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環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長 飯田哲也氏 講演録

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環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長 飯田哲也氏 講演録
環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長�飯田哲也氏�講演録
【日時】:2013 年 12 月21日(土) 16:00 18:45
【場所】:小川町中央公民館
【主催】:特定非営利活動(NPO)法人 おがわ町自然エネルギーファーム
【講演内容】
<原発事故と政治に関して>
小川町は外から見ると新しいエネルギーや地域作りや食で時代の先頭をやっている。
原発事故は第三の「敗戦」。
東日本大震災は天災だが原発事故はきっかけは天災であってもあきらかな人災。
いまは明治以降の日本の大きな転換点。
明治から始まった富国強兵の「強兵」は第二次世界大戦で潰れ、東京中心、財閥中心、中央型の「富
国」が潰れたのが福島原発事故。
新しい社会のあり方を作らなければならない。
現在の安倍政権の軍国主義的な姿勢や原発推進は幕末でいうところの「安政の大獄」に当たる。
遅かれ速かれ崩壊すると思う。
エネルギーと経済の形が3.11前は極端に中央独占大規模集中型で財界、経産省、経団連、電事連中
心、原発、石炭偏重などによる上からの支配。
これからは地域自立、小規模分散、生活者の視点、自然エネルギー、節電、持続可能性、幸福性に向
かわなければならない。
しかし既得権益が強いため、原発事故の責任を東電、株主、メガバンクは一切の責任を取らずに原発
推進を続けている。
核のゴミの捨て場さえないのに電力会社を潰さないために原発を動かそうとしている。
<福島第一原発の汚染水の問題>
大変な状況。
現在、海へトリチウムが流れ出ているが、今後セシウムやストロンチウムも流れ出すだろう。
政府は凍土壁を考えているが、これもトラブルが多発するだろう。
現状1日400 t の冷却水を入れて800 t を汲み出している。
そのうちセシウムを除去できている400tだけを再び冷却に回して、残りはタンクへ溜めている。
2日半で1000tのタンクがいっぱいになるので汚染水のタンクも増える一方。
そのタンクもゴムのパッキンをボルトで締めただけの粗末なものだったが当然汚染水漏れを起こしたた
め今は溶接のしっかりしたものになっている。
今年9月に飯田氏は国会議員と福島第一原発に行って見てきたがとんでもない状況で安倍首相の言う
「完全にブロック」「完全にコントロール」とはほど遠い状況。
<新しいエネルギー基本計画>
いま、既存の構造、東京電力や経産省、文科省、財務省、といったいわゆる役人、そして東電に巨額の
金を貸しているメガバンク、自民党を中心とした民主、維新などの政党、そして原子力ムラが、東電が
破綻したら「電気が止まるかもしれない」「福島の事故の収束作業ができなくなる」と脅して原発再稼働
をしようとしている。「再稼働しないと燃料費3兆円が余計に海外に流れ国富が出て行く」「新しい基準
で原発は安全になった」と『新しいエネルギー基本計画』を12月13日にやっつけで出してきた。
去年の暮れまではア行脱原発活用(阿南消費者庁長官、飯田氏、上田氏、枝広氏、大島氏、富士通総
研高橋氏、原子力資料情報室伴氏)らが原発をやめるため頑張っていたが上田氏を除いて全部辞めさ
せられてしまった。
代わりに入ったのは完全に失敗している再処理を必要だと言い張る山名氏。彼らによって福島原発事
故などなかったかのような内容の新エネルギー基本計画は作られた。
これのパブリックコメントの〆切が1月6日まで。
この結果を1/15ぐらいに閣議決定して新しい規制基準、地元首長の認可が得られれば来春から夏に
かけて伊方、玄海、川内、泊あたりから強引に再稼働するのではないかと思われる。
<燃料費3兆円は空ぶかし>
電力の燃料費は確かに2010年度から2013年度までで3兆円以上上がっているが、原発停止にともな
う燃料費の高騰は半分の1兆5千億円ほど。
残り1兆8千億円はアベノミクスによる円安、世界全体の原油代の高騰によるもので原発を止めなくて
も上がっていた分である。
