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過年度の年次報告書

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過年度の年次報告書
4.2.
出前授業/公開講座「スーパーボール工作」企画・実施報告
高田 将一
【はじめに】
技術教育支援センターでは毎年、公開講座や出前授業などを実施している。しかし、そのテーマ
は機械や電気工作系に偏りがあり、機械・電気系以外の内容を実施することが検討課題の 1 つであ
った。
北海道内の 4 高専(函館・苫小牧・旭川・釧路)では、毎年 4 校で順番に企画・実施する北海道
地区技術職員 SD 研修会がある。平成 24 年度の同研修会で、出前講座等のテーマ共有の合意がなさ
れた。さらに苫小牧高専様の技術教育支援センターで実施している「スーパーボール工作」の実習
を行い、ノウハウを教えていただいた。これを受けて当センターでも化学系の「スーパーボール工
作」のテーマで公開講座・出前授業を実施することとした。ここでは、その企画から実施状況まで
を報告する。
【企画・事前準備】
(1) 出前授業/公開講座の概要
今回の出前授業と公開講座の概要を
表 1 にしめす。出前授業とは小中学校等
の授業や活動に対する学外活動であり、
公開講座は本校での活動である。運営ス
表 1 出前授業・公開講座の概要
形態
会場
日時
参加者
スタッフ数
受講対象
受講料
出前授業
公開講座
上湯川小学校
本校創造工房
平成 26 年 1 月 7 日(火) 平成 26 年 1 月 8 日
(水)
13:30~15:00
13:30~15:00
18 名
28 名
7名
9名
小学 1 年生~小学 6 年生
無料
タッフは出前授業についてはセンター
員 7 名、公開講座については同 9 名で実
施した。
(2) 使用した道具
スーパーボール作成に使用した道具は、以下の通りである。

薬品類 ··· ラテックス、食酢、ポスターカラー

容器類 ··· 洗浄瓶(250mL)
、メスシリンダー(100mL)、ジップロック(小)、
テルモシリンジ(10mL)
、ペットボトル(500mL, 2L)、洗面器、
紙コップ(275mL)、プラコップ(270mL)

汚れ防止用具 ···· ポリ手袋、ブルーシート、新聞紙

その他 ··· 竹串、雑巾、バケツ、ポリタンク
(3) 事前準備・予備実験
事前準備として担当スタッフ全員で以下の作業を行った。作業内容は、コップや洗浄瓶に貼り付
けるラベルの作成(主に水と酢を間違えないように)、プラコップへの目盛付け、酢の希釈などで
ある。準備の終了後、担当スタッフを対象としてスーパーボールの試作・練習を行った。
【出前授業内容】
当日は会場に到着後、準備を行った。その様子を図 1 に示す。会場の汚れ防止のため使用するテ
ーブルの下にブルーシートを敷き、テーブルには新聞紙を敷いた。また、各テーブルにスーパーボ
ールの作成方法や注意点などを記したラミネート紙を配布した。
当日受講した参加者は 18 名であった。講座の内容は以下の通りであった。
① 講師による説明および実演(30 分)
② 参加者によるスーパーボール作成(1 時間)
受講生は、1 テーブルに 3~4 人ずつ座ってもらっ
た。担当スタッフは最初各テーブルに 1 人ずつ専属
で教え、しばらくし、ある程度参加者が自分で作成
できるようになった後は適宜巡回しながら教えた。
初めてのテーマであったが、前日にスタッフで試
作・練習を行ったこともありスーパーボール作成に
図1
準備の様子
ついては無事に終えることができた。出前授業の写
真を図 2~4 に示す。
出前授業終了後は撤収作業を行った。使用した道具の片づけの他、ラテックスを入れたジップロ
ックの洗浄を会場で行った。さらに帰った後、廃液のろ過処理を行った。
図2
出前授業の様子①
図3
出前授業の様子②
図4
出前授業の様子③
しかし、初めての出前授業ということもありいくつかの問題点が明らかになった。

