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リハビリテーション患者の歩行移動を 活発化させる施設

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リハビリテーション患者の歩行移動を 活発化させる施設
M15F14
A ST U DY O N EN V I RO N M ENT W H I C H
SU PP O RTS I N C R E AS E I N PH YSI CA L
ACTIVITY FOR RIHABILITATION PATIENTS
リハビリテーション患者の歩行移動を
活発化させる施設環境に関する考察
ー平面構成の異なる回復期リハビリテーショ
ン病棟を対象としてー
-Case study of recovery phase rehabilitation wards with
different plans-
柳瀬研究室 13TM728G 山本朋子
Yanase Lab. 13TM728G Tomoko YAMAMOTO
The purpose of this study is to investigate about the effect of
different plans for rehabilitation wards. We observe the line of
independent ambulation patients of recovery phase rehabilitation
words. The following knowledge were obtained.
1. In the rehabilitation training room and sickroom of arrangement
planning, it is necessary to consider that affect the physical activity
of the living behavior other than rehabilitation.
2. Arrangement plan of sickroom and meal place is important to be
increased activity of patients.
3. It is effective for the patient to provide a space which increase
voluntary training in use place of the rehabilitation and daily life.
キーワード:
行動観察,歩行移動,滞在場所,回復期リハビリテーション病棟 ,
平面構成
Keywords:
Behavioral observation, Physical activity, Staying place, Recovery
phase rehabilitation wards, Plan composition
1.はじめに
2000
を活発化させる施設環境についての検討が重要と考える。
年に開設された回復期リハビリテーション病棟 註 1)(以下、
そこで本研究では、平面構成の異なる 4 施設の回復期リハビリ
回復期リハ病棟)は、2014 年 3 月末時点で 1,547 病棟、68,316 病
テーション病棟を対象とし、患者の行動観察調査を実施することに
床が登録されている。家庭や社会への復帰の支援を目的としてお
より、滞在場所と移動距離を把握する。訓練時間帯での移動や、生
り、院内の他病棟や関連病院といった医療機関を入院経路とし、自
活時間帯における食堂への移動や自主的な歩行訓練に着眼し、回復
宅を退院経路とする患者が全体の 69.1% を占めている。病室構成は、
期リハビリテーション病棟の平面構成の違いが、患者の歩行移動に
68.5% が 4 床室構成となっている。75 歳以上の高齢の患者が全体の
及ぼす影響を比較検討する。
61.9% を占め、全体の 47.6% を占める脳血管系疾患を主体とした病
棟構成となっている。病棟の建設年度については、2000 年以前に
2.調査概要
建設された病棟が 39.2% 存在する 1)。従って、一般病棟や療養型の
2.1 調査方法
既存病棟から回復期リハ病棟へ転用された事例が多く、病棟空間の
本研究では行動観察を主な調査手法に用いた。調査概要を表1に
質の向上が求められている。
示す。また、病室といった患者のプライバシーにより観察が難しい
2)
が患
空間における行動実態を把握するため、回復期リハ病棟では一般的
者の生活展開の変容を類型化し、多様な場の必要性を明らかにし
な 4 床室における床面積が広い AZ 病院で、自由時間における日課
回復期リハ病棟に関する建築計画を扱った研究は、申ら
た。池田
3)
らは共用空間に着目して調査を行い、移動形態により
の行動内容、行動場所、遂行時間、行動理由等に関するヒアリング
共用空間利用の傾向があることを示した。賀ら 4) は歩数及び運動
調査を実施した。
強度を指標とした調査を実施し、空間構成の違いが訓練の効果に起
対象者の属性を表 2 に示す。各病院で主要疾患である脳血管系と
因することを裏付けた。訓練室と病棟の位置関係について扱った
