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がんを診断するのに液晶モニターは十分な性能を有するか

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がんを診断するのに液晶モニターは十分な性能を有するか
○平成17年度奨励研究
「がんを診断するのに液晶モニタは十分な性能を有するか」
放射線技術科学科 助教授
門間
正彦
1.研究目的
近年、PACSの導入が急速に高まり、モニタは医用画像表示装置として広く用いられるようになっ
てきた。多くのモダリティの画像を効率よく同時に表示し、各種画像処理やコンピュータ支援診断
を行う上でも今後ますます期待されている。
しかし、液晶モニタはフィルムと比べ画像表示のダイナミックレンジが狭く、高濃度部や低濃度
部の表示性能が劣化する。このような場合、胸部画像のような広範囲な濃度域を描出することを目
的とする等の画像の種類によっては、濃度およびコントラスト情報の欠落をもたらすことにつなが
るおそれがある。
そこで、輝度計を用いてCRTの輝度を直接測定することにより、モニタのハード的に調整可能な
コントラストやブライトネスを可変した場合の影響や、周辺光がモニタに入射する場合の影響につ
いて検討した。そのことにより、胸部X線画像をモニタ表示した場合の周辺光による濃度変化につ
いて考察する。
また、従来から使われているフィルム/スクリーン、CRフイルム、モニタをROC解析により評価
し、その検出能を比較検討した。
2.研究方法
モニタ(HIC655QA, Fuji medical System)の表面から垂直方向に110cmの距離に輝度計(BM-7,
TOPCON)を配置し、さらに輝度計の後方にシャーカステンを配置した。モニタ上にはSMPTEテストパタ
ーンを表示し、輝度計の視角0.2度でグレイスケールの輝度を測定した。測定は、モニタのブライトネ
ス、コントラストを可変した場合について、0~100%信号レベルの輝度を測定し、その輝度を濃度(0%
の信号レベルの輝度を基準にして対数表示した数値)に換算し、各入力信号に対する濃度値をプロッ
トした。また、周辺光による濃度変化について検討を行った。さらに、このデータをもとに、胸部X
線画像をモニタ表示した場合の周辺光による濃度変化についても検討を行った。
また、フィルム/スクリーン(SROシリーズ, Konica)、CRフイルム(REGIUS Vstage MODEL190,
Konica)、モニタ(REDIUS Console CS-2, Konica)を観察者6名(フィルム/スクリーンとCRフイル
ムの場合)および観察者2名(CRフイルムとモニタの場合)でJackknife法を用いたROC解析を行った。
対象とした試料はフィルムを30等分し、そのうちの任意の15ヶ所に模擬信号(ビーズ)を置いて撮影
し、信号ありを60、信号なしを60のデータを撮影した。解析ソフトはLABMRMC(シカゴ大学)を用いた。
3.研究結果
モニタの輝度調整およびコントラスト調整を変えることにより各信号レベルのうち、低輝度
(高濃度)
部の変化が大きかった。また、周辺光の強度を変えることにより、低輝度(高濃度)部の変化が大きか
った。このことより、胸部X線画像をモニタ表示した場合の周辺光による濃度変化は低輝度(高濃度)
部である肺野に影響を及ぼすことがわかった。
Jackknife法によるROC解析をフィルム/スクリーンに対して行った結果、低感度なシステムほど検
出能は低下した。同様に、CRフイルムでは撮影線量が少ないほど検出能は低下した。同じ線量で撮
影したフィルムとCRフィルムの検出能はほぼ同じであった。CRフイルムとモニタを比較すると、モ
ニタの検出能が低下していた(図)。
4.考察(結論)
1
0.8
0.6
TPF
モニタの輝度調整およびコントラスト調整に
よってもたらされる輝度変化を輝度計によって
捉えることができた。周辺光の強度を変えること
により、低輝度(高濃度)部の変化が大きかった
ことから、モニタ上に胸部画像を表示した場合、
周辺光の影響が特に大きな部位は肺野部であっ
た。モニタとフィルムの輝度を濃度に変換して比
較すると、モニタのダイナミックレンジは狭く、
高濃度部分のコントラストは小さかった。
モニタは製造メーカーや使用時間等により特
性が異なることが考えられる。今回の輝度調整や
コントラスト調整によって、高濃度部の影響が大
きかったが、設置時のモニタ調整によりその特性
は変わると考えられる。個々のモニタについて検
討が必要である。
0.4
0.2
a=1.90 b=0.36 Az=0.9628 CR
a=1.00 b=0.88 Az=0.7736 モニタ
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
FPF
図
CRフイルムとモニタのROC
5.成果の発表(学会・論文等,予定を含む)
1) 門間正彦, 他. 液晶モニタの評価. 第34回日本放射線技術学会秋季学術大会(札幌) 2006年10月(発
表予定)
6.参考文献
1) 川新吾, 大石茂雄, 田頭裕之, 石丸晴雄, 荒川憲二, 吉本政弘, 川上壽昭. CRT画像診断における輝
度劣化の影響. 日本放射線技術学会雑誌, 55(3); 285-290, 1999
2) 志村一男, 石田正光. 医用CRT表示装置の画質. 富士メディカルレビュー, 5, 50-64, 1995
3) 放射線機器工業会規格. 医用画像表示用パターン(JESRA X56). Medical Imaging Technology, 7(4);
447-453, 1989
4) 石垣武男. モニター診断 CRTの診断能. Medical Imaging Technology, 18(2) 110-114, 1989
5) 荒木陽子, 真田茂, 小林健, 橋本憲幸, 舟迫慎太郎. 高精細液晶ディスプレイの視覚的評価 胸部
腫瘤陰影像に対する診断において. 日本放射線技術学会雑誌, 61(8); 1151-1157, 2005
6) 真田茂, 荒木陽子. 画像診断伸展のために求められるモニタ性能. 新医療. 32(9); 97-99, 2005
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