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1 平成22年3月15日 片岡総合法律事務所パートナー弁護士 中央大学

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1 平成22年3月15日 片岡総合法律事務所パートナー弁護士 中央大学

平成22年3月15日
片岡総合法律事務所パートナー弁護士
中央大学法科大学院特任教授
小
林
明
彦
電子手形とは何か。企業の資金調達はどう変わるのか。
Ⅰ
電子記録債権制度創設の背景
1
約束手形の難点、手形廃止の流れ
2
期日振込では資金化に使えない。
Ⅱ
従来の手形レス取引
1
手形割引に代わる一括ファクタリング
手形決済の難点・・・発行事務、印紙税、管理、運搬
↓
支払企業(振出人)としては、手形を廃止したい。
↓
手形を廃止するなら、それに代わりうる資金化可能な手段を講じなければな
らない(下請法に関する公取通達、部長通知)。
↓
一括ファクタリングなど4つの一括決済方式が公取によって認められてきた。
(1)譲渡担保による当座貸越
・集合将来売掛債権を譲渡担保に取り、当座貸越で融資の形態。
・譲渡担保のリスク・・国税徴収法24条(譲渡担保権者の物的納税責
任)
→これを回避するための停止条件付き代物弁済条項の有効性につ
き最高裁でも否定。
(2)一括ファクタリング
・ファクタリング会社(銀行)が売掛債権を買い取り(真正売買)、売
主(納入企業)の資金需要に応じて買取代金の支払時期及び支払金額を
調整する。
(3)一括信託
・売掛債権を信託し、信託委託者(納入企業)の資金需要に応じて信託
受益権を売却しその売却代金を支払う。
(4)併存的債務引受方式
・支払企業の買掛債務を金融機関が併存的債務引受し、債権者(納入企
業)の資金需要に応じて引受債務の弁済期を前倒しして支払う。
1
※本資料の一部または全部を無断で転載または複製する事を固くお断り致します。
2
指名債権であるがゆえの限界
(1)二重譲渡リスク回避のための先行登記確認などの負担
(2)回し手形的な使い方(流通性)にも限界
(3)将来債権譲渡の形を採るため将来の相殺などに理論的な難点
(4)各社の契約内容(権利義務関係)がまちまち
*1
かつての一括ファクタリング
・・毎月締めて、当月分の債権を都度譲渡する。
債権者(納入企業)
F
民法譲渡
債務者(支払企業)
*2
債権譲渡特例法の施行(平成10年10月16日)&将来債権譲渡の
拡大(最判平成11年1月29日)
先行譲受人X
債権者
F
①登記
②民法
債務者
譲受人
債権者
F
②登記
①1 年分民法譲渡
債務者
2
※本資料の一部または全部を無断で転載または複製する事を固くお断り致します。
* 3
反対債権による相殺はできるのか
譲受人X
債権者
F
②登記
①1 年分民法譲渡
③反対債権
債務者
Ⅲ
電子記録債権の概要
趣旨:金銭債権の取引の安全を確保することによって事業者の資金調達の円滑
化等を図る。
1
電子記録債権とは?
→
その発生又は譲渡について電子記録債権法の規定による電子記録を要
件とする金銭債権(法2条1項)
2
債権の性質は?
→
原因債権とは別個。発生記録によって新たに創設される権利。
→
無因性あり(原因関係に左右されない)。
→
設権性あり(記録によって権利が発生する)。
3
電子記録の方法は?
→
発生記録(振出に相当):債務者と債権者で記録機関に記録請求し、
記録原簿に記録
→
譲渡記録(裏書に相当):譲渡人と譲受人で記録機関に記録請求し、
記録原簿に記録
→(実務上は:記録機関と利用者との間に請求代行者が置かれ、その
代行者にファクスやインターネットで依頼すれば足りるとの仕組み
を設定)
→
支払等記録:支払については、支払等記録がなくても債権は消滅する。
ただし、一般的には法62条の口座間送金決済契約に基づき銀行が自動的
に債務者口座から債権者口座への送金を行い、当該銀行から記録機関への
通知により支払等記録が行われるため、同期性が確保される。
3
※本資料の一部または全部を無断で転載または複製する事を固くお断り致します。
4
5
流通性保護の仕組みは?
→
人的抗弁の切断、善意取得の規定あり(ただし発生記録中で排除も可)
→
支払免責の規定もあり(cf 手形法40条3項)
その他の記録にはどんなものが?
→
保証記録:従来の手形保証のほか、裏書人の遡求義務に相当する形態
もあり(特別求償権)。
→
分割記録:手形にはなかった機能。小口化して回し手形的に使え
ば、貨幣類似機能も。
→
質権記録
→
変更記録
6
不渡制度は?
→
債務者の不払いによるペナルティー(cf 手形交換所の銀行取引停止処
分も自主ルールに過ぎない。)
→発生記録を2年間停止
信用情報として関係金融機関で共有可(JEM
COでは銀行取引停止処分までは設けない)
JEMCO電手取引の特長
Ⅰ【法的特長】
* 業務規程のほか、利用契約の締結により私法的法律関係を規律
* 利用契約:記録機関、利用者、請求代行者兼電手買取銀行で締結
1
請求代行者を介した記録請求を必須化
・ 厳格なシステム対応は、専門家である請求代行者に委ねる。
・ 請求代行者への委託は、セキュリティーのもとにWEBやファクスで。
→柔軟性のある取引の展開を可能に
2
請求代行者への委任関係を予め利用契約上で構築
・ 発生記録:債権者→債務者→請求代行者
・ 譲渡記録(電手買取以外):譲受人→譲渡人→請求代行者
・ 譲渡記録(電手買取):譲渡人→電手買取銀行→請求代行者
→手続負荷を軽減して簡易迅速な取引を可能に
4
※本資料の一部または全部を無断で転載または複製する事を固くお断り致します。
3
電手買取銀行による原則買取義務を予めセット
・ 資金化のための割引先は自由に選定できる。
・ 電手買取銀行に割引依頼があった場合は原則的に買取義務あり。
・ 譲受人からの割引依頼であっても同様。
→債権者の自由度を維持しつつ、資金化を容易に
・ このため、発生記録にあたり電手買取銀行による極度チェックあり。
→信用度の高い電手債権として存在
4
口座間送金決済を原則義務化
・ 支払等記録は口座間送金決済銀行から記録機関に対する通知で行われる。
・ 支払企業は、支払等記録の事務が不要
→支払等記録の遺漏による二重払いリスクから解放
5
権利内容の画一性を確保
・ 電子記録債権法上は、善意取得や抗弁切断規定の適用を排除する特約も
認められているが、JEMCOではこれを認めないこととしている。
→シンプルで画一的な権利内容→取得にあたり調査が不要
Ⅳ
信用創造機能を活用した地域経済の活性化
支払人(電手の債務者)の信用で流通
地方公共団体は大きな信用力
資金投入を必要としない経済施策
以
上
5
※本資料の一部または全部を無断で転載または複製する事を固くお断り致します。
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