整形外科系の疾患患者を中心に、歩行自立患者を条件とし、本人の
岩倉ら
5)
同意を得られた患者を対象とした。調査時間は 12 時間とし、1 分
の研究では、訓練室の位置が、訓練の面だけでなく離床
行為も含めた生活の面にも影響を及ぼすことが示されている。し
毎(計 720 分)に滞在場所と行動内容および動線の記録を行った。
かし、リハビリ、ADL 註 2)、その他の余暇時間における行動の各々
また、患者の行動と滞在時間や歩行距離との関係を具体的に検討
で発生する歩行移動と施設の平面構成との関係は考察されていな
するため、患者の行動の分類化を試みた(表 3)。「リハビリ治療」、
い。歩行能力の維持改善は、ADL の中でも特に重要であり、その他
食事や排泄、整容、入浴等の毎日繰り返される生活動作を「基本的
の ADL の自立に寄与するほか、生活活動性の向上との結びつきが強
ADL」、それ以外の生活時間における行動を「余暇的行動」と大きく
い。この歩行能力の回復においては、訓練諸室だけではなく、実際
3つに分類し、さらに、基本的 ADL を「食事のための移動(以下、
の生活の場で歩行の実用性を高めていくことが重要とされ、生活全
食事移動)」と「その他 ADL」に区分し、余暇的行動を「自主訓練」
体を活発化 註 3) させていく上でも有効とされている。また、活動性
と「その他余暇的行動」に区分した。
の向上に続いて体力増強を目的にし、退院後も持続可能な手段とし
て、歩行活動の活発化が挙げられており、自主訓練による歩行量の
調査方法
増加が、ADL を一層向上させるといった良循環を形成する。従って、
調査内容
歩行能力の向上は、ADL の自立だけでなく、患者の生活全体の活発
調査実施日
化にも寄与する。そのため、歩行移動とリハビリや生活行動との関
対象者
係を分析し、回復期リハ病棟の計画に資するものとして、歩行移動
1
表1 調査概要
行動観察調査および部分的ヒアリング調査による生活行動実態把握
1 分毎の対象者の滞在場所や行動内容を記録したほか、動線を平面図に記録
し、移動距離を計測した。
2012 年 11 月〜 2014 年 12 月の 12 日間
実施時間 7:00 〜 19:00 註 4)
脳血管系疾患と整形外科系疾患の患者を中心に、歩行自立を条件とした患者
のべ 47 名
2.2 施設概要
間の行動分類を図 2 に表す。SR 病院ではリハビリ治療平均時間が 本研究では、既存病棟を回復期リハ病棟に転用した 3 病院と、回
203 分と最も長く、その他の病院では、大きな時間差はみられなかっ
復期リハ病棟として設計された1病院の計 4 施設を調査対象とし
た。回復期リハ病棟外に訓練室が設けられている NA 病院・SK 病院
た。対象施設の概要を表 4 に示し、各病院の平面構成および訓練形
では、訓練室での滞在がそれぞれ 72.8%、89.9%を占めており、NA
態の特徴について、以下に概観する。
病院では訓練室から病室に続く共用廊下も滞在時間としてはあまり
NA 病院は、回復期リハ病棟外に訓練室が設けられているが、病
長くはないが利用されていた。一方、AZ 病院では 55.3% を病室が
室から訓練室までの距離が近く同フロア内での移動のため、病棟共
占め、ここではベッドサイドで関節可動域・筋力強化訓練のほか、
用廊下が立ち上がり集団訓練や歩行訓練に利用されるなど、訓練室
食事時に必要となる嚥下機能訓練等が行われていた。共用空間の
だけでなく病棟廊下や食堂まで延長してリハビリが行われている。
65.0%は廊下であり、90m 以上ある長さの空間を利用した歩行訓練
歩行訓練に関しては、立ち上がり訓練を基礎として、訓練室での歩
や手すりを用いた起立訓練をはじめ、様々なリハビリが行われてい
行訓練から病棟廊下での歩行練習を経て、院内階段や屋上・屋外へ
た。また、病棟内に治療器具を備えた機能訓練室が設けられており、
と歩行能力を向上させていくリハビリプログラムが組まれている。
物理療法を中心としたリハビリが行われていた。SR リハ病院では、
SK 病院は、回復期リハ病棟と訓練室の距離が離れており、リハ
全体の 36.8% を占める病棟の共用廊下がリハビリ場所として最も
ビリの際はエレベータを利用して訓練諸室が備わるリハビリ病棟へ
多く利用された。また街区を周回したり、駅前の商業施設に行くと
移動を行っており、抑揚のある療養プログラムが組まれている。食
いった建物外の周辺環境がリハビリに多く利用された。
堂は、季節に合わせた創作物の製作等のレクレーションの場として
も利用され、排泄時などの姿勢維持に必要な筋力を向上させるため
表 2 対象者の属性
病院名 患者名
に、食堂への長時間の離床が促されている。歩行訓練に関しては、
NA NA1
—
NA3
−
病棟共用廊下では行われず、訓練室までの移動経路が歩行訓練目的
NA2
で利用されたり、訓練諸室周辺の廊下が利用されている。
NA4
AZ 病院では、病棟内でリハビリが行われており、病室や病棟内
NA6
NA5
NA7
の共用廊下がリハビリに利用される主要な空間となっている。これ
NA8
NA9
は、日常に直結する生活の中でリハビリを行うことで治癒効率を高
疾患名
左後頭葉脳梗塞
右膝蓋骨骨折
多発骨折後廃用症候群
—
また、訓練室への移動による時間や手間の短縮によって、患者が治
