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CV ケーブルの曲げ剛性とスネーク軸力について

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CV ケーブルの曲げ剛性とスネーク軸力について
CV ケーブルの曲げ剛性とスネーク軸力について
CV ケーブルの曲げ剛性とスネーク軸力について
Flexural Rigidity and Axial Snaking Force of XLPE Cable
大 畠 勝 一
*1
島 田 明
K. Oohata
*2
A. Shimada
稲 見 正 巳
*3
近 藤 邦 彦
M. Inami
*3
K. Kondo
要 約
CV ケーブルは昭和 40 年代から 22kV,33kV 級に使用が開始され,約 35 年経過する平成 12 年には 500kV の長距
離地中送電線路の運用開始も予定されている。このような C V ケーブルの高電圧化は,誘電特性に優れオイルレス
である特長を背景とした,ケーブル・接続部の開発および品質管理の進歩と,熱伸縮対策等の布設設計も含めたシ
ステム的な研究成果によるところが大きい。筆者らは,洞道内に布設された単心ケーブルの熱伸縮対策のスネーク
布設の研究において,縦スネーク布設他,各種スネーク形態に対する発生軸力について,ケーブルの曲げ変形抵抗
だけでなくケーブル自重を考慮した軸力の理論解析を行い,関係要因を整理して実用に適した簡易式を提案すると
共に,実測結果との比較で十分な精度を有することを検証した。また,ケーブルの曲げ剛性についての考え方を整
理し,スネーク軸力の算出に適した曲げ剛性について実験式を導出した。以上の成果により,水平スネークと縦ス
ネークの違いを区分し,実用的かつ簡便に軸力計算が可能となった。
キーワード: CV ケーブル,曲げ歪み,曲げ剛性,スネーク布設,スネーク軸力
Summary
XLPE insulated cables have been used in the rated voltages of 22kV and 33kV for 35 years, since 1960. In the year
2000, 500kV XLPE cable lines will be put to commercial use. This trend to extra-high voltage of XLPE cable whose
most significant feature is dielectric superiority and being oilless, is due to the technical progress in manufacturing
and quality control of cable and joints, and the result of systematic progress including installation design method
against expansion and contraction of cable. The authors carried out a study on snaking installation of single core
XLPE cable which is an effective measure against the expansion and contraction of cable installed in tunnels, and
found that the repellent force after snaking work is comparatively large and remains as residual tensile force in heat
cycle. By considering these phenomena, the correction formula of calculating axial force are proposed and was
testified to be accurate enough in comparison with the measuring result. Theoretical formula of axial force generated
in various installation method including vertical snaking not applied for OF cables are also proposed not only considering
the bending deformation but also considering the cable weight itself. As aresult, a simple formula applicable for
practical use are proposed by arranging the various factors. Moreover, the experimental formula of flexual rigidity is
conducted by arranging the theoretical method. From the above results, the difference between horizontal and
vertical snaking is clarified, and the axial force can be simply and practically calculated.
Key words: XLPE cable, Strain in bending, Flexural rigidity, Snaking installation, Axial snaking force
1.はじめに
どの技術進歩と共に,熱伸縮対策等の布設設計も含めたシ
ステム的な研究成果によるところが大きい。本報は,単心
CV ケーブルは昭和 40 年代から22・33kV級に使用が開始
ケーブルの熱伸縮対策の一つであるスネーク布設を対象
され,約 35 年後の平成 12 年には 500kV の長距離地中送電
とした CV ケーブルの機械特性に関する研究成果を報告す
線路の運用開始が予定されている。このような CVケーブル
るものである。なお,この研究は昭和 55 ∼ 57 年にかけて
の高電圧化は,ケーブルおよび接続部の製造・品質管理な
行われたものであるが,この成果の一部が現在の CV ケー
*1 東京電力 #
*2 電力・電線事業部 電力プロジェクト部
− 7 −
*3 電力・電線事業部 電力技術部
第96号
平成12年2月
三 菱 電 線 工 業 時 報
ブルの曲げ剛性および軸力計算の一般的な考え方として
各種スネーク形状について実験した結果,推奨されるス
広く活用  されるようになっており,基礎的なことも含め
ネーク形状は,スネーク幅:B = 1d(d:ケーブル外径)以
報告することとした。
下の場合,B 寸法のバラツキにより異常に大きい軸力の発
生や左右のスネークの軸力のアンバランスを招くことが
2.曲げ剛性
あり,安定した挙動を得る面から B = 1.5d 以上を目標とす
るのが好ましい。このことは 3 章に示すように発生軸力が
2.1 ケーブルの曲げ剛性 >,?
