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思いやる心をもち、協力して学びとる児童の育成

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思いやる心をもち、協力して学びとる児童の育成
思いやる心をもち、協力して学びとる児童の育成
-多様な価値観に着目し、他者とのつながりを重視した活動を通して-
みどり市立笠懸小学校
Ⅰ
主題設定の理由
今日、少子化、核家族化、高度情報化、価値観の多様化など、児童を取り巻く環境は大きく変
化し、児童同士の人間関係構築に大きな影響が出ている。特に、自己中心性、耐性や規範意識の
欠如、人間関係の希薄化など、心の発達面に課題が顕在している。これらが要因となり、問題行
動、不登校、いじめなど学校現場にも数々の課題があふれている。このような中において、人と
人とのつながりの大切さを感じ取るとともに、他を思いやる心をもち、相手を認め共に活動する
ことなど人権感覚を身に付け行動する児童を育成することは喫緊の課題と言える。
本校は、児童数 1033 名の群馬県一の大規模校である。学区も南北 6.5km 東西 3.5km の広さが
あり、小学校区としてはかなり広い地域である。また、住宅やアパートが密集する人口増加地域
でもある。各学年の児童数も 170 名程度おり、多くの個性が集まる集団となっている。それゆえ
人間関係が複雑となり、表面的な関係に陥りやすい面もある。そのため、よく考えずに冷やかし
たりからかったりする行為が見られ、いさかいが生じていることが多い。また、大人数の中にい
るために、自ら率先して動くのではなく「自分がやらなくてもだれかがやるだろう」という気持
ちから、自分から課題を解決していこうとする積極性に欠ける面も見られる。しかしながら、大
人数は多様な価値観を自分の成長に役立てることができる、協力して活動して成果を出すことが
できる等メリットも多い。そのため、大規模校において人権教育の推進を通して思いやりや協力
するよさを学ぶことは、大変意義深いものと言える。
本校の教育目標は「可能性に挑戦する学校」である。具体目標として、「おもいやる子」「ま
なびとる子」「のりこえる子」を掲げている。昨年度、創立140周年、さらに在校児童全員が
21世紀生まれとなったという節目を機に一新した。13年間続いた前目標は「考える子
しい子
やさ
元気な子」であったが、「考える」だけでなく、積極的態度である探究・思考・表現す
る力を加えて友だちや様々な事象から「まなびとる子」の育成を、そして「やさしい」だけでは
なくその優しさが他への支援となって現れる「おもいやる子」の育成を、また、「元気」だけで
なく根気強く様々な試練を友だちと協力して「のりこえる子」の育成を、目指してきた。今年度
は、上記に挙げた課題から「おもいやる子」を最重点目標とし、一番前に掲げた。
昨年度は、具体目標の一つである「まなびとる子」の育成を目指し、本校の児童の課題である、
文章や資料を正しく読み取ること、そしてそれらを活用して考えること、さらに考えを表現する
ことを解決するために、研修主題を「考えることを楽しみ、すすんで表現できる児童の育成」と
設定した。具体的には、国語科、算数科の授業を中心に、「はばたく群馬の指導プラン」を参考
に問題解決型の授業展開を工夫するなど、授業改善に取り組んだ。成果として、問題解決型の授
業を展開する中で、児童が考えることを楽しみながら課題に取り組んだり、すすんで表現し学び
合おうとする児童が増えたりするなど、主体的に生き生きと活動する姿が多くの場面で見られる
ようになった。しかし、国語科では、少人数での学び合いに深まりの差が見られる、算数科では、
既習事項から学習課題への見通しのもたせ方などに課題があることが明らかになった。
そこで、今年度は、研究主題を「思いやる心をもち、協力して学びとる児童の育成」、副主題
-1-
を「多様な価値観に着目し、他者とのつながりを重視した活動を通して」とした。互いのよさを
認め合える温かな学級・学校の雰囲気づくりを目指すとともに、日々の授業をはじめとするすべ
ての教育活動の中で、大規模校のよさを生かしながら他者に対してプラスの発信ができるような
積極的な態度を身に付けた児童を育成する。さらに児童だけでなく教職員も含めた全員が参画す
ることで、互いに高め合う集団を目指していきたいと考える。
Ⅱ
研究のねらい
全教育活動の中で、多様な価値観に着目し、他者とのつながりを重視した活動を実践すること
により、思いやる心をもち、協力して学びとる児童の育成が図られることを研究と実践を通して
明らかにする。
Ⅲ
研究の見通し
研究のねらいを達成するため、以下のような3つの観点で研究に取り組む。
○人間関係づくり
学級における人間関係の実態を調査・把握し、個別課題への対応をスクールカウンセラーと
連携しながら構成的グループ・エンカウンターなどの手立てを取り入れれば、望ましい人間関
係を構築し、安心して生活や学習ができる良好な学級・学校づくりができるであろう。
○授業研究
日々の授業の中で、児童一人一人を大切にした手立てや、他者とのかかわりの中で学び合う
場を取り入れれば、互いのよさや自分らしさを発揮し、自ら学び考えを深めることができるで
あろう。
○調査・環境整備
本校の実態を調査・把握し、児童一人一人を大切にするために、人権感覚を磨く言語環境や
教室環境を整備すれば、自他を尊重し、安心して過ごせる場をつくることができるであろう。
Ⅳ
研究内容等
1
基本的な考え方
(1) 主題について
○「思いやる」とは
人の気持ちを考え行動ができる、つまり、優しいだけではなく、その優しさが他への支援