SK3
廃用症候群
療に集中できる環境が整えられている。
SK5
SK2
SK4
SK6
SR リハビリテーション病院では、日常生活上の動作を通じてリ
AZ AZ1
AZ2
ハビリ効果を追求する考えに基づき、個室中心のユニット構成、意
AZ3
匠性に富んだ家具や設備など、斬新で意欲的な病棟計画となってい
AZ4
る。そのため、2009 年に日本医療福祉建築協会から医療福祉建築
AZ6
賞が贈られている。大規模な訓練室は設けられておらず、共用廊下
AZ8
AZ5
AZ7
AZ9
や大階段などが訓練に利用され、これらは屋外に繋がる眺めのよい
2012.11.19 a, 20 b
106
56
杖歩行
78
女
2012.11.19 a, 20 b
25
61
77
10
74
汎発性帯状疱疹
97
91
脳梗塞
71
脳出血
31
急性硬膜下血腫
脳出血
脳出血
両側下腿骨折
左大腿骨近位部骨折術後
左大腿骨近位部骨折術後
中心性頚髄損傷
脳出血
左大腿骨近位部骨折術後
右膝関節骨折
45
41
9
14
18
17
18
29
SR3
左脳梗塞
よって、食事をリハビリに活用するなど、様々な工夫が取り入れら
SR5
右人工股関節置換術後
37
脳室内出血
37
外傷性くも膜下出血
杖歩行
81
歩行器歩行
82
杖歩行
87
歩行器歩行
96
杖歩行
98
118
80*
80*
80*
85*
90*
100
靴の着脱を行うほか、食堂を病室から離れた場所に計画することに
SR4
74
48
右アテローム血栓性脳梗塞 11
SR2
独立歩行
100*
SR1
場所に設けられている。また、ユニットには玄関が設けられており
54
182
87
AZ10 脳梗塞
SR
女
56
脳梗塞
脳梗塞
57
154
ラクナ梗塞
SK1
杖歩行
37
小脳梗塞
調査日
26
91
NA10 右小脳出血
SK
めるほか、職員のチームアプローチの円滑化をねらいとしている。
在院日数 FIM 指数 自立歩行形態 年齢 性別
119
111
78
98
103
105
106
110
111
113
118
118
94
113
114
119
121
歩行器歩行
歩行器歩行
杖歩行
歩行器歩行
独立歩行
杖歩行
独立歩行
独立歩行
杖歩行
杖歩行
歩行器歩行
歩行器歩行
歩行器歩行
独立歩行
独立歩行
杖歩行
歩行器歩行
独立歩行
杖歩行
杖歩行
独立歩行
独立歩行
独立歩行
76
57
83
67
84
85
74
68
80
84
85
70
55
62
51
82
77
85
77
80
79
84
82
67
72
72
71
78
77
女
男
男
女
男
女
女
女
女
男
男
男
男
男
男
女
女
男
女
男
女
女
女
男
男
女
男
男
男
2013.11.13 a, 14 b
2013.11.13 a, 14 b
2013.11.13 a, 14 b
2013.11.13 a, 14 b
2012.11.19 a, 20 b
2013.11.13 a, 14 b
2012.11.19 a, 20 b
2013.11.13 a, 14 b
2012.11.27 a, 28 b
2012.11.27 a, 28 b
2012.11.27 a, 28 b
2012.11.27 a, 28 b
2012.11.27 a, 28 b
2012.11.27 a, 28 b
2014.12.22
2014.12.22
2014.12.26
2014.12.23
2014.12.24
2014.12.23
2014.12.22
2014.12.26
2014.12.23
2014.12.24
2014.9.17
2014.11.28
2014.9.17
2014.9.17
2014.11.28
*SK 病院ではバーセル指数註 5) の数値を、その他の病院では FIM 指数註 6) 数値を示す。
れた施設構成となっている。
表 3 行動分類の定義
3.調査結果・考察
3.1 行動分類別にみた患者の空間利用実態と滞在時間
生
(1)リハビリ治療における利用空間
活
行
リハビリ治療時間における患者の滞在場所について、空間別にみ
動
た滞在時間の割合について図1に示す。また、患者別にみた滞在時
行動分類
リハビリ治療
食事移動
基本的 ADL
その他 ADL
自主訓練
余暇的行動
その他余暇的行動
行動の定義
リハビリや処置等の治療
食事場所への移動
食事移動以外の、生活に必要な毎日行う生活動作群
自主的に取り組まれる歩行訓練等のリハビリ
自主訓練以外の余暇時間における行動
表 4 対象施設の概要
施設名称
所在地
診療報酬区分
設立日 / 回復期リハ病棟開設日
病院規模
回復期リハ病床数
病室構成
部屋数
一人当たり部屋面積
平均在院日数
NA 病院
長野県長野市
回復期リハビリテーション病棟入院料1
1961 年 /2001 年
地上6階建
1 病棟 56 床
個室
4 床室
4室
13 室
11.20m2
7.14m2
71.0 日
SK 病院
長野県佐久市
回復期リハビリテーション病棟入院料1
1944 年 /2006 年
地下 1 階、地上7階建
1 病棟 40 床
個室
2 床室 3 床室 4 床室
3室
1室
5室
5室
11.33m2 7.35m2 8.8m2
8.99m2
84.4 日
2
AZ 病院
長野県松本市