B の 2 乗に反比例することから理解できる。また,ケーブ
ケーブルの曲げ剛性 EI は,ケーブルの曲げ変形に要する
ルのクセ取り作業性の面からは,1 %程度の曲げ歪みを目
力を求めるための曲げの変形抵抗を意味するもので, ,
標にスネーク長を選定することが好ましい。なお,曲げ歪
b 式にこの関係を示す。
が 1.5%を超えると作業性は極めて悪くなる。
スネーク軸力は,クセ取り後の熱伸縮による d/2 ρ なる曲
・・・
げ歪 εM を繰り返すときに発生するもので,前述の条件から
ここで M :曲げモーメント(N・m)
一般的に用いられているスネーク形状では 0.15 ∼ 0.2%程
1/ ρ :曲率変化(1/m)
度の歪みとなる。よってスネーク軸力を得るための EI は,
EI :曲げ剛性(N・m )
2
この曲げ歪に対応するものとなる。EIとスネーク軸力の関
但し 係は付録に示す。
偶力方式による測定方法で,C V ケーブルに直線の状態
・・・b
より曲げを与えてそのときの曲げモーメントと曲げ歪み
との関係を測定すると,Fig. 2 の線図を得る。Fig. 2 の 11
R 1 :初めの曲率半径(m)
R 2 :曲げたときの曲率半径(m)
4
ケーブルの E I は材料力学で一般的に多用されているも
A
3
の(構築物の鋼材の梁のEIなど)とは少し意味を異にする。
M
(N・m)
即ち,鋼材の梁などの EI とは,E が材質により定まる「縦
2
41
M
31
弾性係数」
,Iが断面の形状・寸法より定まる「断面二次モー
21
メント」であり,その積を意味し,曲げの変形と力の適用
1
範囲は弾性係数 E が示す如く,あくまでも弾性限内であり
11
R
EI は比例定数である。しかし,ケーブルの EI は「ケーブル
のE とケーブルの Iとがあって,その積である」と言うほど
の厳密な意味ではなく,単に漠然とケーブルの曲げ変形抵
M
抗を意味する語として使用され,曲げの変形と力の適用範
20
0
囲は弾性限内だけではなく,塑性域にも及ぶ変数である。
22
よってケーブルの EI は,曲げの変形程度に適した EI の値
10
を採用する必要がある。
12
εM
2.2 ケーブルの曲げ履歴と曲げ剛性
42
30
32
εM
d/2
R
40
εM
εM
d/2
熱伸縮に相当する曲げ歪:εM = ρ
Fig. 1 にケーブル延線後から熱伸縮による曲げの履歴を
示す。
注:この図は偶力方式による測定方法によった短時間条件下のケー
スであり,長時間ヒートサイクル条件下ではモーメント“0”の線
をほぼ中心にループを作る。
延線完了
スネーククセ取り
熱伸縮
Fig. 2
Relation between bending moment and bending
strain
膨張
収縮
膨張
収縮
曲げモーメントと曲げ歪みとの関係
熱伸縮による曲げ歪みεM
0
低温
高温
d/2/R1
d/2/R2
εM= d/2
= d/2 - d/2
ρ
歪み
∞
Fig. 1
R1
R2
曲げ半径
R2 R1
− 12,21 − 22,31 − 32,41 − 42 を結ぶ直線の傾斜が EI
である。図より曲げ歪みが同じである限り,スネークのク
セ取り半径に関係なく EI は同じになる性質を示す。即ち,
CV ケーブルの EI を得る場合は初めのクセ取り半径に関係
Bending history record
なく,また Fig. 3 に示すように必ずループにより行う必要
曲げの履歴
はなく,εM に相当する EI は,ほぼ原点より ε M/2 に相当す
− 8 −
CV ケーブルの曲げ剛性とスネーク軸力について
294
試料No.1 : 66kv1×2000cv d=95φ
試料No.2 : 154kv1× 600cv d=94φ
196
曲げ応力σM=M/Z(N/mm2)
1.96
0
d/2
R
Fig. 3
εM
-98
0
EI depending on measuring method
測定方法による EI
ることが確認された。この EI と曲げモーメントと曲げ歪み
の関係は  式を変形し c 式のとおりである。
1×
20
00
cv
v
00c
×6
kv1
154
0
0
10
12
曲げモーメントM(N・m)
98
0.98
6
v
6k
ループ
0.2%:N
o.1
2.94
1
M
(N・m)
ルー
プ0
.2%
:No
.2
2
片道0
.1%:E
1=441
ループ
片
