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1 高病原性鳥インフルエンザ発生時の感染鶏の 焼却日数シミュレーション

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1 高病原性鳥インフルエンザ発生時の感染鶏の 焼却日数シミュレーション
1 高病原性鳥インフルエンザ発生時の感染鶏の
焼却日数シミュレーション
〇芳野正徳
要 約
高病原性鳥インフルエンザの感染鶏は埋却か焼却をしなければならず、養鶏場へは埋却場所を確保す
るように指導してきた。しかし、埋却場所の確保が困難な養鶏場もあることから、焼却の可能性につい
て検討した。視察を行った清掃工場は、管内に飼養羽数 100 羽以上の養鶏場がある 10 か所。今回は、
焼却日数についてのシミュレーションを行った。前提条件として、①発生場所は管内の最多羽数飼養の
養鶏場、②発生戸数は 1 戸、③鶏重量は羽数× 2kg、④ゴミ重量は焼却実績値、⑤焼却時間は1日8時間、
⑥混入率(鶏重量/ゴミ重量)は 10%とした。その結果、焼却日数は 0.1 ~ 11.4 日となり、国の指針
が示す 72 時間以内の焼却ができない清掃工場は 4 か所あった。
平成 16 年、79 年ぶりに高病原性鳥インフルエ
の中で焼却する方式である。焼却の流れは、ゴミ
ンザが発生し、東京都でも危機感が高まった。感
をゴミピットに集積し、クレーンで釣り上げてゴ
染鶏は埋却か焼却をすることになっており、養鶏
ミを均一化するための粉砕機にかける。粉砕した
場には埋却地を確保するように指導してきた。し
ゴミは再びクレーンで釣り上げ、ホッパーに投入
かし、埋却地の確保が困難な養鶏場もあり、焼却
して高温の砂の中で焼却する。
の可能性ついて検討する必要があった。
運営主体で区分すると、市が 5 か所、衛生組合
そこで、管内に飼養羽数 100 羽以上の養鶏場
(一部事務組合)が 5 か所。炉数は 1 炉から 4 炉、
がある清掃工場 10 か所を対象に視察を行い、焼
焼却能力(最大焼却重量)は日量 117 ~ 600t。
却日数のシミュレーションを行った。
なお、すべての焼却炉は 24 時間の稼働である。
清掃工場の概要
表1 清掃工場の概要
⾲㻝
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清掃工場の概要を表 1 に示す。焼却方式で区分
すると、ストーカ炉 7 か所、流動床炉 3 か所で
ある。ストーカ炉とはゴミをストーカで移動させ
ながら焼却する方式で、一般に普及している方式
である。焼却の流れは、ゴミをゴミピットに集積
し、それをクレーンで釣り上げて、ホッパーとい
う焼却炉への投入口にゴミを落とす。そして、ス
トーカでゴミを移動させながら焼却する。流動床
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A
B
C
D
E
F
G
H
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2
3
3
2
4
1
2
3
3
2
220
280
300
190
476
600
288
450
480
117
ͤ↝༷⅔䛿䚸24h✌ാ
炉は、焼却炉の中に流動する高温の砂があり、そ
平成26年度東京都家畜保健衛生業績発表会集録(2016)
- -
表2 清掃工場の焼却実績
⾲㻞
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Ύᤲᕤሙ
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
表3 焼却日数のシミュレーション結果
⾲㻟
↝༷᪥ᩘ䛾䝅䝭䝳䝺䞊䝅䝵䞁⤖ᯝ
↝༷⬟ຊ
䝂䝭㔜㔞
✌ാ⋡ ὀ2)
( t /᪥) ( t /ᖺ) ( t /᪥) ὀ1)
(%)
䠄H25✌ാ䠅
䠄H26✌ാ䠅
220
280
300
190
476
600
288
450
480
117
36,824
40,782
65,463
24,213
95,441
138,350
䠄ᐇ⦼್䛺䛧䠅
98,208
65,845
ὀ3)
23,061
101
112
179
66
261
379
䞉
269
180
63
46
40
60
35
55
63
䞉
60
38
䞉
表4 焼却日数のシミュレーション
⾲4
↝༷᪥ᩘ䛾䝅䝭䝳䝺䞊䝅䝵䞁
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
↝༷⬟ຊ ΰධ㭜㔜㔞
( t /8h)
( t /8h)
73
93
100
63
159
200
96
150
160
39
㭜㔜㔞
(t)
7.3
9.3
10.0
6.3
15.9
20.0
9.6
15.0
16.0
3.9
䝂䝭㔜㔞
( t /8h)
ΰධ㭜㔜㔞
( t /8h)
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
34
37
60
22
87
126
3.4
3.7
6.0
2.2
8.7
12.6
䞉
9.0
6.0
2.1
䠄ᐇ⦼್䛺䛧䠅
90
60
21
ὀ1)
㭜㔜㔞
(t)
↝༷᪥ᩘ
(᪥)
14.0
6.6
17.2
8.0
17.0