となって現れる思い。
○「協力して学びとる」とは
友だちと協力しながら、自ら学び考えを深めようとする、つまり、考えるだけでなく探究
・思考・表現する力を加えて、友だちや様々な事象から積極的に学ぼうとすること。
(2) 副主題について
○「多様な価値観に着目」とは
大規模校のよさを生かし、多様な価値観と出会う中でよさだけではなく、自分とは違う見
方や考え方を受け止め認めること。
○「他者とのつながりを重視」とは
-2-
授業をはじめとするすべての教育活動において、自他を尊重し、望ましい人間関係を築き、
互いに高め合おうとすること。
(3) 本校の人権教育で育てたい能力・態度
育てたい能力・態度
感性
自他の生命の尊さに気付き、だれにとっても居心地がよい雰囲気を感じることが
できる。
知性
互いのよさや違いを認め、多様な価値観を理解するとともに、他者とのつながり
の中で生きていることを理解する。
技能
集団における規律を学ぶとともに、望ましい人間関係づくりの基礎となる伝え合
う力を身に付ける。
判断力
他者の考えや情報を踏まえ、自分のもっている知識や経験を振り返り、公正・公
平に判断する。
実践力
自分だけでなく、だれにとっても気持ちよく過ごすために必要なことに気付き、
進んで行動にうつすことができる。
2
研究内容
ア
人間関係づくり→人間関係づくり部会
○安心して生活や学習ができる良好な学級・学校づくり
・Q-U 調査の実施(年2回)
① K-13 法の活用(個別課題への対応を学年で話し合うことで学級経営の充実を図る)
②結果から、構成的グループ・エンカウンターなどの手立ての実施
③チーム支援の充実と教育相談の連携
・いじめ・なやみごと・生活アンケートの実施(早期発見早期対応を行う。スクールカウ
ンセラーとの連携により児童や家庭に効果的な支援を行う)
・その他の手立て(「学級パワー:学級の課題をPDCAサイクルで取り組み、教師と児
童との双方向からの学級づくり、話合いの活発化」等)
○児童主体の活動
・各委員会における活動(「おもいやり集会」等の実施・常時活動)
例)代表委員会を中心とした「おもいやり運動(いじめ防止活動)」
例)被災地からいただいた種からひまわりを育てることで、種に込められた思いを知り
震災を忘れないようにする「みんなで続けよう未来の種プロジェクト(復興のひま
わり part 3)」を活用した人権教育(JRC委員会が中心)
・思いやりを意識した学校内活動の活性化(5・6年生のあいさつ運動、あいさつボラ
ンティア)
○保護者への啓発
・人権だよりの発行(「おもいやり集会」の紹介等)
イ
授業研究→授業研究部会
-3-
○各教科等における授業改善の推進(全員参加の授業を目指す)
・人権教育とかかわりを明確にした一人一人を大切にする授業の実践(授業のユニバーサ
ルデザインに向けた取組)
・他者とのかかわりの中で学び合い、友だちのよさを受け入れ、そこから学びとることが
できる話合い活動の充実(ハンドサイン、つながり発言の定着を図る)
・道徳の授業の充実(人権教育に関連した内容項目の授業の計画的な実践)
・人権集中学習の充実(全校で人権教育を集中して扱う期間の設置)
○授業力・教師力の向上(高め合う教師集団を目指す)
・様々な手立ての共有化を図る機会を設定(「教師力パワーアップ作戦」・・・教師一人
一人が目標を設定し、ワールド・カフェで話し合うことで、悩みや手立てを共有・視覚
化する)
・教師の人権感覚育成のための研修の実施
ウ
調査・環境整備→調査・環境整備部会
○児童一人一人を大切にする指導者集団の確立
・教師の人権感覚チェックと課題把握
○児童・保護者へのアンケートの実施と結果の分析(各学級で手立てを考え、実践する)
○人権感覚を磨く掲示物等による環境整備
・「人権コーナー」等の設置による啓発活動の充実
・「発表の仕方」「話し方・聞き方名人」などの学習環境の整備
エ
その他の取組→学年部会・教科部会・PTA
○人権教育の全体計画・年間指導計画等の諸計画の整備・改善(人権教育という視点から全
教育活動の見直し)
○人権教育に関連する体験活動の実施
・障害者や高齢者とのふれあい・福祉体験(高齢者・手話・点字・車いす)等
・特別支援学級児童の交流学習
・星野富弘さんの生き方や思いから学ぶ思いやり学習
○異学年交流
・音楽の授業(歌4年→2年、4年→1年、リコーダー6年→3年)
・生活科の学校探検(2年→1年)
・生活科のかさっ子まつり(2年→1年)
・国語の作文「3年生は楽しいよ」(3年→2年)
・清掃(6年→1年)
○ALTとの交流
・ALTによる各教室訪問(給食、清掃、休み時間)
○歌声集会(1学期の歌「ゆうき」、2学期の歌「世界がひとつになるまで」等を各学級で
朝の会などで練習)
○心を耕す芸術鑑賞(PTA協賛)~「心ゆたかに」本物の芸術鑑賞教室
・思いやりコンサート(10月)
・日本の伝統芸能にふれる会(12月)
-4-
3
研究方法
(1) 研究組織
県・市教育委員会
校長・副校長・教頭
PTA
○:推進委員
研修推進委員会
校内研修
全体会
部会
班長
1年
2年
3年
4年
5年
6年
7年
人間関係
〇赤石
鳩山
逸見
〇栁澤
深澤
宿原
川村
〇福田
遠藤
森山
小林
池原
山口
今井
○根岸
〇柴﨑
須永
〇周東
坂本康
星野
川端
小澤
孝
〇政谷
根岸幸
仁居舎
安達
坂本和
山川
○藤生
渡邉有
加藤玲
渡辺正
〇加藤敏
〇峯岸
生形
天笠
田中
上松
〇板倉
川田
安村
小島
増田
柴﨑
須永
栁澤
づくり
授業研究
小越
調査・
〇栁井
環境整備
研究授業者
齋藤
坂本康
星野
加藤敏
学年部会・教科部会
家庭・地域
