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講演会の概要(PDF形式 208 キロバイト)
人を呼ぶきものプロジェクト講演会 1 概要 開催趣旨 平成 25 年度の開始以来、年々来訪者・参加工場ともに増加している「燕三条 工 場の祭典」の仕掛け人を招き、背景や内容、効果等について聞きながら、地場産業 を活かした地域活性化について、コーディネーター及びゲストも交えたトークセッ ション方式で考えるもの。 2 概要 (1)開催日時 (2)開催場所 (3)参集者 (4)テーマ (5)出演者 平成 28 年 8 月 9 日(火)午後5時~午後7時まで 十日町市「クロステン」 約80名 「燕三条 工場の祭典」に学ぶ地場産業活性化のカタチ 【アドバイザー】丁野 朗 氏((一社)日本観光振興協会総合調査研究所長) 【ゲ ス ト】 五十嵐 紀子 氏(新潟医療福祉大学社会福祉学部) 【出 演 者】 山田 立 氏((株)玉川堂番頭、第 4 回燕三条工場の祭典実行委員長) 澁谷 一真 氏(三条市経済部商工課主任) (6)構成 ア 庭野地域振興局長あいさつ イ トークセッション(コーディネーター:丁野氏) ・ 燕三条工場の祭典の概要(狙い、現状、次なる課題 等) ・ きものへの思いや現状に対する感想 ・ 十日町での可能性について ウ フロアとの意見交換 エ 出演者から十日町へのエール 3 講演の概要 【燕三条工場の祭典の概要1(山田)】 ・工場の祭典は、「現場で物を見て価格を納得してもらう」「製造現場とお客との距離を縮 めたい」という思いがきっかけ。 ・2010 年に「スノーピーク」、2011 年に「諏訪田製作所」がオープンファクトリー等を建 設し、ツアー等を受け入れてきたのが始まり。 ・燕三条には 4000 もの事業所があるが、初年度(H25)は、5日間で 54 工場が参加。 ・ 「工場で人をつなげる」をコンセプトに「子どものあこがれ」 「ものづくりの聖地」 「もの づくりの本質」「全力で取り組む」ことを目指して取り組んだ。 ・地域内の工場は素材がバラバラであるが、それが「機械フェチ」 「職人フェチ」にはまり、 進んで「夜の工場見学」などの取組にもつながった。 ・参加工場全てが4日間開くわけでなく、1 日だけの所もある。さらに食品・農業関係の 所もある(製造等77,農家13、販売6 計96) ・シンボルカラーは「火」のイメージのピンクと、金属のイメージの「シルバー」を合わ せたストライプとして、デザインはデザイナーに依頼。 「ウェルカムカラー」として「開い ている」と思わせ、敷居を下げ、入りやすくすることを考慮している。 ・お客は、バイヤーや小売りが多いが、約 4 割は県外からの来訪者。2年目から女性や学 生が増えた(学生は経営、経済などを勉強している人が多い。) ・全体的に燕三条ファンが増えたのではないかという気がする。 【燕三条工場の祭典の概要2(澁谷)】 ・もともとは「三条鍛冶祭り」というイベントのリニューアルという位置づけ。 ・併せて、企業(鍛冶や)の経営改善事業の中で、 「包丁の選び方について説明する(良い ものづくりを消費者にきちんと伝える。)」という取組を行いながら、鍛冶まつりのリニュ ーアルと結びつけるとともに、言葉を「こうば」と読ませるなどの工夫を行った。 ・コンセプトづくりには、行政が入らず職人が中心になって進め、 「燕三条は工場で人をつ なげる」として決めた。 ・共感する人に参加を求めて口説くとともに、役割分担(実行委員=実働部隊、行政=予 算、外部=デザイン・全体管理)を図った。 ・ブランドイメージを作り守るため、過ち(ロゴマークをシールにする☓、チラシをコピ ーする☓、イベント用オリジナル製品を作る☓)を犯さないように努めた。 ・ 「鍛冶屋」の職人がスマホで若い女子に撮られ、モチベーションが上がっている。またダ イハツとのコラボ企画で「コペン」のトレーラー等の製作につながるなどの成果がある。 ・工場は 10 人以下が全体の90%であるが、ものづくりに関心が高いニッチ層に働きかけ、 満足度を高めていきたい。 【きものに対する思いなど(五十嵐)】 ・きものは「歴史を纏う」ことの気持ちよさを感じることができる。 ・大学の教員として、いつかはきものを着たいと考えていたが、着始めて2~3回着続け ていると自分もまわりも普通に感じてきて、違和感がなくなる。 ・きものは着ると苦しいとか、手入れが大変などというが、着慣れすることにより7~8 分で着られるようになるし、手入れも日常的にできるようになる。 ・十日町に来るということで、明石縮を着てきたが、誰も気づいてくれなくてちょっとが っかり。 ・普通に着る場合と、一方で特別感を持って着られるような場を作ることも大事。みんな でやってみようという人があふれていくと、着たくなる。 ・川越は蔵の町だが、多くの人がきものを着て歩いていると、蔵の町と合う。きものを纏 ってSNSで写真を撮ってみたくなる。撮った写真が「いいね」といわれる楽しさを加え ることができると良い。 