1.1
䞉
10.0
51.0
24.0
4.2
1.8
2.9
3.6
2.0
0.1
䞉
1.1
8.5
11.4
ὀ2)
ὀ1) ΰධ㭜㔜㔞 = 䝂䝭㔜㔞㽢10%
ὀ2) ↝༷᪥ᩘ = 㭜㔜㔞㾂ΰධ㭜㔜㔞
ὀ1) 1᪥䝂䝭㔜㔞= ᖺ㛫䝂䝭㔜㔞㾂365
ὀ2) ✌ാ⋡ = 1᪥䝂䝭㔜㔞㾂↝༷⬟ຊ
ὀ3) ᪧ᪋タ䛷䛾ᐇ⦼್
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⾲5 ↝༷⬟ຊ䛷↝༷䛩䜛䛯䜑䛾ᚲせ䝂䝭㔜㔞
表5 焼却能力で焼却するための必要ゴミ重量
↝༷᪥ᩘ
(᪥)
14.0
6.6
17.2
8.0
17.0
1.1
0.9
10.0
51.0
24.0
1.9
0.7
1.7
1.3
1.1
0.1
0.1
0.7
3.2
6.2
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A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
2
3
4
2
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2
2
4
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㔜㔞( t /᪥)
90
82
174
62
䞉
䞉
䞉
221
158
54
ᚲせ䝂䝭
㔜㔞( t /8h)
133
148
216
104
䞉
䞉
䞉
297
217 ὀ1)
146 ὀ2)
ᚲせ䝂䝭
䠋᭱ᑠ䝂䝭
1.5
1.8
1.2
1.7
䞉
䞉
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1.3
1.4
2.7
ὀ1) ↝༷⬟ຊ䛷䚸9h↝༷䛩䜛ሙྜ䛾ᚲせ䝂䝭㔜㔞
ὀ2)
䚺
17h↝༷䛩䜛ሙྜ䛾ᚲせ䝂䝭㔜㔞
ͤ↝༷⬟ຊ䛷↝༷䛩䜛䛾䛿8᫬㛫
ゴミ重量÷焼却能力で算出した。なお、G は実績
焼却日数シミュレーション
値がわからず、J は旧施設での実績値である。
前提条件:シミュレーションの前提条件は以下の
管内における鶏の飼養規模:焼却の対象は、飼
とおりである。
養羽数 100 羽以上である。各清掃工場管内の養
① 発生場所は、各清掃工場管内の最多羽数を
飼養する養鶏場
鶏場は 1 ~ 7 戸、合計羽数は 1,000 羽未満から
36,000 羽であった。
② 発生戸数は、1 戸で継続発生なし
焼却日数のシミュレーション結果:表 3 は実績値
③ 鶏重量は、羽数× 2kg
から算出した焼却日数のシミュレーション結果で
④ ゴミ重量は、平成 22 年度の各清掃工場実
ある。
績値 高病原性鳥インフルエンザが発生した場合、72
⑤ 焼却時間は、1 日 8 時間
時間以内に処分することとなっている。しかし、
⑥ 鶏の混合率は、鶏重量:ゴミ重量=1:9
シミュレーションの結果、A、D、I、J において、
(10%)
72 時間以内の焼却は不可能であった。
清掃工場の焼却実績:清掃工場で焼却されている
そこで、焼却時間を延長してみると、A で 11
ゴミ重量がどの程度あるのかを知るために、平成
時間、D で 10 時間、Iで 23 時間の焼却で焼却が
22 年度の年間実績値を調べた(表 2)
。1 日あた
可能となった。しかし、J にあっては 24 時間の
りのゴミ重量は年間実績値÷ 365、稼働率は 1 日
焼却でも 3.8 日かかる結果となった。
平成26年度東京都家畜保健衛生業績発表会集録(2016)
- -
次に、焼却能力(最大焼却重量)で焼却する
焼却されるゴミ重量の何日分に相当するのかを示
ことを前提としてシミュレーションすると、I と
している。例えば J の場合、通常の 2.7 日分の
J では 72 時間以内の焼却は不可能となり、さら
ゴミ重量を 17 時間で焼却することを示している。
に焼却時間を延長することで、Iで 9 時間、J で
結 論
17 時間の焼却で可能となった。
ストックされているゴミ重量:焼却できる感染鶏
実績値で焼却した場合、8 時間の焼却で 5 か所、
は、清掃工場でストックされているゴミ重量に依存し
9 時間以上の焼却では 8 か所で、感染鶏の焼却が
ている(感染鶏の焼却量はゴミ重量の 10%)
。高病原
終了する。また、焼却能力(最大焼却重量)で焼
性鳥インフルエンザの発生は、渡り鳥との関係が高い
却した場合では、8 時間の焼却で 8 か所、9 時間
ことから、渡りの期間である 10 月から 5 月における
以上の焼却では 10 か所で終了する。
ストックゴミの最小重量を調査した(表 5)
。
今回のシミュレーショにより、焼却時間の延長
必要ゴミ重量は、焼却能力で 8 時間焼却した場
や焼却能力で焼却せざるを得ない清掃工場の存在
合に必要となるゴミ重量である。ただし、I は 9
が明らかとなった。しかし、個々の清掃工場の事
時間、J は 17 時間の焼却時間に必要なゴミ重量
情や地域住民の方々との協定などを考慮すると、
を示す。
焼却日数はさらに延長せざるを得ないと思われ
表 5 の一番右側の数値は、必要ゴミ重量が通常
る。
平成26年度東京都家畜保健衛生業績発表会集録(2016)
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