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環境にやさしい自転車のために ~平成 20 年度 自転車環境対策事業
環境にやさしい自転車のために ~平成 20 年度 自転車環境対策事業報告より~ ■ 目的 近年、環境問題が社会問題化し、大きな関心が寄せられています。経済発展に伴う大量生産、大量消 費、大量廃棄などが、様々な環境問題を引き起こす要因になっています。EU(欧州連合)では電気電子 製品の廃棄等の際に問題となる、環境破壊を引き起こす物質(環境負荷物質)の使用を制限し、規制し ています。 現在、自転車に対しては RoHS 指令等で対象としている環境負荷物質の規制はありませんが、いずれ 法的な対応を求められる可能性があります。このような状況を受け、本事業では自転車及び自転車部品 の環境対策向上のため、自転車部品に含まれている環境負荷物質含有状況などのデータを収集するとと もに、使用を回避・削減する際の技術的な課題の検討を行いました。 ■ 環境負荷物質 地球環境や人体にとって負荷となる物質のことです。家電や自動車、玩具など多くのものに使用され てきました。近年では人の健康・環境に悪影響がない安全な製品作りの取り組みとして、EU では RoHS 指令、WEEE 指令、ELV 指令等が施行されています。 ・RoHS 指令 EU において、家電、コンピューター、通信機器などの電気電子 機器類について有害な化学物質の使用を制限するという欧州理事 会指令。対象となる化学物質はカドミウム、鉛、水銀、六価クロ ム、ポリ臭化ビフェニル(以下 PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテ ル(以下 PBDE)の 6 種類。含有濃度の基準値が右表のように定め られており、基準値以下であることが求められます。 環境負荷物質 カドミウム 鉛 水銀 六価クロム PBB PBDE 基準値 100 ppm 1000 ppm 1000 ppm 1000 ppm 1000 ppm 1000 ppm ■ 調査内容 自転車部品に環境負荷物質が含有されているか現状を把握するため、RoHS 指令により使用を制限され ている 6 物質を対象として調査を行いました。調査対象としたのは、年間販売量の約 70%を占めている 一般用自転車のうちのシティ車、電動アシスト部に PBB、PBDE が使用される可能性のある電動アシス ト自転車、樹脂部品を多く使用する幼児用自転車です。市場に出ているごく一部の自転車についてモデ ル的に調査し、すべての自転車を対象としたものではありません。 1 ■ 調査対象部品 環境負荷物質含有の可能性がある部品を中心に分析しました。 ・一般用自転車(シティ車)、電動アシスト自転車・・・21 部品、46 パーツ 1 フレーム 12 ハブ 2 フレーム部品 13 スポーク 3 サドル 14 ランプ 4 ペダル 15 リフレクタ 5 ブレーキレバー 16 バスケット 6 ブレーキワイヤ類 17 チェーン引き 7 キャリパブレーキ 18 チェーンケース 8 バンドブレーキ 19 ベル 9 ギヤクランク 20 かぎ 10 にぎり 21 電動アシスト部 11 どろよけ 1 フレーム 9 どろよけ 2 サドル 10 バスケット 3 ペダル 11 チェーンケース 4 ブレーキレバー 12 ベル 5 ブレーキワイヤ類 13 補助車輪 6 キャリパブレーキ 14 樹脂製ホイール 7 バンドブレーキ 15 その他(保護具など) 8 にぎり ・幼児用自転車・・・15 部品、21 パーツ ■ 分析方法 シティ車 8 銘柄と電動アシスト自転車 3 銘柄から 230 パーツ、幼児用自転車 8 銘柄から 167 パーツを 採取し、環境負荷物質の含有状況を調べました。 含有の有無を調べるため、エネルギー分散型蛍光 X 線分析装置(EDX)による定性分析を行いました。 定性分析では、含有している元素の種類とおおよその濃度は測定可能ですが、六価クロムや PBB、PBDE など、価数や化合物の特定はできません。 定性分析後、カドミウム・鉛・水銀・クロム・臭素が検出と判定されたものについて各物質に適した 方法で定量分析を行い、含有量や六価クロム、PBB、PBDE であるかを調べました。カドミウムと鉛は ICP 発光分光分析法により、水銀は加熱気化(金アマルガム捕集)原子吸光分析法により、六価クロムはジ フェニルカルバジド吸光光度法により、PBB、PBDE はガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)法により、 それぞれ定量分析を行いました。 これらの分析装置、分析方法については、分析機器製造業者や分析業者のホームページにて、詳細に 紹介されています。 2 ■ 分析結果 以下の 9 部品において、一部の銘柄に RoHS 指令の基準値を超える環境負荷物質を確認しました。 (注)以下の部品全てに含有しているものではありません。 サドル ブレーキワイヤ 錠 樹脂製トップ にぎり アウタの樹脂部分 キャリパブレーキ かぎ(金属部) ベル 本体樹脂部分 どろよけ 先端チップまたは 樹脂部分 本体の戻しばね (めっき) ランプ 電球の接点、リー ド線、光センサー のセンサー部 取付部の ゴムパッド 幼児用自転車 樹脂製装飾品 ■ 性能比較について 環境負荷物質は主に以下の目的で使用されてきたと言われています。 ・ 鉛 … 樹脂加工時の熱安定性や使用時の耐久性を向上させるため ・カドミウム、水銀 … 塗料に使用する顔料の成分として ・六 価 ク ロ ム … 防錆処理のための化成皮膜の成分として ・P B B 、 P B D E … 電動アシスト自転車の充電器ケースの難燃剤として そこで、にぎり・サドルの樹脂製トップに関して、環境負荷物質の含有状況による性能の違いがある か、サンシャインカーボンアーク灯による促進耐候性試験前後の色や強度を測定調査しました。 その結果、一部に色の変化がありましたが、にぎりの引張強さ、にぎりの離脱力試験等、今回の調査 範囲では、環境負荷物質による部品性能への影響は小さいと考えられます。 3 ■ 環境にやさしい自転車のために 今回調査したシティ車 8 銘柄、電動アシスト自転車 3 銘柄、幼児用自転車 8 銘柄の一部の部品は環境 負荷物質の基準値を超えて使用されていることが分かりました。 部品の選択次第では、環境負荷物質の基準値を超えない部品を使用することが可能であることも分か りましたが、それに伴うコストアップや、全自転車部品について未含有であることを確認するためには 多大な労力と費用がかかることなど、その課題は多くあります。 環境負荷物質の基準値を超えない製品作りのためには、例えば、ロットあるいは月ごとに抜き取り検 査・分析を行うなど品質管理の徹底や、部品メーカー及びその川上から一括管理するなどして、環境負 荷物質使用回避に関するマネジメントシステムを構築することなど、各企業、さらには業界全体で取り 組むことが必要です。 なお、環境負荷物質含有状況の調査に関しましては、自転車構成部品のうち、一部の部品及びパーツ を対象に分析調査を実施したものであり、本調査結果は、自転車の車種全体及び自転車構成部品の全部 品を対象に分析調査したものではありません。 自転車部品の環境負荷物質に対する取り組み 平成 20 年 10 月より、社団法人自転車協会では環境負荷物質削減 のため、「自転車安全基準」の中に自転車部品に関して RoHS 同等 の基準を設け、業界での自主的な取り組みが始まっています。 その基準に適合した自転車には安全・環境基準適合のシール (BAA マーク)が貼布されています。 本冊子及び本冊子作成の基となりました報告書は当協会ホームページからも入手できます。 [URL] http://www.jbpi.or.jp/ ぜひご参照いただき、環境負荷物質の使用回避・削減の取り組みの一助としていただければ幸いです。 4