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カブドットコム証券の“1秒保証”を支える低遅延システム | IT CASE

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カブドットコム証券の“1秒保証”を支える低遅延システム | IT CASE
カブドットコム証券の“1 秒保証”
を支える低遅延システム
お客様導入事例: 超高速株式売買システ
ムの構築
業界: 金融
システム基盤に「インメモリデータ
グリッド」を採用し
株式の売買処理を飛躍的に高速化
金融商品取引業者登録
関東財務局長
ロゴ反転使用例
(金商)第61号 2007年(平成19年)9月30日
目的
••東証・アローヘッド稼働に合わせた「株式売買
システム」の強化
••個人投資家向け売買サービスの飛躍的な高
速化
••自社開発システムに基づく革新的なサービス
の提供
ロゴは必ず画面右端につけて使用する。帯は右方向に伸ばして使用してもよい。
アプローチ
••ディスクI/Oのボトルネックを完全に解消する
システム基盤「インメモリデータグリッド」を
採用
••すべてのサーバーをHP BladeSystem c7000エ
ンクロージャーに集約し、一括管理
••インメモリデータグリッドサーバーを20ギガ
ビット/秒のInfiniBandで接続しメモリ空間上で
高速処理
••耐障害性とサービス継続を強化し単一障害点
を完全に排除
••予備機への切り替え迅速化、データ整合性・
保護を確実にする仕組みを構築
導入効果
••板乗りまでの処理時間を平均 330 ミリ秒に
短縮
••板乗り「 1秒保証」を国内証券で初めて導入
••低遅延と高い耐障害性を備えたシステム基盤
の実現
ビジネスの成果
••ネット証券会社間におけるサービス競争で優
位に
••PTSを含む取引所間連携、アルゴリズム取引へ
の対応
••来るべき“最良執行時代”へいち早く対応
ロゴの抜き使用は不可。
MUFG グループカラー MUFG Red
サブカラー MUFG Gray
近似色
近似色
DIC 2493 (3 版 )
DIC 654(17 版 )
PANTONE 1797C
PANTONE Cool Gray 11C
R 230 G 0 B 0
R 90 G 90 B 90
C 10% M100% Y100%
K 80%
株式売買注文の所要時間を表示し
“1秒を超えたら手数料を無料” に
三菱UFJフィナンシャル・グループのネット証券会社であ
るカブドットコム証券が、
「株式売買システム」を刷新し
た。東京証券取引所の次世代売買システム「アローヘッ
ド」の稼働に合わせ、個人投資家へのサービスを拡充さ
せるのがその最大の狙いだ。投資家から株式売買の指
示を受け付け取引所に送信するまでの処理時間を、従
来の1/4以下にまで短縮させたという。
「株式売買の注文に対する所要時間をお客様に提示し、
“1秒を超えたら手数料を無料”にするサービスを2010
年8月から始めました。私たちは新システムの稼働を機
に、個人投資家向け売買システムにおいて“板乗り最速”
を目指すことを宣言しました」
(執行役 阿部吉伸氏)
“板乗り”とは、証券会社の株式売買システムで注文を受
けてから、様々な照合処理を経て取引所に送信される
までのプロセスを指す。東証・アローヘッドが達成した
世界最高水準の売買スピードによる恩恵を個人投資家
が享受するには、取引を仲介する証券会社の板乗り速
度が重要になる。
カブドットコム証券株式会社
執行役
事務・システム本部長 兼 システム部長
阿部吉伸氏
カブドットコム証券株式会社
事務・システム本部
システム部
ITプロフェッショナル・エバンジェリ
スト
谷口有近氏
「お客様から求められたわけではありません。私たちが
にとっても、新たな売買執行能力の競争が始まったと言
株式売買システムの開発に独自に取り組み、いかに高
えます」
(阿部氏)
速処理を実現するか突き詰めていく過程で“1秒保証”
カブドットコム証券が新たに構築した「株式売買システ
という新しいアイディアが生まれたのです。そして、その
ム」の処理スピードは、平均330ミリ秒(最短100ミリ
実現に向けて全社で取り組み、技術的な確証を得たうえ
秒)。従来は平均2秒を要していたので、最大で20倍高
で“1秒保証”を大きく打ち出しました」
(阿部氏)
速化されたことになる。
カブドットコム証券は、ネット証券大手5社の中で唯一
「2秒の処理を1秒に高速化するのは、既存の技術だけで
バックエンドシステムを自社開発していることでも知ら
も可能だったかもしれません。しかし、2秒の処理を500
れる。多彩な自動売買対応サービス、PTS(私設取引シス
ミリ秒に、さらに100ミリ秒まで高速化するにはまった
テム)への参入、24時間オンライン勘定系自社システム
く別の技術やノウハウが必要でした」
(谷口氏)
の導入など、革新的なサービスはすべて独自開発のシス
遅延を極限まで削減したシステムをいかに構築する
テムによって支えられている。
か――この課題を解決するために、処理プロセス上のボ
「付加価値の高いサービスを提供することと、ITを使いこ
トルネックが徹底的に洗い出された。