節電効果で、2010年に比べると猛暑であった今夏、日本全体の電力使用量はピーク時で2割落ちてい
る。
通年では13%ぐらい、金額にして1兆円ぐらい減っている。
今年の燃料費は2008年のリーマンショック時と同じ25兆円。
2008年は輸出で80億円稼ぐというモデルを作っていたものなので燃料費の金額だけを取り上げてどう
こう言うのはバランスを欠いている。
<3.11以降、一番効果があったのが節電>
エネルギー政策上の考え方が変わってきている。
これまで「電気が足りなければ発電所を作れ」という供給側、作る側の目線でしか考えられて来なかっ
たものが、はじめて「使う方を無理なく減らせる」需要側、使う側の目線が入ってきた。
類人猿から現代人に変わったぐらいのエネルギーに対する意識の変化。
日本人には1973年に起きた石油ショックのときに国から強烈に省エネ、節電を押しつけられた印象が
に残っている影響で節電に「寒い」「暗い」「我慢」という印象を持っていたため「電気が足りなければ発電
所を作れ」とヒステリックになっていたが、震災後実際節電をやってみて、効率を上げるだけで省エネ、
節電できることがわかった。
東京都内の商業ビルや事務所ビルが照明1500ルクスを500ルクスに変えることと、エアコンの温度28℃
を徹底させただけで震災前と比べて夏の電力使用量が4 5割も減った。
その結果、電気代も大きく減って経営的にも良くなった。
「電気の使用量を減らすことは環境を汚して新しく発電所を作ることよりも良い」、節電発電所(ネガワッ
ト)という考え方ができたのが震災後最大の成果。
<原発を巡る世相について>
今夏の参院選での自民党の大勝後、世相が暗かった。
メディアが原発を取り上げない。
安倍首相の周囲に甘利氏や経産省の原発推進の人間が集まり、メディアに圧力をかけて筋金入りの番
組が作られなくなっている。
ETV の「ネットワークで作る放射能汚染地図」制作チームはバラバラに解散させられた。
今年後半、再び脱原発に注目が集まるように。
1 汚染水の問題が隠しきれなくなった。
2 『原発ホワイトアウト』が話題に。
原子力ムラのやり口。
同じ製品でも電力会社に納めると通常の値段の2倍。原子力関係だとさらにその2倍。
その浮いたお金を●●会などにプールさせて落選議員のサポートに当て、議員を骨抜きにしていた。
3 小泉元総理の脱原発発言。
小泉元総理は昨年5月から「自分はだまされた。原発は安全じゃなかった」と一貫して脱原発を唱えて
いた。
経団連が小泉氏をだますためにフィンランドのオンカロを視察させたところ、逆に「日本では絶対核廃棄
物の処理は無理」だと確信してますます脱原発を声高に言うようになった。
しかし、電力会社、特に関電、九電、四電は原発再稼働がないかぎり倒産まっしぐらなので年明けに向
けて原発の議論は大変になってくるだろう。
<持続可能なエネルギー>
飯田氏が所長を務める特定非営利活動法人�環境エネルギー政策研究所( ISEP:Institute for
Sustainable Energy Policies)
※Sustainable の意味は 持続可能な 。
「電気が足りないなら石炭発電や天然ガスコンバインドサイクルを増やせばいいじゃないか」という意見。
しかし電気は足りる足りないだけではない。
エネルギーだけが文明に必要ではないが文明の存続にエネルギーは必要。
入口と出口両方が何千、何万年と保証されなければ持続的とは言えない。
入口とは資源。
ウラン、石油、石炭、天然ガスはどれも何万年も保証できない。
地球で使っている商業的エネルギー(火力、水力、原子力などすべて)を1とすると地球に降り注いでい
る太陽エネルギーはその1万倍。
太陽は数億年、地熱も地球がある限り存在する。
再生可能エネルギーは量的にも時間的にも他のエネルギーの比較にならない。
出口とは環境影響やゴミの問題。
原発は福島の事故や核廃棄物処理の行方が無い限り行き詰まり。
化石燃料は地球温暖化問題の深刻さをみれば不適当。
自然エネルギーを増やしながらネガワット省エネを進めて、いずれは解決していこう。
<第4の革命>
自然エネルギーは非現実的?というのは10年前の常識。
この10年間で一気に現実味が出てきた。
2004年頃からドイツから言われ始めた「農耕革命、産業革命、情報革命に継ぐ人類史の第4の革命」
風力、太陽光は倍倍のペースで増えてきている。
昨年の各発電量の増減。
風力�年間4700万kw増�累積で2億8千万kw
太陽光�年間3100万kw増�累積で1億kw
