( もあるが ( e . g .肉のやわらか身)、「やわらかみのある人Jのように語葉化して 使われる。「重み j や「厚み Jは「重役らしい重みを備える」ゃ「人柄に厚みを 増す」のように比喰的に用いられる。もちろん、「雪の重みで枝が折れた Jや 「胸の厚みが増す」のように重さや厚さの表現も可能である。 1 8 Bauer ( 2 0 0 3 :7 9 ) は、言語共同体 ( s p e e c hc o r n r n u n i 町)における生産性と個人にお n d i 吋d u a lp r o d u c t i 吋t yと呼 ける生産性を区別する必要性を述べている。後者の生産性を i び、頻繁に hapaxlegornena (特定のコーパスにおいて 1回だけ生じる語)を生み出す と仮定する。 1 9 影山 ( 1 9 9 3 :1 6 ) によると、単一形態素 C e . g . 訪,中,肌,奥,深(い),寒(い))を語 e . g .訪中,奥深い,肌寒い)になると仮定している。 根とし、語根+語根が結合して語幹 ( また、影山 ( 1 9 9 3 :2 5 ) では、従来の形容動詞という言い方を避け、 M a r t i n( 1 9 7 5 )に a d j e c t i v a lnoun) を仮定する。この名詞は 従い形容詞と名詞の両面を持つ形容名調 ( 形態的に「ーな」の屈折接尾辞を取るのが特徴であるが、「ーさ」派生を許すが「一み J 派生を許さない。 -t h接尾辞と「 上記のように、 (19a) の る。しかし、 み」接尾辞の派生制約 2 9 1 -み」派生の形容詞は共通に無標表現で可能とな ( 2 0 ) に挙げた語は有標・無標の両方の表現が可能であり、 ( 2 1 ) に挙げた語は有標・無標の両方の表現が不可能となる。これらについてどのよ うな意味制約が働くのか考えてみよう。 ( 2 0 ) 強み(弱み)、高み(低み)、明るみ(暗み)、深み(浅み)、楽しみ (悲しみ、苦しみ) ( 2 1 ) *長み(*短み)、*広み(*狭み)、*遠み付近み) ( 2 0 ) の「楽しみ」・「悲しみ J.1 苦しみ」は、 I~ む」という動詞の連体形が あり、「お になる J( e . g . お楽しみになる)が可能であることから動詞の連用 形がゼロ派生で名詞になったものと考える。「親しみ」も動詞の連用形からゼロ 派生で名詞になったものと思えるが、「お親しみになる」は不自然である。ま た、「彼に親しみを感じる」は自然であるが、「彼に楽しみ・悲しみ・苦しみを 感じる Jは不自然である。 「親しみ」と「楽しみ」・「悲しみ」・「苦しみ」との違いは対象が相手か自分か ということと内面的・外面的な記述かということが関係しているようである。 ( 2 2 ) のように対象(相手)に対する外面的な感情や評価の形容詞は 1 -み」派 生は許されない。 ( 2 2 ) 騒がしい(*騒がしみ)、好ましい(*好ましみ)、怪しい(*怪しみ)、 厚かましい(*厚かましみ)、恐ろしい(*恐ろしみ) 1 -み」接尾辞は語葉化された意味を持つ場合、基本的には対象(人)に対す る表現であると考えられる。上で見た温度表現で「温かみ」だけが可能なのは、 対象が温度から人になっているからであり、 ( 2 0 ) における「強み J.1 弱み」・ 1 高み」・「明るみ」も ( 2 3 ) に見られるように、強度・深度・高度・ 「深み J. 光度の尺度的表現というよりも語葉化した意味が主流となっている。 30 英 文 学 論 叢 第 48号 ( 2 3 ) a .1 強み J:強さの程度;頼りになる点;長所 金が有るのが強みだ。 語学の強みを就職に活かした。 顔が広いのが強みだ。 b . 1弱み J:弱々しい感じ;うしろめたい所;短所 他人の弱みにつけこむ。 弱みを握っている。 C . I高み J:高い所 高みの見物 d . 1明るみ J:(明るい所。おおやけ) 明るみで本を読む。 事件が明るみに出る。 e .1 深み J:深い所;深入りして逃れられない状態;奥行 沼の深みにはまる。 悪の深みにはまる。 深みのある人。 ここで、「弱み」のように有標の表現が語集化されていることに注意したい。 なぜなら、「低み」・「暗み J. 1 浅み」は有標の表現で語葉化した意味は含まれて いないからである J O ( 2 1 )の 1 -みj が不自然なのは 1 -み」の派生語の基本的な意味として 3次 元的(立体的)に捉えられる対象であることが要求されるのであろう。 1次元 的(線的)な対象 ( e . g .長さ)や 2次元的(平面的)な対象 ( e . g .