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[学会ブログ】書評「世界で戦える人材」の条件((グローバ‥.2/6ページ

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[学会ブログ】書評「世界で戦える人材」の条件((グローバ‥.2/6ページ
[学会ブログ】書評「世界で戦える人材」の条件((グローバ‥.2/6ページ
「世界で戦える」人材の条件
渥美育子著(PHPビジネス新書)2013年
■書評
「世界で戦える人材」の条件【渥美育子著】について
今、新聞雑誌では、グローバル化、グローバル人材、グローバル教育とい
うテーマが日常的に取り上げられている。正にグローバル・ブームと称し
ても良い程である。
渥美育子氏は、この著書で、日本におけるグローバル化の視点が間違っ
たとらえ方で進められているという指摘をし、正しいグローバル化のあり
方を論じている。では、真のグローバル化とは、何だろうか。80年代日本
は世界市場で躍進し、その後失われた20年の間に日本企業のグローバ
ル市場でのプレゼンスは低くなって来た。その要因について著者は、「日
本企業がグローバル・モデルへのチェンジに失敗したため」と指摘してい
る。グローバル化の進展過程において、日本のビジネスを外国に拡大す
るというのが80年代の「国際化」で、これに対して、90年代以降は、世界
全体の視野から地球単位で傭轍的に世界を捉え、世界の中の日本、日
本から世界へ発信しようとする「真のグローバル化」へモデルチェンジをし
なければならなくなった。日本は、そのチェンジに乗り遅れたまま、グロー
バル化の議論をしているところに根本的な問題があると論じている。
私自身、日本の代表的な情報エレクトロニクス企業に37年勤務し、海外
駐在も12年務め、最後は海外事業本部長として世界を舞台に駆け回り、
その後世界の通信情報サービス企業の日本の代表を15年程務めたが、
この2つの舞台での経験に照らしてみて、著者の指摘は正しいと実感して
いる。もともと組織名も海外事業本部とか海外営業本部とか称し、国内で
成功していたものを海外で売ろうという発想がスタートであった。これは、
国内に適度に大きな市場があるので、そこでまず売れる商品を作り、その
http://S−gb.net/news/blog/823/
2013/09/16
[学会フログ】書評「世界で戦える人材」の条件くくグローバ...3/6ページ
成功をベースに世界へ拡大しようというステップであった。それに対して、
最初から世界に向けて開発し、商品を提供しようとするグローバル企業は
全く違った発想で組織をつくり、人材を育成し、商品を開発提供する。その
違いが、日本企業のガラパゴス化という現象を生む結果となってしまっ
た。その意味で、この最初の論点は、これからの日本の真のグローバル
化のために最も重要な出発点だと思う。
このような視点に立って、著者は、これからの日本企業が取るべき、真の
グローバル化へのステップとして、5つの「道」を提唱している。
道1.グローバルマインドを持つ。
道2.「文化の世界地図」で世界を傭轍的に見る。
道3.倫理とリーガルマインドを強化する。
道4.日本のDNAを磨き、日本型グローバル人材を目指す。
道5.21世紀型学習法に切り替える。
日本の武道、茶道、柔道にならって、「グローバル道」の提唱である。
このステップの詳細は、著書を読んでいただくとして、特に注目した点とし
て、次の2点を上げたい。
第一の点は、「グローバルマインドを持つ」という点に関連して、「日本人
は一つの軸にこだわって考えがちである。最低2つ以上の軸を持って、マ
トリックス志向をすべきである。特に、空間軸(世界空間)と時間軸(5000
年)のスケールが欠如している。」と言うことを指摘し、併せて、「マルチ・カ
ルチュラル・レンズ」で事象を見る訓練をすることを薦めている。
そのための有益なツールとして、「文化の世界地図」をデーターベースとし
て提供している。これは、世界を1リーガルコード、2モラルコード、3レリ
ジャスコード、4ミックスコード、の4つの文化コードに分け、グローバル時
代の文化の世界地図として表示し、グローバルナビゲーターという30カ
国の情報と共に提供している。このナビゲーターと文化の世界地図は、実
