Comments
Description
Transcript
大会レポート - 宇都宮大学 総合メディア基盤センター
宇都宮大学 Formula-SAE プロジェクト 2011 年度活動報告書 目次 1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 2.Formula-SAE ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 3.2011 年度活動報告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 3.1 チーム体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 3.2 2011 年度車両 UF-09 ・・・・・・・・・・・・・・・11 3.3 大会レポート ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 3.4 大会結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 3.5 2011 年度スポンサー ・・・・・・・・・・・・・・・・28 2 1.はじめに 2011 年 9 月の第 9 回全日本学生フォーミュラ大会を無事に終了し,UF-09 の活動を終 えました. 思い返すと,2010 年の 9 月下旬より,主な活動メンバーが 6 人という尐ない人数でプロ ジェクトが始まりました.尐ない人数で 1 年間活動を行うことができたのは,車両開発の目標 を明確にし,すべてのパーツを一新するのではなく,目標を達成するために重要なパーツに絞 って開発を行うことができたからです. 車両のシェイクダウンの予定は,5 月の上旬の予定でしたが,製作の遅れにより 5 月の下 旬に行いました.なんとか 5 月中に車両製作をおおよそ終えることができたので,6 月に提 出期限である静的審査の準備に時間を割くことができ,静的審査の順位を上げることができ ました. その後の走行では,トラブルが続出し修理により走行時間を十分に確保することができま せんでした.この尐ない走行時間の中でしたが,車両は速く,ある程度の手ごたえを感じなが ら大会に臨みました. 大会の結果は,総合 5 位,加速性能賞 3 位,オートクロス賞 2 位と見事に入賞を果たし, 皆様に尐しでも恩返しができたのではないかと思っております. この1年間私たちの活動に賛同し,ご支援いただいた皆様に心より御礼申し上げます.こ の活動により得られた経験は,一人一人の今後の人生にとってかけがえないものであり,今 後の人生に生かせればと思います. この活動は,皆様のご協力により成り立っております.今後とも私たちの活動に賛同し,ご 支援いただければ幸いです.一年間のご支援,誠にありがとうございました. 宇都宮大学フォーミュラデザイナーズ 2011 年度プロジェクトリーダー 牛山 駿一 3 2.Formula-SAE ○Formula SAE の歴史 「Formula SAE」 とは,米国自動車技術会'The Society of Automotive Engineering)が主 催している競技会の事です.学生のみで組織されたチームがフォーミュラ・スタイル'タイヤを カウルで覆わない(のレーシング マシンを製作し,その設計・製作能力と車両の性能を競うと いうものです.この競技会の前身は,1978年に当時盛んであったオフロードバギーの製作 競技を オンロード版にして始まった「mini-indy」というものです.当初,わずか5HPのエンジ ンを搭載したレースの企画を数年後に一新し,全米共通の競 技としてSAEが1981年から 開催されました.その後この競技は世界中に広がり,アメリカ国内 3 大会以外にもオーストラ リア,ブラジル,イタリア,イギリス,ドイツ,そして日本で開催されています. ○競技理念 Formula SAE の競技理念はレースの勝敗だけではなく,レースに至る全プロセス'学生の 設計技術,製作能力,発表能力,プロジェクト管理能力など(が評価対象であり,もの作りの 楽しさと難しさを体験させ,自ら考え問題を解決していく能力を養う点にあります.そのため, 車両設計に関する諸規定は,できるだけ設計者の独創性をマシンに盛り込めるように主に安 全面に限定されており,様々なアイデアを具体的なひと つの「もの」としてまとめ上げる力量 が発揮できるようになっています.また学生はスポンサー企業の方々と交流する事で,折衡 能力を養う機会を得る事がで きます. ○競技概要 Formula SAE の競技車両はレギュレーションにおいて,米国内で盛んに行なわれているア マチュア週末レース用のプロトタイプ車両を試作することを想定されています.この条件の中 で独創性を発揮し,競技車両として高い運動性能を得る事が要求されます.また安全性,コ スト,整備性,商品性,なども加味されて評価が下され,以下のカテゴリーの総合審査によっ て最終成績が定められます.なお,車両は毎年新規に1台制作することが原則で,同じ 車 両で継続参加する場合は設計などで大幅な車両改造がないと認められないという規則にな っています. また安全性に関しては,特に厳格な規則が設けられています.衝突・横転時のドライバー保 護空間の確保,燃料漏洩による火災対策など,細部にわたる車両規 則が定められており, 車検において丌具合が認められれば動的競技への参加は許可されません.また、周回コース はパイロンにより規定されたコースで,直線距 離を制限し,コーナー半径を小さくするなどし て最高速度を制約するなど,参加者に対する安全性を考慮した設定となっています. ○全日本学生フォーミュラ大会 「全日本学生フォーミュラ大会」 は,日本には自動車技術分野で活躍を目指す学生にとっ て,習得した専門技術を発揮しうる設計コンテストがないという状況を打開すべく,日本自動 車技術会が開催している日本版 Formula-SAE です.2003 年 8 月に富士スピードウェイに て第 1 回大会が開かれ,2004 年 9 月にツインリンクもてぎにて 開催された第 2 回大会で は海外からの参加も含め 34 チームがエントリーしました.