回復期リハビリテーション病棟入院料 3 註 7)
1994 年 /2014 年
地上5階建
1 病棟 50 床
個室
2 床室
4 床室
2室
2室
11 室
18.90m2
12.68m2
10.24m2
47.4 日
SR リハビリテーション病院
大阪府箕面市
回復期リハビリテーション病棟入院料1
2007 年 /2007 年
地下 1 階、地上3階建
4病棟 121 床
特別室(個室)個室註 8) 2床室 4 床室
5室
68 室
18 室
3室
20.16m2
18.72m2 16.25m2 7.36m2
89.2 日
(2)基本的ADLにおける利用空間
ないよう体動やラジオ音声の音量調節に特に配慮している患者が
食事や排泄、整容、入浴といった日常生活における基本的な生活
70%であった。従って、多床室の病棟計画では、患者のストレスを
動作に利用される空間の滞在時間の構成比に関して、図3に表す。
軽減したり、他人から干渉されず気分転換を図れる空間を設けるな
食堂が設けられている NA 病院、SK 病院、SR リハ病院と、病室で食
ど、心身の負荷を軽減させる環境整備が求められている。
事を摂る AZ 病院では、滞在空間の割合に違いが見られた。特に SR
病室以外に着目すると、NA 病院では、食堂と廊下が主な離床空
リハ病院では、食堂への移動にみられるように、行動領域は個室ユ
間となっており、4 施設の中では共用廊下の割合が最も大きい。な
ニットフロアから病棟の共用空間まで広範囲に及んでいる。病室で
お、NA 病院では様々な行事が定期的に開催されており、調査時間
の滞在時間が 59.7%を占める AZ 病院と比較すると、病室外への離
内 註 9) にも食堂で交流行事が行われていたことから、滞在者の割合
床に関して大きな差が見られ、食事空間の計画は患者の生活展開に
が増加したことが推察される。SK 病院と AZ 病院では、共用空間で
影響を与えることが示唆される。
の滞在が短く、AZ 病院では、リハビリ治療時間における共用廊下
(3)余暇的行動における利用空間
の滞在割合が大きかったにも関わらず、余暇活動においてはあまり
基本的 ADL 以外の生活行動の中で、余暇的行動における空間別の
利用されていない実態を把握した。SR リハ病院では、ユニット内
滞在時間の構成比データを図 4 に表す。図 2 に示すように余暇的行
共用空間の LDK のほか、テラスやロビーといった病棟内共用空間で
動時間は一日の大半を占めており、病室でほとんどが過ごされて
の滞在がみられた。
いる。ヒアリング調査によると、4 床室の一人当たり床面積が最も
3.2 行動分類別にみた患者の歩行距離
広い AZ 病院でも、同室者のいびきや会話、ポータブルトイレの臭
4 施設におけるリハビリ治療、基本的 ADL、余暇的行動の各々で
いにストレスを感じる患者が 30%、反対に、同室者に迷惑になら
発生した歩行距離の中央値を図 5 に示す。患者の歩行距離はリハビ
NA 病院
リハビリ治療 平均 127 分
病室
病室
病室
病室
SK 病院
機能訓練室
病室 病室
リハビリ治療 平均 113 分
病室 病室
病室
病室
食堂
ナースステーション
浴室
病室
病室
病室
病室
病室
病室
作業療法室
浴室
北病棟 1 階リハビリ科平面
言語療法室
病室
トイレ
病室
病室
病室
食堂
病室
スタッフルーム
0
病棟外共用
病室
ナースステーション
病室
トイレ
9.0%
10m
5
病室 1.1%
病室
1階渡り廊下
訓練室
89.9%
理学療法室
個別療法室
20m
10
食堂 27.9%
リハビリ訓練室
廊下
72.1%
回復期病棟内外の共用空間
平均滞在時間 102.2 分
平均滞在時間 10.3 分
EV
大階段
回復期病棟内外の共用空間
EV
平均滞在時間 22.5 分
EV
テ ラス
テ ラス
病室
前室
リハビリ治療 平均 119 分
EV
病室
トイレ(男)
EV
トイレ
洗面所 トイレ(女)
トイレ
病室
EV
病室
病室
路地
EV
EV
療法室
病室
病室
病室
病室
トイレ
スタッフステーション
病室
病室
病室
病室
病室
その他病棟外共用
1.4%
0
機能訓練室
25.7%
病室
41.7%
5
談話
コー ナ ー
談話
コー ナ ー
テ ラス
居間
廊下
居間
廊下
病室
病室
病室
病室
病室
A2 ユ ニ ット
ADL
< 浴室 >
廊下
65.0%
ADL
ADL<DK>
< 便所 >
ADL< 和室 >
敷地内屋外
10.4%
ADL
< 洗面・脱衣所 >
0
回復期病棟内外の共用空間
平均滞在時間 48.3 分
LDK
病室
病室
病室
病室
テ ラス
リハビリ利用空間の凡例
平均滞在時間 12.9 分
水槽
ス タッフ
ステーシ ョン
テ ラス
暖炉
1階リハビリテーションセンター内 ADL 室平面
機能訓練室・ADL 室
病室
病室
玄関
面談
病室
前室
廊下
病室
病室
談話室
10m
病室
病室
居間
テ ラス
EV
WC
9.3%
病棟共用
55.3%
機能訓練室
▼
ス タッフ
ステーシ ョン
LDK
病室
5 階 A 病棟 ( 回復期 ) 平面
ADL室
1.7%
トイレ
病室
土間
玄関
暖炉
レス トラン
(食堂)
庭園
言語聴覚
病室
廊下
病室
厨房
B病棟へ
テ ラス
外
廊
下