(2) 研究の経過と今後の予定
時
4月
4月
期
2日
9日
4月10日
⒋月25日
5月上旬
5月12日
5月20日
5月22日
5月下旬
6月
2日
6月
5日
6月12日
6月17日
内
容
〇学校経営方針(学校教育目標と研修との関連について)
第1回推進委員会(研修テーマの確認・実施計画・全体計画・年間指導計画の検討)
<毎月実施>
第1回全体会(研修テーマ共通理解・実施計画・全体計画・年間指導計画の確認)
<毎月実施>
第2回全体会(研修内容一覧表・研修組織の確認)
→部会別研修(各部会の取組について)
〇代表委員会による「おもいやり宣言」の提案 <第1回いじめ防止強化月間>
第3回全体会(人権教育に関する勉強会、人権教育全体計画・人権教育年間指導計画
の作成と見直し、各部会からの報告・提案)
第2回研修推進委員会(各部会における研修内容の追加について、本校における育て
たい能力・態度、人間関係づくりの手立て、指導案形式の確認)
第4回全体会(各部会における研修内容の追加について、本校における育てたい能力
・態度、人間関係づくりの手立て、指導案形式の確認)
〇第1回 Q-U 調査の実施(2~6年生)
〇いじめ・なやみごと・生活アンケートの実施<毎月実施>
〇JRC委員会による「おもいやり集会-みんなで続けよう未来の種プロジェクト-
(復興のひまわり part3)」
第5回全体会(教師の人権感覚チェック)
→部会別研修(各部会の取組)
第6回全体会(各部会からの報告・提案、個人目標の設定について)
→学年別研修(人権年間指導計画・人権集中学習の確認と見直し)
〇人権だより第1号発行
-5-
6月19日
6月23日
6月24日
6月30日
7月 3日
7月 4日
7月14日
7月17日
7月18日
7月22日
7月23日
7月24日
8月上旬
8月26日
9月 1日
9月19日
9月30日
10月
10月10日
10月14日
10月17日
10月24日
10月27日
11月 4日
11月 7日
11月中旬
12月
1~2月
3月中旬
群馬県総合教育センター足達指導主事による講義「道徳の時間の授業づくり」
第7回全体会(『わたしたちの道徳』について)
→学年別研修(道徳年間指導計画の見直し)
〇児童の変容を見るアンケートの実施
第8回全体会(前期指導主事訪問に向けて)
→部会別研修
〇前期指導主事訪問 (人権教育に視点を当てた授業実践の公開 後期発表者を除く全員)
○保護者人権感覚アンケートの実施
〇代表委員会による「おもいやり集会-おもいやりスローガンの発表」
○人権だより第2号発行
第9回全体会(前期指導主事訪問の報告、夏休みの研修内容について)
みどり市教育委員会神山指導主事による道徳模擬授業及び講義
スクールカウンセラーによる教育相談についての講義と実習
「教師力パワーアップ作戦」に向けての作戦会議
〇 Q-U 調査結果に基づく K-13 法の実施
〇地区別人権教育研究協議会公開授業検討
第3回研修推進委員会(夏休みの研修のまとめ、2学期の研修内容について)
第10回全体会(2学期の研修内容について)
→部会別研修(1学期の取組と2学期に向けて)
〇人権教育の推進を視野に入れた学級経営
学年別研修(指導案検討)
第11回全体会(地区別人権研究協議会に向けて)
→部会別研修(原稿検討)
〇おもいやり運動(いじめ防止)啓発ポスターの掲示
第4回研修推進委員会(笠小の取組の内容検討)
第12回全体会(笠小の取組について確認)
→部会別研修(掲示物作成)
〇思いやりコンサート
第13回全体研修会(指導案検討1・2・4年)
第14回全体研修会(指導案検討3・5・6年)
○人権だより第3号発行
〇地区別人権教育研究協議会(6授業公開・後期指導主事訪問をかねる)
〇JRC委員会による「おもいやり集会」
〇人権集中学習
〇第2回 Q-U 調査の実施(1~6年生)
〇集会委員会による「おもいやり集会」 <第2回いじめ防止強化月間>
〇日本の伝統芸能にふれる会(狂言)
〇校内研修のまとめ
〇各委員会による取組の発表「おもいやり集会」
〇研究紀要作成(中間報告)
-6-
(3) 検証計画
調査研究により見込まれる成果
検証方法
〇学校や学級内で良好な人間関係をつくり、だれをも思いや 学校評価
Q-U 調査
る児童を育成できる。
いじめ・なやみごと・生活ア
ンケート
〇安心して学習に向かうことができる学級で、課題に向かっ
て友だちと協力して取り組み、他者のよさだけではなく、
自分とは違う見方や考え方を受け止め、認めることができ
る児童を育成できる。
学校評価
Q-U 調査
いじめ・なやみごと・生活ア
ンケート
授業観察
「わたしたちの道徳」の記述
〇集団の中で、自己中心的な考えや行動ではなく、他者と協 学級経営計画観察記録
力して課題に取り組むことや、自分の考えを押し通さず他 いじめ・なやみごと・生活ア
者の考えも尊重することが、集団にとってよりよい結果と ンケート
なることが理解できる児童を育成できる。
〇教師が、人権教育の視点を重視した授業づくりを行い、一 一人一授業観察
学校評価
人一人を大切にした授業改善を推進することができる。
教師の人権感覚チェック
Ⅴ
全体構想図
学校教育目標
可能性に挑戦する学校
おもいやる子
(やさしく)
まなびとる子
(かしこく)
のりこえる子
(たくましく)
思いやる心をもち、協力して学びとる児童の育成
多様な価値観に着目し、他者とのつながりを重視した活動
生徒指導
授業研究
一人一人が大切に
される授業
互いのよさや自分らしさ
を発揮できる取組
人間関係づくり
互いのよさや多様な
価値観を認め合える
仲間
認め合い
学び合い
高め合い
学級経営
児童主体の活動
(おもいやり運動)