受講生の服が結構汚れてしまった→白衣を用意するべき

希望者のみにポリ手袋を配布した→ゴムアレルギーの心配があるので全員に配布するべき

廃液タンクの容量が足りなかった→容量を増やすべき

廃液のろ過に手間取った→専用のロートおよびフィルターを用意するべき
翌日の公開講座では、以上の反省点を踏まえて、一部方法を改めた(次項参照)。
【公開講座内容】
公開講座は本校でおこなうため講座当日の午前中に会場の準備を行った。受講生数は 28 名で、
保護者の方も 10 人程度来ていた。内容は前日の出前授業と同じく、最初に講師による説明を行っ
てから、スーパーボールの作成をおこなった。また、付添いの保護者や兄弟も一緒に取り組んで
もらった。
前日の出前授業での反省点を踏まえて、希望した保護者 2 名に白衣を貸し出す、ポリ手袋を受講
生全員に配布するなどの改善を行った。公開講座の写真を図 5~7 に示す。
公開講座終了後に片付けを行った。使用した道具の片付けの他、ラテックスを入れたジップロッ
クの洗浄、廃液のろ過処理を行ったが、廃液処理に時間がかかったため翌日の午前にも引き続き片
付けを行った。前日の出前授業で手間取った廃液のろ過に茶こしを利用したところ、スムーズに終
えることができた。
図5
公開講座の様子①
図6
公開講座の様子②
図7
公開講座の様子③
今回の公開講座でも以下のような問題点が明らかになった。