原子力�横ばいから減少している�累積で3億7千万kw
昨年12月末で風力、太陽光の生み出した電力量が原子力の設備容量を追い越した。
今後も同じペースで増え続けるなら2年後には風力だけで原子力を追い越す。
太陽光でも数年で原子力を追い抜くだろう。
原発は2006年をピークに発電量がはっきりと落ちてきている。
第4の革命
1 エネルギーシフト
2 21世紀の産業革命
10年間でこの分野にかけられるお金は5兆円から25兆円に増加。
次の10年間でさらに50兆、100兆円になるだろう。
<世界の企業の趨勢>
スイス・スウェーデン合弁�AP 社�13年前に原子力を止めて現在は風力発電機のシェア7割の世界トッ
プ企業。
ドイツ�ジーメンス社�原発をやめて風力発電だけで数百億円、この10年で5000億円の利益。
アメリカ�GE 社�イメルド会長の元、原発から風力へ転換。
それに対する日本企業の趨勢
東芝�原発会社ウエスチングハウス6000億で買収。
日立�イギリスの原発会社買収。
三菱�カリフォルニアのサンオノフレ原発に蒸気発電機を出荷、130億円の利益を得るも、欠陥が発覚し
てサンオノフレ原発は廃炉決定。4000億円賠償の訴訟を起こされている。
日本企業は取り残されている。
<何故世界の企業は原発をやめているのか?>
原発は儲からない。
フランスの最新の原発は1兆5千億円。
メルトダウンした燃料を受け止めるコアキャッチャーなど新しい厳しい安全規制が課せられるためコスト
がどんどん高くなる。
日本の原発は3000億円。
世界の安全基準に合わせればこんな値段ではできない。
太陽光発電の値段はどんどん下がる。
アメリカの発電コストが過去30年どんどん下がって電気の小売料金を下回った。
ドイツも太陽光が安くなって買電するより自家消費した方が特になるくらい。
自然エネルギーは人類史上はじめて時間と共に安くなるエネルギー。
これはパソコンや家電などと同じように普及すればするほど安くなるため。(技術学習効果)
ムーアの法則
2年ごとにノートパソコンの処理速度は2倍になる。
何故なら日々世界中の競合会社が工夫をくり返し価格競争するため。
普及型のハイテク製品は技術の工夫・改良の成果が蓄積されて安くなる。
太陽光エネルギーは間違いなくこの先安くなる。
<ドイツのエネルギーシフト>
自然エネルギーの普及率
2000年�6%を10年間で12%を目標に。�実際は17%に上昇。
2010年�17%を10年間で35%を目標に。�その後選挙の結果45%を目指すことに。
2022年ですべての原発をやめる。
2011年で自然エネルギーの発電量が原発を越えた。
現在自然エネルギーの雇用も40万人ぐらいに。
その結果ドイツで起きたこと。
これまで昼間は電気の需要が高いため電気料金も高かったが現在自然エネルギーが昼間の電力量の
6割までシェアを拡げたため産業界の電気料金が下がった。
このため昼間の電気料金が最大の収入であった電力会社の収入がどんどん減ってきた。
ドイツは4大電力会社の利益がここ数年で激減。
技術学習効果と地域分散型発電で加速度的に太陽光が普及。
<デンマークのエネルギーシフト>
30年前は大型火力が主であったが2012年は大型火力が無くなって1万機の天然ガス、バイオガスコ
ージェネ発電や6500機の風力発電に変わってきた。
30年間で
◎大規模集中から小規模分散へ。
◎電力会社の地域独占から現在90%が地域の農民や協同組合の電気に。
今まではエネルギーは買うだけだったがエネルギーを生み出せばお金が稼げる。
◎地域にエネルギー費が回るようになった。
<アメリカのエネルギーシフト>
アメリカ最大の発電会社 NRG 社は原発建設から屋根置きの太陽光へ投資先を変更。
CEO が3.11以降「もう電力会社はいらない」と発言。
既存の電力会社のやり方は通用しなくなってきた。
地域自立型のエネルギー協同組合をどう作るか。
<デンマーク>
コペンハーゲンに市民出資の洋上風力発電を建設。
市民みんなで話し合った現代の都市計画に合う風力発電を「コペンハーゲン環境エネルギー事務所」
がアレンジ。
コペンハーゲン環境エネルギー事務所は地域のエネルギーを考え実践するパートナーシップの場とし
て、環境ベンチャーや普及啓発環境 NPO、制作研究所としての性格を持つ地域のエネルギーセンター
の役割を果たした。
モデル地域サムソ島
1995年から2003年にかけて自然エネルギーの割合4を%から150%に増加。
島民出資の自然エネルギー発電所を建設。(11 機の陸上風車、12 機の洋上風車、藁を使ったバイオ
