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コミュニティビジネスの実践を通じた地域課題の解決のあり方

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コミュニティビジネスの実践を通じた地域課題の解決のあり方
平成16年度千葉市・大学等共同研究事業
コミュニティビジネスの実践を通じた地域課題の解決のあり方に関する研究
1
研究の目的と方法
(1)研究の目的
地域が有するニーズや実情を把握するほか、実際に行われている活動を対象として、
活動団体が抱える課題やその解決のための手法、また、効率的に活動を行って行く上
で求められる環境(情報や人材のネットワークなど)やその整備のために自治体に求
められる支援のあり方について研究することを目的とする。
また、地域が抱える課題を共有し、また、実際の活動において実施主体が抱える課
題の解決を通じて、コミュニティビジネスとしての活動が開始されてから、継続的な
事業活動に達するまでのノウハウを取得することも目的の一つである。
(2)研究の方法
千葉大学側の研究チームと千葉市は共同で、コミュニティビジネスの実践主体であ
る「NPO法人ちば地域再生リサーチ」のビジネスプラン検討と試行を通して、以下
の方法によって効果的な支援のあり方について検討を行う。
また、千葉大学は、地域経済や地域コミュニティの活性化への波及効果などの研究
を行い、千葉市は、活動団体とのネットワークによって連携を図りながら、活動実態
等を正確に把握し、支援方策を検討する。
①事例調査
②需要調査
③コミュニティビジネスプランの策定・支援
④コミュニティビジネスの試行・支援
⑤支援方策の検討
⑥研究会の実施
2
コミュニティビジネス実践の背景
(1)地域課題と方針
1970 年代から開発が進んできた稲毛海浜ニュータウン内の高洲・高浜の両団地は東
京を中心とした高度経済成長下の経済活動を支えるベッドタウンとして形成されてき
た。この地区(高洲 1∼4 丁目、高浜 1∼7 丁目)は、約 2km 四方の中に現在、約 18,
000 世帯、約 44、000 人の人口が住む。現在の高齢化は 10%程度であるが、この地
区は 1970 年代に同世代が同時に入居したため、今後 10 年間には一斉に超高齢化する
と予想されている。
約 18,000 戸ある住宅の内、約 7 割が住宅公団によって 1970 年代前半に供給された
5 階建て(エレベータなし)の団地である。都心回帰現象や最寄り駅直近の新規マン
ション供給によって、衰退化が進んでいる。
(2)地域活性化とコミュニティビジネスの方向性
対象とする団地を活性化するためには、高齢者が安心して暮らせる終の住処とし、
新たな居住者を地域に呼び込むような魅力ある団地の再生計画をつくることが大きな
目標となる。この目標を実現するための方向性として、次の 5 項目を挙げた。
○
地域貢献に意欲をもち専門技能をもつリタイア人材や、地域内の中高年とネッ
トワークを構築する。
○
コミュニティビジネスの視点をとりいれ、住民からの信用力を得ることによって、
団地ショッピングセンターの活性化と地域コミュニティの活性化を連動させる。
○
大規模団地の画一化・標準化というデメリットを、ビジネス上のメリットとして
捉える。
○
ショッピングセンター商店会とNPOとがパートナーを組んで、投資とリターン
を分散させる。
○
活動の継続性を高めるために、コミュニティビジネス以外の収益事業を実施する。
(3)コミュニティビジネスの目的
対象地域の課題に対して、ショッピングセンター商店会の個店などとパートナーシ
ップを組み、地元のリタイア技能者による住宅修理・模様替え事業を中心に、団地に
住む高齢者に対する生活支援をコミュニティビジネスの手法で継続的に実践すること
を目的とする。
地域課題への対応としては、団地の老朽化に対し低プライスな住宅修理・模様替え
サービス、高齢化に対し高齢者が安全に安心して暮らせるサービス、ショッピングセ
ンター衰退化に対し個店活性化のためのビジネスが対応する。
3
ビジネスモデルの構築作業・基礎調査
(1)策定作業
①事業推進検討会議
ビジネスモデルを構築するために検討組織「CB戦略会議」を組織した。この検討
