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テクニカルチャート分析
(監修:ビー・アール・ビー・インベストメント東保裕之氏) 第1回 【イントロダクション】 テクニカルチャートを上手に活用しよう! 株式の投資価値を分析する方法に は、大きく分けて「ファンダメンタルズ分 析」と「テクニカル分析」の 2 つがありま す。「ファンダメンタルズ分析」とは企業 の財務内容や経営内容、経済環境など から株価の割高・割安を判断するもの。 一方の「テクニカル分析」は主にチャー トなどを使いながら、株価や出来高の推 移を過去の変化パターンや経験則と照 らし合わせて投資判断をおこなうもので す。インターネットを使ったオンライント レードが一般的になってきたいま、個人 「マーケットスピード」で使えるテクニカルチャートは 20 種類 活用法を覚えて自分の投資に役立てよう! でもリアルタイムの株価情報にアクセス できる環境が整ってきました。個人投資家が入手できる情報は、年金や投資信託などを運用する機 関投資家(いわゆる「プロ」)と比べても、遜色のない水準になってきました。このコーナーでは全 12 回のシリーズで、DLJ ディレクト SFG 証券の「マーケットスピード」で利用できる代表的な“テクニカル チャート”について、具体的な読み方や活用法をレクチャーしていきます。 「マーケットスピード」なら、テクニカルチャートは難しくない 読み方さえ覚えれば投資家の心強い味方に 「テクニカルチャート」をこれから本格的に学 んでみようと考えているみなさんは、テクニカル チャートについてどんなイメージを持たれている でしょうか? おそらく「高度な数学を駆使した 分析で、なんだか難しそう」と感じている投資家 も多いことでしょう。しかし、DLJ ディレクト SFG 証券が提供している「マーケットスピード」のよう な投資支援ソフトを使えば、難しいことは何もあ りません。電卓を片手に複雑な計算をしてチャ ートを作図しなくても、マウスを数回クリックする だけで、リアルタイムの株価情報をもとにしたチ ャートがパソコンの画面に瞬時に表れます。複 雑な計算はコンピュータが全部やってくれるわ けです。「マーケットスピード」では、多くの投資 家に使われている代表的な 20 種類のテクニカ ルチャートを見ることができます。 マウスを操作するだけで、表示したいテクニカル チャートを簡単に切り替えることができる テクニカルチャートの読み方も、それほど難し いものではありません。多くのチャートは、「描かれたこの線がこのラインを超えると、そろそろ売り時 (または買い時)」「A の線が B の線を下から上に突き破ると買い、反対に上から下に突き抜けると売 り」といった具合に、売買タイミングの目安を視覚的に教えてくれます。読み方さえ覚えてしまえば、 チャートは投資家の心強い味方になってくれるはずです。こうした便利なツールを活用しない手はあ りません。 半面、チャートによる分析結果の過信 は注意が必要です。テクニカルチャートに よる分析は「正解」ではなく、あくまで「目 安」や「ヒント」を教えてくれるというもので す。複数のテクニカルチャートが“買い” のサインを示していても、実際の相場は テクニカルの売買サイン例(DMI:方向性指数) 逆の方向に進んでしまうこともあります。 複数のチャートがまったくバラバラのサインを示すこともよくあります。銘柄や投資環境、投資家自身 の投資ニーズ(投資期間や投資スタンス)などによっても、威力を発揮するチャートと、そうでないチ ャートがあるものです。 次回から「マーケットスピード」で使えるテクニカルチャートを一つひとつ取り上げ、チャートの読み 方をレクチャーしていきます。まずは全種類を一通り試してみて、「なんとなく使いやすそうだ」という チャートを見つけるところからはじめるといいでしょう。すべてのチャートを使いこなせるようになる必 要はまったくありません。 マウスを操作するだけで高度なチャートが利用可能 「マーケットスピード」ならではの便利な機能も それでは、テクニカルチャートの本格的な学習に入る前に、「マーケットスピード」の使い方を復習し ておきましょう。「マーケットスピード」を使ったことがない方は、「マーケットスピードの極意」第 1 回を 参考にしながら、ぜひソフトをお持ちのパソコンにインストールしてみてください。DLJディレクトSFG 証券に口座開設をしていなくても、ログインIDとパスワードともに「DLJDEMO」と入力すれば、デモユ ーザーとして無料でソフトを試用することができます。 グローバルメニューの「投資情報」をク リックし「個別チャート」を選択。銘柄欄 にチャートを見たい銘柄コードを入力し て「検索」ボタンをクリックすれば、選択 したチャートが画面に表示されます。チ ャートが表示されている画面で右クリッ クをするとサブメニューが表れ、他のテ クニカルチャートに切り替えることができ ます。チャートは上下に 2 種類表示する テクニカルチャートの表示は「投資情報」→「個別チャート」 ことができ、一般的なローソク足チャート と並べて表示すれば売買サインのポイ ントを読みやすいでしょう。 情報種類の選択ボックスでティック/分足(1~5 分)/日足/週足/月足の切り替えや(チャート の種類によっては表示できないものもあります)、チャートの描画期間を設定することができます。さ らに画面の右端にはリアルタイムの時価情報や、チャートの種類に応じて重要な数値情報が表示さ れます(たとえばローソク足チャートでは株価移動平均の価格など)。 「トレンドライン」と「メジャーライン」の機能を使えば、チャート画面に自由に線を引くことが可能。画 面上でマウスを左クリックしながらドラッグすれば、トレンドラインの場合、上値抵抗線や下値支持線 や水平線などを何本でも描き加えることができます(ウィンドウズの場合、シフトキーを押しながらド ラッグすれば水平線が簡単に引けます)。メジャーラインを選択した場合は、線分の始点と終点の期 間(日数・週数・月数)、騰落幅、騰落率情報が表示されます。こうしたマーケットスピードならではの 機能を使うことで、個別チャートを便利に使うことができます。 ユーザーはチャート画面に「トレンドライン」と「メジャーライン」を自由に引くことができる (監修:ビー・アール・ビー・インベストメント東保裕之氏) 第2回 【ローソク足(日足・週足・月足)】 ローソクは市場の売りと買いの勢力を視覚的に表す 株価のローソク足チャートは、テクニカルチャート分 析の基本中の基本。ローソク足には株式市場 1 日の 動きが集約されており、そのかたちを見るだけでも多く の情報を読み取ることができます。DLJ ディレクト SFG 証券の「マーケットスピード」では、分足(1~5 分)・日 足・週足・月足のローソク足チャートを見ることができま す。株価情報はリアルタイムで自動更新されるので、 短期的なトレーディングにも長期投資戦略にも有効で 個別チャート画面(ローソク足) す。高度なテクニカルチャートを学習する前に、ローソ ク足チャートで分析の基礎を身につけておきましょう。 