0N・m 2
0.2%:E
ルー 道0.1
1=441
0N・m 2
プ0 %:E
.2% 1=1
:E1 715
=1
N
71 ・m 2
5N・
m2
No
.2
εM
No.1
A
Fig. 4
50
100
中央部の撓みδ(mm)
150
0
0.1
0.2
曲率 1/R(10-3/mm=1/m)
0.3
0
0.5
1.0
d/2
曲げ歪
(%)
R
1.5
Example of measuring result between bending
moment and bending strain
・・・c
曲げモーメントと曲げ歪みとの関係の測定結果例
F i g . 4 にケーブル外径がほぼ同じで導体比率の大きい
Table 1
Comparison between calculated value and
66kV 2000mm と,逆に小さい 154kV 600mm での測定
measured value of EI
結果例を示す。
EI の実測値と計算値の比較
2
2
測定ケーブル 寸法(mm)
2.3 スネーク布設に対応する曲げ剛性
電圧(kV) mm2
「スネーク軸力に必要な EIは,低荷重の EIを用いる。
」と
d
dC
計算値 EI(kN・m2 ) 実測値 EI(kN・m2)
ECIC ESI S
EM IM
EI
(ε M/2=0.1%)
800
72 34.0 0.49 0.49
−
0.98
1.14
2000
95 53.8 3.02 1.40
−
4.33
4.41
600
94 29.5 0.27 1.49
−
1.77
1.72
800
97 34.0 0.49 1.44
−
1.93
1.96
荷重を定めたとしても,ケーブルのサイズ,曲げ試験のス
1000
103 38.0 0.76 2.13
−
2.88
2.38
パン,スネーク寸法等が異なるものに対して一般性を持た
2000
126 53.8 3.02 4.69
−
7.71
5.22
275 1000 100.6 38.0 0.76 1.93 16.65 19.34
20.59
(Al 被) 2000 115.3 53.8 3.02 3.24 23.98 30.23
26.48
66
表現される場合があったが,低荷重とか高荷重とかは相対
154
的なものであり基準が定かでないばかりではなく,たとえ
せることは困難である。また CV ケーブルの EI を導体外径
のみの関数で求める場合もあったが,絶縁体厚さ約 9 ∼ 30
mm,単心ケーブルの導体サイズ 600 ∼ 2500 mm 2 ,更に
注 1)電圧に対する絶縁厚に変遷があり現在と外径が一致しないものもあ
る。
金属シースの有無と多様なケーブル仕様に対して,絶縁
注 2)Al 被の d は Al 被層心径 dm を表す。
体・シース等の EI も無視できない。このため,導体の EI:
注 3)Ec = 7.35kN/mm2 Es = 0.392kN/mm2 EMAl = 9.81kN/mm2
EcIc,絶縁体,シース(金属シースを除く)の EI:ES IS と
金属シースの EI:EM IM に分けた EI の計算式を考察した。こ
ここで Ec:導体の弾性係数(N/mm2)
の計算式を d,e 式に示す。式中の,E C,ES,EM を各々一
Ic :導体の断面二次モーメント(mm4 )
定と仮定した場合の計算結果例を実測値と対比して Table
1 に示す。
dc :導体外径(mm)
(金属シースなし) ・・・d
ES :絶縁体・シースの弾性係数(N/mm 2)
(金属シースあり)・・・e
IS :絶縁体・シースの断面二次モーメント(mm 4 )
− 9 −
第96号
平成12年2月
三 菱 電 線 工 業 時 報
される。以上を要約すると次のとおりとなる。
無重力でのスネーク布設(注) :Fa は FM のみ
d :シース外径(mm)
E M :金属シースの弾性係数(N/mm )
2
水平スネーク布設
:Fa は FM と FµW
縦スネーク布設
:Fa は FM と FW
(注:実験では水平スネークを“ひも”で吊り検証した)
I M :金属シースの断面二次モーメント > (mm4)
これら FM,FµW,FW は,スネーク寸法,ケーブルの曲げ
剛性,線膨張係数,温度変化,ケーブル質量,摩擦係数な
どの要因によって決定される。
(内径 + 外径)/2(mm)
dm :波形金属シースの層心径:
t :波形金属シースの厚さ(mm)