調査・
環境整備
安心して過ごせる
学級・学校
教科等指導
(教師力パワーアップ作戦)
教師の願い:人の気持ちを考え行動できる子・自ら学び考えを深めようとする子・あきらめずに最後まで挑戦する子の育成
児童の実態:大規模校ならではの希薄な人間関係・他人任せ「自分がやらなくてもだれかがやるだろう」
-7-
Ⅵ
研究実践
1
人間関係づくり部会の取組
望ましい人間関係を構築するために、教師だけでなく児童自らが考え行動できることを目指
して、以下の内容に取り組んできた。
(1) 安心して生活や学習ができる良好な学級・学校づくり
①構成的グループ・エンカウンターの実施
本校では、「たのしい学校生活を送るためのアンケート Q-U(以下 Q-U とする)」を年2
回実施している。Q-U では、学校生活における児童の個々の満足感や意欲、および学級集
団の状態を測定することができるため、学級経営や児童理解に活用している。
6月に第1回の Q-U を実施した。この結果を各学年ごとに分析したところ、自己肯定感
を高めることやコミュニケーション能力を高めリーダーを育成することが本校児童の課題で
あることが分かった。望ましい人間関係を構築し、安心して生活や学習ができる良好な学級
をつくろうとする児童の育成を目指し、以下のような構成的グループ・エンカウンターを行
った。
ねらい
活動名
(
)は実施した主な学年
○いろいろな友だちと集団で遊ぶ ・じゃんけん列車(1年、2年)
楽しさを味わい、新しい環境へ ・自己紹介カード交換会(2年)
のとまどいを和らげることがで ・バースディ・チェーン(3年、4年、5年)
きるようにする。
・青い糸(6年)
じゃんけん列車(1年)
○軽いスキンシップで緊張をほぐ ・一分で肩もみしながら話す(3年)
しながら、自己開示を体験し、 ・あいさつリレー(2年)
相手の話を受容的に聞くことが ・風船リレー(3年)・まぜていいよゲーム(3年)
できるようにする。
・愛してるわゲーム(3年)
・絵つなぎリレー(3年)
・ファーストネームゲーム(5年)
愛してるわゲーム(3年)
○肯定的なメッセージを受けるこ ・いいとこさがし(1年、3年、6年)
とで自己概念を自己受容し、も ・ひみつの手紙(3年)
のごとに対する肯定的な見方を ・ありがとうカード(2年)・あなたにプレゼント(5年)
培うことができるようにする。
・賞状あげっこ(2年)・がんばり賞(6年)
・いいとこ四面鏡(4年)・4つの窓(6年)
○ゲームを通して楽しく会話する ・わたしはだれでしょう(2年)
ことを通して、相互理解ができ ・5人をさがせ(3年)
るようにする。
・すごろくトーク(3年、5年)
○人前で話すことや相手の話を傾 ・カードトーク(4年)
聴することができるようにする。 ・アドジャン(4年)
・自己紹介ビンゴ(5年)
○あたたかい言葉をすすんでつか ・ふわふわ言葉とちくちく言葉(1年、3年)
うことで肯定的な人間関係が育 ・仲よくなる言葉(4年)
つようにする。
-8-
すごろくトーク(5年)
②学級パワー
定期的に学級に対する意識調査を実施
学級パワー
よりよいクラスにするための9つのパワー
11月
目ひょう
パワー
し、児童にも学級の実態が分かるよう右
100
95
ルール
パワー
のように視覚化したものが学級パワーで
役立ち
パワー
90
85
80
ある。
75
70
グラフから児童自らが課題をとらえ課
65
学習
パワー
発表
パワー
60
55
題解決に向けて話し合い、よりよい学級
50
にするために主体的に学級づくりにかか
わり、ともに高め合うパワーアップ活動
ありがとう
パワー
みとめ合い
パワー
を通して、学級集団の育成を図れるよう
助け合い
パワー
にした。
図
<児童の変容>
スマイル
パワー
5月
9月
11月
学級パワー
パワーアップ活動をすることにより、学級の結束を高めることができた。また、話合い活
動の活性化により、友だちの意見に共感したり、反対意見やつながり発言で考えを深め合っ
たりすることを通して、よりよい考えを作り出す充実感を実感することができた。Q-U の
活用と「学級パワー」による児童主体のパワーアップ活動により、互いのよさを認め合い、
学び合い、高め合う学級集団づくりに成果があった。
<主な活動の流れ>
学級パワーグラフの作成
話合い活動
パワーアップ活動の実践
(2) 児童主体の活動
①代表委員会を中心とした「おもいやり運動」
代表委員会では、いじめのない学校を目指し、以下のような「おもいやり運動」を昨年度
から行っている。
【あいさつ運動】
本校では、隣接する笠懸中学校生徒会と協力し、毎月
「2」の付く日に、あいさつ運動を行っている。進んで挨
拶をすることで、気持ちのよい一日を過ごすと共に、互い
の存在を認め合える気持ちを育てることができると考え
る。
また、代表委員会の活動を学校全体に広げていくために、
あいさつボランティアを募り、多くの児童があいさつ運動
に参加できるよう呼びかけている。
-9-
あいさつ運動の様子
【おもいやり集会】
友だちやお年寄りの人など、周囲の人たちを思いやるこ
とについて全校児童で考える機会を作るために、おもいや
り集会を行っている。右の写真は、お年寄りに対しての思
いやりを劇にして発表している場面である。児童の主体的
な発表が思いやりある行動をしようという意欲付けにつな
がったと考える。今後、代表委員会以外でもいくつかの委
員会でおもいやり集会を行っていく予定である。
おもいやり集会
<おもいやり集会後の児童の感想>
・なかまはずれにしないようにしよう。わるぐちをいわないようにしよう。(2年)
・友だちがころんだら、「だいじょうぶ。」と声をかけるようにしよう。(2年)