ローソク足には「パターン」がある。 ローソクの「実体」と「ひげ」のかたちに注目しよう! ローソク足チャートは株価の「始値」「高値」「安値」「終 値」をひとつの記号(ローソク)で表します。終値が始値よ り高いときは白いローソク記号(陽線と言う、マーケットス ピードの初期設定では透過色)、終値が始値より安いと きは黒のローソク記号(陰線と言う、マーケットスピードの 初期設定では黄色)を用います。つまり、陽線は 1 日のな かで寄り付きから終値にかけて株価が値上がり(買い勢 力が強い)、陰線は値下がり(売り勢力が強い)の傾向で あったことがわかります。 株価の「高値」と「安値」は“ひげ”と呼ばれる記号で表します。ローソクの実体の長さ同様、ひげの 長さや、実体とひげの長さのバランスは、チャート分析において重要な意味を持っています。たとえ ばローソクの実体にくらべ、長く伸びたひげは相場の転換点を示すことが多い。株価が大きく値下が りした後に表れた「長い下ひげ」は、下げ止まり→底打ち→反発を暗示していると言えます。「陽線の 長い下ひげ」であれば、株価が反発する確率が高いと言えます。反対に大きく値上がりした後の「長 い上ひげ」は反落、つまり売りのサインと読むことができます。 こうしたローソク足のパターンには、ユニークなあだ名がついているものがあるのでご紹介しましょ う。自分の保有銘柄や注目している銘柄のローソク足チャートと照らし合わせ、特徴的なかたちのロ ーソクが過去に出現しているかどうか、チェックしてみるといいでしょう。慣れないうちはローソク足の かたちから株価の動きを想像しながらチャートを眺めると、相場の動きが見えてくると思います。 ローソクのパターン(名称) あだ名 読み方 買い勢力が極めて強い。実体が長いほど 陽の丸坊主 強い。ただし、高値圏で出現した場合は過 熱気味を表すサインになることもある。 大陽線 売り勢力が極めて強い。実体が長いほど 陰の丸坊主 売りが強く、高値圏で出現した場合は反 転のサインになる。 大陰線 小陽線 上ひげ陽 線 下ひげ陽 線 陽のコマ 陰のコマ 気迷いの線とも呼ばれる。相場に方向感 がなく、保ち合いの状態であることが多 い。ただし、上昇(下落)局面で上(下)に 窓を開けて表れたときは、相場転換のサ インになることが多い。 トンカチ 相場が上昇→下落したことを意味する。 高値圏では反落のサインになる。始値と 終値が同値の場合は「トウバ」と呼ぶ。 カラカサ 相場が下落→上昇したことを意味する。 安値圏で表れたときは反発のサイン。た だし高値圏で表れたときは下降のサイン。 始値と終値が同値の場合は「トンボ」と呼 ぶ。 小陰線 上ひげ陰 線 下ひげ陰 線 十字線 寄引同事線 売りと買いの勢力が拮抗しているが、相 場が大きく動いている。高値圏や安値圏 付近で現れると、相場の転換となる場合 が多い。 マウスを操作するだけで高度なチャートが利用可能 「マーケットスピード」ならではの便利な機能も 一方で、複数のローソクを組み合わせて分析する手法も有効です。「つつみ(抱き)線」や「はらみ 線」などが有名です。「つつみ線」とは前日の値幅を超える大陽線や大陰線のことで、高値圏や安値 圏での出現は相場の転換点となり、売りや買いのサインとなります。 つつみ(抱き)線のパターン 前日の終値より 値下がりして寄り 付いたが、大引 にかけて値を戻 し上昇した。上昇 基調。 高値圏での出現 は「最後の抱き 線」と呼ばれ、相 場は転換。売り のサイン。 前日の終値より 値上がりして寄り 付いたが、大引 にかけてさらに値 を下げた。下落 基調。 安値圏での出現 は「抱きの 1 本立 ち」と呼ばれ、反 転のサイン。買い のチャンスとな る。 「はらみ線」は前日の値幅を以内で値動きしている状態で、売りと買いの勢力が拮抗しているケー スが多い。とくに当日のローソクが寄引同事線の場合は、相場の流れが転換する兆しと見ることが できる。 はらみ線のパターン 買い勢力が大きく後退 しているので、高値圏 では転換となる。売りの サイン。 売り勢力が大きく後退 しているので、安値圏 では転換となる。買い のサイン。 当日のローソクが寄引 同事線の場合は、相場 転換の兆しと見ること ができる。高値圏、安 値圏では注意。 売買タイミングを感知することが重要 高値圏&安値圏での主要パターンに注意しよう ローソク足チャートを使った分析には、○○の法則といった類のたくさんの手法やアプローチがあ ります。これらをすべて習得することは、投資の精度を向上させるうえで決してムダなことではありま せんが、重要なポイントを押さえておくだけでも投資の勝率は大きく向上するはずです。まずは理論 より先に、重要ポイントを見逃さないようにすることを心がけてはいかがでしょうか。重要な売買ポイ ントとは「相場の転換点」、言い換えれば高値圏や安値圏に表れる特殊なかたちのローソク足に注 意を払うということです。 相場の流れはある瞬間に突然 180 度転換するわけではなく、買い勢力と売り勢力が拮抗するとこ とがあります。「寄引同事線」や「上(下)に長いひげ」はその典型と言っていいでしょう。陽線→陰線 (または陰線→陽線)に変化したつつみ線も注意が必要です。すなわち高値圏で売り勢力が高まっ ていることを示すローソク足、安値圏で買い勢力が高まっているローソク足があれば、それがそのま ま「売りサイン」「買いサイン」になるわけです。 もちろん株価がローソク足チャートのセオリー通りに必ず動くとは限りません。過去の経験則から 「確率は高い」とは言えますが、テクニカルチャートは万能ではありません。それでも株価の推移を 「買い方」と「売り方」の勢力争いという視点で捉え直せば、投資がうまくいくヒントがきっと見つかる はずです。最後にローソク足チャートを読み解くポイントをまとめておきましょう。 「ローソク足チャート」活用のまとめ 1. 陽線か陰線か 陽線(始値より終値が高い)は、買い勢力が売り勢力より強い o 陰線(始値より終値が安い)は、売り勢力が買い勢力より強い o 寄引同事線(始値と終値がほぼ同じ)は、買い勢力と売り勢力が拮抗 (相場の転換点) 2. ローソク実体の長さ o ローソク足の実体が長いと、その方向の勢力が力強いことを表す o ローソク足の実体が短い場合は勢力が拮抗している。とくに高値圏 や安値圏では相場の転換を暗示する 3. ひげの方向と長さ o ひげのないローソク(大陽線、大陰線)は勢力が力強く、相場の方向 を示す。ただし安値圏の大陽線、高値圏の大陰線は、相場転換のサ イン o 長いひげは、ひげの方向と逆向きの勢力が強まっていることを示す。 すなわち高値圏の上ひげは売り、安値圏の下ひげは買いのサイン o ローソク足チャートの読み方例 (監修:ビー・アール・ビー・インベストメント東保裕之氏) 第3回 【一目均衡表】 チャートのかたちは独特だが、投資家の人気も高い 「一目均衡表」は“知る人ぞ知る”チャートのひとつかもしれません。一目均衡表の読み方は「いち もくきんこうひょう」。実は一目山人(いちもく・さんじん)氏という日本人が考案した和製のテクニカル チャートなのです(一目山人はペンネーム)。