3.2 軸力成分 FM ,Fµw,Fw の計算
これらの各軸力成分の計算式の導出は,ケーブルを弾性
体として,熱伸縮によって発生する曲げ変形抵抗力FM,
ケー
ブルと支持材間の摩擦力 Fµ W ,およびケーブル自重による
3.スネーク軸力の計算
引張り力 F
W
によって蓄えられるスネーク部の全歪みエネ
3.1 軸力の発生機構
ルギーを求め,カスチリアーノの定理に従い軸力を求める
スネーク軸力は,布設方式,即ちケーブルの支持方法に
ものである。FM,FµW,FW はそれぞれ B,C,D 式で表さ
より異なる大きさを示すが,これは軸力を発生する機構の
れる。式の導出は付録に示す。? ∼ A
組み合わせが異なるためである。各スネークのモデルを
Fig. 5に示す。ケーブルに発生する軸力Faは,無重力スネー
・・・B
ク(a)の場合,熱伸縮によるケーブルの曲げ変形抵抗に基
づく軸力成分 FM のみで,水平スネーク(b)では支持部材
との摩擦力による軸力成分 F µ W が加算され,縦スネーク
・・・C
(c)では支持点間のケーブル自重による軸力成分 FW が加算
FM
B
FM
θ0 R
ここで EI :ケーブルの曲げ剛性(N・m2 )
L
2
L
・・・D
吊
り
W :ケーブルの質量(kg/m)
L
α :ケーブルの線膨張係数(1/deg C)
t :ケーブルの温度変化(deg C)
(a) FM:曲げ変形抵抗による軸力成分
L :スネークの 1/2 ピッチ長(m)
FμW
FμW
B :スネーク幅(m)
支
持
µ :ケーブルと支持材との摩擦係数
KQ, KN,KW :形状係数
ただし,KQ,KN,KW は L/B の関数で S = L/B として次式
で表される。
(b) FμW:摩擦力による軸力成分
FW
FW
支
持
(c) FW:ケーブル自重による軸力成分
注1:力の方向はスネークに作用する力を表す
注2:(a)で力の方向は高温時
注3:(b)で力の方向は膨張時
なお,KQ,KN/KQ,KW/KQ と S(L/B)との関係は,一般的
に用いられているスネーク形状 L/B > 10 では,Fig. 6 に示
すように KQ 1.06,KN/KQ = KW /KQ 0.78 の定数となり上式
Fig. 5
Generating mechanism of axial snaking force
は容易に計算できる簡略式となる。
各スネーク軸力の発生機構
− 10 −
CV ケーブルの曲げ剛性とスネーク軸力について
1.7
12
1.6
M
(N・m)
1.5
11
KQ,KN/KQ,Kw/KQ
1.4
1.3
1.2
KQ≒1.06
1.1
0
d/2
R
10
1
0.9
引
張
KN/KQ=Kw/KQ≒0.78
0.8
20
0
温度
0.7
0.6
FM
(N)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
S=L/B
Fig. 6
Relation between S and KQ, KN/KQ
21
圧
縮
S と KQ, KN/K Q,KW/K Q の関係
22
3.3 スネーク幅の変化量の計算
Fig. 7
熱伸縮によるスネーク部のスネーク幅の変化量 n は,こ
Diagram of bending moment-axial force
曲げモーメント−曲げ歪み−軸力線図
れまでに報告 f されているようにEIに関係なく i式で示さ
れる。
・・・i
ここで k :比例定数( k
12
M
(N・m)
0.8)
0
Δ L :スネーク 1/2 ピッチの熱伸縮量 αtL(m)
引
張
0
3.4 CV ケーブルの軸力計算
FM
(N)
11
10
d/2
R
20
温度
20
3.4.1 曲げ歪みによる EI の変化
曲げモーメントと歪み,歪みと軸力との関係を Fig. 7 に
21’
22
22’
示す。図に示すように実際の変化過程は曲線状であり発生
軸力の過程を求める場合は,曲げ歪みに応じて変化させて
圧
縮
計算したものとなる。しかし,設計時のケーブルの拘束力
等で必要となるのは途中過程は不要で,軸力の最高,最低
t/2
t/2
−
22 ; B寸法を刻々と変化
させた場合(実際の様相)
20 -21’ -22’ ; B寸法をBとB+nの
2つに変化させた場合
20 -21’ -22” ; B寸法一定
22”
t
値が得られればよい。よって 2 章でも述べたが EI は,Fig.