マスなど)
いまは「サムソ�エネルギーアカデミー」として世界中から地域自立型エネルギーの学びの場となってい
る。
<スウェーデン>
ベクショー
暖房と給湯に100%バイオマスで作られた熱を利用。
<ドイツ>
フェルトハイム
すべての送電線を自分たちで引いてバイオガスと風力発電で電力自給率10000%。
結果、発電量の99%を売電。
ドイツも国全体で生み出す電力の約半分が地域所有の自然エネルギー。
<地域で生み出すエネルギーとお金の流れ>
山口県でいえば現在、光熱費1000億円が県外、国外へ流れている。
経済規模でいうと全一次産業の生み出すお金とほぼ同じ額。
小川町でいえば15億円ぐらい。
このエネルギーを自分たちで生み出すとそれまで外に出ていた15億円のエネルギー代が地域内に留
まる。
これはかなり大きな産業規模である。
地域外の人が作ったものを買う100円と地域の人が作った同じものを買う100円では地域に倍の経済
効果がある。
「地産地消」は正しいが、それを越えて目指すべきは「地産地所有」
自分たちでエネルギーを生み出していくことは非常に大きな地域の要になる。
自分たちがオーナーシップを持つことが非常に大事。
地域のエネルギーを自分たちで生み出すことはお金と仕事を地域に生み出すことになる。
<ISEP の活動>
日本の市民風車
北海道浜頓別�1000kw�2億円の風車(2001年)
青森(2003年)
秋田(2003年)
いずれも市民出資の風車。
2004年�長野県飯田市�コペンハーゲンの環境エネルギー事務所を目標に分散型太陽光「おひさまファ
ンド」を誕生。
毎年1000kwの太陽光発電が作られている。
<小川町でやるべきこと>
まず大事なのは真珠創りと同じ。
最初は小さな核を入れて時と共に一層一層増やしていく。
国の補助金で東京のコンサルが作るようなやり方は必ず失敗する。
核になるのは顔の見える関係の人たちがしっかりとプロジェクトを継続していく。
コミュニティパワー(ご当地電力)を創る。
コミュニティパワーの3つの定義
○地域のオーナーシップ�地域の人たちの所有、当事者意識。他人事ではなく我がこととして感じる。
○地域が意志決定�みんなで決めていく。
○地域が便益を共有する。�
「風力発電がうるさい」のはよそ事だから。
自分の風車と考えたなら止まってる方が心配。
<3.11後のご当地エネルギーの動き>
小田原�ほうとくエネルギー
http://www.houtoku-energy.com/
鈴廣かまぼこ�鈴木亨社長
小田原箱根の商工会議所会頭�鈴木悌介さんが原発ゼロを目指すエネルギーから経済を考える経営
者会議を設立。�
静岡未来エネルギー
http://s-miraienergy.com/
鈴与という企業と NPO、県が協力して立ち上げ。
会津電力
http://www.aipower.co.jp/
「東電の持つ原発5機500万kw分の水力発電を買収すれば福島のエネルギー自給率は100%、会津
においては1000%」
パルシステム�うなかみの大地
http://www.unakami-daichi.com/
まずは自分たちの施設へ、電力自由化後は会員に電気を販売。
自然エネルギー100%。
ONEF の作るエネルギーの取引先でもある。
10年前に飯田市に20年間のエネルギー買い取りと行政の屋根を発電に貸す事を交渉して飲ませたが
これを正当化する条例が今年できた。
地域環境権により、地域の個人、民間施設、公共施設の屋根などでエネルギーを作ることは行政施設
の目的内使用になり、倒産などした場合、市がサポートする。
自然エネルギーを作るところ、使うところみんなで仲良く協力する場を作ろう。�
パルシステムの再生可能エネルギー推進三原則
1 地域主体�地域の人が2分の1以上の出資
2 生活者主体�生活者主体で自然エネルギーを生み出しパルシステムとも交流しよう。
3 新しい社会モデル�新しい社会モデルを作るために基金を作る。
<今後のエネルギー事業の潮流>
世界でも日本でも地域分散型の自然エネルギーへの流れは止められない。
短期的には原発再稼働など嫌な動きはあるが、先を見据えれば古い大規模集中型の東京中心のエネ
ルギーのあり方から地域自立型の地域同士でネットワークを作り自然エネルギー、省エネルギーを進め
るという大きな転換の第一歩は間違いなく始まっている。
小川町も日本のモデル地域を目指してがんばってください。
<質疑応答>
Q.太陽光発電は地域エネルギーにとって一番やりやすい?