プロのディーラーやアナリストにも愛用者が多く、個人 投資家の人気も高いチャートですが、ローソク足チャートと 5 本の折れ線グラフから相場を読み解く、 少し複雑な分析が要求されます。だからといって特別“難しい”というわけではありません。相場の先 行きを直感的に把握するには便利なツールです。今回はこの一目均衡表チャートの読み方につい て解説していきましょう。 ローソク足と 3 本の折れ線、 雲の位置関係に注目! 一目均衡表は見た目がユニークなテクニカルチャートです。通常のローソク足チャートの上に 5 本 の折れ線グラフを描き加えて作成します。5 本のうち 3 本の折れ線はそれぞれ「転換線」「基準線」 「遅行スパン」と呼ばれ、残りの 2 本に挟まれたエリアを「抵抗帯」と呼びます(それぞれの描画方法 などは囲み参照)。「抵抗帯」はチャートが見やすいように網点で描かれることが多く、これが一目均 衡表の独特の雰囲気を醸し出しています。「抵抗帯」はその見た目から「雲」と呼ばれることもありま す。 一目均衡表はチャート画面に描かれる要素が多いため、他のテクニカルチャートに比べて読み方 が少し複雑になります。しかし、ポイントをきちんと押さえていれば難しくはありません。順番に解説し ていきましょう。 一目均衡表のなかで、まず注目すべきは「転換線」と「基準線」の位置関係です。転換線が基準線 より上にあるときは「買いサイン」、下にあるときは「売りサイン」です。このとき「基準線」が右上を向 いていると、より強い「買いサイン」と読むことができます。反対に「基準線」が右下を向いているとき は、「やや弱い買いサイン」と読むことができます。「転換線」が「基準線」の下から上に突き抜けたと きは相場が転換したことを表し、買いのチャンスと言うことができます。逆に「転換線」が「基準線」の 上から下に突き抜けたときは、売りのサインになります。 第 2 の注目ポイントは、ローソク足(本日の終値)と「雲」の位置関係です。実際の気象と同じで、 「雲」の上は“晴れ”、下は“雨”。すなわち、ローソク足が雲の上にあるときは買いサイン、下にあると きは売りサインです。また、「雲」は別名「抵抗帯」の名の通り、上辺や下辺が上値抵抗線や下値支 持線として機能することがよくあります。雲が厚い部分(抵抗帯の幅が広い)では、ローソク足が雲を 突き抜けにくい状況にあると読むことができます。「ローソク足が厚い雲の下にあるときは上値が重 い」という具合です。反対に「雲」が薄いところではローソク足が雲を突き抜けやすいと見ることがで きます。「雲」は 26 日未来まで描画されているので、今後の相場を予想するときに役立ちます。 最後のポイントは「遅行スパン」とローソク足の位置関係です。26 日過去にプロットしている「遅行 スパン」がそのときのローソク足より上にあるときは「強基調」、下にあるときは「弱基調」です。 一目均衡表は複数の折れ線が関連しあいながらチャートがかたちづくられています。そのため複 数のポイントで「売り」と「買い」のサインが同時に出現することがよくあります。初心者は混乱してし まうかもしれませんが、「一応の“サイン”は出たが、まだまだ先行きは不透明。もう少し様子を見よ う」と気持ちに余裕を持ってチャートを眺めるといいでしょう。他のテクニカルチャートとは異なり未来 の日付まで「雲」が伸びている一目均衡表は、今後の相場の展開を予想するのに役立ちます。見方 のポイントさえ押さえれば、一目均衡表投資家の心強い味方になってくれるはずです。 「一目均衡表」活用のまとめ 1. 転換線と基準線 転換線が基準線より上にあるときは「買い」 o 転換線が基準線より下にあるときは「売り」 2. 基準線の方向 o 基準線が上向きのときは「強基調」 o 基準線が下向きのときは「弱基調」 o 3. ローソクと雲(抵抗帯) o ローソク足(本日の終値)が雲より上にあるときは「買い」 o ローソク足(本日の終値)の雲より下にあるときは「売り」 4. 遅行スパンとローソク足 o 遅行スパンがローソク足より上にあるときは「25 日移動平均線が上 昇」 o 遅行スパンがローソク足より下にあるときは「25 日移動平均線が下 降」 (参考)一目均衡表のつくりかた • • • • • 転換線 =過去 9 日間の高値と安値の中間値を記入 基準線 =過去 26 日間の高値と安値の中間値を記入 先行スパン 1 =転換線と基準線の中間値を 26 日未来に記入 先行スパン 2 =過去 52 日間の高値と安値の中間値を 26 日未来に記入 ※先行スパン 1 と先行スパン 2 に挟まれた部分を「雲(抵抗帯)」と呼ぶ 遅行スパン =本日の終値を 26 日過去にさかのぼって記入 (監修:ビー・アール・ビー・インベストメント東保裕之氏) 第4回 【RSI】【RCI】 相場の転換点がわかるシンプルなチャート 数値の算出方法や相場に対する着目の仕方の違いなどから、テクニカルチャートにはさまざまな 種類があります。今回はそのなかから、「RSI(株価相対力指数)」と「RCI(順位相関係数)」を紹介し ましょう。つづりが似ていてまぎわらしいかもしれませんが、前者はチャートの推移から株式の「買わ れすぎ」「売られすぎ」を判断するもの。後者は日付(時間)と価格変動の相関関係をチャート化した ものです。前回の「一目均衡表」に比べるとシンプルなチャートですが、どちらも相場の転換点を探る のに適してします。 RSI は「買われすぎ、売られすぎ」を示す、 テクニカルチャートの“入門編” 「RSI」は Relative Strength Index の略で、日本語では「株価相対力指数」となります。画面上には 1 本の折れ線が描かれているだけのシンプルなチャートです。わかりやすく、とっつきやすいため、愛 用しているプロのアナリストや個人投資家は多いようです。テクニカルチャートの“入門編”として紹 介されることもあるようです。 一般的に RSI の折れ線は、過去 9 日間において株価が「上昇する力」と「下降する力」の割合を指 標化したものです。チャートが上にいけばいくほどその株価が上昇傾向、下にいくほど下落傾向であ ることを示しています。チャートが 70~75%以上に達した場合は、その株式は「買われすぎ」と判断 します。反対に 25~30%を割り込んでいる場合は「売られすぎ」と判断することができます。 RSI を使う際に注目すべきポイントは 2 つあります。ひとつ目は、チャートの折れ線が 50%ラインを クロスしたとき。株式の売りと買いのバランスが逆転したと読むことができるため、相場転換のサイン と見ることができます。50%ラインを下から上に突き抜けたときは、株価が上昇傾向に転じたと判 断。上から下に突き抜けたときは、「売り」のサインというわけです。 もうひとつは、チャートが描く「山」と「谷」です。たとえば、ある株式の RSI が上昇して 70%ラインを 超え、ピークを打って下落に転じたとき、チャートに「山」のかたちができます。RSI 下落した後が再び 上昇して 70%ラインを超えたとき、今回の「山」の高さが前回の高さに届かなかった場合は「株価が 上昇する力が弱まっている」として、「売り」のサインとなります。