7 の 10,12 を直線に結ぶモジュラスとして一定値を用いれ
Fig. 8
Approximate calculation by considering variation
of snaking width
ばよく計算の簡便も図られる。
スネーク幅 B の変化を考慮した計算の近似
3.4.2 スネーク幅 B の変化
f 式は,形状変化が少ない範囲で関係が成立する条件が
あり,スネーク幅 B は実用上変化が大きく無視することは
出来ない。Fig .8 に示すように,B の変化に応じてΔ FM を
3.4.3 FM の条件(原点補正)
求め積分すれば軸力変化の過程が得られるが,温度変化幅
f式のFM は弾性体と仮定して導かれたもので,低温時の
を 2つに分け,前者を低温時の幅 B,後者を高温時の幅
軸力 “0” が原点であり,高温時に圧縮力が αt に比例して増
(B + n )で計算し両者を加算する近似計算で実用的には充
加することを示している。66kV,154kV および 275kV クラ
分な精度が得られる。
スのケーブルを用い軸力の発生機構毎に行った測定結果
− 11 −
第96号
平成12年2月
三 菱 電 線 工 業 時 報
を Table 2 および Table 3 に示す。表に示すように重力の影
一方,金属シース(波形)を有するケーブルでは金属シー
響を除いた FM のみの吊り水平スネーク(金属シースのない
スの特性が支配的になり,j
CV ケーブル)においても低温時に軸力は “0” に戻らず引張
ケースが多い。
式による補正の必要のない
りの力が発生することが確認された。
そこで,今までのCVケーブルのスネーク軸力測定結果か
3.6 軸力の計算式
ら,この低温時の引張り力による原点移動分に相当する軸
スネーク布設の軸力の計算式を整理すると Table 4 とな
力を補正する方法を採ることとした。この軸力補正値は測
る。実測値との比較例を Table 2 に示す。
定された CV ケーブルの場合ほぼ j 式で表される。
・・・j
Table 2
Comparison between calculated value and measured value of axial force
軸力の実測値と計算値の比較
スネーク形態
ケーブル仕様
+7840
66kV 2000mm2
CV
スネーク軸力Fa (N)
+5880
+3920
+1960
μ=0.3(計)
0
5
85℃
5
15
85
90
10
90
5
85
−1960
スネーク軸力Fa (N)
+3920
+1960
154kV 600mm 2
CV
0
0
90℃
5
90
−1960
+9800
CV
(B=0.8d)
CAZV
(B=1.2d)
+7840
CV
+5880
275kV 2000mm2
スネーク軸力Fa (N)
+3920
+1960
0
−1960
−3920
−5880
−7840
−9800
実測値
+引張り軸力
計算値,原点補正なし
−圧縮軸力
計算値,原点補正:
− 12 −
15
90℃
10
85
10
85
CV ケーブルの曲げ剛性とスネーク軸力について
Table 3
Comparison between calculated value and measured value of axial force
軸力の実測値と計算値の比較
スネーク形態
2L(m) B(×d)
66kV 2000mm2 CV
水平
(吊り)
実測
1
(熱応力)(重量・摩擦)
計算
2.35
EI=4.43kN・m2
2.68
2.68
3.29
2.68
実測
計算
(熱応力)(重量・摩擦)
0
− 2.01
− 1.72
− 1.72
0.61
− 2.74
− 2.22
− 1.72
0
(t=80)
3
d=95mm
水平
(摩擦)
3
+引張り軸力 −圧縮軸力
高温軸力(kN)
低温軸力(kN)
スネーク形状
ケーブル仕様
1
3.24
w=23.8kg/m
(t=80)
3
縦
4.12
1
− 0.50
(µ=0.3)
(µ=0.3)
4.55
2.50
2.05
− 0.39
0.01
− 1.65
1.66
7.29
2.68
4.61
2.06
1.88
− 1.18
3.06
4.26
1.19
3.07
1.27
1.70
− 0.76
2.46
2.45
1.28
1.17
− 0.10
0.13
− 0.78
0.91
3.83
1.22
2.62
1.32
1.19
− 0.52
1.71
9.17
2.95
6.22
2.65
2.86
− 1.34
4.21
4.23
0.86
3.36
1.67
2.25
− 0.65
2.89
1.77
0
1.77
− 7.19
− 7.66
− 9.29
1.63
(t=75)
4.5
7.60
1
(t=80)
4.5
1.5
4.12
(t=80)