病室
居間
病室
病室
エレベーター
リハビリスペース
廊下
病室
病室
洗面所
病室
東病棟3階回復期病棟平面
ミー テ ィング
ルーム
テ ラス
リハビリ治療 平均 203 分
平均滞在時間 93.1 分
訓練室
72.8%
リハビリ訓練室
SR リハビリテーション病院
リハビリ利用空間の凡例
病棟内共用
12.4%
AZ 病院
病室
リハビリ利用空間の凡例
5 階回復期病棟平面
病棟外共用
5.2%
病室
2.5%
0
病室
作業療法室
敷地外
7.2%
病室
病室
敷地外
19.1%
ユニット
内共用
23.4%
LDK
廊下 32.0%
55%
47.2%
リハビリスペース
17.4%
病室
廊下
75%
B2 ユ ニ ット
0
ユニット玄関
6.6%
ユニット外共用
5m
2 階平面
食堂
3.5%
ロビー
4%
5
リハビリ利用空間の凡例
個別リハビリスペース
平均滞在時間 13.0 分
ユニット内外の共用空間
平均滞在時間 114.0 分
平均滞在時間 59.7 分
図 1 対象施設の平面構成とリハビリ治療における平均滞在時間の空間別割合
3
10m
NA
距離
SK
距離
AZ
距離
SR
距離
凡例
NA1b
NA4b
NA10a
NA6b
NA6a
NA10b
NA1a
NA9b
NA9a
NA4a
NA3a
NA2a
NA2b
NA7a
NA8b
NA5a
NA3b
NA5b
NA7b
NA8a
SK6b
SK6a
SK4a
SK1b
SK3b
SK5b
SK2b
SK3a
SK2a
SK5a
SK1a
SK4b
AZ10
AZ6
AZ7
AZ5
AZ3
AZ1
AZ2
AZ9
AZ8
AZ4
SR3
SR4
SR5
SR1
SR2
0
360
150
109
127
125
122
155
75
110
275
144
159
117
148
152
26
182
107
3
91
88
15
10
148
512
573
60
87
204
80
138
135
185
135
59
73
229
132
27
199
45
212 130
139
147
117
155
189
135
28
85
235
152
193
220
185
588
125
72
リハビリ治療
自主訓練
77
109
474
38
14
廊下
0.5 %
洗面
8.6 %
基本的ADL 平均 166 分
廊下 0.7 %
WC
11.1 %
WC
16.5 %
病棟内共用
基本的ADL 平均 140 分
SRリハビリテーション病院 基本的ADL 平均 104 分
2.0 %
病室
病室
59.7 %
食堂
73.4 %
浴室
3.8 %
洗面
2.2 %
シャワールーム
6.5 %
廊下
8.6 % 病棟内
共用
WC 5.0 %
浴室
11.9 %
ユニット
内共用
ユニット外共用
食堂
67.3 %
廊下
6.9 %
廊下
5.0 %
ユニット玄関
1.0 %
EV
1.0 %
436
447
400
図 3 基本的 ADL における平均滞在時間の空間別割合
359
主訓練の有無による歩行量への影響について検討を行う。総移動距
320
429
458
475
481
401
369
492
482
46
病棟内共用
AZ病院
6.2 %
WC
16.2 %
296
434
102
141
64.0 %
357
397
325
354
449
77
99
110
86
161
123
96
122
164
116
93
125
食堂
370
SK病院
洗面
8.5 %
浴室
12.9 %
432
385
468
504
357
517
523
478
87
基本的ADL 平均 146 分
病室
396
568
NA病院
361
343
413
92
16
183
153
217
278
98
180
170
449
476
447
446
30
165
332
174
140
15
79
58
215
73
220
115
131
121
164
52
183
164
126
77
127
70
134
108
720分
65
102
443
455
409
426
離が長い患者は、リハビリによる歩行や自主訓練による歩行距離が
長い傾向が読み取れる。また、食事移動とその他 ADL に着目すると、
SR 病院では、基本的 ADL の中で食事移動に伴った歩行距離が大き
な割合を占めていることがいえる。従って、SR リハ病院では、食
堂が個室ユニットフロアから離れた位置に設けられていることによ
306
り、基本的 ADL における歩行距離が最も長く、日常生活の中で歩行
量を維持できる環境であると考えられる。
自主訓練により生じた歩行距離に関しては、総移動距離が長いほ
基本的ADL(食事移動を含む)
ど自主訓練による歩行量が多い傾向がみられた。自主訓練の内容に
その他余暇的行動
ついては、歩行訓練が主要であったが、図 2 の滞在時間と対応させ
図 2 患者別にみた滞在時間の行動分類
てみると、AZ 病院では歩行を伴わなかった自主訓練も生じたこと
が読み取れる。これは、ベッドサイドでの起立訓練等の自主訓練が
リ治療だけでなく、それ以外の生活行動によっても距離が発生して
行われていたことを示している。
おり、リハビリ以外の歩行の重要性を把握した。総歩行距離に関し
3.3 自主訓練が生じた空間に関する考察