反対にチャートが 30%以下の「谷」 をつくったとき、前回の「谷」より浅ければ、「下値が切りあがっている」として「買い」のサインになりま す。 「日付(時間)」と「価格変動」の相関関係から 今後の株価トレンドを読む RCI 「RCI」は Rank Correlation Index の略称で、「順位相関数」という意味です。チャートの名前から想 像できるように、このテクニカルチャートの分析には「順位」という概念が深く関わっています。チャー トの計算対象となる期間(マーケットスピードでは 9 日間と 27 日間)における日付の順位(日付の古 い順番)と株価の順位(株価の安い順番)の相関関係を計算します。 相関関係が 100%ならば(つま り、日付の順位と株価の順位が 一致)、その期間は株価が一本 調子で上昇していることを示して います。反対に、毎日株価が値 下がりしている状況では、両者 は逆相関の関係になるため、 RCI は-100%になります。一般 的に RCI が 100%や-100%に 近づいているときは、相場の転 換点が近いことを意味しています。100%に近づいてきたら「そろそろ売り」、-100%付近なら「そろ そろ買い」というわけです。 しかし RCI 単独では、チャートから売買のタイミングを読み取ることが難しい。そこでチャートの算出 期間が異なる 2 本の RCI を使います。マーケットスピードでは「9 日」と「27 日」のチャートが表示でき ます。たとえば 100%付近で、9 日間 RCI が 27 日間 RCI を上から下にクロスした場合は「売り」サイ ン。-100%付近で 9 日間 RCI が 27 日間 RCI を下から上に抜けた場合は「買い」のサインになりま す。 「RSI」活用のまとめ • 70%(75%)以上に達したときは「買われすぎ」と判断 • 30%(25%)以下に達したときは「売られすぎ」と判断 50%ラインを上(下)に突き抜けたら「買い(売り)」と判断 RSI の「山」が前回の「山」を超えられなかった場合は「売り」 RSI の「谷」が前回の「谷」より浅かった場合は「買い」 • • • (参考)RSI のつくりかた • • • RSI=100-100÷(1+A) A=(N 期間中の終値ベースで上昇した日の前日比終値幅の合計)÷(N 期 間中の終値ベースで下降した日の前日比終値幅の合計) マーケットスピードでは「N=9 日」に設定 「RCI」活用のまとめ • 9 日間と 27 日間の RCI を用いる • 100%に近い水準で 9 日間 RCI が 27 日間 RCI を上から下にクロスした場合 は「売り」 -100%に近い水準で 9 日間 RCI が 27 日間 RCI を下から上にクロスした場 合は「買い」 • (参考)RCI のつくりかた • RCI=100×〔1-6S÷T(T の 2 乗-1)〕 • S=(期間の順位-価格の順位)の 2 乗の T 日間の合計 T=9 または 27(マーケットスピードの場合) • (監修:ビー・アール・ビー・インベストメント東保裕之氏) 第5回 【ボリンジャーバンド】 統計学の手法を応用したチャートで「特異点」を見つける 「ボリンジャーバンド」は統計学の手法を使って、株価の「特異点」=「異常な値」を見つけるテクニ カルチャートです。一般に、株価は直近の平均的な価格(たとえば移動平均の値など)から短期的に 大きく外れると、元の水準に戻るような値動きをすることがよくあります。ボリンジャーバンドはいまの 株価が平均的な価格からどのくらい外れているか、統計的に分析しようというわけです。といっても、 投資家が統計の数式を学ぶ必要はありません。DLJ ディレクト SFG 証券の「マーケットスピード」な ら、メニューをクリックするだけでチャートがリアルタイムで表示されます。「マーケットスピード」が計 算してくれた結果の読み方を一緒に学んでいきましょう。 バンドは「帯」の意味 2 本の帯から株価の特異点を見つける 一般的な「ボリンジャーバンド」のチャート画面には、ローソク足チャートと 5 本の折れ線が描かれ ています。5 本の折れ線は中央のラインを挟むようにして、外側の折れ線が 2 つのペアになって値動 きしていることがわかると思います。内側にある折れ線のペア(マーケットスピードの画面ではグリー ンのライン)のことを「+σ」と「-σ」といいます。上の折れ線がプラス、下がマイナスのラインです。 「σ」はギリシャ文字のシグマのこと。「ボリンジャーバンド」は別名「シグマバンド」とも呼ばれていま す。外側のペア(マーケットスピードの画面ではオレンジのライン)は「σ」の値を 2 倍にしたもので、 それぞれ「+2σ」と「-2σ」と表記されます。ここで登場する「シグマ(σ)」とは、統計学の世界で 「標準偏差」を意味する記号です。 具体的には、あらかじめ決められた期間(マーケットスピードでは日足チャートで 25 日、週足チャー トで 26 週、月足チャートで 9 カ月)の移動平均値に、算出された幅(標準偏差)をプラスマイナスして 描画します。標準偏差とは数値のバラツキ具合を表す値なのですが、「リスクの大きさ」や「株価のブ レ具合」といえばわかりやすいでしょうか。すなわち、5 本の折れ線の幅(バンド)が広がっている時 期は株価の値動きが大きい。幅が狭まっている時期は株価の値動きが小さいと読むことができま す。幅がだんだんと広がっていることは値動きが大きくなっていることを表し、だんだん狭くなってい る状態は値動きが小さくなっていることを意味しています。 ボリンジャーバンドは“ダマシ”も多い!? 日足と週足を併用しよう! 「ボリンジャーバンド」を使った売買ポイントの読み方は、いたって簡単。ローソク足チャートが下の ラインを抜けたり、近づいてきたときは押し目買いのチャンスです。「-σ」より「-2σ」の方(つまり 中心の折れ線からのかい離が大きいほど)がより強いサインとなります。反対に上のラインを抜けた り、近づいてきたときは戻り売りのシグナルです。プラスのときと同様、「+σ」より「+2σ」の方がよ り強いサインとなります。つまり逆張りの手法です。 統計学の理論では、±σ の範囲にデータが収まる確率は 68.26%、±2σ の範囲にデータが収ま る確率は 95.44%であるといわれています。つまり、理論的には株価は±2σ の範囲にほぼ収まる のが通常であり、ローソク足の軌跡が±2σ の範囲を超えるということは、過去の値動きからみて 「滅多にないこと」と読むことができるわけです。逆に±2σ の範囲に株価が収まっているようであれ ば、ローソク足チャートが大きく変動していても「通常の値動き」としてみることができます。ちなみに ±3σ の範囲に収まる確率は 99.74%といわれています。 また反対に、順張りの投資に「ボリンジャーバンド」を利用している投資家も少なくありません。 ±2σ の範囲を超える「滅多にないこと」を“新しいトレンドの発生”と見て、プラスのラインを超えたと きに買いチャンスとする投資家もいます。 