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世界の 通信事情

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世界の 通信事情
“100ドルスマホ”
どう実現?p.10
[特集]
世界のLTEの
進展状況は?p.12
世界の
モバイル
通信事情
今こそ、
押さえたい
10
8
大テーマ
NIKKEI COMMUNICATIONS November 2013
新興国の
携帯電話事情は?p.14
土管化で通信事業者は
どうなる?p.16
MVNOは
広がっているのか?p.18
パケット定額制は
なくなる?p.20
公衆無線LANは
日本が最先端?p.22
おサイフケータイは
世界に広がる?p.24
日本から世界へ
世界から日本へ
ソフトバンクが2013年7月、米スプリント・
ネクステル(現スプリント)を買収した。その余
韻も冷めやらぬまま、同社は2013年10月にガ
ンホー・オンライン・エンターテイメントと共
同でフィンランドのゲーム会社であるスーパー
セルを、さらには携帯電話端末の卸売事業で世
医療分野への
活用は進む?p.26
界最大規模の米ブライトスターをそれぞれ傘下
に収めると発表した。ともに1000億円以上の
大型買収で、世界戦略を急速に強めている。ソ
フトバンクに限らず、NTTドコモも上位レイ
ヤーを中心に海外に進出。KDDIも今後、グロー
SIMロック解除の
動きは変わった?p.28
バル展開を強化する方針を示す。
こうした動きの背景にあるのは、国内市場の
成熟化。携帯電話の普及率は既に100%を超え
ており、スマートフォンへの移行で成長をまだ
期待できるものの、爆発的な伸びは見込めそう
にない。各社が海外展開に力を入れるのは自然
の流れで、今後はボーダレス化の動きがさらに
加速していく。すなわち、国内外の優れたサー
ビスが入り乱れた状況になる。海外での厳しい
競争を経て培ったノウハウが、日本のサービス
にフィードバックされるといった効果も期待で
きそうだ。
今や、通信業界に携わる人にとって、海外の
動向を把握しておくことは不可欠。そこで今回
の特集では、本誌連載「海外通信ウォッチ」でお
馴染みの情報通信総合研究所の研究員が「今こ
そ、押さえたい注目の動向」を解説した。以下、
「携帯電話端末市場」
「LTE/LTE-Advanced」
「新興国市場」
「API」
「MVNO」
「パケット料金」
「公衆無線LAN」
「モバイル決済」
「モバイルヘル
ス」
「SIMロック」の10大テーマに関して、世界
写真:gettyimages
の動向を見ていく。
(本誌)
November 2013 NIKKEI COMMUNICATIONS
9
[特集]世界のモバイル通信事情
[携帯電話端末市場]
台頭する“100ドルスマホ”
新興国では中古端末も人気
情報通信総合研究所 研究員 佐藤
仁
大手メーカーの事業撤退や縮小が相次ぐ日本
の携帯電話端末市場。だが、世界ではスマート
新興国で地場メーカーが躍進
フォンを中心にまだ成長を見込める。中でも期
米ガートナーによると、2012年の世界の携帯
待が高いのは、新興国市場。米 IDCによると、
電話販売台数は約17億4618万台(表2)
。韓国
2017年にスマートフォンの年間出荷台数はブラ
サムスン電子、フィンランドのノキア、米アップ
ジルで129.4%、インドで459.7%(ともに2013
ルの上位3社だけで全体の約半分のシェアを占
年との比較)も伸びる見通しである(表1)
。世
める。これに対して日本は、MM総研によると、
界の様々な端末メーカーが虎視眈々と狙ってい
出荷台数ベースの2012 年度実績で4181 万台
るような状況だ。新興国では地場メーカーの活
(表3)
。全世界の2%強の市場規模しかなく、世
躍も目覚ましく、中古端末も手ごわい “ライバ
界6位の中国華為技術(ファーウェイ)の年間販
ル”となりそうだ。
売台数より少ないのが実情である。その国内も
アップルやサムスン電子といった海外勢が伸び
ている。
表1 主要国におけるスマートフォンの出荷台数予測
2013年
2013 年
出荷台数(予測) 市場シェア
2017 年
2017 年
出荷台数(予測) 市場シェア
出荷台数
の伸び率
中国
3億120万台
32.8%
4億5790万台
30.2%
+ 52.0%
英国
3550万台
3.9%
4750万台
3.1%
+ 33.8%
米国
日本
ブラジル
1億3750万台
15.0%
3520万台
3.8%
2890万台
インド
2780万台
その他
3億5250万台
計
9億1860万台
3.1%
3.0%
38.4%
1億8300万台
12.1%
3770万台
1億5560万台
6630万台
5億6810万台
15億1610万台
中国やインドのような大国では地場メーカーの
2.5%
+ 7.1%
活躍が目立つようになってきた。携帯電話はも
10.3%
+ 459.7%
4.4%
37.5%
+ 129.4%
はやコモディティー化しており、参入障壁はそ
+ 61.2%
れほど高くない。今後、大きな成長を見込める
メーカー名
販売台数(前年比)
ノキア(フィンランド)
3 億3394万台(▲21.0%) 19.1%(▲4.7ポイント)
ZTE(中国)
LGエレクトロニクス(韓国)
華為技術(中国)
シェア(前年比)
3 億8463万台(+22.1%) 22.0%(+ 4.3ポイント)
実際、インドではマイクロマックス(Micro
max)やカーボン(Karbonn)といった地場メー