ては、SR リハ病院において最も長く、次いで SK 病院、NA 病院、そ
先に述べた自主訓練に関してより詳細に実態を捉えるため、4 施
して最も短かったのが AZ 病院という実態を把握した。リハビリに
設で自主訓練が生じた主要な空間について分析を行った。利用空間
伴った歩行量に関しては、リハビリ外来棟への移動を伴う SK 病院
別にみた自主訓練を行った患者数の割合と、歩行距離および滞在時
において最も歩行距離が長く、病棟内リハビリテーションを訓練形
間の平均値と使われ方の事例に関して図 7 に表す。
態の主体とする AZ 病院において最も歩行距離が短い結果が得られ
NA 病院では、対象者のべ 20 人中 8 人が共用廊下で自主訓練を行っ
た。SK 病院では、訓練室への移動が長く、同じく病棟外の訓練室
た。廊下には極力ものが置かれないよう配慮が行われ、患者のため
を主要な訓練場所とする NA 病院と比較して余暇的行動によって生
の歩行空間が整備されている。このように、自主訓練に取り組める
じる歩行距離が短かった。従って、病棟外を主な訓練場所とする場
環境が備わっていたことに加えて、病棟内で訓練を受ける患者を目
合、訓練室と病室の配置計画においては、リハビリ以外の生活行動
にすることで精神的にも刺激を受け、自主訓練の意識が高まったと
での歩行移動への影響を考慮する必要があると考えられる。
捉えることができる。
基本的 ADL に伴った歩行量に関しては、SR リハ病院において最
SK 病院では、車椅子や歩行器への移乗が未自立の患者には、転
も歩行距離が長く、その他の病院においては大きな差がみられな
倒防止等のため病室の外に、車椅子や歩行補助具が準備されてい
かった。余暇的行動に伴った歩行量に関しては、SR リハ病院にお
る。そのため廊下には、ほとんどの病室の入口付近に車椅子・歩行
いて最も歩行距離が長く、SK 病院で最も短かった。
器等の備品があり、廊下の両サイドに及ぶ箇所も見られた。このた
次に、基本的 ADL の内の食事移動により生じた歩行距離、また余
め、一部の患者に限り、長時間の自主訓練が行われていたが、全体
暇的行動の内の自主訓練により生じた歩行距離を抽出した。患者別
として自主訓練を行った患者はあまり見られなかった。
に歩行距離を降順に並び替えたものを図 6 に表し、食堂の設えや自
AZ 病院では、病室および病棟内の共用廊下で自主訓練を行った
4
NA病院
余暇的行動 平均 446 分
廊下 7.9%
ナースステーション
0.1%
食堂
SK病院
余暇的行動 平均 439 分
NA
面談室 0.9 %
1F 0.4 %
廊下 4.6%
食堂 2.4 %
距離
12.8% 病棟内
共用
病室
AZ病院
病棟内
共用
80.2%
余暇的行動 平均 459 分
その他病棟内空間 0.3%
その他病棟外
共用空間 2.0%
談話室 0.2%
廊下3.2%
病棟内
共用
病室
SRリハビリテーション病院 余暇的行動 平均 411 分
外廊下 3.3%
大階段 2.2%
その他ユニット
共用空間 1.8%
廊下 1.8%
ロビー 3.7%
その他ユニット外
共用空間
1.2%
SK
ユニット
LDK
ユニット
外共用
12.7%
内共用
病室
91.7%
94.4%
距離
病室
73.3%
図 4 余暇的行動における平均滞在時間の空間別割合
AZ
0
500
NA病院
合計689m
227
91
SK病院
合計1095m
24
合計601m
SR病院
合計1188m
89
(m)
371
53.9%
32.9%
13.2%
802
269
203
AZ病院
73.2%
24.6%
2.2%
SR
33.8%
51.5%
14.7%
309
201
距離
418
569
距離
35.2%
47.9%
16.9%
リハビリ治療
基本的ADL
SK6b
SK6a
SK4a
SK1b
SK3b
SK5b
SK2b
SK3a
SK2a
SK5a
SK1a
SK4b
AZ10
AZ6
AZ7
AZ5
AZ3
AZ1
AZ2
AZ9
AZ8
AZ4
SR3
SR4
SR5
SR1
SR2
病棟内共用廊下
1500
2000
食事移動
リハビリ治療
凡例
余暇的行動
1000
56
1806
75 110 12
1341
368
167
85
680
320
270
589
22
168 30
988
264 72 96
752
244
42
851
140 29
949
186
30
872
22
268 123 86
533
74
270
572
46
288
102
360
23
500
134
140 189
367
192
166
317
334
137
321
190
301 15 109
214
258 6
281
169
328
10 323
74
232
53
139
72
221
483
278
86
25 127
715
944
94
519
1011
196
5
465
418
69
269
487 32
222
自主訓練
図 5 行動分類別にみた歩行距離の中央値
NA
500
0
(m)
NA1b0
56
736
296 44 66
NA4b
91
302
90
689
NA10a
156 107 40 222
483
NA6b
48
204
735
NA6a
140 170
673
NA10b
156 167 95
