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サステイナビリティにおける 人間の安全保障という視点 間 安 保障 う視点
大阪大学2009年度1学期 サスティナビリティ学教育プログラム GLOCOL協力科目 「環境と社会」「環境と社会特講」 Apr. 15, 09 「環境と社会」/「環境と社会特講」第二回 サステイナビリティにおける 間 安 保障 う視点 人間の安全保障という視点 質問 • 世界の将来は明るいと思いますか?それ とも、暗いと思いますか? GLOCOL 特任研究員 福田 州平 1970年代 1970年代 • 明るい未来予測 1970 1970年代 年代 • 国連人間環境会議(1972年) – 「21世紀は日本の世紀」(ハーマン・カーン) • 暗い未来予測 – 『成長の限界』(ローマ・クラブ 『成長の限界』( クラブ 1972年) ¾世界経済システムが無限に成長をつづけることは不可能 • 「人間環境を保護し、改善することは世界中の人々の福 祉と経済発展に影響を及ぼす主要な課題」 – 「人間環境宣言」を採択 • 「現在および将来の世代のために人間環境を維持し向上 させることは人類にとっての至上の目的、すなわち平和と 世界的な経済社会発展の明白な基本目標と並んでこれと 調和するかたちで追及しなければならない目標である。」 • UNEP(国連環境プログラム)の設立 1970年代 1970年代 • 「宇宙船地球号」という考え方の登場 » 「これから毎年、平和で喜びに満ちたアースデイだけが 、我々の美しい宇宙船地球号に来るように。地球号が温 かくて壊れやすい生物という貨物とともに回転し 厳寒 かくて壊れやすい生物という貨物とともに回転し、厳寒 の宇宙を巡り続けるかぎり。」(ウ・タント) 「持続的開発」の登場 • ブルントラント委員会 – 1987年 『地球の未来を守るために』 – 将来世代のニーズを損なうことなく現代世代のニー ズを満たすような自然の持続可能な利用と循環型 社会づくりを目指す。 – 政治的な意図も・・・ 1/5 大阪大学2009年度1学期 サスティナビリティ学教育プログラム GLOCOL協力科目 「環境と社会」「環境と社会特講」 ところで・・・ security(安全)って何ですか? “security”とは? “security”とは?-語源 Securityの語源 (羅)securus, securitas > se-(接頭辞)「欠如」 > cura 「気づかい」…careの語源 →securus, securitasは、(希)ataraxiaの訳語 は (希) 訳語 > a-(否定辞)とtarassein(「混乱させる」) の合成語 「(心が)乱されていないこと」、「心の平静」 人間の安全保障の登場 • 安全保障 = 国家の安全保障だった。 • そして、国家安全保障は、「開発」の成果を守る ためのものでもあった。 • 国家の安全に偏重するあまり 国家の安全に偏重するあまり、軽視された人々の抱え 軽視された人々の抱え る問題。 • 食糧 • 健康 • 環境 • Etc... 人間の安全保障の登場 • 1980年代に見直しの議論 • そして、1994年 UNDP『人間開発報告書』 「人間の安全保障」という概念を 有名にした。 UNDP『人間開発報告書 UNDP『人間開発報告書 1994 1994』 』 UNDP『人間開発報告書 UNDP『人間開発報告書 1994 1994』 』 • 「安全保障の概念は、人間よりも国家とのつ ながりが強かった。(略)大半の人びとが不安 を感じるのは世の中の激変よりも、日常生活 における心配事である 」 における心配事である。」 ¾安全保障概念の問い直し。 • 人間の安全保障の特徴 – 世界共通、相互依存、早期予防、人間中心 • 人間の安全保障を構成するもの – 恐怖からの自由と欠乏からの自由 • 安全保障の中核を国家ではなく、国家を構成 する人間へと広げることを力説。 2/5 大阪大学2009年度1学期 サスティナビリティ学教育プログラム GLOCOL協力科目 「環境と社会」「環境と社会特講」 UNDP『人間開発報告書 1994』 UNDP『人間開発報告書 1994』 • 人間の安全保障に関して、厳密な定義は行 なっていない。 • 安全保障が欠如している状態を考えることが 人間の安全保障だと主張。 人間の安全保障だと主張 • しかし、「さらに明確な定義があれば有益」と して、人間の安全保障の主要な2つの側面を あげている。 1. 飢餓や病気、抑圧などの慢性的な脅威から の脱却。 2. 