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1 ちょっ糖、待った! ~校内の飲料水を考えよう~ 鹿児島南高等学校
ちょっ糖、待った! ~校内の飲料水を考えよう~ 鹿児島南高等学校 家庭クラブ Ⅰ 題目設定の理由 現代の生活にはスーパーやコンビニエンスストア、自動販売機が溢れています。そこには、様々 な飲料水がずらりと並んでおり、私たちは、飲みたいときに、飲みたいものを、飲みたいだけ飲 むことができます。 しかし、このように豊かな食生活の中で近年、生活習慣病の子供たちが増えてきていることが 指摘されています。つまり、豊かな食生活の中で、 “健康を保つための、選び取る力”が必要にな ってきているのです。 私たちの学校にも多くの飲料水が販売され、その中には糖分の多く含まれるものも数多くあり ます。実際に、糖分の多い飲料水を飲んでいる生徒も良く見かけます。 (写真1) そこで私たちは、生徒たちの健康への意識が、少しでも高められればと思い、校内の飲料水に ついて、研究に取り組みました。 Ⅱ 実施計画 1 実態調査と問題点の把握 2 研究と実践活動 3 普及活動 Ⅲ 実施状況 1 実態調査と問題点の把握 写真1 (1)校内の飲料水の種類調査 写真1 ア 自動販売機・・・7台 イ 飲料水の種類数・・・約70種類(自動販売機、購買部) 予想以上に、校内に飲料水があったことに、とても驚きました。 (2)アンケート調査 生徒972人と、先生方29人に、校内の飲料水に関するアンケートを実施しました。 ア 「学校で飲料水を購入していますか」 全生徒の77%が、飲料水を購入していることがわかりました。 イ 「飲料水を購入するとき、基準としていることはどんなことですか」 1 位・・・気分、2 位・・・味、3 位・・・価格、4 位・・・量、5 位・・・新商品の 順となりました。原材料を基準としている生徒は3%に留まり、健康に対する意識の 低さを感じました。 ウ 「現在学校にある70種類以上の飲料水についてどう思いますか」 1 生徒達・・・ 「今のままがよい」72% 先生方・・・ 「少なくしたほうがよい」72%と対照的な回答が得られました。 (3)売り上げ調査(写真2) 業者に依頼して昨年9月1ヶ月間の売り上げ本数を調べました。 (3/7台分) 順位 商品 売上本数 1 A(乳炭酸飲料①) 927 2 B(乳飲料) 702 3 C(乳炭酸飲料②) 230 4 D(清涼飲料) 171 5 E(緑茶) 141 総計4376本/3台 写真2 (4)糖度検査(写真3) 校内の飲料水の糖度を糖度計で測定し、砂糖量に換算して比較しました。 順位 商品 砂糖量g/本 1 F(炭酸飲料) 65.0 2 C(乳炭酸飲料②) 60.0 3 G(果汁飲料) 60.0 4 A(乳炭酸飲料①) 58.8 5 H(コーヒー飲料) 57.5 写真3 これら上位の飲料水に含まれる砂糖量は、高校生が1日に必要な目安である、20g の3 倍量にもなることが分かりました。また、本校生徒が一番好んで飲んでいる『A 商品』に含 まれる砂糖量は、58.8gにもなることが分かりました。 問題点 ・校内の飲料水の種類が多く、糖度の高い商品もある ・糖度の高い飲料水が好まれている ・生徒の問題意識が低い この実態は、学校での食習慣が、生活習慣病につながりかねないことを示しています。 2 研究と実践活動 (1)飲料水について調べる 高校生が1日に必要な砂糖の摂取量の目安は、20gです。糖分を取りすぎると、疲れや すくなったり、集中力が失われたりします。糖分を取り続ける食習慣は、肥満や動脈硬化、 糖尿病などの生活習慣病になることも知られています。 (2)他校と比較する 2 本校とほぼ同規模の A 校・B 校と、比較しました。 生徒数 自動販売 飲料水 機台数 種類数 本校 約 1,000 7 約70 A校 約 1,000 4 25 B校 約 1,000 5 30 飲料種類の選定 数年前の契約により、内容をきめ、業 者に一任。選定委員会は存在しない。 基本的には先生方で組織する選定委 員会を通して決定する。 先生方で組織する購買部委員会を通 して決定する。 (3)インタビュー調査 このような学校の現状について、先生方はどう思っていらっしゃるのか、インタビュー してみました。 ア 体育科の先生(写真4) 「昨年体育館に設置された、飲料水の選定はどのように行いましたか」と伺うと、 「業者と話し合って、スポーツドリンクだけを入れるようにしました」と話してくださ いました。 