カーの躍進が著しい。これらのメーカーはフィー
1 億3013万台(+45.8%) 7.5%(+ 2.5ポイント)
チャーフォン(従来型携帯電話)も提供するが、
5802万台(▲32.8%)
“100ドルスマホ”と呼ばれる1万円程度のスマー
6734万台(+18.4%)
4729万台(+16.3%)
TCLコミュニケーション(中国) 3718万台(+9.2%)
3.9%(+ 0.7ポイント)
3.3%(▲1.6ポイント)
2.7%(+ 0.4ポイント)
2.1%(+ 0.2ポイント)
リサーチインモーション(カナダ) 3421万台(▲33.6%)
2.0%(▲0.9ポイント)
HTC(台湾)
1.8%(▲0.6ポイント)
モトローラ(米国)
3392万台(▲15.8%)
その他
5 億8740 万台(▲1.4%)
3212万台(▲25.8%)
出所:米ガートナー
10
新興国を中心に多くの地場メーカーが登場しそ
うである。
表2 世界の携帯電話販売台数シェア(2012年、累計販売台数は17億4618万台)
アップル(米国)
カーが生き残っていくのは自ずと限界があるが、
+ 33.1%
出所:米IDC
サムスン電子(韓国)
日本のように成熟した小さな市場で国内メー
NIKKEI COMMUNICATIONS November 2013
1.9%(▲0.4ポイント)
33.6%(増減なし)
トフォンが人気だ。インドでは至る所で両社の
広告やポスターを見かける。米IDCによると、
両社はインドにおけるスマートフォンの販売台
数でそれぞれ2 位と3 位に付けており、直近の
シェアも伸びている(図1)
。
表3 日本の携帯電話出荷台数シェア(2012年度、累計出荷台数は4181万台)
アップル(米国)
部を中国や自国で手掛けており、余計なコスト
が発生しないこと。研究開発費もほとんどかけ
ず、人件費を抑えることで低価格化に成功して
いる。安価にもかかわらず、スペックやデザイン
はグローバルメーカーの端末に決して見劣らな
い。現地での成長をバネに海外展開に成功でき
れば、このような地場メーカーから未来のグロー
シェア(前年度比)
1066 万台(+ 47.0%) 25.5%(+ 8.5ポイント)
601 万台(▲ 21.5%)
585 万台(▲ 18.6%)
14.4%(▲ 3.5ポイント)
シャープ
ソニーモバイルコミュニケーションズ
408 万台(+ 7.1%)
9.8%(+ 0.9ポイント)
サムスン電子(韓国)
300 万台(+ 22.0%)
7.2%(+ 1.4ポイント)
京セラ
298 万台(▲ 19.2%)
7.1%(▲ 1.5ポイント)
富士通モバイルコミュニケーションズ
両社の強みは、端末を現地で開発、製造の一
出荷台数(前年度比)
290 万台(▲ 28.7%)
パナソニック モバイルコミュニケーションズ
NECカシオモバイルコミュニケーションズ
221 万台(▲ 26.6%)
その他
412 万台(+ 14.4%)
14.0%(▲ 2.8ポイント)
6.9%(▲ 2.6ポイント)
5.3%(▲ 1.7ポイント)
9.9%(+ 1.5ポイント)
出所:MM 総研
図1 インドにおけるスマートフォンの出荷台数シェア 2位にマイクロマックス、3位に
カーボンが入っており、地場メーカーが活躍している。
バルメーカーが誕生する可能性も十分にある。
最近では中国でも、ZTE(中興通迅)や華為
その他
技術、TCLのほかに、レノボ(聯想集団)
、Xiao
25.7%
2013年
1∼3月
出荷台数
610万台
mi(小米科技)
、クールパッド(酷派)
、ハイセン
ス(海信集団)といった地場メーカーの活躍が
目立つようになってきた。
初期のスマホが今でも中古で流通
ソニーモバイル
コミュニケーションズ 5.9%
カーボン
(インド)
ノキア
(フィンランド)
32.7%
マイクロマックス
(インド)
18.8%
10.9%
5.9%
サムスン電子
(韓国)
100ドルスマホ以外で注目したいのが、中古
端末市場である。日本でも大手携帯電話事業者
をはじめ、ブックオフが中古端末の買い取りを
始めるなど注目が高まっているが、海外では以
前から一般的だ。SIMロックを解除した端末が
29%
主流なので、SIMカードを差し替えるだけでよ
く、中古端末の利用に当たって問題になること
はほとんどない。新興国では中古端末の人気が
高く、2007 〜 2008 年に発売された初期の
iPhoneやAndoridスマートフォンが今でも中
古端末として多くの市場で流通している(写真
サムスン電子
(韓国)
その他
ソニーモバイル
コミュニケー
ションズ 5%
ノキア
(フィンランド)
2013年
4∼6月
出荷台数
930万台
カーボン
(インド)
26%
マイクロマックス
(インド)
22%
13%
5%
地場メーカー
が活躍
出所:米IDC
1)
。特にハイエンド端末に関しては数年が経過
した中古端末でも十分に使用に堪え得る。
写真1 中古端末販売店の様子(カンボジア)
このような事情もあり、新興国では端末を保
護するためのアクセサリーが人気。日本のよう
にファッションの一部としての用途ではなく、
使用後に再び中古端末として高く売れるように
するためである。つまり、同じ中古端末が何度
も市場を流通する。グローバルメーカーにとっ
ては中古端末も無視できない存在となっていき
そうだ。
November 2013 NIKKEI COMMUNICATIONS
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