広さ、距離) 1 -みj派生語の基体の形容調にはならない。 ( 1 9 a )、 ( 2 3 a , b, e ) における「一み J派生語は共通に「人Jを対象にした比験 は、有標・無標とは無関係に 的な表現があることを考えると、「人」を 3次元的(立体的)な対象として捉え ることができるのかもしれない。 2 0 I 暗闇」には「暗閣の鉄砲」のように語葉化した意味がある。「高みの見物」には第 三者的に物事を傍観するという語葉化した意味があるが、「高み」それ自体には特殊な 意味が合意されていない。 -t h接尾辞と 1 -み」接尾辞の派生制約 3 .結 3 1 = . . 白百 t h接 尾 辞 は OEや MEの 時 期 に 生 産 的 に 造 Marchand ( 1 9 6 0 :2 8 5 ) によると られたそうである。ところが、なぜ派生を止めてしまったのであろうか。 2節 の議論から、 t h接尾辞の基体の意味的要請は尺度を表す形容詞に限定され、し かもその形容詞が無標の意味を持つものに絞られた結果であるということが言 える。一方、 i -み」接尾辞は尺度を表す形容詞には添加せず、 3次元的(立体 的)な対象の内面的記述を行うと言える。有標の「低み J. i 暗み」・「浅みj を 除くと、無標の形容詞が語葉化し、対象となる「人」の内面を比験的に表現す ることができる。さらに、 i -みJ派生は「味覚J( e . g . 甘味、辛味、渋味)や 「視覚J( e . g . 赤身、白身、太身、細身)への意味的拡張があり、類推の過程に よって生成されると考える。また、「やわらか味」のような共感覚的 ( s y n e s - t h e t i c ) 比輪も存在する 021 このように、 i -みj 派生は類推や比輸によって t h派生にはこのような意味的拡張が無 様々な表現が可能となっている。一方、 く、度量的表現に絞られる。 22 したがって i -み」接尾辞よりーth接尾辞の方が 生産性は低くなることが予測される。 References Al l e n, M a r g a r e t .1 9 7 8 .M o r p h o l o g i c a lI n v e s t i g a t i o n s .P h .D .d i s s e r t a t i o n, U n i v e r - s i t yo fC o n n e c t i c u t . 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Ca 紅r s 抗t 剖 a i r s E品 d i 巾 n b旧 u 1 江 汀 r g h :Edinbur 昭g hUni 討 ve ぽr s 回i t yP r e s s . Hofmann, T h .R .andT .Kageyama.1 9 8 6 .10V o y a g e s仰 t h eRealmso fM e a n i n g . 東京:くろしお出版. r 伊藤たかね・杉岡洋子. 2 0 0 2 . 語の仕組みと語形成』東京:研究社. r 影山太郎. 1 9 9 3 . 文法と語形成』春日部:ひつじ書房. K i p a r s k y ,Paul .1 9 8 2 ." L e x i c a lMorphologyandP h o n o l o g y . "I nTheL i n g u i s t i c S o c i e t yo fKorea C e d . )L i n g u i s t i c s仰 t h eMorningG α伽, 3 9 1 .S e o u l : H a n s h i n . L e h n e r t , M a r t i n .1971 .R e v e r s eD i c t i o η αryo fPr e s e n t D仰 E n g l i s h .L e i p z i g :VEB V e r l a gE n z y k l o p a d i e . Marchand, H a n s .1 9 6 0 .Th eC a t e g o r i e s側 dT y p e sofP γ ' e s e n t D αy EnglishWo γ d γ o n i c D i αc h γ o ηicApp γ o αc h .Wiesbaden:O t t oHarr 出F o r m a t i o n :A Synch s o w i t z . 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