家庭、職場、地域社会など日常の生活様式 が突然に破壊されて困らないように保護。 が突然に破壊されて困らないように保護 • この他、HSは、「包括的な概念」であって、「 普遍的な生存権の要求を認めること」から はじまるものだとも、「人間開発」との関連で 述べている。 『安全保障の今日的課題』 『安全保障の今日的課題』 • 2000年 国連ミレニアムサミット。 • 2001年 国連人間の安全保障委員会発足。 ¾ 共同議長 緒方貞子 アマルティア・セン • 2003年 最終報告書“Human Security Now” 『安全保障の今日的課題』 • 人間の安全保障の定義 – 「人間の生にとってかけがえのない中枢を守り、 全ての人の自由と可能性を実現すること」 ¾「生にとってかけがえのない中枢」=「人が享受すべき ¾「生にとってかけがえのない中枢」 「人が享受すべき 基本的な権利と自由」 – 「人が生きていく上でなくてはならない基本的な自 由を擁護し、広範かつ深刻な脅威や状況から人 間を守ること」 • グローバル化の負の影響 ¾「先進国か途上国かを問わず、人々は常 に安全を脅かされながら生きている。」 ¾悲観的なトーン ¾悲観的なト 『安全保障の今日的課題』 • 「生にとってのかけがえのない中枢」を脅かす もの – 暴力を伴う紛争 – 困窮 • 「人間性を剥奪しうるあらゆる現象を視野に 入れ、またあらゆる人を対象」 – 全ての要因を含めて考慮する必要性 3/5 大阪大学2009年度1学期 サスティナビリティ学教育プログラム GLOCOL協力科目 「環境と社会」「環境と社会特講」 『安全保障の今日的課題』 『安全保障の今日的課題』 • 2つの戦略 1. 保護 2. 能力強化(empowerment) – 「厳しい環境にあっても人間がその活力を発揮 できるようにする」 – 「自分以外の人間のために行動する能力」 – 人間の安全保障と他の類似概念と戦略的な違 いは、能力強化という点にある。 – 「人間が享受すべき基本的自由を守り、人々が 自らのために立ち上がるよう潜在能力を高める ため」に、「国家や国際機関、NGOや民間企業 」などが人々を「保護」。 – 包括的で一貫した理念と危険を予防する取り組 み。 • 『安全保障の今日的課題』 「保護」と「能力強化」は、相互補完関係。 「人間の安全保障」を少しまとめると… 「人間の安全保障」を少しまとめると … UNDP1994との最大の相違点 • 「人間」を中心に考える安全保障である。 • 「人間性を剥奪しうるあらゆる現象」を「人間」 に対する危険と捉える。 • 生存権、人間の尊厳、基本的な権利・自由を 生存権 人間の尊厳 基本的な権利 自由を 守る。 • 手段は、早期予防、保護&能力強化。 • 難民/国内避難民の保護を考えると確かに相互補完的にな る。 • しかし、「人々」を中心に考えると緊張関係があるのでは? • 実は、人間の安全保障委員会はそれを知っていたけれど、あ えて自主規制したのでは? • 国家の安全保障と人間の安全保障とは相互関係に あると主張。 • 間接的な「ブッシュ・ドクトリン」の批判を意図? さて・・・ なぜ「人間の安全保障」なのでしょうか?人権と かほか 概念 も かほかの概念でもいいのではないのでしょうか はな うか ? いくつかの理由 z z z z z 人権と違い非西欧的な概念。 人びとの「不安」「不安全」に目を向けている。 複合的な問題を捉えることができる。 政策の優先順位を上げる。 平和的生存権の具現化。 4/5 大阪大学2009年度1学期 サスティナビリティ学教育プログラム GLOCOL協力科目 「環境と社会」「環境と社会特講」 いやいや、ちょっと待て! z あまりに「人間中心主義」じゃないの? z 環境や社会のサステイナビリティを壊したの は、「近代化」や「開発」を進めてきた人間じ ゃないの? →グループワークへ 人間の安全保障の視点から 人間の安全保障の視点から z 人間がいない社会は考えられない(はず)。 z 生物も多様。そして、「人間」も多様であること を見落としてはならない(多様性の強調)。 を見落としてはならない(多様性の強調) z 環境だけでなく、社会や地域の持続性を考え ていくのは、サステイナビリティと人間の安全 保障に共通した課題。 おわりに • 「人間」の持続性を考えれば、「人間」が巻 いた種を刈り取るという発想がHSに潜んで いる(はず)。 z 「人間」の立場から「国家」開発主義を批判 場 する(はず)。 z 「もっとも弱きもの」の不安全・不安。 z 南北問題と、受苦圏の問題。 ¾ 外部から来る「苦」。 z 反転の平和ならぬ、「反転の人間の安全保 障」? 5/5