廃液処理の際に流しにゴムの塊が少し残った→廃液中のゴムを完全に固めてからろ過するべき

酢を混ぜてもラテックスが固まらないことがあった→ラテックスの劣化に注意する
【おわりに】
スーパーボール作成のテーマで出前授業や公開講座を実施するのは初めてであったが、アンケートで
は受講生の 83%が「とても満足した」と回答するなど、受講生からの評判も良くおおむね順調に終える
ことができたと思う。一方で課題や反省点もいくつか浮き彫りになったので、今後実施する際にはさら
により良い体制で実施していきたいと思う。
最後に、このテーマについて指導していただいた苫小牧高専の技術教育支援センター様に、この場を
借りて御礼申し上げます。
4.2 出前講座「スーパーボール工作」企画・実施報告
高田 将一
【はじめに】
本校の技術教育支援センターでは、前年度より苫小牧高専様の技術教育支援センターよりご教示
いただいた「スーパーボール工作」をテーマとして公開講座・出前講座を実施している(前年度の
年次報告書も参照のこと)。
今年度は年度当初から本校 HP の出前講座テーマ一覧に掲載して PR に努めた結果、小学校のレク
や学童保育所を中心に 13 回実施することが出来た。本報では、前年度から改善してきた点を中心
に、その実施状況について報告する。
【概要と問題点】
従来の出前講座「スーパーボール工作」の作業手順は以下の通りである(図 1)
。
(1)予めプラ容器に取り分けたラテックスをシリンジで量り、紙コップに入れる。
(2)水をメスシリンダーで量り、
(1)の紙コップに入れる。
(3)好みの色の絵の具(ポスターカラー)を(2)の混合液に混ぜて色を付ける。
(4)酢(水で希釈)を計量用のプラコップで量り、(3)と混ぜる。
(5)
(4)の紙コップの中身が固まってゴムのかたまりができるので、素早く取出して中の水分
を絞り出しながら手で丸める。
前年度の公開講座では低学年(1 年
生~3 年生)は保護者同伴で行い、ま
た学童保育所で実施した出前講座(1
年生~6 年生)では人数が少なかった
ため、特に問題なく指導できた。一方、
今年度の出前講座では小学生(全学年)
を対象とし、受入人数を最大 30 名程
度で募集したこともあってか、多くの
低学年生が保護者同伴なしで受講す
ることが多くなった。そのため、低学
年生が安全に、かつ作業しやすくなる
ように工夫する必要が出てきた。
また、回数を重ねるにつれて後片
付けの作業が負担になっていた。後片
図 1 スーパーボールの作り方
付けは出前講座終了後、本校に帰校してから主に当日担当したスタッフ 5、6 名で行っていたが、2
時間程度かかっていた。特に使用した道具類に付着したラテックスを取り除く作業や、廃液をろ過
する作業が大変であった。
【スーパーボール工作の改善】
今年度は、従来通り出前講座を実施しながらも、担当したスタッフの意見や提案を聞き、取入れら
れることから徐々に改善していった。予算のかかる事案に関しては事務部の担当者に相談し、道具
を購入して解決を図った。以下に改善した点を記述する(順不同)
。
(1)キッチンスケール(デジタル式はかり)の導入
従来はスーパーボールの原料となるラテックスを量る際に目盛り付きのシリンジ(10mL)を使用
し、使用後は付着したラテックスを取り除いて再利用していた。しかし、小学校低学年の子どもた
ちの中には力が弱くてうまく使えない(プランジャーを引けない)子が多かったため、容器から直
接紙コップにラテックスを注ぎ、その重さをキッチンスケール(タニタ社 KD187-WH)で量ることと
した。その結果、小学校低学年の子どもでも難なくラテックスを量ることができるようになった。
また、シリンジの洗浄も必要なくなり、後片付け作業の時間を短縮することができた(図 2)
。
(2)ラテックス容器の変更
前年度まではラテックスをジッ
プロックに入れて配布し、シリンジ
と同様に洗って再利用していた。し
かし、ラテックスが付着したジップ
ロックの洗浄がかなりの負担とな
っていたので、容器を紙コップに変
え、使い捨てとした。その結果、後
片付け作業の時間を短縮すること
ができた(図 2)。
(3)クエン酸の導入
前年度まではアルカリ性のラテ
ックスを中和するのに酢を使用し
図 2 ラテックスの量り方の改善
ていたが、酢の匂いがスーパーボールに残ることか
ら、代わりにクエン酸を使用することとした。あら
かじめ行った予備実験の結果、濃度 0.5%のクエン
酸水溶液を使用するとこれまでと同様にスーパー
ボールができることが明らかとなった。これを受け
て、実際にクエン酸を使用しての出前授業を行った。
その結果、匂いがほとんどしないスーパーボールを
作ることができた。
図 3 スーパーボール工作中の写真
(4)白衣と手袋の使用
スーパーボール工作を安全に実施するため、今年度から子ども用白衣と子ども用手袋を購入し、
使用することとした。子ども用白衣は小学 1、2 年生用、3、4 年生用、5、6 年生用をそれぞれ 20
着ずつ購入した。手袋については使い捨てとしている。スーパーボール工作の最中は常に白衣と手
袋を着用するよう指導している(図 3)
。その結果、服を汚したりアレルギー症状が出る心配をする
ことなく実施できている。
(5)容器の色分け
従来は容器に“水”など名前のシールを貼っていたが、これに加えて色付きのビニールテープを
容器に一周巻いて種類ごとに色分けした。具
体的には、ラテックスは赤、水は黄、クエン
酸は青とした(図 4)
。これにより、シールの
文字を読まなくても一目で中身がわかるよう
になった。その結果、作り方の指導がやりや
すくなり、材料の入れ間違いを減らすことが
できた。
図 4 色分けした容器の写真
(6)効率的な廃液処理法の確立
前年度から効率的な廃液処理の方法を模索してきたが、不織布製の台所用水切りネットでろ過を
するのが効率良いことが判明したので、水切りネットを購入し廃液処理に使用することとした。そ
の結果、廃液処理にかかる時間を大幅に短縮することができた。
【2 段ロケット工作の追加】
スーパーボール工作は最大 30 名程度を上限に受入れている。しかし、30 名から 40 名(小学校 1
クラス、保護者、兄弟)になると、スペースやスタッフ数に限りがあるので実施が困難になってく
る。特に低学年生が多い場合は技術職員スタッフ 5,6 名では対応が難しい。そこで、スーパーボー
ル工作の他にスーパーボールに関連する工作として 2 段ロケット工作を実施できるようにした。
2 段ロケット工作は市販のスーパーボールを利用するものである。図 5 に示すように、大小 2 個
のボールを使用して実験する。また、同様に市販のスーパーボールを使用して図 6 のような跳ね返
りの実験もおこなった。跳ね返り実験はピンポン玉の場合とスーパーボールの場合の 2 通り実験し
た。
紙で筒を作りセロテー
プで貼り付ける
スーパーボール 22mm
を筒に入れて同時に落とす
スーパーボール 49mm
図 5 2 段ロケット実験
2 段ロケット工作は小学校などの十分なスペースを確保でき、参加者が多い場合に実施した。実
施する場合は参加者を 2 班に分け、スーパーボール工作と交互に実施した。スタッフは 2 段ロケッ
ト工作に 2 名、スーパーボール工作に 4 名である。
ピンポン玉・
スーパーボール
①
②
③
ボールを斜めに投げ入れる
と、BOX の中でどのように
跳ね返る?(①~③)
Box(断面)
図 6 ボールの跳ね返り実験
【おわりに】
前年度から実施を始めたスーパーボールの出前授業であったが、今年度は上記のような改善を試
み、より安全で楽しい体験ができるような出前授業にすることができた。
しかし一方で、業務の都合で当センターでは対応できず出前講座の依頼を断ったことが何度かあ
った。このような場合に備えて、スーパーボール出前授業のマニュアルの作成を検討している。こ
れによって、担当したことのない教職員でも容易に本出前講座を実施できるようになり、依頼を断
るケースが減ると期待される。
また、楽しいだけではなく、より学びに重点を置いた内容にできればと考えている。主に小学校
低学年を対象に実施しているので難しい面もあるが、本出前授業を化学への関心を持ってもらうき
っかけにしていきたい。
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