もっとも、現実の株価が確率通りに値動きしないこともあります。そこで「ボリンジャーバンド」を利 用する際は、日足と週足のボリンジャーバンドをあわせてチェックするといいでしょう。両方のチャー トで±2σ の折れ線を超えているような銘柄があれば、格好の売買チャンスといえそうです。 「ボリンジャーバンド」活用のまとめ • 株価が+σ や+2σ を上に超えたら「(戻り)売り」 • (ボラティリティ・ブレイクアウトとして買う場合もある) 株価が-σ や-2σ を下に超えたら「(押し目)買い」 ±σ より±2σ を超えたほうがより強いサイン • (参考)ボリンジャーバンドのつくりかた • TP(ティピカルプライス)=(高値+安値+終値)÷3 • +2σ=TP の移動平均+標準偏差×2 +σ=TP の移動平均+標準偏差 -σ=TP の移動平均-標準偏差 -2σ=TP の移動平均-標準偏差×2 標準偏差=√{(各 TP-TP の期間中平均値)の 2 乗を期間分全部加えたも の}÷期間 (√は式全体にかかる) • • • • (監修:ビー・アール・ビー・インベストメント東保裕之氏) 第6回 【DMI】 売買のポイントがわかりやすい“方向性指数” テクニカルチャートにはいろいろな種類がありますが、「DMI」はトレンドの方向と大きさを見る指標 の代表格ではないでしょうか。チャート自体は 3 本の折れ線が描画されるだけのシンプルなものです が、売買のポイントとなるシグナルがはっきりとでやすいので、チャート初心者でも簡単に分析するこ とができます。また、チャートから分析できる「売り」や「買い」がサインとしてどのくらい強いものなの かを見ることもできます。非常に使い勝手とよいチャートなので、この機会に読み方をマスターしてし まいましょう! 上昇を示す勢いと下落を示す勢い、 勢いの強さから相場のトレンドをみつける DMI は日本語で「方向性指数」と呼ばれています。トレンドの方向性と大きさを分析するチャートで す。チャートには「+DI」「-DI」「ADX」の 3 本の折れ線が描かれ、折れ線の位置関係から売買のタイ ミングを探ります。DLJ ディレクト SFG 証券の「マーケットスピード」ではそれぞれ、「+DI=グリーン」 「-DI=ピンク」「ADX=オレンジ」で画面に表示されています。 「+DI」は相場上昇の勢いを表し、「-DI」 は下落の勢いを意味しています。「+DI」と 「-DI」の波形はおおむね逆相関のかたち をしているはずです。つまり、「+DI」が「- DI」より上にあるときは相場上昇の勢いが 強い、「+DI」が「-DI」より下にあるときは 下落の勢いが強いということになります。 「+DI」「-DI」「ADX」のいずれも、0 から 100 の間で数値が変動します。 もう 1 本の「ADX」は、相場の勢いの強さを 表しています。トレンドの方向性(強気か弱気か)の区別はありません。「ADX」が上昇しているポイン トでは、「+DI」と「-DI」のかい離も大きくなっているはずです。「+DI」と「ADX」がそろって上昇して いるときは相場のトレンドが上昇傾向にあり、勢いも強い。「+DI」が上昇していても「ADX」が伸び悩 んでいるときは、上昇傾向だが勢いは弱いという意味になります。「-DI」と「ADX」がそろって上昇し ているときは、相場が下落傾向で、なおかつ下落の勢いも強い。おなじ「上昇」「下落」でも、「ADX」 の水準によって勢いの強弱が違うというわけです。「ADX」の値が低い場合、または大きく下落してい るケースでは、相場のトレンドに方向性がないことがわかります。 「DMI」の売買ポイントをみていくことにしましょう。「+DI」と「-DI」が交差している点は、上昇と下落 の勢いが逆転している、つまりトレンドの転換点を示しています。基本は「+DI」が上に突き抜けたら “買い”、「-DI」が上に突き抜けたら“売り”のサインです。このとき「ADX」が上昇していれば強いサ インであることがわかります。もし慎重に売買をおこないたいのであれば、「+DI」と「-DI」がクロス した後、「ADX」が上昇しはじめてから売買をおこなってもよいでしょう。 「ADX」が山型のピークをうって、上昇から下落に転じたり、「+DI」と「-DI」のかい離が狭くなって きたらトレンドの終焉とみて、投資を手仕舞うという見方もできます。一般に、上昇してきた「ADX」が 反転しはじめたら、トレンドも終わったと判断してよさそうです。 「DMI(方向性指数)」活用のまとめ • 「+DI」が「-DI」よりも大きいときは、相場のトレンドは上昇傾向 • 「-DI」が「+DI」よりも大きいときは、相場のトレンドは下落傾向 「ADX」はトレンドの大きさを表し、上昇時はそのトレンドが強いことを示す 「+DI」が上向きで「-DI」が下向き、「ADX」が上向きのときは「買い」 「-DI」が上向きで「+DI」が下向き、「ADX」が上向きのときは「売り」 • • • (参考)DMI のつくりかた • • • • • +DI=過去 14 日間の+DM の合計÷過去 14 日間の TR の合計 -DI=過去 14 日間の-DM の合計÷過去 14 日間の TR の合計 ADX=過去 9 日間の DX の合計 +DM=当日の高値―前日の高値 -DM=前日の安値-当日の安値 ただし+DM と-DM をくらべて小さいほうを 0 とし、同じ値の場合は 0 としな い。 +DM がマイナスの場合は+DM の値を 0 とする(-DM についても同様)。 • • TR=以下の(1)(2)(3)の最大値 (1)当日の高値-当日の安値 (2)当日の高値-前日の終値 (3)前日の終値-当日の安値 DX=|(+DM)-(-DM)|÷|(+DM)+(-DM)| 対値) (| |は絶 ※マーケットスピードでは、「+DI」「-DI」を過去 14 日間、 「ADX」を過去 9 日間の株価をもとに算出しています。 (監修:ビー・アール・ビー・インベストメント東保裕之氏) 第7回 【ストキャスティクス】 株価の割安・割高を 0~100%の数値で表示する ストキャスティクスは相場の「買われ過ぎ」「売られ過ぎ」を判断するテクニカルチャートです。現在 の株価が直近の価格帯のなかで、どの程度の位置にいるかを 0~100%の数値で示しています。分 析のアプローチとしては、以前ご紹介した「RSI(相対力指数)」に近く、投資手法としては“逆張り”が 主体になります。チャートの読み方も「RSI」に似ていますから、それほど苦労せずに活用できるよう になるはずです。 「%K」と「%D」の折れ線から 株価を過去の水準と比較 「ストキャスティクス」は“オシレーター”を代表するテクニカル・チャートです。オシレーターは「振動・ 振幅・動揺」を意味しており、株価の変動に注目するところから「逆張り」の投資手法においてよく用 いられます。逆張りとは一般に、株価が割安(売られすぎ)なときに買い、割高(買われすぎ)になっ たところで売る手法。「ストキャスティクス」や「RSI(相対力指数)」は株価の割安・割高を判断する目 安になるわけです。 