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調 査 報 告 - 日本産業機械工業会
調 査 報 告 シカゴ POWER-GEN International 2015 について 2015 年 12 月 6 日から 10 日にかけて、米国ネバダ州ラスベガス市のラスベガス・コンベ ンション・センターにおいて、世界最大級の発電機械・設備の展示会である POWER GENERATION WEEK 2015 が開催された。展示会の開催期間中は、技術セミナーやワー ク シ ョ ッ プ な ど が 開 催 さ れ る 。 ま た 、 POWER GENERATION WEEK と し て 、 POWER-GEN の他にも、原子力発電分野の「NUCLEAR POWER International」、再生 可能エネルギー分野の「 Renewable Energy World International」、石炭発電分野の 「COAL-GEN」などの各発電分野の展示会も併催され、それらの分野の技術セミナーやワ ークショップも並行して開催される。なお、POWER-GEN の詳細については、公式ホーム ページ(http://www.power-gen.com/index.html)をご参照いただきたい。 (写真)POWER-GEN 会場のラスベガス・コンベンション・センター入り口 1.POWER-GEN 概要 POWER-GEN International は世界最大級の発電設備・機器等の見本市であり年に一 度米国で開催されている。1988 年にフロリダ州のオーランドー市で第 1 回目を開催して 以降、毎年開催を続けており、今回で 27 回目の開催となる。現在は、ネバダ州のラスベ ガス市とフロリダ州オーランドー市で毎年交互に開催されており、今回はラスベガスで 開催された。また、米国で開催される POWER-GEN International 以外にも、欧州での ― 19 ― 調査報告 シカゴ POWER -GEN Europe、アジアでの POWER-GEN Asia や POWER-GEN India & Central Asia を始めとして、アフリカ、中東、南米等においても POWER-GEN が開催 されている。 主催者は発電や資源等の専門誌を手がけるビジネスメディアの PennWell Corporation であるが、APPA(American Public Power Association)や TICA(The Turbine Inlet Cooling Association)など発電設備にかかる業界団体等が開催に協力している。 展示会への参加費は 150 ドル、各種セミナーや教育プログラムなどへの参加をする場 合は、別途受講料(300 ドル程度~)が必要となる。 2.POWER-GEN 2015 報告 POWER-GEN 2015 は 12 月 6 日から 10 日の 5 日間、ラスベガス市の展示会場、ラス ベガス・コンベンション・センター及びコンベンション・センターに隣接する Westgate Hotel で開催された。展示会には 1,374 社・団体等が出展をし、期間中、111 カ国・地域 から約 20,000 名が来場した。また、期間中、発電設備等に関連する 70 以上のセミナー や会議が実施され、多くの専門家や業界関係者が参加した。また、初日の基調公演には 約 3,000 人が出席するなど非常に規模の大きなものであった。見学ツアーとしては、ラ スベガス近郊にある発電施設であるフーバーダムの水力発電施設やメガソーラー発電施 設(NRG IVAPAH 太陽光発電施設) 、天然ガス発電所(CHUCK LENZIE 発電所)の 3 ヶ所向けの半日ツアーが開催された。 展示会は多くの人で賑わっていたが、直近のエネルギー価格の低迷やエネルギー分野 の投資減の影響からか、出展者の話を聞くと、例年に比べて今回は展示会の活気が乏し いとのコメントもあった。 (写真)展示会初日の基調講演に集まる参加者 ― 20 ― 調査報告 シカゴ (1)展示会 展示会には 22 カ国、1374 社・団体が出展した(POWER-GEN 出展者一覧ベース)。 大型のブースを構えていたのは、GE POWER、MMD Equipment、SIEMENS、 DOOSAN Heavy Industries & Construction、 CHROMALLOY、PW Power Systems, Inc.、MITSUBISHI HITACHI Power Systems Americas, Inc.、POWER Solutions International Inc.、WACKER NEUSON Corporation、MULTIQUIP INC など。日本 からは、3 社・団体が出展となっているが、日系の米国法人を含めると、上記の三菱日立 パワーシステムズに加え、クボタエンジンアメリカ、Kobelco Compressors America、 Mitsubishi Engine North America、東芝アメリカエナジーシステム、酉島製作所、新日 本造機など(敬称略)が出展した。 また、POWER-GEN には自国の発電設備・関連機器等の PR を行うため、各国政府や 業界団体等が積極的に出展している。国別ブースの中では、出展の小間数が多い中国ブ ース及び韓国ブースが目立った。具体的な国別の出展者数については次の表を参照して もらいたい。 国別の出展者数 国名 出展者数 国名 出展者数 1 米国 1,119 12 日本 3 2 中国 80 13 台湾 3 3 カナダ 63 14 トルコ 3 4 韓国 35 15 スイス 2 5 英国 17 16 オーストラリア 1 6 イタリア 13 17 チェコ 1 7 オランダ 11 18 香港 1 8 ドイツ 6 19 ルクセンブルグ 1 9 メキシコ 5 20 マレーシア 1 10 インド 4 21 ルーマニア 1 11 オーストリア 3 22 ベトナム 1 総計 1,374 ※主催者集計による。(一部複数の国で登録されている出展者を含む) ※米国拠点からの出展は米国で登録されている場合が多い。 (2)会議 期間中、5 つの基調講演や 7 つのパネルディスカッションを中心としたメガセッション が行われた他、専門家向けの 11 コースの会議、7 つの海外参加者による国際セミナー、 17 の教育ワークショップ等が開催された。期間中 70 を超えるテーマについて、300 人を ― 21 ― 調査報告 シカゴ 超える講師が講演するなど、非常に多くの会議が行われる。 また、ガス・石油、石炭、原子力、再生可能エネルギーなど複数の発電分野にかかる 会議が並行して行われることから、参加者はいくつかの分野に絞って会議に参加する必 要がある。以下は専門家会議のうち、POWER-GEN のみの会議テーマを並べたものであ る。 【専門家会議テーマ(POWER-GEN のみ) 】 ①マイクログリット、電力貯蔵、バーチャルパワープラント(7 会議) ②エミッションコントロール(28 会議) ③ガスタービン技術(34 会議) ④産業トレンド、発電競争(22 会議) ⑤オンサイト発電(15 会議) ⑥発電性能 (36 会議) ⑦発電プロジェクトにかかるファイナンス(3 会議) また、基調講演は展示会初日、展示会場がオープンする直前に POWER-GEN 開会と 合わせて開催される。今回は約 3,000 名が出席するなど非常に大きな講演となった。基 調講演の主なポイントについて、以下に簡単に紹介したい。なお、レポート中の図表は 講演者資料の抜粋である。 1)Joe Mastrangelo 氏、GE Power, Gas Power Systems,社長兼 CEO ○現在は天然ガスがもっとも扱いやすくかつ使い勝手がよいエネルギー資源である。 変化するエネルギー市場や電力使用のトレンドに柔軟に対応できるエネルギー源と とらえられる。 ○ガス発電では、10 分でシングルサイクルのガスタービンを稼働することができ、ま た、30 分あればコンバインサイクルでの発電が可能である。非常に迅速に対応でき るため、電力グリッドの中で、再生可能エネルギーとのバランスを図ることも可能 である。また、ガス発電と合わせて、電力貯蔵の活用を考えて行く必要がある。電 池の価格は急速に下がっている。 ○現在はガス価格が低い状態であるが、ガス発電が今後も持続的に競争力を持つため には、更なる発電効率化への努力をして行くことが必要。 ― 22 ― 調査報告 シカゴ 【出典】GE Power 講演資料より 図 1:天然ガスの価格低下とガス発電効率の推移 2)Steve Berberich 氏、California ISO 社長兼 CEO ○再生可能エネルギーによる発電は、電力グリッドへ影響を与えている。ベースロー ド電源は伝統的に化石燃料による発電に頼ってきたが、電力グリットにより、再生 可能エネルギーを使いながら、電力需要と供給のバランス化を実現する必要がある。 ○電力貯蔵を使うことが解決策となりうるが、まだコスト的に見合わないため、現在 はガス火力などのエネルギー源に頼らざるを得ない。 ○再生可能エネルギーを普及していくためには、我々が電力の需要曲線を再生可能エ ネルギーの発電システムを使うことをベースに変えていく必要がある。発電機器、 系統運用、規制当局を含め実現に向けた行動が必要。 3)Stuart Hemphill 氏、Southern California Edison Co.上級副社長 ○消費者は何が必要かはわかっていないが、自分で選択をしたがる。そのため、業界 は、消費者が求める時に電力を提供できるようなオプションが選択できるようにす べき。 4)Robert Flexon 氏、Dynegy 社長兼 CEO ○電力供給にかかる透明性の確保が重要であり、天然ガス価格の低下にともない競争 ― 23 ― 調査報告 シカゴ 力が落ちた老朽化している石炭火力発電所や原子力発電所を地方政府がサポートす ることは市場に不透明さをもたらす。 ○州当局による電力にかかる規制は、市場の中で勝者と敗者をつくることであり、電 力市場を混乱させる。規制が必要な市場と規制が必要ない市場をひとくくりに考え るのは危険である。 (左軸:米ドル/100 万 BTU) 【出典】Dynegy 社講演資料(情報元 Energy Velocity)より 図 2:天然ガスと石炭の価格の推移 (3)見学ツアー POWER-GEN では、開催に合わせて開催地近傍の発電施設の見学ツアーが組まれてい る。今回は、ラスベガス開催であったため、ラスベガス近郊の火力、水力、太陽光の 3 つの発電施設の見学ツアーが組まれた。どのツアーも半日コースであり、移動に 30~60 分程度かかる。通常、見学ツアーは事前の参加募集の段階で定員超となり募集が締め切 られるため、見学ツアーの参加を希望する場合は、募集開始が始まったタイミングで申 し込むのが良い。なお、2016 年はフロリダ州オーランドー市での開催となるが、2017 年は再度、ラスベガスでの開催となる (POWER GENERATION WEEK 2015 のツアー一覧) ①フーバーダム水力発電所(HOOVER DAM POWERPLANT) (ネバダ州/アリゾナ州) ― 24 ― 調査報告 シカゴ 米国内務省開拓局によりダム及び水力発電所が運営されている。1936 年に完成。現在、 17 のメインタービンが設置されており、発電量は 2,074MW とされる。 ② NRG ア イ バ ン パ ー 太 陽 光 発 電 施 設 ( NRG IVANPAH SOLAR GENERATING FACILITY)(カルフォルニア州) NRG エナジー社、グル―グル、ブライトソースエナジー社等からの出資により設立さ れた世界最大級の太陽光発電施設。2013 年より稼働。発電量は約 400MW とされる。 ③CHUCK LENZIE 火力発電所(CHUCK LENZIE GENERATING STATION) (ネバダ州) ラスベガス市北部にある天然ガス火力発電施設。2006 年より稼働。発電量は 1,102MW。 4.次回の開催 次回の Power-Gen 2016 は 2016 年 12 月 13 日から 15 日の 3 日間、米国フロリダ州オー ランドー市のオレンジカウンティ・コンベンション・センターで開催予定である。展示会 の規模は出展者数が 1,200、参加者は 27,000 名程度と想定されている。展示会へ出展する 場合は事前申込が必要となる。 (写真)展示会場の様子 ― 25 ―