【燕三条工場の祭典の苦労・課題等】 ・参加工場は、54→57→68と増えているが、単純増ではなく、 「20増10減」とい うイメージで推移している。無理にお願いするとダメで、去る者は追わず来る者は拒まず という状況。 ・来たい人がリピートして、価格への納得感を持って買ってくれる流れができてきた。 ・1回目は、客目線から離れた企画で、遠く移動が大変な中、まわり方もよく分からず、 5日間で少ししか回らない人が多かった。 ・2回目は、歴史が分かるようなまわり方を提案(釘→工具等)した。またツアー(全日 12本、半日 3~4本。3,000 円~4,000 円)のモデルコースを設定した。 ・フリーに受け入れるには安全上不安な箇所等は見せなくて良い などの個別の対応を行 った。 ・課題の一つが2次交通。自転車を 60 台用意しているが、エリアが広く、タクシーだと料 金が嵩む。中には次の工場まで送るところもある。 【質疑(コーディネーター→報告者、会場→報告者】 Q 期間限定でなく、普段からやるという対応はどうか。 ・いつでもやって良いという所はあまりない。ただ、期間限定で参加してみて反 応があることを確認できた2~3箇所ずつ、通年で開放する箇所が増えている。 Q どれ位宿泊しているか。宿泊施設との連携状況はどうか。 ・両市には温泉宿泊施設はなく、ビジネスホテルのみ。今後連携を進めていかな ければならない。パンフは岩室・弥彦温泉などの管外施設にも置いている。 Q 県外には、関の刃物などを始めとして、産地内・間を横串で刺すような動きが あるが、そうした展開は。 ・地域内でのBtoB が増えた印象はある。人に見られるから分かり易く説明する ことなどがリクルートにつながり、就職者が2桁になった。工場主のお孫さんが お客に囲まれている祖父の姿を見て誇りに感じるということもあり、後継者育成 等への効果も期待される。 Q 十日町市内のきもの工場を見学しての感想は。 ・正直「かっこいい」。職業のイメージアップのキーは「かっこよさ」。手間をか けて働いている人を見ると、ときめきがある。特に反物を巻いている姿が特に良 い。働いている姿を見られることで、なお、かっこよく見せられるようになる。 ・1社で完結する内容で分かり易いので、すぐにでも始めてほしい。価格と納得 感の距離が縮まるはず。多くなくても良いので、数社が日を決めてやるとか、繰 り返してやってほしい。また、川上の事業に拡大しても面白い。 ・もっと見てみたい。初めての業態はわくわく感がある。一般の人には「非日常」 になるので、面白いと思うし、回を重ねるといろいろ工夫ができるようになる。 Q 普段は入れないところに入れるという所も産業観光の魅力。そういう観点でみ るとどうか。 ・なぜ魅力を感じて見に来るのかと考えると、スマホやタブレットの影響が大き いのではないか。「2次元画像で見えるさらに画面の向こうの臭い、音、熱を五 感で感じたい。」という思いが出てくるのではないか。 Q きもののことを十日町の人は身近に感じる分、客観的に見られない部分がでて こないか。当事者(主観的)とお客の立場(客観的)での観点が異なるように思 うがどのように整理されたか。 ・お客さんの立場からすると、 「職人さんがわざわざ手を止めて話をしてくれた」 だけでも感動するので、そういう客観性を活かすと共に、一方、ガイドブックの 各会社の紹介は、特徴が出るように「主観」で書いてもらい、お客さんに訴求し やすくしている。数をこなすことで、より良い方向が見えてくるのではないか。 SNSでの発信も重要。 Q 行政主体ではなく、鍛冶屋が主体というところに感銘を受けた。 ・もともとは鍛冶屋の経営改善のためのモデルコースとしてやっていた会社のコ ンセプトが、工場の祭典につながった。キーマンは6~7人というところで、外 部の人材を活用している。 【出演者から十日町へのメッセージ】 ○ 職人の姿、作業している様子はかっこいい。歴史と技術がつまっている。それ を着る喜び、「着る芸術」「着る歴史」という観点で進めてほしい。 ○ 燕三条もまだ4歳。少しずつ課題をクリアし、歴史を作っていく。最低10年 はやっていく。売上げの伸びもあるがむしろ「バリュー」の高まりが大きく、メ デイアの取材も多い。十日町の資源は素晴らしいので、ぜひ早いタイミングでや ってほしい。 ○ 燕三条地域の産地の価値はすごい。プレス・研磨・鍛冶等々の技術に裏打ちさ れたものを土台にできている。食でも、職人が食べるために「背脂ラーメン」が 生まれたように、物語があり、こうしたイベントを行うことにより、食の深みも 増す。十日町にもいろいろな物語があると思うので、それを磨く意味でも取組を 期待したい。 ○ 歴史や風土、地勢などがからまって、現在の産業・食などが形成されているの で、そういうものを一つのストーリーに整理して、まちぐるみで取り組んでほし い。織物からへぎそばなどの食の特色や、それぞれの役割を活かして、例えば「織 場の祭典」など、工夫した取組に期待したい。