組織はNPO法人ちば地域再生リサーチから 3∼5 名、商店会から商店会長を含む 2
∼3 名、地域住民 3 名、千葉市経済振興課で構成され、事業期間中に 7 回実施した。
②関連する策定作業
策定作業のための基礎調査として、潜在顧客・ニーズの把握、関連自治体・機関の
ヒアリング、専門家指導、先進事例調査を実施した。
(2)事例調査の結果
コミュニティビジネスの先進事例について文献及びホームページ等から抽出し分析
した。また、これらの事例の一部につき現地に赴きヒアリング調査を行った。また、
コミュニティビジネスに関わる専門家に対して、課題や進め方のヒアリング調査を行
った。
①ホームページによる事例調査
「共同宅配」の事例として「みたかモール」「あおもり昭和通り商店街」「川崎市小田
銀座商店街」、「DIYリフォーム」の事例として「DIYヘルプ」「カーペンターズクラ
ブ」「住宅工房」に関する活動団体の概要を調査した。
②インタビュー調査
コミュニティビジネスの全体像や実施項目に関連する内容について、専門家の意見を
収集した。意見を伺った専門家は、コミュニティビジネスの進め方、人材の集め方につ
いて永沢映氏(コミュニティビジネスサポートセンター)、高齢者生活支援について澤
登信子氏(ライフカルチャーセンター)、DIY サポートについて中西光子氏(住宅支援
協会)、賃貸リフォーム・職人ネットワークについて岸田浩二氏(住宅工房)である。
(3)ニーズ調査
本事業のサービス項目である安否確認、買物代行、行事サポート、DIYリフォー
ムそれぞれについて、ニーズと対応するサービス・対価などを把握した。それぞれ高
いニーズがあることが明らかになり、具体的な金額設定を可能にするデータを収集す
ることができた。アンケートは公団住宅(賃貸、分譲)、県営住宅、市営住宅、戸建て
住宅の世帯 4、892 票に配布し、448 票を回収した(回収率:9.1%)。
4
コミュニティビジネスモデルの概要
この事業は、NPO 法人ちば地域再生リサーチと、団地居住者の日常生活を支える商店
会とがパートナーシップを組んでサービスを提供する。NPO 法人ちば地域再生リサーチ
が、高洲ショッピングセンター内にサービス拠点を設置し、運営・管理を 行う もの で、
地元のリタイア技能者による住宅修理・模様替え事業を中心に、団地に住む高齢者に対
する生活支援をコミュニティビジネスの手法で継続的に実践する。
サービスは、DIYリフォーム系事業の2項目と、買物代行系事業の4項目からなる。
○
DIYリフォーム系事業
・DIY店頭サポート
○
5
・出張DIYサポート・リフォーム
買物代行系事業
・代済商品配達サービス
・WEB 買物代行サービス
・日替わり情報配信応答
・定番商品配達サービス
コミュニティビジネスの試行
(1)DIYリフォーム系事業の試行
DIY アドバイザー、模様替えスタッフの養成のための講習会のしくみづくり、模様
替えスタッフ候補の発掘を目的とした DIY 講習会のしくみと内容については、事後ア
ンケートによって検証した結果、時間、内容、教え方ともに高い評価を得た。この講
習会開催は、団体の販路拡大とスタッフ養成にもつながり有効なしくみとして確立さ
れたといえる。
また、材料販売や作業受注の価格設定も、ホームセンターの材料価格、リフォーム
業者の作業費などと勘案し、民業圧迫しない範囲で価格を設定した結果、受注がコン
スタントにあることから、ユーザに受け入れられていると考えられる。また、仕入れ
価格との関係から、実施団体に十分な利益を残すことができることになっている。
○
DIY 講習会の開催
壁紙、ふすま紙、クッションフロアの張替え、鍵、水栓金具の取替え、塗装などの
DIY 講習会を開催した。2005年2月までに延べ82名の受講者があり、この内6
名が連続して受講しており、将来的なスタッフの予備軍として期待される。
○
材料販売
壁紙、ふすま紙、椅子生地、玄関錠を販売した。売り上げは月平均約 7 万円であっ
た。
○
DIY サポート
3世帯の壁紙張り替えのDIYを自宅に出張してサポートした。サポートは最初に
講師が見本、次ぎに、本人が一人で出来るようになるまで、作業を手伝った。非常に
心強いという、作業後の感想があり、十分な役割を果たしうることが分かった。
○
張替え作業