533
NA1a
22
44 112 330
400
NA9b
50
473
290 66 22
NA9a
34
174
298
290 66
NA4a
201 133 61
370
NA3a
298
302 66 84
NA2a
40 13 56 35
522
NA2b
60 10 72
512
NA7a
56
145 134
316
NA8b
168 33 53
394
NA5a
196 181 72 166
NA3b
266 66 46 217
NA5b
96 90 18
371
NA7b
257 87 61 88
NA8a 80 174 80 90
336
26
2142
102
1460
その他ADL
その他余暇的行動
図 6 患者別にみた歩行距離の行動分類
AZ
病棟内共用廊下
病室
自主訓練した患者 30 %
(3 人 /10 人中 )
平均歩行距離 0.0 m
平均時間 55.0 分
●リハビリ治療での利用
自主訓練した患者 40 %(8 人 /20 人中 )
◯自主訓練や生活での利用
平均歩行距離 290.5 m 平均時間 22.5 分 余暇時間に歩行訓練行う方
●リハビリ治療での利用
歩行訓練での利用や、集団訓練として
立ち上がり練習が毎日行われる。
SK
がいたほか、窓際で休憩す
る方もいた。食事移動時等
にも頻繁に利用される。
病棟内共用廊下
ベッドサイドで、PT・O
廊下の窓際 ( 上 ) と中間部 ( 右 ) の事例
T 訓練が行われる、廊下
ミーティ
ング
自主訓練した患者 30 %(3 人 /10 人中 ) 平均歩行距離 391.2
m 平均時間
11.7 分
と並んでよく利用される
ルーム
●リハビリ治療での利用
◯自主訓練や生活での利用
歩行訓練や起立訓練をはじめ、様々なリハ リハビリの少ない時間帯に歩行訓練される
訓練場所である。
ロビー
ベッドサイドでの起立訓練を
はじめ、身体運動が見られた。
ビリが行われる、主要な訓練場所である。 ほか、窓から外の景色を眺める方もいる。
SR
◯自主訓練や生活での利用
0
5m
EV
外廊下・テラス
ユニット外共用廊下
自主訓練した患者 20 %
(1 人 /5 人中 )
中庭
平均歩行距離
50.0 m
ス
テラスで OT・ST 訓練や
周りを歩行訓練に活用。
病室
自主訓練した患者 17 %(2 人 /12 人中 )
平均歩行距離 328.0 m 平均時間 57.0 分 ◯自主訓練や生活での利用
●リハビリ治療での利用
訓練場所となることはないが、訓練室
への移動時には利用される。
平均時間 33.0 分
●リハビリ治療での利用
歩行訓練を行ったり余暇を
過ごす方は稀で、食事やト
イレといった基本的 ADL
の移動が大半を占める。
◯自主訓練や生活での利用
歩行訓練や手すりを利用した PT 訓練
歩行訓練や休憩場所として利用、
など主要な訓練の場として利用される。
また食堂への経路となっている。
EV
EV
テ ラス
外
廊
EV
病室
◯自主訓練や生活での利用
病室
外廊下は、食事移動の際の通り道となる。テラスの周り
で歩行訓練する方がみられた。
図 7 自主訓練の利用空間別にみた歩行距離と滞在時間の平均値と使われ方の事例
5
テラ ス
下
自主訓練した患者 20 %(1 人 /5 人中 ) 平均歩行距離 171.0 m 平均時間 5.0 分
●リハビリ治療での利用
リハビリスペース
患者が、各々において 10 名中 3 名ずつであった。いずれの空間も
る。従って、そのような施設において、リハビリテーション患者の
リハビリの際の主要な治療場所である。ヒアリング調査では、NA
生活実態を具体的に明らかにしていくことが、今後の課題として挙
病院のように刺激を受けると感じている患者がみられた一方で、日
げられる。 中は共用廊下がリハビリを行う患者やスタッフで過密になり、留ま
註
るような居場所があまりないという理由から、対象患者の 30% が共
註 1) 回復期リハビリテーション病棟:診療報酬上、基本診療料における入院
用廊下の広さについてやや不満であると評価した。一方で、AZ 病
料等の中の特定入院料に規定された病棟である。脳血管疾患又は大腿骨
院の病室は、一人当たりの面積が広く(表 4)、リハビリが日常的
頸部骨折等の患者に対して、ADL 能力の向上による寝たきりの防止と家
に行われていた。従って、空間的な余裕やリハビリでの利用経験に
庭復帰を目的としたリハビリを集中的に行うための病棟であり、回復期
より、自主訓練の動機づけが高まったと推察される。
リハビリを要する患者が常時 80%以上入院している病棟を指す。
SR 病院では、自主訓練が行われた主な空間として、病棟共用廊
註 2) ADL(Activities
of Daily Living):日常生活動作。普段の生活において
必要な動作(食事、更衣、整容、排泄、入浴等)を指す。
下および個室ユニットと病棟建物とを繋いでいる外廊下が挙げられ
註 3) 生活全体の活発化とは、健常者の標準から考えての活発という意ではな
る。共にリハビリや食事移動の際に頻回に利用される空間である。
く、患者の実際の生活が不活発である現状を、ADL の自立や生活行動の
病棟共用廊下は、リハビリや食事移動の際に最も利用されている空
際の頻繁な移動等を通じて、徐々に健常者の水準に近づけていくことで