なすノウハウを持っていることがより緊密に結びつく時
代になりました。ITに精通しているからこそ実現できる 「預かり資産や与信など顧客情報を照会し、銘柄属性
サービスがある、その確信を具現化することこそ私たち や注文明細などと突き合わせる注文処理のプロセスは
の使命と考えています」
(システム部 ITプロフェッショ 非常に重い。まず、RDBMSへの問合せ処理に着目しまし
た」
(谷口氏)
ナル・エバンジェリスト 谷口有近氏)
世の中の誰も考えつかなかったことを、ITを使ってサー 株式売買システムのアプリケーションは、一度の注文に
ビス提供する――これがカブドットコム証券のアイデン 対して数十回にわたって顧客データベース・注文データ
ベースにアクセスする。他の処理と比較して相対的に低
ティティであり、彼らの強さを支える不変の戦略とも言
速な磁気ディスク装置へのアクセスが、遅延に影響して
えるものだ。
いることは明らかだった。
インメモリデータグリッドにより“平均
330ミリ秒”を実現
「このボトルネックを解消するために、RDBMSへの問合
せ処理をサーバーメモリ上にキャッシュする方式を採用
東証・アローヘッドの稼働によって投資家の環境は大き しました。
『インメモリデータグリッド』と呼ばれる技術
く様変わりした。
です」
(谷口氏)
「売買の条件が整えば瞬時に約定しますので、取引を有 カブドットコム証券が採用したのは、VMware社が提供
利に成立させるためには発注の処理スピードが極めて
するインメモリデータグリッド製品「GemFire」である。
重要になります。
“カルタ取り”のように一瞬で物事が決 複数のx86サーバーを結び、仮想化された共有メモリ空
まる状況、と言えばわかりやすいでしょうか。証券会社
間内にデータを展開することで高速なデータアクセスを
カブドットコム証券株式会社
事務・システム本部
システム部 運用課
高橋佑太氏
日本ヒューレット・パッカード
株式会社
テクノロジーコンサルティング
統括本部
コンサルタント 古橋勇作氏
2
実現する。この仕組みをアプリケーションサーバーとデー “ 速いだけのシステム” ではなくデータ
タベースサーバーの間に配置することで、磁気ディスク
整合性や耐障害性も確保
装置へのアクセスを最小限にするのだ。しかし、
「インメ
株式売買システムを支えるサーバー構成を概観し
モリデータグリッドだけで500ミリ秒以下を達成できる
てみよう。サーバーシステムの中核を成すのは「HP
わけではない」と谷口氏は釘を刺す。
BladeSystem」である。HP BladeSystem c7000エンクロー
「GemFireのサーバーノードを同一のブレードエンクロー
ジャー内に複数台のGemFireサーバーを収容し、20ギガ
ジャ内に収容し、20ギガビット/秒のInfiniBandで結びま
ビット/秒のInfiniBandで接続。ここに仮想メモリ空間を
した。さらに、ネットワークI/Oを合理的に集約し、パ
構築している。同様にアプリケーション、データベースな
ケットのコンフリクトを起こさないよう経路設計を最
どを含む計20数台のサーバー群、各種スイッチ群も同
適化するなど、遅延を解消する方策を隅々まで施して
様のエンクロージャーに収容している。
います」
「GemFireでは、注文データ、時価データ、勘定系データ、
顧客データの4つのデータグリッドを構成して、メモリ
「株式売買システムの刷新により、PTS(私設取引システ 空間上でそれぞれが高速に処理を実行します。複数の
ム)を含む取引所間で連携するアルゴリズム取引への対 物理サーバーで処理されたデータの整合性を担保する
仕組み、そのデータをRDBMSに非同期で書き込む仕組
応を含め、間もなくやって来る“最良執行時代”へいち早 みを新たに構築しています」(システム部 運用課 高
く適応する条件を整えたことになります。ネット証券会 橋佑太氏)
社間におけるサービス競争で更なる優位をめざす、私た 可用性・耐障害性の面では、ネット証券システムならで
はの厳しい要件をどのようにクリアしているのか。
ちはその大きな一歩を踏み出すことができました」
「GemFireは、複数の物理サーバー間でレプリケーション
カブドットコム証券株式会社 を実行しデータを冗長化して保持します。1台の物理
執行役 事務・システム本部長 兼 システム部長 阿部吉伸氏 サーバーに障害があってもサービスが継続する仕組み
です。また、アプリケーション、データベースを含むす
インメモリデータグリッドを採用すれば一定の高速化が べてのサーバー群を『HP Virtual Connect』で結び、予備
可能だ。しかし、谷口氏が指摘するように「それだけで
機への切り替えを極めて迅速に行えるようにしました」
夢のように速くなるわけではない」ことも事実。最短距
(高橋氏)
離で高速に結ばれたサーバー群、最適化された通信経
「HP Virtual Connect」は、I/O仮想化テクノロジーとし
路など、様々な条件がギリギリまで詰められてインメモ
て注目されている製品だ。ネットワークアダプターの
リデータグリッドによるパフォーマンスが最大まで引き
ID(MACアドレス、World Wide Name)を書き換え、
出されるのである。
3