・友だちを大切にしようと思いました。お年よりの人に親切にしようと思いました。(3年)
・どんな劇をすれば、思いやりのことが伝わるか考えました。(5年)
・思いやりのある行動をたくさんしてほしいです。(5年)
【おもいやり宣言・おもいやりスローガンの作成】
思いやりの輪を学校全体に広げていくために、代表委員の呼びか
けにより、各学級でおもいやり宣言を作成した。作成したおもいや
り宣言は、廊下に掲示している。また、集まったおもいやり宣言か
ら、右のようなおもいやりスローガンを考え、ポスターを作成し、
全校児童に浸透するようにしている。
おもいやりスローガン
②みんなで続けよう未来の種プロジェクト
JRC委員会では、平成24年5月より「復興のひまわり」の活動に取り組んでいる。東
日本大震災の被災地から譲り受けた2粒の種を校内に蒔き育てていく活動を通して、豊かな
心を育成していくことをねらいとしている。3年目となる今年度は活動をさらに広げ、ひま
わりの種のルーツや、そこに込められていた思いを振り返り、思いやり・助け合いの心を広
げていくことをねらいとした「みんなで続けよう未来の種プロジェクト」をスタートした。
花壇には、各学級で育てたひまわりが美しい花を咲かせ、多くの種を収穫することができた。
みんなで続けよう未来の種プロジェクト
復興のひまわり
Part3
<おもいやり集会後の児童の感想>
・花が育つのと同時に、みんなの心の中にある「思いやりの心」も育ったらいいなと思います。(6年)
・ひまわりを見ていると「強い生命力」を感じます。(6年)
- 10 -
(3) 保護者への啓発
人の気持ちを考え行動ができる思いやり
の心を家庭、地域にも広めていくために、
保護者に対して「人権だより」を発行した。
内容は、各委員会が行った「おもいやり集
会」の様子や、集会を通しての児童の感想
が中心である。
さらに、人権だよりの裏面には、調査・
環境整備部会で実施した人権アンケートの
分析結果と、アンケート結果に合わせた保
護者への呼びかけを「笠小Happyアド
バイス」として掲載した。
また、学校だよりでも思いやりをもって
接することの大切さを保護者に向けて発信
している。
人権だよりや学校だよりを通して保護者
への啓発を行ったことは、学校と家庭、地
域が連携して人権意識を高めていくために
有効であったと考える。
人権だより
人権だより
第3号(裏面)
第2号
学校だより(裏面)一部抜粋
- 11 -
2
授業研究部会の取組
日々の授業の中で、児童一人一人を大切にした手立てや、他者とのかかわりの中で学び合う
場を取り入れることで、互いのよさや自分らしさを発揮し、自ら学び考えを深めることを目指
して、以下の内容に取り組んできた。
(1) 各教科等における授業改善の推進
授業改善の推進に当たっては、文部科学省から出されている『人権教育の指導方法等の在り
方について[第三次とりまとめ]
実践編』より、以下の「人権が尊重される授業づくりの視
点例」を参考にした。
〇人権が尊重される授業づくりの視点例
・自己存在感を持たせる支援を工夫する。
→「授業に参加している」
という実感を持たせる。
→「自分が必要とされている」という実感を持たせる。
→教師自身が一人一人を大切にする姿勢を示す。
・共感的人間関係を育成する支援を工夫する。
→「自分が受け入れられている」と実感できる雰囲気をつくる。
→「共に学び合う仲間だ」
と実感できる雰囲気をつくる。
・自己選択・決定の場を工夫して設定する。
→学習課題や計画
→学習内容、学習教材
→学習方法
を選択する機会を提供する。
→表現方法
→学習形態や場
→振り返りの方法を選択し、互いの学びを交流する機会を提供する。
上記の人権が尊重される授業づくりのための手立てとして、本校では、「授業のユニバーサ
ルデザイン」に向けた取組を行うこととした。一部の児童の発言だけで授業が進むのではなく、
児童全員が「楽しい」「分かった」「できた」と感じることができる授業、つまり、全員参加
の授業を目指すこととした。今年度は、以下のようなポイントで授業の工夫・改善に取り組ん
でいる。
◆ポイント1
表現せざるを得ない状況をつくる・・・指示の工夫、表現方法を多様化する
→「作業-確認-指名」方式を取り入れる
→ノートに書く
→指や手で示す
→動作化する
◆ポイント2
等
友だちのモデル発言を教材化する・・・友だちの発表を教材化する
→友だちの発言の意味を解釈して説明できる(=分かるということ)
◆ポイント3
ペアの活動を頻繁に取り入れる・・・話す機会を増やす
- 12 -
①一人一人・一単位時間を大切にする授業の実践(焦点化・視覚化・共有化を図る)
〇本時の学習のねらいの達成に向けて、主体的に取り組めるように「めあて」を意識させる。
〇本時の学習の最後に、自分の言葉で振り返りをさせる。
→できるようになったことを実感させる
→ねらいが達成できたか、学習内容が分かったかをより意識化させる
→児童のがんばりや思いを見取ることができる
〇ノート指導の充実を図る。
〇分かりやすい指示や提示の工夫をする。(耳・目・心身など、複数の感覚器官の活用)
耳
(聴覚から) 目
(視覚から) 心身(態度から)
○一度に一つ指示を出す
(短くシンプルに)
○板書併用
○机上の整理
(指示・手順〈番号付け〉・
○聞く時の姿勢
写真・絵・具体物・拡大コピ
○待つ時に何をするか知ら
ー・色分け・ICTの活用)
せておく
○動き併用(立たせたり、
目をつぶらせたりする)
○簡単明瞭な言葉で
(児童の知っている言葉)
○声の抑揚をつける
(トーンを変える)
○指示の場所を変える
○児童に指示を言わせる
○学習の流れ提示〈番号付け〉
