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バロック時代の音楽

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バロック時代の音楽
高校講座
学習メモ
10
音楽 Ⅰ
講師:渡 邊 學 而 バロック時代の音楽
今回は、音楽鑑賞の第2回目、前回の中世、ルネサンスの次の時代、「バロック時代」
といわれる時代の音楽を幾つか聴いてみることにします。
■ヴァイオリンの音楽 ~ヴィヴァルディの『四季』~
このバロック時代は、1600 年から 1750 年のほぼ 150 年間の時代を指しま
す。バロック時代には、ヴァイオリンをはじめとするいろいろな楽器が出てき
て使われるようになり、器楽音楽が発達したことが一つの大きな特徴です。そ
れ以前の、合唱のような声だけが中心だった時代の音楽から大きく変わってき
たわけです。楽器の中でまずいちばんたくさん使われていたのがヴァイオリン
系の楽器と、チェンバロという楽器です。
ヴァイオリン系の楽器は、ヴァイオリンと、それより少し大きなヴィオラ、
もっと大きく、いすに腰かけて弾くチェロ、立って演奏する大きなコントラバ
▼
スです。
それからチェンバロですが、チェンバロというのはイタリア語で、フランス
では「クラヴサン」、英語では「ハープシコード」と言います。形は皆さんの知っ
ているグランドピアノに似ていて、鍵盤を弾いて音を出す楽器なのですが、音
の出し方はまったく違います。ピアノが弦を打って音を出すのに対して、チェ
ンバロは弦をはじいて音を出す楽器です。チェンバロはバロック時代の合奏曲
に必ずといっていいほど使われていた重要な楽器でした。
まずはじめに、バロック時代の代表的な作品でたいへんよく知られている、
ヴィヴァルディ Antonio Vivaldi(1678 ~ 1741)の協奏曲集『四季』
(作品8『和
声と創意の試み』の第1~4曲)の中の「春」を聴いてみます。この曲は三つ
の楽章からできていますが、その第一楽章だけを聴いていただきます。この曲
は、ヴァイオリン系の楽器の合奏-弦楽合奏といいます-とチェンバロ、そし
て独奏ヴァイオリニストが一人で弾くパートも入っています。千住真理子の
ヴァイオリン、クルト・レーデル指揮、イギリス室内管弦楽団の演奏で聴きます。
♪・♪・♪
弦楽合奏に混じって、ジャンジャンという金属的なはじくような音が聴こえ
ましたでしょうか? それがチェンバロの音です。
■フルートを使った音楽 ~バッハの『管弦楽組曲 第2番』~
バロック時代にはヴァイオリン系の楽器とチェンバロだけが発達したわけで
はもちろんありません。フルート、オーボエのような木管楽器、あるいはホル
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音楽 Ⅰ
第 10 回:バロック時代の音楽
ンやトランペットのような金管楽器も加えられるようになりました。もっとも、
これらの木管楽器や金管楽器は、現在使われているような性能の良い近代的な
楽器ではなく古い形のものでしたが、それが弦楽合奏の中に加えられて器楽合
奏曲が作られることも多かったのです。
こうした管楽器が弦楽合奏の中に例えば1本加わると、弦楽合奏と音色が違
いますから目立ちます。ですから独奏楽器のように聴こえます。たしかにそう
した効果を出すために作られた曲が多いのですが、そのように使われていた管
楽器でも、合奏の部分になると、例えばフルートやオーボエでは、第一ヴァイ
オリンのパートを一緒に弾くようにできています。実は、今聴いていただいた
ヴィヴァルディの『四季』でも、独奏ヴァイオリンは自分のパートばかり弾い
ているわけではなく、合奏の時には第一ヴァイオリンを弾いていました。バロッ
ク音楽というのはそのようにできているのです。
次に、バッハ Johann Sebastian Bach(1685 ~ 1750)の『管弦楽組曲 第
2番 ロ短調』(BWV.1067)の中から2曲聴こうと思います。この曲は弦楽
合奏とチェンバロの他にフルートが1本入ります。まず第5曲の「ポロネーズ」
を聴いていただきます。この曲はABA、つまりいわゆる三部形式という形で
書かれていて、Aの部分ではフルートが合奏と一緒に演奏し、Bの部分すなわ
▼
ち中間部で初めて独奏をします。それでは、ハンス・マルティン・リンデのフ
ルート、コレギウム・アウレウム合奏団の演奏で聴いていただきます。
♪・♪・♪
バッハのこの作品はだいたいどの曲もこのように作られていますが、1曲全
部がフルートの独奏になっている曲もあります。それが最後の第7曲「バディ
ヌリ」という曲です。
♪・♪・♪
■オラトリオの合唱曲 ~ヘンデルの『マカベウスのユダ』~
このようにバロック時代には、器楽の音楽が非常に発達してさまざまな形の
器楽曲が作られていったのですが、この時代の音楽にはもう一つ大きな特色が
あります。それは、それまで発達してきた声楽と新しい器楽が結びついて非常
に規模の大きな音楽が作られ、発展していったということです。その代表的な
ものがオペラであり、カンタータやオラトリオです。そこで最後にそうした作
品の中から1曲、ヘンデル Georg Friedrich Haendel(1685 ~ 1759)のオラ
トリオ『マカベウスのユダ Judas Maccabaeus』の中の合唱曲「見よ勇者は帰
る See the conqu’ ring hero comes!」を聴きます。このマカベウスのユダは旧
約聖書に出てくる英雄の名前で、この合唱曲は勝利をおさめて帰ってきたユダ
の功績をたたえて故郷の人々が歌う賛歌です。この曲はよくスポーツなどの表
彰式の時に演奏されますので、聴いたことのある人も多いと思います。では、
チャールズ・マッケラス指揮、ワンズワース学校合唱団、イギリス室内管弦楽
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第 10 回:バロック時代の音楽
団の演奏で聴いていただきます。
♪・♪・♪
バロック時代にオペラやオラトリオが発達したと言いました。オペラとオラ
トリオは、最初は同じように出たのですが、オペラの方は今日までずっと舞台
上の演技があります。オラトリオも初期(1600 年初演のカヴァリエーリの『魂
と肉体の劇』など)には舞台上の演技があったのですが、それがだんだん宗教
的なものを演奏するようになって舞台での演技を伴わない形で現在まで発展し
てきている、その点が両者の違いと言えます。
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