「ストキャスティクス」のチャート画面を見ると、「%K」「%D」の 2 本の折れ線が 0~100%の間で描 画されています(マーケットスピードではそれぞれピンクとグリーン)。まずピンクの「%K」について注 目してください。「%K」の線がおおむね 80%のラインを超えると、過去 N 日間(マーケットスピードで は 5 日間)のなかで株価が割高な状態であることを示しています。「買われすぎ」ですから、ここでの 「買い」は賢明とは言えません。逆に「%K」が 20%を下回っているときは割安な状態だと読むことが できます。「%K」が 80%ラインを超え、再び 80%ラインを上から下に割り込むときが「売り」のサイ ン。20%ラインを割り込んだ後、再び 20%ラインを超えるときが「買い」のサインになります。 もう一本の「%D(グリーン)」を使って売買のタイミングをはかることができます。「%D(グリーン)」 は「%K(ピンク)」における移動平均線のような役割を果たしており、2 本のラインが交差する点が売 買ポイントになります。0%に近い低水準で、「%K(ピンク)」が「%D(グリーン)」を下から上抜けたと きが「買い」のサイン、100%に近い高水準で、「%K(ピンク)」が「%D(グリーン)」を上から下抜けた ときが「売り」のサインになります。 さらに、ローソク足チャートとの比較で、株価が高値を更新したにもかかわらず「%K」の山が前回 の山のピークを超えられなかったときは「売り」のサインです。同様に株価が安値を更新したにもか かわらず「%K」の谷が前回の谷のピークを割らなかったときは「買い」のサインです(このあたりのチ ャートの読み方は「RSI」と似ています)。 ストキャスティクスは「ノーマル」と「スロー」の 2 種類 ほかのテクニカルチャートとの併用が無難!? ストキャスティクスは計算方法の性格上、株価がトレンドに乗って毎日値上がりしているような状態 では、「%K」が 100%に近い高水準で張り付いてしまい、うまくチャートを読むことができなくなってし まします。また、狭いレンジで値動きしていた株価が急激に値上がり(値下がり)すると、ストキャステ ィクスの折れ線も急激に振れる結果になるので注意が必要です。 また、ストキャスティクスでは計算に用いる期間が短い(マーケットスピードでは「%K」=過去 5 日 間、「%D」=過去 3 日間の株価をもとに計算)ため、売買のサインが頻繁に表示される傾向がありま す(結果、利幅が取れない)。こうした欠点を補うために、ストキャスティクスでは計算するときに用い る期間の取り方が異なる「スロー」版のチャートがあります。チャートの見方や活用法は基本的に同 じ(詳しい計算方法については下のカコミ参照)。「%K」「%D」をそれぞれ「slow%K」「slow%D」と表 記します。マーケットスピードではもちろん、「ノーマル(ファスト)」と「スロー」の 2 種類のストキャステ ィクスを見ることができます。 通常は、「スロー」は「ノーマル」にくらべて折れ線の動きがゆったりしており、売買のサインも「ノー マル」ほど頻繁ではありません。両方のチャートでサインがそろって表示されたときに売買をおこなう など、併用して使うなどの工夫をすると良いでしょう。平均移動線など相場全体の流れを読むような チャートを併用して、株価がトレンドを形成しているときはストキャスティクスでサインが表示されても すぐに売買しないといった使い方も有効です。 ノーマルとスローの両方が「買い」サインを表示 「ストキャスティクス」活用のまとめ • • • • • • 「%K」(または「slow%K」)が 80%ラインを超え、再び 80%ラインを上から下 に割り込むと「売り」 「%K」(または「slow%K」)が 20%ラインを割り込んだ後、再び 20%ラインを 超えると「買い」 0%に近い低水準で、「%K」(または「slow%K」)が「%D」(または「slow%D」) を下から上抜けたら「買い」 100%に近い高水準で、「%K」(または「slow%K」)が「%D」(または「slow% D」)を上から下抜けたら「売り」 株価が高値を更新したにもかかわらず「%K」(または「slow%K」)の山が前 回の山のピークを超えられなかったときは「売り」 株価が安値を更新したにもかかわらず「%K」(または「slow%K」)の谷が前 回の谷のピークを割らなかったときは「買い」 (参考)ストキャスティクスのつくりかた ◇ノーマル %K=(C-Lk)÷(Hk-Lk)×100 C=直近の終値 Hk=過去 k 日間の最高値 Lk=過去 k 日間の最安値 ※マーケットスピードでは k=5 %D=過去 d 日間の(C-Lk)の合計÷過去 d 日間の(Hk-Lk)の合計×100 ※マーケットスピードでは d=3 ◇スロー slow%K=ノーマルの%D slow%D=過去 d 日間の slow%K の平均 ※マーケットスピードでは d=3 (監修:ビー・アール・ビー・インベストメント東保裕之氏) 第8回 【株価移動平均乖離線】【レシオケータ】 株価の終値を“平均”と比較する 株価の「高い」「安い」を判断するとき、みなさんはどのような基準で株価を分析しているでしょう か? 前日の終値や同業他社の株価など、「割安さ」の判定にはさまざまな“基準”を用いることがで きます。今回取り上げた「株価移動平均乖離線」や「レシオケータ」は、株価を“平均”と比較して割 安・割高を見極めます。ここで言う平均とは、「株価移動平均乖離線」では銘柄ごとの株価移動平 均、「レシオケータ」では日経平均株価が使われます。両方とも計算式自体は簡単ですが、株価の 状態を知るには最適なチャートです。 直近の終値と株価移動平均の乖離に注目 「25 日」と「75 日」の乖離率を比較する 「移動平均」とは簡単に言うと、過去の株価を平均したもの。たとえば「25 日移動平均」なら過去 25 日間の株価の終値を合計して 25 で割った値(つまり終値の平均)になります。直近の終値が移動平 均の値にくらべ上に乖離している状態は、株価が過去の平均的な水準よりも値上がりしていることを 示しています。下に乖離していれば、値下がりしていることがわかります。 一般に、移動平均から大きく乖離した株価は買われすぎ(または売られすぎ)という判断から、これ までとは逆に、移動平均との差が縮まるように値動きすることがよくあります。「マーケットスピード」 でローソク足チャートをみると、株価と移動平均線が近づいたり離れたりを繰り返しながら動いてい ることがわかるでしょう。「株価移動平均乖離線」は文字通り株価と、この移動平均の乖離を見るテ クニカルチャートです。2 つの値がどのくらい離れているかを「乖離率」という数値で表示してくれま す。つまり、「株価移動平均乖離線」をチェックしていれば株価の上がり過ぎの修正や、下がり過ぎ の自律反発のタイミングをねらうことができるわけです。 「マーケットスピード」では、25 日移動平均と 75 日移動平均の「株価移動平均乖離線」を同じ画面 で見ることができます。25 日移動平均の方が最近の値動きをより強く反映しているので、2 つの株価 移動平均乖離線を比較することで、全体的な値動きのトレンドを知ることができます。 