154kV 600mm2 CV
3
1
EI=1.89kN・m2
1.72
(t=90)
4.5
d=96mm
1
w=13.5kg/m
3.24
(t=85)
275kV 2000mm2 CV
4.5
7.25
0.8
EI=5.22kN・m2
(t=75)
4.5
d=126mm
3.68
1.5
w=32.1kg/m
(t=75)
275kV2000mm2 CAZV
3
1.2
EI=25.1kN・m 2
2.29
(t=75)
注)
注)
d=146mm
w=34.6kg/m
注):波形アルミシースありの場合は原点補正なしの計算式を使用した。
Table 4
Calculating formura of axial snaking force
スネーク軸力の計算式
原点補正
なしの場合*
布設方式
低 温 時
高 温 時
無重力でのスネーク
0
水平スネーク
(摩擦あり)
縦スネーク
C V ケーブル 無重力でのスネーク
(金属シースな
し)の補正値
水平スネーク
(摩擦あり)
縦スネーク
[各記号の説明]
[各現象に対する符号]
ケーブルの温度変化 t
上昇変化 + 下降変化 −
EI:ケーブルの曲げ剛性
L :スネークの 1/2 ピッチ長
ケーブルの熱伸縮量 α t L
膨張量
W :ケーブルの単位長さ当たりの質量
B :スネーク幅
スネーク幅の変化量 n
幅の増加 + 幅の減少 −
µ :ケーブルと支持材間の摩擦係数
n :スネーク幅の変化量
ケーブル軸力
+ 収縮量
−
Fa(FM ,FµW,FW)圧縮軸力 − 引張り軸力 +
α :ケーブルの線膨張係数
t :ケーブルの温度変化
*:金属シースありのケーブルでは補正の必要のないケースが多い。
− 13 −
第96号
平成12年2月
三 菱 電 線 工 業 時 報
4.む す び
【付 録】
CV ケーブルの EI およびスネーク軸力の計算について纏
1.スネーク軸力の計算式の導出
めると,
 スネーク軸力に必要な EIは,曲げモーメントと曲げ歪み
スネーク軸力は,ケーブル支持方法により,本文の如く
を測定し,熱伸縮時に生じる曲げ歪みに対応するEIを求
曲げ変形抵抗による軸力成分に,摩擦による軸力成分また
めればよい。
は,ケーブル自重による軸力成分が加算される。ここでは
b EI の測定はループ試験を行わなくても,単純に原点より
各軸力成分の計算式について記述する。
曲げ歪みを増加させ,目的とする熱伸縮歪みの 1/2 歪み
での EI により求めることができる。
c 導体の EI,絶縁体の EI 等に分離して積み上げる EI の近
 曲げ変形抵抗による軸力成分
Appendix fig. 1 において,A ∼ B 間の任意の点 Pθ におけ
似計算方法の妥当性を確認した。
るモーメント MAB は(付 1)式で表される。
d C V ケーブル(金属シースなし)特有の原点補正値とし
・・・
(付 1)
て,
引張り軸力:
A Pθ
Fx
B
m0
θ
g
を採用した計算式の場合,実測値と計算値がよく一致す
ることが確認された。
吊
り
B
Fx
C
θ0 R
L
2
L
L
謝 辞
CVケーブルの熱伸縮に係わるこの研究は,昭和 50年「単
Appendix Fig. 1
Axial force element due to bending
心 CV ケーブル洞道内布設方式の研究」から昭和 57 年の本
transform resistance
報告の研究に至る。この間に密閉型防災トラフ内ノンオフ
曲げ変形抵抗による軸力成分
セット布設研究,洞道内ジョイントに関する作業性確認研
究等が行われた。これらにおける成果は,多くの方々のご
協力,ご指導により得られたものであり関係者に謝意を表
AB,BC は B点に対して対称であり,かつ B 点を滑点
する。また,最後にこの間の実験,データ整理および解析
と考えることができるので不静定モーメント m0 は(付
に尽力された故官上博久殿に感謝する。
2)式となる。
・・・
(付 2)
参考文献
a
例えば,電気協同研究 .CV ケーブル線路の布設設計と
従って MAB は(付 1)式に(付 2)式を代入して
施工.47(9)
,1991.
b 倉,島田.アルミシースの曲げ特性.大日日本電線時
報.
(30)
,1965,p.22-26.
c
・・・
(付 3)
柳内.アルミシースケーブルの工事.大日日本電線時
報.
(24)
,1963,p.92-107.
d
e
秦.マンホール内のケーブルオフセットの設計につい
以上でm0 は消去できたので軸力を求めるために X方
て.電気学会雑誌.81 巻,874 号,1961.
向の変位を求める。
柳内,島田,中滝.アルミシース電力ケーブルのオフ
A ∼ B,B ∼ C 間に蓄えられる全弾性エネルギー:U
セット実験(第 3 報).昭 3 7 電学会関西支連合大会.
