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「朝日検証」の波紋(下)
【歴史戦 第5部 「朝日検証」の波紋(下)2】 韓国紙が「朝日助ける方法あるはず」とまで擁護するのはなぜか 朝日新聞が今月5、6両日に掲載した慰安婦問題の特集記事について、6日付の 主要韓国紙は「朝日新聞、安倍に反撃…“慰安婦問題直視を”」(朝鮮日報)「朝日、 右翼に反撃」(中央日報)との見出しを掲げ、「自由を奪われた強制性あった」という朝 日の主張を全面的に支持した。 ◆保守勢力に警告 旧日本軍が慰安婦を「強制連行」したという誤解を韓国側に植え付けるきっかけの 一つとなった自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長、吉田清治の証言を朝日 が「虚偽」と認め、記事を取り消したことを、韓国メディアは問題視していない。むしろ 「自己反省した」(朝鮮日報)「潔い反省」(中央日報)と評価している。 なかでも朝鮮日報は、吉田証言を、記事中で「証拠が裏付けされていない証言」と いった曖昧な表現にとどめ、朝日の誤報には直接触れていない。それどころか「安倍 首相と産経新聞など極右メディアは朝日新聞を標的にし、『慰安婦=朝日新聞の捏造 (ねつぞう)説』まで公然と流布させている」と、朝日の慰安婦報道を追及してきた側を 非難している。 さらに「(朝日は)慰安婦の強制動員を証明する資料が多い点も強調した」とし、「朝 日の今回の記事は『慰安婦の強制動員はなかった』という考えを持つ安倍首相への直 撃弾でもある」とまで言い切った。 この記事を書いた同紙の東京特派員は後日、別の記事中でも「極右から『反日的』 と攻撃されながらも数十年にわたって旧日本軍の慰安婦問題の真実を伝え『日本の 良心』と評される朝日新聞の根気と執念」と手放しでたたえた。 中央日報も同様で、次のように解説した。 「慰安婦関連報道の先駆者の役割を果たしてきた朝日は『慰安婦として自由を奪わ れ、女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質』とし、日本国内の保守勢力 の『責任否定論』に対し警告した」 東亜日報も「朝日は、極右が否定している強制連行について『本人の意に反して慰 安婦にされる強制性があった』と指摘した」と報じた。いずれも、「強制性」を主張する 元慰安婦たちの証言があるため、朝日の記事取り消しは韓国側の主張を覆すもので はないとの認識が根底にある。 ◆「強制性」を死守 韓国メディアの一方的な報道について、静岡県立大准教授、奥薗秀樹はこう解説 する。 「慰安婦問題には2つの側面がある。1つは日韓間の戦後補償問題であり、もう1つ は女性の人権蹂躙(じゅうりん)という普遍的な国際問題という側面だ。後者の側面か ら見ると、韓国としては慰安婦問題を国際問題化することに成功した今となっては、吉 田証言が虚偽であったとしても、そのことに大した意味はない」 朝日の慰安婦報道が韓国政府や韓国メディアに少なからぬ影響を与え、日韓関係 悪化の発端になったことは完全に度外視されている。逆に朝日擁護の姿勢を強めて いる。 朝日の検証に対し、日本国内で非難が高まると、「日本の保守勢力、“朝日の慰安 婦報道”総攻勢」(京郷新聞電子版、6日)「日本の右翼が朝日の慰安婦報道総攻撃」 (東亜日報、7日付)と、その動きを批判した。 朝鮮日報国際部長(元東京特派員)は「朝日新聞の孤立」と題するコラム(9日付)で こう主張した。 「旧日本軍慰安婦をめぐる朝日新聞の闘いは20年以上になる。加害者の国の新聞 が常に被害者側で闘ってきたのだから、孤立し疲れが見えてきた。知恵を絞って助け る方法が韓国政府にはあるはずだ」 ここまでして韓国メディアが、朝日を必死に守ろうとするのはなぜか。韓国メディア関 係者が語る。 「韓国は安倍政権が『検証するが見直しはしない』と言いながら河野談話を骨抜きに しようという底意を持っていると真剣に疑っている。安倍への強い不信感があるので、 安倍政権に厳しい姿勢を見せる朝日を守るのは当然だ」 しかも「強制性」の部分は、韓国にとっても慰安婦問題で死守しなければならない要 ともいえるため、朝日に同調する論調に終始しているというわけだ。 韓国の報道姿勢について、同国のメディア事情に詳しい専門家はこう断じるのだっ た。 「誤報には目をつぶり、自分たちの都合の良い部分ばかりに焦点を当てるのは韓国 の対日姿勢を象徴している」(敬称略)=第5部おわり ◇ この企画は有元隆志、阿比留瑠比、大竹直樹、田北真樹子、原川貴郎、水沼啓子 が担当しました。