イ 保健室の先生方(写真5) 「糖度の高い飲料水が校内にある現状についてどう思いますか」と伺うと、 「今が一番の成長盛りなので、体のことを考えると良くない」や、 「このような環境の中で、生徒自身が判断して、購入することが必要だと思う」と答え てくださいました。先生方は、私たちの健康のことをしっかり考えてくださっているな と感じました。 写真4 写真5 (4)学校全体で校内の飲料水について考える機会を持つ ア 学校保健委員会での報告 保護者の方々の意見: 「学校内に飲料水の数がこんなに多いとは知らなかった」 「家庭クラブの調査結果を家庭にも伝わるようにして欲しい」 学校医の先生の意見: 「教育の現場では、健康のために飲料水を制限することも良いの ではないか」 3 学校保健部の意見: 「糖度の高い飲料水は何か手立てをするべきではないのか」 イ 職員会議での協議依頼 「選定委員会を新たに設置したらどうか」という協議を行っていただきました。そ の結果、 「選定委員会を設置しよう」という方向性が決定されました。選定委員会で は今後、内容の選定を検討していただく予定です。また、選定委員会のメンバーに私 たち生徒も入れてもらえないかも、検討していただく予定です。 3 普及活動 (1)校内での展示、家庭クラブ新聞の配布 糖度検査で測定した糖度を元に、飲料水に含まれる糖分量を砂糖に置き換えて、目に 見える形で展示しました。 (写真6) また、研究で分かったことを模造紙にまとめて掲示したり、校内に飲料水を選択する ときの注意のポスターを掲示したりしました。 (写真7) 教室には、本校生徒が良く飲む飲料水に含まれる砂糖量を、ご飯量に換算したポスタ ーにして掲示して、飲料水選択の意識を高めてもらいました。 さらに、以前に PTA 保健部から要望のあった、家庭クラブの研究を、家庭クラブ新聞 に載せ、生徒や保護者の方々に配布し、各家庭にも関心を持ってもらいました。 写真6 写真7 (2)クラスへの呼びかけ運動 家庭クラブ委員全員で、全クラスに呼びかけ運動を行いました。普段飲んでいる飲料 水に、どれだけの砂糖が含まれているのかを知ってもらうために、実際に砂糖を持って いって、説明しました。 本校生徒が好む飲料水は、ほぼご飯1杯を食べたのと同じくらいのカロリー摂取にな ること、それは高校生の3日分の砂糖量だという ことを強調しました。 生徒の前で呼びかけをするのは緊張しましたが、 みんな、興味を持って真剣に聞いてくれて、とても 嬉しかったです。 (写真8) 写真 8 (3)PTA 総会や文化祭での活動紹介 4 PTA の会にこられた保護者の方々に、研究活動の経過を見ていただきました。とても 興味深く見てくださる方が多くいらっしゃいました。 (写真9) また、2 学期に行われた文化祭でも、研究活動を紹介し、多くの生徒や保護者の方々、 先生方に、活動を知ってもらい、意識を高めてもらう機会を設けました。 活動の効果 その結果、 「以前と比べて飲料水選択に変化がありましたか」というアンケートに対して、 約 3 割の生徒が「変化があった」と答えました。その変化の内容は、お茶を購入する機会が増 え、炭酸飲料や果汁飲料を購入する機会が減ったという回答が得られました。 また、昨年 9 月と今年 9 月の自動販売機の売上本数を比較すると、炭酸飲料などの糖度の高 い飲料水の売上が大幅に減少し、お茶の売上が大きく伸びていることが分かりました。これら は、アンケート結果と一致します。 ア 昨年 9 月 イ 今年 9 月 順位 商品 売上本数 順位 商品 売上本数 1 A(乳炭酸飲料①) 927 1 A(乳炭酸飲料①) 630 2 B(乳飲料) 702 2 B(乳飲料) 450 3 C(乳炭酸飲料②) 230 3 I(清涼飲料) 356 4 D(清涼飲料) 171 4 J(緑茶) 295 5 E(緑茶) 141 5 D(清涼飲料) 141 Ⅳ まとめ 1 生徒や先生方、保護者の方々にも、生徒が摂取 している飲料水の実態を知ってもらい、関心を持 ってもらうことができました。 (写真9) 2 生徒の中に、健康を保つための“選び取る力” がつき、糖分の多い飲料水の購入が減り、お茶の購入が増えてきました。 写真9 3 私たちの研究の成果により、学校に選定委員会が設けられ、現在販売されている飲料水が 検討されることになりました。 4 自分たちの手で学校の環境や生徒の意識を改善できることを実感しました。 Ⅴ 今後の課題 生徒が学校内だけに限らず、いつでも将来の健康を守るための食習慣を身につけられるように、 更なる普及活動を展開していくことが今後の課題です。 生活習慣病の若年化は、生徒の将来の健康に対する意識や行動、保護者の家庭での協力、学校 の環境、この3つそれぞれが高まっていくことで、防げるのです。 5