A.太陽光発電は地域自立型のエネルギーとしては練習問題。
短時間にできる。リスクが少ない。チームワークを作るのにちょうどいい。
�チームワークが固まったら別の難易度の高い自然エネルギーに挑戦してみる。
Q.市民発電所を作りたいがメガソーラのーのように広い土地がないと効率が悪いのか?
家庭の屋根などで小規模な太陽光発電では作ったエネルギーを近所でしか使えない?
A. メガソーラーは大変。
50kw以下ならば申請手続きも簡単。
50kw以下の太陽光発電も沢山作って足し合わせればメガソーラーと一緒。
若い人たちの仕事にしなくてはならないので億単位の仕事に早くすることを目指してほしい。
飯田市では行政が発電事業に協力してくれている。
Q.再生可能エネルギーの普及に発送電分離は不可欠だと思うがスムーズに行くだろうか?
A.発送電分離はした方がいいが、それがなくても既に再生可能エネルギーの普及は進んでいる。
電力会社には固定価格買い取りの義務があるが、「但し書き」の部分を最大限に使っている。
この「ただし」の部分をできるだけ小さくするために法などを使ってできうる限り自分たちの権利を追求
していくことが大事。
今の政権も電力会社も発送電分離はやる気がない。そう簡単には出来ると思わない方がいい。だが、
発送電分離は絶対にやらなければならないこと。
今の制度の中でできうる限りのことで再生可能エネルギーを少しずつでも増やしていくことが大事。
Q.小泉元首相は核のゴミ問題のみで脱原発を語っているが、どこかに処分場を作られれば問題解決し
たとして原発再稼働に回るのでは?
�また世界の潮流と日本のエネルギー政策は何故違うのか?
�何に動かされているのか?
A. 小泉さんは経済界や保守層に影響があるので彼の脱原発発言は面白い現象。
また、彼は処分場のことだけを言っているわけではない。
「原発の安全性についてだまされていた」
「原発をやめて日本は再生可能エネルギーに進んだ方が世界をリードできる」
「いま原発をやめないと後ではやめにくくなる」
など良いこと言ってる。
その部分はサポートしていきたい。
�日本の今の原発推進のエネルギー政策を支持しているのはごくわずか。
�原発輸出を決めたのは民主党政権時の仙石氏。
�3�.11後は経産省も三菱や日立もあまり積極的ではない。
�進めているのは東芝と自民党甘利氏と経産省の今井氏、柳井氏などごくわずか。
�戦中と同じように一部のエリートだけが終わった技術に妄想で突っ走っている。
�自民党では安倍、細田、石原ら古い頭の政治家と古いエリートが変な方向に引っ張っている。
Q.海外のエネルギーシフトは何故スムーズにできた?
