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時間薬物治療の推進に向けて 2.生体リズムと薬物治療効果

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時間薬物治療の推進に向けて 2.生体リズムと薬物治療効果
時間薬物治療の推進に向けて
2.生体リズムと薬物治療効果
渡辺 善照
昭和薬科大学薬学部教授
多くの Ca 拮抗薬は、朝投与時及び夕方投与時ともに昼間
及び夜間の血圧を同程度に低下させることから、血圧日周リ
ズムに及ぼす影響は小さいとされている。夜間や早朝の血圧
コントロールには、α1 受容体を介する交感神経活性が主な
時間薬理学(chronopharmacology)において、生体リズ
役割を演じている。従って、non-dipper 型や morning BP
ムと薬物治療効果の関係が取り上げられる疾患について数多
surge を認める高血圧患者では、α1 遮断薬による治療が有
くの研究報告がある(表参照)。臨床的にも気管支喘息治療薬、
効と考えられている。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬
降圧薬、脂質異常症治療薬、副腎皮質ホルモン、消化性潰瘍
(ARB)は上記に比べて新しい薬であるため時間薬物治療に
治療薬、睡眠薬など代表的医薬品では、添付文書などに至適
関する臨床研究は少ないとされている。最近、ARB による
の投薬時刻が記載されている。今回は循環器疾患に対する時
高血圧性臓器障害の進展抑制効果が投与時刻により異なると
間薬物治療の例を紹介する。
の臨床成績も報告されており、患者の予後が投与時刻によっ
●循環器疾患の時間薬物治療
1)
血圧変動には日周リズムがあるが、そのパターンは個人に
て大きく変わるものと考えられている。
〔参考文献〕1)藤村昭夫:日薬理誌 ,137,125-129,2011.
よって大きく異なり、昼間よりも夜間の方が高い inverteddipper 型、 昼 間 に 比 べ て 夜 間 の 降 圧 が 10 % 以 下 の nondipper 型、10 % か ら 20 % の dipper 型、 及 び 20 % 以 上 の
表 時間薬理学で生体リズムと薬物治療効果の関係が取り上げられる
疾患の例
extreme-dipper 型に分類されている。24 時間自由行動下血
疾患例と適用薬剤例
圧測定法(ABPM)の普及で、夜間血圧を下げ過ぎると虚
血性心疾患の頻度が増加することが知られていることから、
喘息
降圧薬療法では inverted-dipper 型あるいは non-dipper 型で
テオフィリン
は夜間血圧を十分に下げ、extreme-dipper 型では夜間血圧
アレルギー性疾患
を下げ過ぎない工夫が必要とされている。
降圧薬の適正使用を目的として ABPM による血圧日周リ
ズム測定が保険適応になった。ABPM を用いた時の血圧コ
ン ト ロ ー ル の ポ イ ン ト と し て、 ① 24 時 間 平 均 血 圧 を
130/80mmHg 以下に降圧する、② dipper 型血圧日周リズム
を 確 保 す る、 ③ 起 床 時 の 急 激 な 血 圧 上 昇(morning BP
surge)をコントロールすることが挙げられている。
高血圧の時間薬物治療の実際としては、例えばアンジオテ
ンシン変換酵素(ACE)阻害薬は朝に投与されることが多
疾患、適用薬物の時間薬理学的特性
・夜間に呼吸機能の低下
・夜間アドレナリン低下
朝服薬時吸収上昇
・夜間にヒスタミン皮内反応最大
・夜間アドレナリン低下
抗ヒスタミン薬
朝服薬時吸収上昇、効果に差はない
クレマスチン
夕刻服薬時効果最大
消化性潰瘍
・夜間胃酸分泌上昇
・防御因子のリズム未報告
H2ブロッカー
夕刻服薬時胃酸分泌抑制持続時間延長
狭心症
・ST挙上夜間上昇
硝酸化合物
高血圧
・午後血圧上昇、アドレナリン上昇
プロプラノロール
朝服薬時吸収上昇、β遮断効果増強
ニトレジピン
朝服薬時吸収上昇、降圧効果増強
いが、乾咳の発現で投薬が中止されることがある。乾咳を認
フロセミド
夕刻投与時利尿効果増大
める場合、投与時刻を夕方に変更することで咳は減弱し、患
緑内障
・午後から夜間に眼圧上昇
者の QOL が向上するとされている。また、non-dipper 型の
チモロール
ピロカルピン
両者
夜間眼圧上昇
患者では、ACE 阻害薬を夕方に投与するほうがより優れた
治療効果が得られるものと考えられている。
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No.15
夜間眼圧上昇
エステラーゼの日周リズム
No.15
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