売買タイミングのポイントとしては、25 日移動平均の乖離線が 75 日よりも下にあり、かつ両者の開 きが大きいときは「売り」です。近い将来、これまで値上がりしてきた株価が反転して、株価修正の局 面になると可能性が高いわけです。25 日移動平均の乖離線が 75 日よりも上にあり、かつ両者の開 きが大きいときは「買い」です。先ほどの「売り」とは逆に、値下がりした株価の反発が期待できる局 面です。 また、25 日と 75 日の株価移動平均乖離線が 2 本そろって 100%のラインを下から上に突き抜けた ときは「買い」のサインです。ただし、上昇トレンドの勢いが弱いと株価がチャートのサイン通りに伸 びないケースもよくあります。トレンドの方向や強さが確認できる「DMI」などのテクニカルチャートを 併用すれば、確率が高くなるでしょう。 個別銘柄を市場インデックスと比較 日経平均株価に対する強弱を表す 「レシオケータ」は個別銘柄の直近終値と日経平均株価の乖離を見るチャートです。日経平均株価 を株式市場全体の平均と見なせば、分析をおこなう銘柄が市場のなかで相対的にどのような値動き をしているかがわかります。たとえば株価が日経平均株価をオーバーパフォームしていれば、ほか の投資家からの注目も集まるでしょう。日経平均株価をアンダーパフォームしていれば、割安に放置 された銘柄と読むことができます。 一般的なチャートの読み方としては、レシオケータの向きが反転するタイミングが売買のポイントに なります。レシオケータの向きが上向きから下向きに転換したときは、株価が日経平均株価の動き を下回っていること(=勢いの衰え)を意味し、「売り」。下向きから上向きに転換したときは、日経平 均株価を上回る勢いがあると見て、「買い」となります。ただし、レシオケータは単なるベンチマーク (日経平均株価)との比較なので、向きの転換だけを頼りに投資判断するのは禁物です。あくまでも 目安ととらえ、ほかのテクニカルチャートを併用する方が良いでしょう。 また、「レシオケータ」はサインの出現がわかりにくく、ピンポイントで売買のタイミングをはかる目的 では使いづらいチャートだと言えます。短期売買よりは少し長めの中期投資で「そろそろ買い(売り) 時」という時機を見極めたり、ほかのテクニカルチャート分析の検証用に活用するといいでしょう。 「株価移動平均乖離線」活用のまとめ • • • 25 日移動平均の乖離線が 75 日よりも下にあり、かつ両者の開きが大きいと きは「売り」 25 日移動平均の乖離線が 75 日よりも上にあり、かつ両者の開きが大きいと きは「買い」 25 日と 75 日の株価移動平均乖離線が 2 本そろって 100%のラインを下から 上に突き抜けたときは「買い」。「DMI」などのチャートを併用すると確率が高 まる (参考)株価移動平均乖離線のつくりかた 株価移動平均乖離線=終値÷株価移動平均 ※マーケットスピードでは 25 日と 75 日の株価移動平均を使用 「レシオケータ」活用のまとめ • • レシオケータの向きが上向きから下向きに転換したときは「売り」 レシオケータの向きが下向きから上向きに転換したときは「買い」 (参考)レシオケータのつくりかた レシオケータ=終値÷日経平均株価 (監修:ビー・アール・ビー・インベストメント東保裕之氏) 第9回 【ポイント&フィギュア】【新値足】 大局的な相場トレンドをつかむのに便利 これまで紹介してきたテクニカルチャートは「時間」を横軸にして、数値や割合の変化を分析してき ました。すなわち横軸の目盛りが「1 日」や「1 週間」であり、時間の流れにそってローソク足と対比し て見比べることができました。今回取り上げる「ポイント&フィギュア」「新値足」は非時系列グループ と呼ばれるグループに属し、時間の概念がありません。そのためチャートの描画方法や読み方は独 特。しかし、どちらも重用している投資家が多いチャートです。 米国でポピュラーな「ポイント&フィギュア」 伝統的な手法だか、売買シグナルが明確 「ポイント&フィギュア」の歴史は古く、米国では 19 世紀から使われていたと言われています。テク ニカル分析の基本である「移動平均線」より歴史が長いチャートです。欧米のテクニカルアナリストや 機関投資家のあいだではたいへんポピュラーなチャートで、よく使われています。 ポイント&フィギュアのチャート画面を見ると、「○」と「×」のマークがずらっと並んでいます。「○」 は株価の下落、「×」は株価の上昇を意味しています。それぞれのマークを毎日印すのではなく、決 められた一定以上の幅で上昇(または下落)するたびに同じ列に追加していきます。株価の上昇(ま たは下落)が反転すると、マークの種類と列とを変えていきます。つまり「○」と「×」の列は交互に現 れ、同じ列に「○」と「×」が並ぶことはありません。 縦列のマークの数(長さ)は簡単に言うと、ひとつの株価上昇(もしくは下落)局面の長さを示してい ます。たくさんの「×」が並んでいると、株価が大幅に上昇した相場だということがわかります。 売買のタイミングをはかるポイントは、同じマークで構成されている直近の列同士を比較して判断 します。たとえば、右端(直近)の列が「×」だった場合、マークの高さが 2 列前の「×」を上に突き抜 けたら「買い」のサインです。反対に最後の列が「○」だったときは、2 列前の「○」の底を下に突き抜 けたら「売り」のサインというわけです。 また、チャート全体のかたちからトレンドを判断して、そのトレンド(上値抵抗線や下値支持線)を突 き抜けたときも、それぞれ「買い」「売り」のサインと判断できます。 「新値足」で株価のトレンド転換を見る 「ダマシ」サインには要注意 「ポイント&フィギュア」は米国で古くから使われてきた非時系列チャートですが、日本で開発され た「新値足」も株価のトレンド転換を把握するのに便利な非時系列チャートです。チャートの画面を見 ると、ローソク足チャートのような「陽線」と「陰線」が描画されています。終値ベースで新高値をつけ たら陽線を書き足し、新安値を更新したら陰線を書き足します。一見するとローソク足チャートに似て いますが、横軸が日付(時間軸)と連動していないことがわかると思います。 一般に、新値足には 3 本新値、5 本新値、10 本新値など、複数のパターンがあります。3 本新値は 直前の足を 3 本抜いたら相場反転とみなすやり方で、たとえば直近の「陰線」の 3 本分の値幅を超え て高く引けたときに「陽転」とみなします。このときチャートでは列を変えて陽線を記入します。つまり 3 本分の値幅を超えない限り陽線は記入しません。「陰転」の場合は、直前の「陽線」3 本分の値幅を 超えて下がったときに現れるわけです。当然、終値が 3 本分の値幅の範囲内で小刻みに上下する 相場では、新値足のチャートは書き足されていきません。 5 本新値、10 本新値ではチャートが書き込まれる条件が直前の 5 本分、10 本分と異なります。3 本 新値から 5 本新値、10 本新値になるほど遅効的になるので、より長いスパンでの分析に役立ちま す。 新値足チャートが反転したときが売買タイミングのサインになります。