は,
No.9-30,1962.
f 田.オフセット部接続箱移動量の新しい計算式.昭
43 電学会東京支.No.237,1968.
ここで
であり
・・・
(付 4)
従って,
X方向の変位:Δ Lはカスチリアーノの定理より
− 14 −
CV ケーブルの曲げ剛性とスネーク軸力について
この場合 Appendix fig. 2 において,A ∼ B 間の任意の点
Pθ におけるモーメント MAB は次式で表される。
・・・
(付10)
・・・
(付 5)
Fy
A Pθ
Fx
ここで
Fy
Fx
g
θ
(付 5)式より軸力 FX は次式で表される。
θ0
B
B
R
L
2
2μwRθ0
L
・・・
(付 6)
Appendix Fig. 2
支
持
C
L
Axial force element due to friction force
(Concentrated friction force on the crest
(付 6)
次に S = L/B として,R を B,L,S,θ0 で表し,
of snake)
式を整理すると,
摩擦力による軸力成分(スネーク山部集
中摩擦力)
から,曲げ変形抵抗による軸力成分 FM は次式で表され
以下前項と同様に進めると,m0,MAB,UAC および X方向
る。
の変位: Δ L は次式で表される。
・・・
(付 7)
・・・
(付10’)
ここで
(付 8)
スネークの場合X 方向の変位Δ L は,ケーブルの熱膨張
量 αtL に相当し,次式を得る。
・・・
(付 9)
Appendix fig. 1の FX は引張り軸力の場合を示しており,
・・・
(付11)
従ってこの場合,
(付 9)式の FM は引張り軸力を,温度
変化:t は原点より低温側の温度変化(幅)を示してい
る。
(原点より高温側の温度変化の場合,
(付 9)式のFM は圧
ここで
縮軸力を示す。)
なお,FM の引張り軸力を正(+)
,圧縮軸力を負(−)
とする場合,低温側の FM は(付 9)式,高温側の FM は
次の(付 9’)で表される。
(付 11)式より FX は
・・・
(付 9’)
・・・
(付12)
> 摩擦による軸力成分
水平スネーク布設では,ケーブルと支持材間にケー
,
(付 7)式と
(付 12)式の前項の EI·Δ L/Q は,(付 6)
ブル横方向の移動による摩擦力が存在する。その分布
同じく EI に基づく軸力成分であり,後者の(N/Q)Fy
は支持方法とケーブルの挙動により,種々のケースが
は,摩擦による軸力成分を示している(∵ Fyは摩擦力:
想定されるが,ここでは横方向の移動量が大きくなる
µwR θ0 に相当する)。
山部(谷部)での集中摩擦力の場合を紹介する。
よって,摩擦による軸力成分 Fµw は次式で表される。
− 15 −
第96号
三 菱 電 線 工 業 時 報
=
平成12年2月
・・・
(付15)
また,B ∼ C 間の任意の点 Pθ2 におけるモーメント MBC
は,
・・・
(付13)
ここで
・・・
(付14)
・・・
(付16)
なお,KQ は前項の(付 8)式に示すものと同じである。
Appendix fig. 2 の Fy は B 寸法が減少する方向の逆方向
今 A ∼ C 間に蓄えられる全弾性エネルギー U は
に作用する場合,即ちケーブルの収縮時を示しており,
従ってこの場合,
(付 13)式の Fµw は引張り軸力を示し
・・・
(付17)
ている。
〔膨張時には,Fy の方向が逆転し,Fµw は圧縮
軸力を示す。(∵摩擦力は移動の逆方向に作用する。
)
〕
カステリアーノの定理より U を不静定モーメント m0 で
なお,F µ w の引張り軸力を正,圧縮軸力を負とする場
偏微分すれば固定条件から,∂U/∂m0 = 0 となる。
合,収縮時の Fµw は(付 13)式で,膨張時の Fµw は次
の(付 13’)式で表される。
・・・
(付13’)
? ケーブル自重による軸力成分
縦スネーク布設では,曲げ変形抵抗成分にケーブル
自重による成分が加算される。ここでは自重による軸
・・・
(付18)
力成分についての計算式を導く。
Appendix fig. 3 において A ∼ B 間の任意の点 Pθ1 にお
けるモーメント MAB は次式で表される。
Fy
Fx
π
-θ0
2
第 1,2 項の積分より
ϕ2
A
m0
θ2