(ねらい・活動内容・ゴール)
○実物、動作を示しながらの
指示(演示や例示を見せる)
○指示(活動の方法・時間
・手順)の予測をさせる
○「○時○分まで」活動のめ
やすを児童に考えさせる
(タイマーを利用)
- 13 -
②他者とのかかわりの中で学び合う場を取り入れた取組
○話合い活動の目的に合わせた形態の工夫
話合い活動を取り入れるときは、児童自らが話し合い
たいと思えるようなテーマを設定するようにした。また、
何のために、何について話し合うのか、話し合った結果
どうするのかを明らかにして、目的に合わせた形態(ペ
ア・グループ・全体)を取り入れるようにした。
グループ学習の話合いにおいて付箋紙を用いる取組は、
ペア学習
一人一人の意見や考えを友だちへ伝えたり、交流したり、
共有したりする際に、有効であると考える。
〇話合いのルールの定着
<ハンドサイン、つながり発言、話合いの仕方マニュアル、
児童の立場に立った課題設定>
本校では、話合い活動を充実させるための手立てとし
て、4年前からハンドサインやつながり発言、聞き方・
付箋紙を用いたグループ学習
話し方名人、また、話合いの仕方マニュアルを作成し、
活用している。今年度は、児童の立場に立った課題設定
を工夫することで、主体的な話合い活動ができるように
している。児童一人一人が「授業に参加している」とい
う実感をもてるように、全員のネームプレートを黒板に
貼るという取組も行っている。
全体での話合い活動
ネームプレートの活用
ハンドサインの活用
話合いの仕方マニュアル
③道徳の授業の充実
各学級において、人権教育に関連した内容項目の授業を、計画
的に次のような工夫をしながら実践してきた。
道徳の授業においても、全員参加を目指して上記のような工夫
を取り入れている。
導入でのアンケート結果の提 示
- 14 -
役割演技の様子
赤白帽子を使って考えを表現
挿絵を用いて工夫された板書
上記の取組を通して、どれだけ思いやりの心をもち、協力して学びとる児童を育成できたか
を見取るために、本校の人権教育で育てたい能力・態度をもとに、授業中における具体的な姿
を以下のように明確化した。
本校の人権教育で
育てたい能力・態度
5つの能力・態度を授業中に見取る基準
低学年
中学年
高学年
自他の生命の尊さに気
付き、だれにとっても
居心地がよい雰囲気を
感じることができる。
教師からの指示
や友だちの意見
を聞き入れよう
としている。
相手の立場や気
持ちを考え、自分
の意見や相手の
意見を大切であ
ると感じようとし
ている。
自分の考えを大
切にするととも
に、他者の意見
を尊重し、共感
し合おうとしてい
る。
互いのよさや違いを認
め、多様な価値観を理
解するとともに、他者
とのつながりの中で生
きていることを理解す
る。
友 だちの 考えを
よく聞き、仲よく
活動しようとして
いる。
友だちの意見を
聞き入れ、自分の
考えと比較しよう
としている。
自分と違う考え
の中にもよさを
見いだし、取り
込み、協力し合
って取り組もうと
している。
集団における規律を学
ぶとともに、望ましい
人間関係づくりの基礎
となる伝え合う力を身
に付ける。
学習ルールを身
に付けようとし
ている。
先生や友だちの
話をよく聞いた
り、みんなに聞
こえるように話し
たりしている。
学習ルールを守
ろうとしている。
学習ルールを守
っている。
友だちの考えと
自分の考えを比
べながら聞いた
り、友だちに自分
の考えを分かりや
すく伝えようとし
ている。
相手の立場を考
えて、内容を納
得しながら話合
いに参加しよう
としている。
他者の考えや情報を踏
まえ、自分のもってい
る知識や経験を振り返
り、公正・公平に判断
する。
自 分 の考 えをも
ち、友だちの考
えと比べようとし
ている。
友だちの考えや
与えられた情報
を、自分の考えと
比べ、違いやよさ
に気付こうとして
いる。
他者の考えや情
報 と自分 の考 え
を比較し、よさを
取り入れて、自
分 の考えを深 め
たり広げたりしよ
うとしている。
自分だけでなく、だれ
にとっても気持ちよく
過ごすために必要なこ
とに気付き、進んで行
動にうつすことができ
る。
友だちの意見を
受け止めて反応
(うなずき・拍手
・ハンドサインな
ど ) し よう と し て
いる。
友だちの意見を
聞いて、友だちの
意見のよさを認
めながら、自分の
意見を述べようと
している。
グループ活動や
話合い活動の中
で、友だちの意
見のよさを取り
入 れながら問 題
を解決しようとし
ている。
- 15 -
(2) 授業力・教師力の向上
①「教師力パワーアップ作戦」
様々な手立ての共有化を図る機会を設定し、児童だけでなく、教師間でも学び合いを行っ
てきた。経験年数の異なる教師同士が日々の授業実践を通して感じる課題や悩みなどを自己
開示し、アドバイスをし合ったり、解決策を練り合ったりして、教師力をパワーアップしよ
うというねらいである。
【教師力パワーアップ作戦の具体的な取組】
○担任(担当)する学級の児童の実態と教師の指導力の強みと弱みを分析し、強みを生かし
て弱みを克服できるように、教師一人一人が目標を設定した。さらに、その目標を一覧に
提示して職員全体で共有できるようにした。
○「ワールド・カフェ」という手法を取り入れ、3~4人の
グループを作り、リラックスした和やかな雰囲気の中で対
話を楽しんだ。以下のように、3つのラウンドをテーマを
変えて設定した。さらに、それぞれのラウンドではメンバ
ーを変え、最後に元のメンバーに戻って、振り返りをした。
対話を楽しんでいる様子
【テーマ】
第1ラウンド:1学期(特に授業)を振り返っての失敗談と成功例は?