A.どの国もあまりスムーズではなかった。
�デンマークは15機の原発を新設する予定だったが周知のため推進派と反対派両者が一緒に作った両
論併記のパンフレットを全戸に配った。
�そうしている間にスウェーデンによってデンマーク女王の住む首都コペンハーゲンの目と鼻の先に原発
が作られて国民感情が反原発に傾いた。
�スウェーデンはスリーマイル事故の後、原発をやめることに決めたがまだ2基しかやめていない。
�ドイツは地方自治が進んでいるので地域の州レベルでに原発をやめていく動きが起こり、1998年緑の
党が脱原発を決めたが、その後メルケル首相になるとこれをひっくり返した。
�それが3.11で再び以前緑の党が作った脱原発政策に転換した。
�どこの国も苦労しているし紆余曲折がある。
�日本は既得権益の危機感から一時的に原発推進に傾いているのだと思うが県や地域レベルで脱原発
の動きを形にしていく事が大事。
Q.自然エネルギー、特に風力は出力の変動が激しいため他の発電所の電力をうまく調整する必要があ
るがよいアイデアは?
A.短期的にはその通りだが日本はまだ20年ぐらい余裕がある。
�「変動するベース電力」という考え方。
�フラットでも荒れていても需要の変動に合わせなければならない。
�ベース電源の意味 変動する需要に調整できない電源。
�風力も原子力も変動する需要に合わせられない事では同じ。
�風力や太陽光は需要に合わせられなくても出力の予想はできる。
�また、1機、1機が出力が小さいので故障しても大きな問題はない。
�原子力は10機一辺に故障したら1000万kwが供給できなくなり停電の危機。
�出力調整はどっちをベースにしたとしても火力と水力を使う。
�日本はまだ再生可能エネルギーの割合が小さいので既存の火力と水力であと20年ぐらいは充分調整
できる。
�その先は蓄電や需要の調整、ヒートポンプ、水素エネルギーなど技術の進歩で解決できるだろう。
Q.蓄電の技術はどれくらい進んでいる?
A.技術そのものは既にある。あとはコストの問題。普及していけばコストも下がっていくだろう。
�現在コストに若干目をつぶればそれなりに自給できるレベルにはなっているが、社会全体に普及するに
はまだ至っていない。
�ドイツ、アメリカでは太陽光+蓄電池が電気を買うより安くなる日は2020年あたりには来るのではない
か。
�日本はまだ追いついていないがちょっと手を伸ばせば2020年から数年で届くと思われる。
Q.太陽電池の普及は政府の統計をみるとあまり進んでいないようだがどういうことだろう?
A.最大の理由は統計が遅れるということ。
�固定価格制度が始まった昨年の時点での太陽光発電の発電量は500万kw。今年の7月時点では80
0万kwぐらいに伸びているはず。
政府から許可が出ている分では新規で2500万kwぐらいある。
しかし太陽光のパネルが足りないなどの物不足が一番。それと電力会社送電線をつないでくれないと
か、中には高く売ろうと権利だけ取得した事業者がいるなどの色々な理由で進んでいないのではない
か。
あと2 3年すればそれらのものも形になっていくと思われる。それが統計になって出てくるのは5年後。
これまで水力が8%。それ以外の自然エネルギーが2%ぐらいの割合だったのが3 4年後には14% 1
5%ぐらいに伸びるのではないかと思う。
Q.熱と電気の両方を使えるコージェネに興味があるが、ヨーロッパの情報や最新の情報があったら教え
てください。
A.コージェネレーションはふだん日本ではあまり目にしない技術。
�発電の廃熱を暖房や給湯に使おうという技術。
�エネルギー自身を100としたとき、発電だけだと40%にしか使えないが、熱も利用すると50%、合わせ
て90%ぐらいを利用できる。
�家庭用コージェネレーションの代表はエコウィル(大阪ガス・Honda)というガス発電「発電もする給湯
器」(約70万円)
�あとはエネファーム(東京ガス)という燃料電池で「発電効率の良いガスコージェネ」があるがまだまだ
値段が高く普及していない。
ヨーロッパでは天然ガスのコージェネが普及している。
ドイツ、スウェーデン、フィンランドなどは木質バイオマスのコージェネで2万kw 10万kwのものがあ
るが、これは大型ボイラーに蒸気発電機が付いているようなもの。
日本では熱が使いにくい。
スウェーデン、デンマーク、フィンランドには地域熱供給が発達していて90℃ぐらいのお湯のネットワ
