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エッセイ「ボローニャのゴミ箱」

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エッセイ「ボローニャのゴミ箱」
●学術会議YICGGに参加して
2008年8月,半月余りローマに滞在した。私は,
現在,商事会社に勤務しながら,大学院の博士後期
課程で行政学の勉強をしているが,この旅行は,仕
事で行く海外出張とは,ずいぶんと中身が異なるも
のになった。目的は,YICGG(Youth Innovation
Competition on Global Governance)と呼ばれる会
議に参加することであった。これは,各国から若手
の公共政策研究者が集い,10日間,政策や行政に関
して議論を重ねるという国際会議である。参加者そ
れぞれが研究の内容を深めていくというのが,この
会合の最も重要な趣旨であった。宿舎や食事は,ス
ポンサーの一つであるイタリアン・エアホースが無
料で提供してくれた。出発前は,若手大学院生向け
のサマーキャンプを想像していた。ところが,現場
に着いてイメージは一変した。まず人数が多いのに
驚いた。大学院生が90名以上,それに教授陣が50名
以上も集まった。合計150人近くがかかわる大規模
な会議であったが,昼はローマ郊外の大学キャンパ
スで,夜はイタリア空軍の寮で過ごした。国籍もさ
まざまで,日本,中国,シンガポール,韓国,タイ,
ベトナム,インドネシア,イタリア,イギリス,ブ
ルガリア,アルメニア,ロシアなどからの参加者が
あった。年齢も多様で,グループで議論をしたヨル
ダン人の女性は,おそらく私と同世代の30代後半と
いう印象を受けた。3人のお子さんを育てながら,
博士号の取得を進めているとのことだった。参加者
の多くは,将来,行政学者や行政機関職員になるこ
とを目標にしていた。例外なく議論に熱心で,どの
国の人々も英語がうまく,連日,活気に満ちた会議
が続いた。
●ボローニャのまちづくり
ローマは,今回で二度目の訪問になった。初回の
観光旅行とは異なり今回は比較的長期の滞在であっ
たため,いくつか新しい発見をすることができた。
市内に点在する歴史的建造物の偉容はともかく,名
画「ローマの休日」の舞台となった街並みは,なん
ともいえない雰囲気を持っていた。ところがローマ
の街は,足元が肝心である。子細に観察するとけっ
こう汚いことに改めて驚いた。タバコの吸殻は散在
し,割れたビンが転がっている。そのうえ,ガムが
靴の底に4回も付着する始末であった。こうした感
想をベニスから参加していた青年に話すと,ボロー
Juken Journal 22-Vol.3
ニャのことを教えてくれた。ボローニャは,以前は
イタリアの中でも特に汚いうえに,治安もよくない
都市であった。しかし,住民は時間をかけ行政と連
携しながら街の美化に努めた。今ではイタリアの中
でも有数の清潔な地方都市というお墨付きを得てい
る。
ボローニャについての予備知識はほとんどなかっ
たが,実際にその街を見たくなった。ローマから高
速列車ユーロスターで3時間程度の距離であるこの
都市を,会議の合間の土日を利用して訪ねた。話に
聞いてきたとおり,街は整然としており,清潔感も
抜群であった。街中をしばらく散策すると,あちこ
ちに「3つの輪」が置かれていることに気がついた。
白・青・黄の3色の輪であるが,目を凝らすとそれ
がゴミ箱であることがわかった(写真参照)
。白は
Paper( イ タ リ ア 語 はCarta)
, 青 はAluminium
(Alluminio)
,黄はPlastic(Plastica)と,ゴミを分
別するための仕掛けが施されていたのだ。ゴミ分別
を徹底しているのは日本ぐらいだろうと思っていた
が,それが間違いであることを認識した。3つの輪
が至る所に設置されて実にきれいな街であった。こ
れはボローニャの行政努力の賜物だと感心した。
このレポートを書きながら久しぶりにローマに滞
在した折の写真を眺めていた。ゴミ箱や会議の写真
などから,行政に携わるボローニャの人々の熱意が
伝わってくる思いがした。行政では熱意が重要,そ
れがこの会議から得た大きな成果になった。会議で
知り合った若い参加者が,近い将来,世界のそれぞ
れの国の行政で活躍するのが楽しみである。よい刺
激をもらい,こちらも一段と勉強に熱が入る。
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