HP Virtual Connect内に作成した仮想ネットワークで接続
先の外部ポートを指定できる。サーバーの接続経路を自
由に変更できるので、サーバー予備機への切り替えが最
短時間で可能だ。
「どんなシステムも“壊れる”ということを前提に、システ
ムの機能と人的な対処を組み合せて合理的に耐障害性
を高めています。壊れたときの切り替えをいかに短時間
で行うか、と発想を転換することで工数も時間もコスト
も節減できました」
(高橋氏)
ソリューション概略:
導入ハードウェア
••HP BladeSystem
••HP ProLiant BL460c
••HP Virtual Connect
••HP StorageWorks XP
••InfiniBand
導入ソフトウェア
本プロジェクトの基本方針のひとつに、
「ビジネスロ
••GemFire
ジックは変更しない。既存のアプリケーション資産を有
効活用しつつインフラ領域の大幅な強化を図る」
(阿部
氏)というものがあった。パフォーマンス、データ整合
せて飛躍的な高速化を実現したことが最大のポイント
性、耐障害性、開発生産性――全ての要件に高い目標
です。フル板、リスト発注、クイック注文など豊富な発注
を掲げながら、ムダなコストは一切かけない方針であ
方法に対応し、リアルタイム情報サービスも格段に充実
る。限られた投資枠の中で最大の成果を生み出すため
させました」
(阿部氏)
に、インフラ構築は日本HPとの緊密な協業のもと推進
kabuステーション™は、kabuマシーンを継いで次期主力
された。
となる戦略ツールだ。自動発注機能の強化やアルゴリズ
「HPは、コストを最適化する機器構成の精査など、ITイン ム取引への対応も予定されている。
フラ領域のプロフェッショナルとして設計・実装のノウ
ハウを提供してくれました。メモリ上にデータをキャッ アーキテクトとしてITインフラの設計や最適化をリード
してきた谷口氏は、本プロジェクトに置けるHPの役割を
シュする技術だけを見れば、東証・アローヘッドでも採
次のように評価する。
用されていることは周知の通りです。私たちは、全員の
知恵を出し合って数百億円かけたと言われる東証システ 「HPのコンサルタント 古橋氏には、インメモリデータグ
ムの1/100以下の投資で、本システムの構築をめざした
リッドを複数のハードウェア上に実装するために多くの
のです」
(阿部氏)
ノウハウを提供してもらいました。特に、分散処理と耐
ネット証券会社間におけるサービス競
争で更なる優位を獲得
障害性を両立させるハードウェア構成は高い技術力が
求められた部分です」
谷口氏は、最新の設計・思想・アーキテクチャ・プログラ
ミングを共有できるパートナーの重要性を強調する。
カブドットコム証券の“板乗り1秒保証”は、個人投資家
をはじめ業界内に大きなインパクトをもたらした。新売
「システムの中核部分だけでなく、災害対策サイトとの連
買システムは稼働後もチューニングを繰り返し、現在で
携やバックアップを含め、インフラ領域の設計・構築を
は板乗りまでの処理時間を100~200ミリ秒で実行する
全面的に支援してもらいました。また何よりも、私たち
までに高められているという。
のお客様やサービスまでを含むビジネス課題を正しく
「条件注文に関する価格情報の受信は、情報ベンダーを 理解し、それを乗り越えるためにどんなテクノロジーが
経由せず『アローネット(証券相場報道システム)』への 必要なのか、どう使うべきなのかを真摯に提案してくれ
直接接続に切り替わりました。きわめて低遅延でデータ たことが大きいと思います。HPは私たちのチームに欠か
(谷口氏)
を受信できますので、たとえば自動発注においても安全 せない存在です」
性の高い取引が可能になります」
最後に阿部氏が次のように語って締めくくった。
東証・アローヘッドの高速化は、成行注文を行っている
「株式売買システムの刷新により、PTS(私設取引システ
ような場合に想定外の価格で約定する可能性をも生み
ム)を含む取引所間で連携するアルゴリズム取引への対
出した。カブドットコム証券の“低遅延システム”は、リ
応を含め、間もなくやって来る“最良執行時代”へいち早
スク低減のためにも不可欠だったと言える。
く適応する条件を整えたことになります。ネット証券会
「2010年12月より、新しいトレーディングツール『kabuス 社間におけるサービス競争で更なる優位をめざす、私た
ちはその大きな一歩を踏み出すことができました」
テーション™』の提供を開始しました。取引所に直結さ
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記載されている会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。
記載事項は2011年4月現在のものです。
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日本ヒューレット・パッカード株式会社
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JCS11163-01
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