際に現地で活動する際の貴重な羅針盤になると思う。たとえば、最近起こ
ったアルジェリアでの事件等を考えると、このようなナビゲーターと文化の
世界地図を多くの人達が共有することがますます大事になって来ると思
う。
私自身、米国、英国でのビジネス経験を主体に仕事をしていた後に、スペ
インに駐在しビジネスを経験したが、それまでの英米を中心としたものの
考え方や仕事の仕方とは全く違っていて、そのたびに驚かされることが多
く、その時このような文化の世界地図を参照していれば,役に立ったに違
いないと思った。
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【学会フログ]書評「世界で戦える人材」の条件くくグローバ… 4/6ページ
第二の点は、日本のDNAを磨き、日本型グローバル人材を目指すという
点である。グローバル化というと、ともすれば、日本的なものを捨てて、世
界標準に合わせるという一辺倒になり勝ちだが、それとは逆に、日本の持
つ伝統や価値や日本人としてのアイデンティティを大事にして、それをグ
ローバルな世界へ高めてゆくことこそが、真のグローバル化への道である
とう論点は、極めて重要な点だと思った。
この著書は新書版にも拘らず、グローバル化、グローバル人材という、も
う皆の手あかにまみれたように思われているテーマについて、鋭く問題点
を指摘し、それによって日本にグローバルビジネスの面で実際に起こって
いる問題を例示し、それを今後どのようなマインドセットと方法で取り組ん
で真のグローバル人材の育成をして行くかについてグローバルナビゲー
ターとそのための文化の世界地図を提供して、指針を与えようとしてい
る。
各章には、多々考えさせられる材料や問題点や実践できる方法が豊富に
例示されており、グローバルビジネスに取り組む企業、団体、学校、教育
研究機関、個人がそれぞれのレベルで、議論を深め、情報を共有し、実
践を重ねて行くことにより、日本全体が真のグローバル化の方向へ力強く
進んでゆく為の刺激を与える著書になることを期待したい。
■書籍データ
▽書籍タイトル
「世界で戦える」人材の条件
▽著書名
渥美育子
▽出版社
PHPビジネス新書
▽発売日
2013年6月19日、253ページ
▽目 次
第1章:日本人女性企業家、米国で躍進する
第2章:グローバリゼーションとの出会い、そして衝撃
第3章:「文化」という要素から世界が見えた!
第4章:本当の「グローバル化」を理解する
第5章:グローバルマインドを心に設定する【道1】
第6章:<文化の世界地図>で、世界を僻轍的にみる【道2】
h叫)://S−gb.net/news/blog/823/
2013/09/16
【学会ブログ】書評「世界で戦える人材」の条件くくグローバ… 5/6ページ
第7章:倫理とリーガルマインドを強化する【道3】
第8章:日本のDNAを磨き、日本型グローバル人材を目指す【道4】
第9章:21世紀の学習方法に切り替える【道5】
■書評筆者プロフィール
北里光司郎(きたぎとこうしろう)−グローバルビジネス学会会員
1960年東京外国語大学英米科卒業
1060年富士通株式会社に入社本社欧州事業部長、北米事業部長、
総合企画室長、英国ICL社常務取締役、富士通常務理事海外営業本部
長を歴任。アメリカ、スペイン、英国に計12年間駐在
1997年BritishTelecom(BT)ジャパン代表取締役会長
2004年株式会社パワードコム代表取締役会長
2006年BTジャパン㈱会長
2012年BTジャパン退社、㈱シナジー代表取締役会長
2013年国際キワニス日本地区ガバナー
対外活動:
日本経団連評議員 情報通信委員会委員(2004年−20012年)
一般社団法人 国際経営者協会(IMA)理事
一般社団法人 グローバル教育研究所理事
東熊会(熊本県出身者在京経済人の会)名誉会長
肥後嘩啄塾塾長
社外役員歴:
FMジャパン(J−Wave)、日本テレコム、Jフォン東日本、西日本
ツーカーセルラー東京、東海、関西、韓国LGテレコム、
東京キワニスクラブ 2000年入会、2019年東京キワニスクラブ会長
2012年国際キワニス日本地区ガバナー
http:〟S−gb.net/news/blog/823/ 2013/09/16
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