間であり、廊下の所々に休憩場所が設えてあるほか、多種多様な分
あると上田 7) は述べている。
野の書籍が並ぶライブラリスペースが設えられている。また、外廊
註 4) NA
下は外気に触れられる空間であり、1 階の外廊下の左右に空間が広
註 5) バーセル指数:生活動作
病院での 2012 年度調査では、7:30 〜 19:30 を調査時間とした。
10 項目を、100 点満点で生活自立度を評価す
る指標。
がっており、リハビリでも利用される場所となってた。
註 6) FIM
自主訓練を行うかどうかは、本人の意欲が大きく影響し、個人差
指数:運動 ADL の 13 項目と認知 ADL の 5 項目から構成される介護負
担度の評価。
がみられた。しかし、総歩行距離が長い患者は自主訓練を行ってお
註 7) AZ
り、歩行量を増加させる上で、自主訓練による歩行は重要性を持つ
病院では、回復期リハビリテーション病棟が開設されて間もないた
めである(2014 年 6 月1日に開設)。
と考えられる。自主訓練に取り組んだ空間の利用事例から総合的に
註 8) 個室のうち、トイレ付き個室は
推察すると、患者がリハビリテーションや日常生活の中で利用する
註 9) 2013
40 室設けられている。
年 11 月 14 日 13:30 〜 14:30 の間、食堂で学生とのふれあい交流会
が任意参加で開催された。
場所で、自主訓練が行われることを想定し、患者の意欲を促すよう
な空間を備えることが、自主訓練の増加を支援する上で効果的であ
参考文献
ると考えられる。
1) 回復期リハビリテーション病棟協会:回復期リハビリテーション病棟の
現状と課題に関する調査報告書,2013.
4.結論
2) 申錦姫、芦沢由紀、筧淳夫、井上由起子、上野淳:回復期リハビリテー
本研究では、異なる平面構成を持つ 4 施設の回復期リハビリテー
ション病棟における患者の生活とその変容について - 患者の生活からみ
ション病棟を対象として、リハビリとその他の生活行動を含めた患
た回復期リハビリテーション病院の病棟計画に関する研究その 2-,日
者の生活全体を視野に置き、延べ人数 47 名の患者の滞在空間と歩
本建築学会学術講演梗概集,E-1 分冊,pp.211-212,2005.9.
3) 池田沙瑛子、趙翔:回復期リハビリテーション病棟の建築計画について
行移動距離から、患者の歩行移動を促す施設構成について考察を
- 病棟の共用空間における患者の行動に関する研究 -, 日本建築学会九
行った。要点を、以下に記述する。
州支部研究報告集,No.48,pp.101-104,2009.3.
1)患者の歩行移動はリハビリ治療だけでなく、それ以外の生活行
4) 賀馨、三浦研、宮崎崇文:患者の滞在場所と歩数及び運動強度からみ
動によっても移動が発生するが、訓練室が離れた場所に設けられ
た回復期リハビリテーション病院の空間構成 - 同一医療法人による 2
た場合、生活行動における歩行量が減少した。従って、生活の場
病院の比較を事例として -, 日本建築学会近畿支部研究報告集,No.51,
での歩行量を増加させるために,訓練場所の適切な配置計画と余 pp.101-104,2011.5.
5) 岩倉由貴子、岡本和彦、長澤泰:病棟リハビリテーションのための施設
暇的行動による歩行を促す共用空間の整備が重要である。
環境に関する研究 - 回復期リハビリテーション病棟を対象として -, 日
2)リハビリ治療以外の生活行動の場面では、食事のための移動に
本建築学会計画系論文集,No.648,pp.307-314,2010.6.
よって安定した歩行量を維持できると考えられる。従って、生活
6) 厳爽、児玉千枝:患者の空間利用特徴および他者との関わり方を通し
の場での歩行量を一定量維持するために,日々繰り返される活動
てみた精神科病棟の空間的あり方 - 段階的空間構成を持つ精神科病院の
に要する動線を考慮した配置計画を行うことが重要である。
治療・療養環境に関する研究その2-, 日本建築学会計画系論文集,No.
691,pp.1919-1927,2013.9.
3)自主訓練による歩行距離に関しては個人差がみられたが、歩行
7) 浜村明徳監修、日本リハビリテーション病院・施設協会編集:高齢者リ
量を増加させる上で重要性が高い。自主訓練の増加を支援するた
ハビリテーション医療のグランドデザイン , 青梅社,2008.
めに、患者がリハビリテーションや日常生活の中で利用する場所
8) 上田敏:リハビリテーション医学の世界 - 科学技術としてのその本質、
で、自主訓練が行われることを想定し、患者の意欲を促すような 空間を備えることが望ましいと考えられる。
その展開、そしてエトス -, 三輪書店,1992.
9) 浜村明徳監修、日本リハビリテーション病院・施設協会編集:高齢者リ
本研究では、既存病棟を転用した回復期リハビリテーション病棟
ハビリテーション医療のグランドデザイン , 青梅社,2008.
の事例を中心に扱ったが、SR リハビリテーション病院の事例にみ
られたように、患者の心身機能の向上のために、建築的な工夫が凝
らされた回復期リハビリテーション病棟が今後増加すると考えられ
6
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