Pθ1
R
wds
B
B
θ0
θ1
g
となり,∂U/∂m0=0 の条件から,不静定モーメント m0
R
は次式となる。
ϕ1
wds
Pθ2
C
L
Appendix Fig. 3
・・・
(付19)
Axial force due to cable dead weight
(付 19)式を(付 15)
(付 16)式に代入すると各区間で
ケーブル自重による軸力成分
のモーメントは次式で表される。
− 16 −
CV ケーブルの曲げ剛性とスネーク軸力について
・・・
(付 20)
・・・
(付 24)
・・・
(付21)
以上で不静定モーメント m0 は消去できたので X 方向の
ここで
変位 ∂U/∂FX は
・・・
(付25)
なお,KQ は(1)項の(付 8)式に示すものと同じであ
る。
Appendix fig. 3 の微小長さの自重:wds は下向きに作用
・・・
(付 22)
する力を示しており,従ってこの場合の(付 24)式の
FW は引張り軸力を示している。
(付 22)式第 1 項,第 2 項の積分結果から次式が得られ
る。
〔wds は低温側,高温側また収縮時,膨張時を問わず常
に下向きであるので,F W は常に引張り軸力を示す。
(∵
(2 )
項の摩擦力の場合と異なり、重力の加速度の方
・・・
(付 22’)
向は,常に一定である。
)
〕
なお,F W の引張り軸力を正,圧縮軸力を負とする場合
でも,FW は(付 24)式で表すことができる。
2.スネーク軸力と -1 との関係式
ケーブルの熱伸縮によりスネーク部のケーブルが曲げ
られて曲率変化を生じ,この曲率の変化により曲げの変形
抵抗が生じ,このケーブルの曲げの変形抵抗が軸力を生じ
る。この関係の理論解析結果をまとめ以下に示す。
・・・
(付26)
・・・
(付27)
(付 22’)式で ∂U/∂FX= Δ L=0 のときの FX が自重による
・・・
(付28)
引張軸力を示している。
・・・
(付 23)
・・・
(付 7)
(付 23)式に,Fy=2WRθ0 を代入すると自重による軸力
成分 FW は次式で表される。
これらの式は次のことを意味する。
①ケーブルの熱伸縮により,スネーク部のケーブルが曲げ
− 17 −
第96号
平成12年2月
三 菱 電 線 工 業 時 報
られる。このときの曲げの変形程度,即ちケーブルの曲
大畠勝一(おおはた かついち)
率変化の分布は,スネークの変曲点で最小“0”でスネー
東京電力株式会社 工務部
クの山部と谷部で最大となるが,
(付 26)式はこのとき
の最大曲率変化 1/ ρ と熱伸縮量 αtL との関係を示したも
主として,地中送電ケーブルシステムの設計,建設,
保守全般に従事
のである。
②次にケーブルの曲率変化によりケーブルに曲げの変形
抵抗が生じる。このときの曲げの変形抵抗,即ちケーブ
島田 明(しまだ あきら)
ルの曲げモーメントは曲率変化の大きさにより定まり,
電力・電線事業部 電力プロジェクト部
ケーブル,電車線等の技術,開発に従事
曲率変化と同様の分布傾向を示す。この最大曲げモーメ
ント Mmax は 1/ρ により(付 27)式で表される。
③②項のケーブルの曲げモーメントによりスネーク部の
ケーブルに軸力が生じる。このときのスネーク軸力 FM は
Mmax により(付 28)式で表される。
稲見正巳(いなみ まさみ)
④最後にスネーク軸力 FM を熱伸縮量:αtL で表せば(付 7)
式となり,FM は EI と αt に比例し,スネーク幅 B の 2 乗
電力・電線事業部 電力技術部 電力システム課
地中送電ケーブルシステムの設計業務に従事
電気学会会員
に反比例する。
3.ケーブルの伸縮量と歪み
近藤邦彦(こんどう くにひこ)
ケーブルの曲げの変形程度を表す場合,ケーブル径の倍
率で論ずる方がケーブル径に関係なく一般性があり,(付
26)式の両辺にケーブル半径 d/2 を乗じてケーブル半径の
比で書き換えると,
(付 26’)
,
(付 26”)式を得る。
(付 26”)
式は,ケーブルの伸縮量:αtLを移動量:mとした,マンホー
ル等で管路からのケーブル伸縮に対するオフセット部の
歪みを求める式と同様である。
・・・
(付 26’)
・・・
(付 26”)
− 18 −
電力・電線事業部 電力技術部 技術課
地中送電ケーブルシステムの設計業務に従事
Fly UP