第2ラウンド:他の先生方の体験を聴いて、どんなことを感じましたか?
第3ラウンド:2学期から具体的に何をしていきたいと思いましたか?
模造紙に書き込み、視覚化
書き込まれた模造紙
この取組を通して、日々の授業実践の課題や悩みなどを話
し合い、解決の手立てを共有・視覚化し、教師力のパワーア
ップを目指すための手立てのヒントを獲得することができた
と考える。
「気付き」を付箋紙に書き、
職員室に掲示
②教師の人権感覚育成のための研修
〇スクールカウンセラーによる教育相談についての講義と演習
教育相談の手法「自己開示」「傾聴・受容・共感」「コーチ
ング」について教師自らが体験することで、児童にどのよう
に接していけばよいのかを理解するよい機会となった。
〇群馬県総合教育センター指導主事による「道徳の授業改善と
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4人組になって話合い
指導案の書き方」の講義
〇みどり市教育委員会指導主事による道徳模擬授業と講義
道徳の授業についての講義や模擬授業を通して、道徳の授業力の向上を目指してきた。
3
調査・環境整備部会
児童一人一人を大切にするために、本校の実態を把握し、人権感覚を磨くための言語環境や
教室環境を整備することで、自他を尊重し、安心して過ごせる場となることを目指して、以下
の内容に取り組んできた。
(1) 児童一人一人を大切にする指導者集団の確立
本校の全職員に対し、6月に第1回人権感覚チェックを行った。(実際のチェック用紙は 20
ページの資料①参照)その結果を分析し、対応策を考え、職員全体で共通理解を図った。
課
題
▲児童の交友関係を把握している。
対
応
策
○常にアンテナを高くもち、休み時間に一緒に遊ぶな
どして観察を欠かさないようにする。
○担任クラスだけでなく、学年全体、学校全体の児童
を見ていき、情報交換を密にしていく。
▲明日の意欲につながるような言葉が ○帰りの会において、明日の予定や注意点といったこ
けをしている。
とだけではなく、翌日に前向きな気持ちで登校でき
るような言葉がけをしていく。
▲一人一人の顔を見て、名前に敬称 ○一人一人としっかりと向き合い、よいところを見つ
(「さん」・「君」)を付けて呼ぶ。
け、認めていく。
○名前で呼ぶ児童や姓で呼ぶ児童など区別をつけず、
平等に呼ぶようにする。呼び捨てにすることがない
ようにする。
▲失敗の多い児童を、先入観で評価し ○なぜ失敗をするのか、その原因の追及に努め、その
ない。
児童の立場に立った温かい指導を行う。
アンケート実施後には職員から「だれとだれが仲がよいのか、全部メモをとるつもりで様子
を見ていきたいです」「帰りの会でお説教というパターンが多いので、明日の意欲につながる
声がけをしていきたいです」等の意見や感想が、多数寄せられた。一人一人が自分自身の人権
感覚について見直す機会となり、どのように児童とかかわればよいかを考えながら、日々の教
育実践に取り組んでいる。12月に行われる第2回人権感覚チェックで再度対応策の見直しを
図っていきたい。
(2) 児童へのアンケートの実施と結果の分析
本校の全児童に対し、6月に第1回自己振り返りアンケートを行った。(実際のアンケート
用紙は 20 ページの資料②参照)その結果、「学校で友だちに会うのは楽しい」や「学校で好き
な授業がある」「先生たちは、努力したことを認めてくれる」等、回答が肯定的であった項目
も多数あるが、以下の項目が課題として挙げられた。そこで、人間関係づくり部会と協力しな
- 17 -
がら対応策を考え、実践している。
課
題
対
▲自分のよいところをあまり知らない。
応
策
○各クラスによるいいとこ探し
○構成的グループ・エンカウンターの実施
○ Q-U 調査による児童把握と K-13 法による
▲学校に行きたくないことがある。
対応策の実施
○構成的グループ・エンカウンターの実施
○スクールカウンセラーとの連携
▲相手のことを大切にすることは大事だと考 ○各委員会による「おもいやり活動」の実施
えているが、実際に行動にうつせない。
○思いやりポスターによる啓発
以上の活動を実施しながら、12月に行われる第2回自己振り返りアンケートで再度、対応
策の見直しを図っていきたい。
(3) 保護者へのアンケートの実施と結果の分析
本校の全児童の保護者を対象に、7月に第1回人権感覚アンケートを行った。(実際のアン
ケート用紙は 20 ページの資料③参照)その結果、以下のような傾向が見られた。
◎:肯定的として考えられる点
▲:課題として考えられる点
◎
子どもに声かけをしている。
◎
基本的なあいさつがしっかり言えるように伝えている。
◎
子どものしぐさや表情をみている。
◎
子どもの個性を認めている。
◎
子どもの頑張りや努力を認める言葉がけをしている。
◎
進路や職業の選択について、親の考えを押し付けないようにしている。
◎
子どもを先入観で評価しないように気を付けている。
◎
子どもが自分の意見を話せるように心がけている。
▲
感情にまかせ、子どもをしからない。
▲
子どもの話を親身になって聞く。
▲
男女の違いを押し付けるような言い方をしない。
上記の課題を踏まえ、学校だよりや人権だより等で、保護者への啓発活動を行っている。ま
た、スクールカウンセラーとも連携を図り、カウンセラー通信「こちらかめ池相談室」(20 ペ
ージの資料④参照)でも保護者の子どもへの接し方についての情報を発信している。
(4) 人権感覚を磨く掲示物等による環境整備
掲示物を利用して、児童の思いやりの心を伸ばせるように、以下
の作成を行った。
①第1回自己振り返りアンケート(児童用)の結果のまとめ