ふすま紙の張り替え、椅子生地の張り替えの作業を受注した。売り上げは月平均約
5.6万円であった。
(2)買物代行系事業の試行
価格設定やニーズ調査を行うためのモニターが集まらなかった。高齢者支援の商品
そのもののパッケージ化による分かりにくさと、月額 2000 円という比較的高めの料
金設定が原因であることが、聞き取り調査から明らかになった。
検討の結果、パーケージ化することをとりやめて、個別メニューごとに試行を続け、
顧客のニーズごとにカスタマイズできるような商品構成とすることにした。
また、ショッピングセンターの代済商品を配達するニーズがあったため、
「代済商品
の配達」をサービス項目として取り入れ、1回 50 円という低額で開始した。安売り
のタイムサービス時間帯に代済商品配達の受付を行い、徐々に配達(買物代行)とい
うサービスを広めていく方法に転換することとした。
「代済商品の配達」は 2005 年 1 月以降も、リピーターがおり比較的好評である。
自ら出向いて、商品を見ながら買い物をしたいというニーズに合っているものと思わ
れる。
6
コミュニティビジネスの活動上の課題解決に求められる支援方策
(1)自治体に求められる支援内容
①活動上でのノウハウ提供の支援
活動の実施については、上記の雇用・労務関係を含め経営上でのノウハウが求めら
れるが、地域住民が主体となって行うことから、十分に備わっていないことが想定さ
れる。
活動団体に一定のノウハウを有する人材を育成するための講座の実施のほか、ノウ
ハウを提供するための専門家を派遣するなどの手法により、活動団体がビジネス的な
手法を習得するための支援が求められる。
②資金確保のための支援
事業運営のための収益を確保し事業が軌道に達するまでには、一定の初期投資が求
められるが活動団体の財政基盤は、その多くが脆弱なことが想定される。
今回の試行事業に見られるように、金融機関の融資等の資金を受ける場合において
も一定の審査をクリアすることが求められるため、現実性の高いビジネスプランを構
築していくことが必要となってくるが、地域住民は課題解決のための強い意欲や熱意
は見受けられても、現実の活動としてビジネスプランに反映させるためのノウハウが
備わっていない。
そこで、上記①と同様、講座の実施のほか、専門家を派遣するなどの支援を実施す
ることで、完成度の高いビジネスプラン作成能力の向上へ向けた支援が求められる。
③営業力向上のための支援(コミュニティビジネスの周知)
コミュニティビジネスという活動が、まだ住民にとって耳慣れない言葉であり、協
力者やサービスの提供者の確保が進まない傾向が見受けられた。
自治体などが中心となって、コミュニティビジネスを広めるためのシンポジウムや
勉強会などを開催し、住民にとってこれらの活動が、身近な存在として受け入れられ
やすい素地を作ることが期待される。
④営業力向上のための支援(地域課題の問題共有(情報の提供))
地域課題の解決を目指すコミュニティビジネスでは、その課題を詳しく把握するこ
とが初期の段階では重要であると思われる。
それらの情報が得られない場合、アンケート調査などによって地域課題を詳細に把
握することが可能となるが、アンケート調査の実施においては、実施費用や住民の活
動法人に対する信頼性によっては満足なデータの把握が出来ないことも想定される。
そのため、活動希望者に対して、自治体等が所有している既存の調査データや統計
情報などを効率的に提供することにより、地域課題の共有化を図ることが求められる。
(2)大学に求められる支援内容
専門性を活かしたアドバイスと調査協力
大学のもつ調査能力や、専門性の高い情報は、地域課題を解決するために役立つも
のである。
地域住民が主体となってコミュニティビジネスを立ち上げる場合には、これらの専
門性は必要不可欠なもので、パートナーシップのとり方などの仕組みづくりが必要で
ある。
<共同研究者一覧>
○千葉大学
服部岑生
大学院自然科学研究科教授
上野武
工学部デザイン工学科助教授
鈴木雅之
工学部デザイン工学科助手
高柳英明
工学部デザイン工学科助手
吉岡陽介
自然科学研究科助手
○千葉市
森島俊之
千葉市経済振興課主幹
大畑晃
千葉市経済振興課主事
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