陽転が「買い」、陰転が「売 り」です。直前の陰線の本数が多いほど、その後の陽転は値上がりが見込め、直前の陽線の本数 が多いほど、陰転後の下落が大きいと判断するのが一般的です。また、1 本目の陽線(陰線)が長 く、2 本目の陽線(陰線)が短い組み合わせが良いとされています。 半面、売買サインは出たものの、その後の株価がサイン通りに動いてくれない「ダマシ」には要注 意です。「ポイント&フィギュア」にも共通して言えることですが、売買サインが出た直後の取引は要 注意です。ほかのテクニカルチャートを併用したり、新高値では 2 本目の陽線(陰線)を確認してから 売買をするとよいでしょう。 「ポイント&フィギュア」活用のまとめ • 2 列前の○を下に抜けたら「売り」 • 2 列前の×を上に抜けたら「買い」 チャートのかたちからトレンドを読み取り、そのトレンドを○が上から下に突き 抜けたら「売り」。×が下から上に突き抜けたら「買い」 • (参考)ポイント&フィギュアのつくりかた • • 一つひとつの○と×は価格の 1 単位(=ポイント)を意味する 価格は終値を採用し、価格が 1 ポイント以上上昇すれば×、下落すれば○を • • • • 記入 それぞれの列(コラム)は上昇か下降の一方のみを示し、×と○は同じ列に は記入しない。マークは必ず 1 列に 3 つ以上記入する 価格が方向転換したときは、右に一列移動してマークを記入 価格が同じ方向に動いている間は、上昇・下降とも 1 枠ごとに記入するが、 マークが変わる(相場が反転)ときは価格水準に応じた 3 枠以上の価格変動 が必要 1 ポイントに満たない端数は切り捨て 「新値足」活用のまとめ 一般に、3 本新値は短期、5 本新値は中期、10 本新値は長期のトレンド分析に適し ている • • • 陰線から陽線に陽転すれば「買い」 陽線から陰線に陰転すれば「売り」 陽転、陰転のいずれも、1 本目にくらべ 2 本目の長さが短く、首を出したよう なかたちであれば、さらに良いとされる (参考)新値足のつくりかた • 陽線の場合、終値で新高値をつけたら新たな陽線を記入 • 陰線の場合、終値で新安値をつけたら新たな陰線を記入 直前の足形 3 本を抜いたら相場反転とみなす • (監修:ビー・アール・ビー・インベストメント東保裕之氏) 最終回 【ボリュームレシオ】【逆ウォッチ曲線】 売買高の増減から相場動向を読みとる これまで紹介してきたテクニカルチャートは、主に株価の変化を分析することで、売買のタイミング を導き出すものでした。今回登場する「ボリュームレシオ」と「逆ウォッチ曲線」は、取引における売買 高に注目し、需給関係から相場の過熱感やトレンドを読みとるチャートです。株価の分析を主とした テクニカルチャートと組み合わせることで、一味違う使い方ができることでしょう。 「ボリュームレシオ」は相場の上昇時と下落時の 売買高の割合から、相場の過熱感を判断する 株式相場の動向を探るうえで、売買高はたいへん参考になる情報です。「ボリュームレシオ」は毎 日おこなわれる売買の売買高から、相場の過熱感を測ることができます。DLJ ディレクト SFG 証券の 「マーケットスピード」では 2 種類の「ボリュームレシオ」を表示することができます。 「ボリュームレシオ1」は、過去 25 日間で株価が上昇した日の売買高の合計と、株価が下落した日 の売買高の合計を集計し、その比率を百分率で表しています(正確には株価が変わらない日の売 買高を半分ずつ分子、分母の両方に加算)。株価上昇時と株価下落時の売買高の合計が同じなら 「ボリュームレシオ 1」の値は 100%となります。 一般的に「ボリュームレシオ1」が 450%以上になったとき、相場が過熱しているとみて「売り」のサ インになります。反対に 70%を割ると、売られ過ぎとみて、「買い」のサインとなります。 「ボリュームレシオ 2」も考え方は同じで、分母が 25 日間のすべての売買高合計になります。こちら は 80%以上で「売り」、40%以下で「買い」のサインとなります。 株価と売買高の推移を平面にプロット 「複雑な軌跡」には要注意 「逆ウォッチ曲線」はかたちがたいへんユニークなテクニカルチャートです。株価を縦軸、売買高を 横軸とする座標に、株価と売買高の 25 日移動平均をプロットしていきます。理想的な相場のサイク ルでは、チャートが反時計回りに描画されるので、「逆ウォッチ曲線」と呼ばれています。 たとえば株価が底値圏にあるが上昇の兆しがあるとき、株価は横ばいでも売買高が増えていく傾 向にあります(1)。やがて人気化すると株価が上がり、売買高が増えていきます(2)。ある程度まで 株価が上がると売買高が横ばいになり(3)、やがて売買高減少に転じます(4)。売買高の減少が進 んでくると株価も横も伸び悩み(5)、やがて下落に転じます(6)。株価の下落は進むが、やがて売買 高の減少に歯止めがかかり(7)、増加に転じ、最初のサイクルに戻ります。 チャートのなかで、右下に現れる(2)のポイントは、陽転の兆しとして「買い」。左上に現れる(6)の ポイントは陰転の兆しとして「売り」のサインと読むことができます。 ただし、実際の銘柄でチャートがきれいな“逆ウォッチ”になることはめずらしく、たいていは歪んだ かたちになることがほとんどです。チャートが時計周りに回転したり、複雑な軌跡を描くことも多いで しょう。 しかしながら、「マーケットスピード」の逆ウォッチ曲線を見て、いまの株価がどのあたりにプロットさ れているかで、売買の目安になります。すなわち座標の右下にチャートの終点があるときは、軌跡 が逆ウォッチ曲線でなくても陽転の気配があると読めますし、左上にあれば危険地帯とみることがで きます。もちろんチャートがきれいな逆ウォッチ曲線になっていれば、売買サインの確度が高いと読 んでいいかもしれません。少なくとも相場のサイクルが理想的(=読みやすい)であることがわかりま す。 「ボリュームレシオ」活用のまとめ • 「ボリュームレシオ1」が 450%以上のときは「売り」 • 「ボリュームレシオ1」が 70%以下のときは「買い」 • • 「ボリュームレシオ 2」が 80%以上のときは「売り」 「ボリュームレシオ 2」が 40%以下のときは「買い」 (参考)ボリュームレシオのつくりかた • • ボリュームレシオ1=(株価上昇日の売買高+株価変わらずの日の売買高 の合計×0.5)÷(株価下落日の売買高+株価変わらずの日の売買高の合 計×0.5)×100 ボリュームレシオ 2=(株価上昇日の売買高+株価変わらずの日の売買高 の合計×0.5)÷(株価上昇日の売買高+株価下落日の売買高+株価変わ らずの日の売買高の合計)×100 ※マーケットスピードでは 25 日で計算 「逆ウォッチ曲線」活用のまとめ • チャートの終点が座標の右下にあるときは「買い」 • チャートの終点が座標の左上にあるときは「売り」 (参考)逆ウォッチ曲線のつくりかた • 株価を縦軸、売買高を横軸とする座標に、株価と売買高の 25 日移動平均を プロットする http://nikkei.hi-ho.ne.jp/dlj/tc01.html