アンケート結果のまとめを見ることで、自分たちが今後どのよ
うなことを意識して学校生活を送ればいいか分かるようにする。
自己振り返りアンケート結果
のまとめ
- 18 -
②各学年による人権宣言
学年の人権目標目標及び、各クラスの人
権宣言とそのための具体的な取組を掲示す
る。
取組内容を話し合い、具体的な言葉にす
ることで、実際の行動につなげていけるよ
うにする。
学年人権目標と人権宣言
③各クラスによるいいとこ探し
児童同士でいいとこ探しを行い、それを掲示することで、お互いのよさを発見し、認め合
える場をつくる。この活動は、自己肯定感を高めることに有効であると考える。
各クラスによるいいとこ探し ①
各クラスによるいいとこ探し②
各クラスによるいいとこ探し③
④思いやりポスターの作成
絵画クラブを中心に、ポスターを作成し、校内の廊下に掲示することで常に思いやりを
意識できるようにする。
思いやりポスター①
思いやりポスター②
- 19 -
思いやりポスター③
以上の活動を取り入れたことで、日頃から友だちのいいところを探そうという意識が芽生
え、友だちのいいところをたくさん見つけてカードに進んで書く様子が見られた。
【調査・環境整備部会
資料①
資料③
資料】
資料②
資料④
- 20 -
4
学年部会・教科部会の取組
多くの人とのつながりが意識できるような場や機会を設定することで、自分の大切さや他の
人の大切さに気付くことができることを目指して、以下の内容に取り組んできた。
(1) 人権教育の全体計画・年間指導計画等の諸計画の整備・改善
(人権教育という視点から全教育活動の見直し)
(2) 人権教育に関連する体験活動の実施
○障害者や高齢者等とのふれあい・福祉体験(高齢者・手話・点
字・車いす等)
○特別支援学級児童の交流学習
○星野富弘さんの生き方や思いから学ぶ思いやり学習
<思いやり学習後の保護者の感想>
渡良瀬養護学校との交流
・ とても良い学習ができたと思います。これから先も、人との出会いがあります。一人一人、全て違う人間なの
で、その人のよさをみとめ、本人も感受性を大切にして成長していってほしいです。
・ 世の中には色々な人がいて、色々な感じ方がある事、今までは知らなかった事を学べてとてもいい経験に
なったと思います。今回勉強した思いやりを忘れず、誰に対しても思いやりの心をもってほしいと思います。
・ いのちの大切さや、人の気持ちを理解するなど、思っていた以上に考えることが出来ていてびっくりしまし
た。 思いやり学習をして、さらに心の優しい子になってほしいと思います。
思いやり学習の掲示物
手話教室
高齢者体験
(3) 異学年交流
○音楽の授業(歌4年→2年、4年→1年、リコーダー6年→3年)
○生活科の学校探検(2年→1年)
○生活科のかさっ子まつり(2年→1年)
○国語の作文「3年生は楽しいよ」
(3年→2年)
○清掃(6年→1年)
かさっ子まつり
音楽の授業での交流
(4) ALTとの交流
○ALTによる各教室訪問
(給食、清掃、休み時間)
(5) 歌声集会に向けた各学級の取組
歌声集会に向けて練習
- 21 -
歌声集会
(6) 心を耕す芸術鑑賞~「心ゆたかに」本物の芸術鑑賞教室
○思いやりコンサート(10月)
○日本の伝統芸能にふれる会(12月)
<思いやりコンサート後の児童の感想>
・ わたしは、思いやりコンサートで話や歌を聞いて、命の大切さがわかりま
した。「自分は生きていてすごいんだな。」とか「思いやりって大切なん
だな。」とか、いろいろな大切さがわかりました。(3年)
思いやりコンサート
・ 『生きる』について考えながら聴きました。あきらめなければ何でもできるということをあらためて実感しま
した。そして、本物の芸術とはこういうものなんだなと分かりました。これからも、人のことを思いやり、命を
大切にしていきたいと思います。(6年)
Ⅶ
研究実践の成果と課題
全教育活動の中で、多様な価値観に着目し、他者とのつながりを重視した活動を実践すること
を通して、思いやる心をもち、協力して学びとる児童の育成を目指し、研究を進めてきた。さら
に、児童だけでなく教職員も含めた全員が参画することで、互いに高め合う集団となることを目
指してきた結果、以下のような成果と課題が明らかになってきた。
1
成果
○
学級における人間関係の実態を把握し、学級経営を充実するための手立てを取り入れたこ
とにより、友だちのことを思いやる態度が身に付いてきた。また、児童主体のおもいやり運
動により、自ら考え行動しようとする児童が増えてきた。
○
一人一人を大切にするために、授業のユニバーサルデザインに向けた取組や他者とのかか
わりの中で学び合う場を教師が意識し、工夫しながら授業を実践してきたことにより、友だ
ちと協力しながら学習に取り組む児童が増えてきた。
○
教師の人権感覚チェックや、児童・保護者に対するアンケート調査の結果を分析したこと
により課題が明らかになり、解決するための手立てを考えることができた。また、人権感覚
を磨く言語環境などを整えることで、他者と協力しようとする意欲を高めることができた。
2
課題
○
大規模校ならではのよさを生かし、多様な価値観に着目させるための手立てをさらに工夫
し、よさだけではなく自分とは違う見方や考え方を受け止め認められるようにする必要があ
る。
○
児童だけでなく教職員も含めた全員が参画するために、さらに3つの部会と学年部会・教
科部会が相互に連携し合い、機能的に働くように、限られた時間の中での話合いの場のもち
方を工夫することが必要である。そうすることで、互いに高め合う集団により近付くことが
できると思われる。
- 22 -
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