ークがストックホルム郊外に延々100kmぐらい張り巡らされており、それが各家の暖房と給湯に使われ
ている。
日本ではそれだけのコージェネレーションを使うにはそのためのインフラがない。
そのため家庭用のコージェネや池袋や六本木ヒルズなど大型のビルのガスコージェネが冷暖房に使
われているぐらいである。
日本はエネルギー政策が産業界によって若干歪められている。
ガスコージェネとヒートポンプ(1の電気で2 5の温冷熱を生み出す感応サイクル。ヒーターよりも効
率的)をそれぞれガス会社と電力会社が進めて代理戦争になってしまっていて、電力会社にガス会社
が押されているのもコージェネが進まない原因の1つ。そのためコージェネよりオール電化の方が多い。
�林野庁が5000kwの固定買い取り制度で木質バイオマスを進めようとしているが、これは生み出され
る廃熱の使い用がまったく無い。
�これでは木質資源の使い方がまったく効率的ではないので300 400kwほどでいいからボイラーに発
電機をつけて、発電効率は10%でも構わないから、熱を効率的に使う事を主体に変えた方がいい。
しかし林野庁は固定価格にひきづられて熱が捨ててしまっているのが日本のひずみ。
�コージェネレーションを普及させるには暖房と給湯を地域で使えるようなインフラが必要。
�使う側からコージェネに関するエネルギー政策を見直すには熱に注目する事が大事。
Q.自然エネルギー自体は大量にあるが風車や太陽光パネルを作る資源には限りがあるので、それが
再生可能エネルギーの普及を阻んでいるのではないか?
A.すべてのことを知っているわけではないので断片的な知識や情報になってしまうが、まずエネルギー
論から言うと再生可能エネルギーの装置を生み出すエネルギーで、出来上がった風車や太陽光が生
み出すエネルギーを割り算すると1 2年で製造時のエネルギーは取り戻せる。(エネルギーペイバック
タイム)
太陽光パネルや風車の寿命が20年なので充分におつりがくる計算。
資源論的には太陽光や風力に限らず現代文明すべてで考えるべき問題だと思っている。
銅などは希少であるがこれは太陽光や風力発電より送電線の方が大量に使われている。
これをリサイクルにするか代替材料にするかは産業全体の問題。
再生可能エネルギーでも、太陽光パネルのメイン材料であるシリコンは有り余るほどあるし、風力もタワ
ー部分は鉄やブレード部分は FR でできているので問題はないと思うがいくつかの希少資源については
問題だろう。
しかし、それは太陽光や風力のために使われる分よりも産業全体に使われる部分の方が圧倒的に多い
ので、その中で代替材料やリサイクルの方法を探す方が問題設定としては適切。
Q.自分でも市民発電所をやってみたいが、全国を回って見てきた経験で運動がどういうふうに拡がって
いったか、最初に何をしたらいいのかを教えてほしい。
A.まず仲間を集めて勉強会を開くことが最初だと思う。
そこでどこまで多用な考えや技術や技を持った人が集まるか、どこまで広がりを持った人が集められる
かによってその場の力やスケールが決まってくる。
拡がりすぎると分裂してしまう。小さすぎるとままごとになってしまう。
会津電力は今のところまったく行政が関わっていない。
もともと会津、喜多方、南会津、磐梯などで個別の活動をしている人はいっぱいいた。
それを佐藤八雲さんを中心にみんなの話し合い、ワークショップ、フォーラムを重ねていく中で会津電力
というプラットフォームにみんなが乗っかっていく形になった。
小田原は官・民が良い形で連携した。
最初は小田原市長が3.11の後危機感を持って飯田氏を呼んで公開フォーラムをやった中で「小田原
電力をつくろう」という話になったがそこに来場していた人たちがこれに反応した。
また、市主催のワークショップで小田原商工会議所や鈴廣かまぼこなどが中心となって主導して動いて
いった。
いずれにしても既存のビジネスというより、公民公共的な新しい枠組みなので古い人や古い組織の人た
ちだけで集まるとダメになってしまう。
言い古された言葉だが「よそ者、若者、バカ者」それと「女性」といった新しい感性を持った人たちが良い
形で地域の人たちと繋がってはじめてちゃんと動くのではないだろうか。
地域によっても入り方などでも違ったドラマがあるだろう。
中心にやりぬく覚悟を持った人がいれば色んな紆余曲折があっても必ず形になって発展していく。
Fly UP