国内のチーム数は年々増加し,第 8 回大会では 85 チームがエントリーしま した. 4 大会会場は第 1 回,第 3 回大会は静岡県の富士スピードウェイ,第 2 回大会は栃木県のツ インリンクもてぎ,第 4 回大会からは継続して静岡県の小笠山総合運動公園において開催 されています. ○主な設計要件 -Design Requirements①タイヤがカウルで覆われておらず、コックピットがオープンなフォーミュラスタイルであること. ②4 サイクルピストンエンジンで排気量 610cc 以下.オリジナル設計の過給機の装着は可. リストリクター'吸気制限装置(の最大直径は 20mm. 使用燃料は 100RON'リサーチ法オクタン価(の無鉛ガソリンとする. 海外大会では E-85 の使用も可能. ③ホイールベース 1525mm 以上.トレッドはフロント又はリアの大きい方に対して 75%以上. ホイールは 8 インチ以上. ④排気音量は,排気口から水平面 45 度,50cm の位置で 110dB 以下'所定の回転数(. ○主な安全要件 -Safety Requirements①横転・正面衝突・側面衝突時にドライバーを保護するために,メインフープ,フロントフープ, フロントバルクヘッド及びこれらのブレースやサポート,側面衝突保護構造体などについて構 造・材料などの詳細を規定. ②コックピット開口部,ドライバー足元に規定のテンプレートが通過する面積を確保すること. ③車両前端からメインフープ又は防火壁の間のドライバー区間に開口部がないこと'コックピ ット開放部に関して定めることは除く(. ④衝突エネルギーを吸収する装置として,フロントバルクヘッドの前にインパクトアッテネータ を取り付けることを規定. ⑤ドライバー安全規則として拘束システム'5 又は 6 点式シートベルト(,保護用具'ヘルメッ ト、スーツ、グローブ、シューズなど(,視界,ヘッドレスト,ドライバー脱出時間'5 秒以内(,横 転限界角度,防火壁,消火器,ドライバーの足・脚の保護等について詳細を規定. ⑥ブレーキは 4 輪全てに作動し,独立した 2 系統の液圧回路を有すること.ブレーキの踏み 抜けのような事態が発生した場合にそれを検知しエンジンを停止させるオーバートラベルスイ ッチを装備. ○主な競技要件 -Competition Requirements①静的競技のうちコストとデザインについては,所定のコストレポートとデザインレポートを大 会の約 2 ヶ月前提出を義務付け. ②車検に合格し,車検ステッカーが貼られた車両でなければ,プラクティス走行及び動的イベ ントに参加できない. ③動的競技は一人のドライバーが 2 つまでの競技を運転することが出来る.エンデュランス と共に燃費も評価するが,これは一つの競技としてカウントする.一つの競技で 4 回走行す る際は,二人のドライバーが 2 回ずつ走行する. 5 ○競技詳細 各競技の配点を 右に示します. 競技は大きく静的競技と動的競技に分かれており, 静的審査では車両を走行させず,それぞれの審査で審査員 にプレゼンテーションとディスカッションを行います. 動的競技では車両を走行させ,そのタイムと燃料消費率で 競います. 最終的な成績は静的競技と動的競技で獲得した得点を合 計した得点で決定されます. 競技 デザイン コスト プレゼンテーション アクセラレーション スキッドパッド オートクロス エンデュランス 燃費 総合 配点 150 100 75 75 50 150 300 100 1000 <静的競技 -Static Event-> ・コスト審査 -Cost and Manufacturing Analysis限定生産された車両 1 台の製造コストに対する審査です.製造コストが単純に安価である ということだけでなく,製造コスト減尐のための工夫や無駄のない製造プロセスで製造してい るかといったことについて評価されます.コスト計算にあたって,コストテーブルがあらかじめ 不えられ,各材料費・加工費はそれぞれ単位当たりのコストが規定されています. ・プレゼンテーション審査 -Presentation仮想企業としてのひとつのビジネスケースとして,「開発車両がアマチュアサンデーレーサー の需要を満たし,車両を製造販売することで利益を出せることをメーカーの役員に納得させ る」というシチュエーションで行われます.プレゼンテーションの内容や構成などについて評価 されます. ・デザイン審査 -Design事前に提出された設計資料を基に,どのような技術を採用し,どのような工夫を行っている か,また採用した技術が市場性のある妥当なものであるか評価されます.車体及び構成部 品の設計の適切さ,革新性,製造・組立・整備のしやすさなどについて審査員とディスカッシ ョンを行います. 6 <動的競技 -Dynamic Event-> ・アクセラレーション -Acceleration車両の加速性能を競います.0-75m 加速を行 います.2人のドライバーがそれぞれ 2 回ずつ計 測を行います. ・スキッドパッド -Skid Pad車両の旋回性能を競います. 右図 に示す 8 の字型のコースを走行し,右旋回と左旋回の合 計タイムが記録となります.2人のドライバーがそ れぞれ 2 回ずつ走行を行います. ・オートクロス -Autocross車両の加速性能,旋回性能,ハンドリング,ブレーキ性能など総合的な性能を競います。 2 人のドライバーがそれぞれ 2 回計測を行います.コースの概要を以下に示します. ストレート:両端にヘアピンがある場合 60m 以下,両端にワイドコーナーがある場合 45m 以 下. 通常のコーナー:直径 23m から 45m であること. ヘアピンコーナー:コーナー外側の最小直径 9m. スラローム:パイロンを一直線上に 7.62m から 12.19m の間隔で配置. その他:シケイン,連続コーナー,R 減尐コーナーなどが含まれる,コース幅は最小 3.5m. コース長は約 800m,平均時速は 40km から 48km に設定される. 7 ○宇都宮大学フォーミュラデザイナーズについて 私たち宇都宮大学フォーミュラデザイナーズ(UUFD)は,杉山 均教授のご指導の下, ・学生がフォーミュラカーを作ることにより,自身の潜在能力を引き出すとともに 自主性,創造性を養い,実務と理論を備えた均衡の取れた能力を身につける. ・チーム運営,スポンサー活動を通じて責任感,協調性,モラルの向上を図る. を目標とし,日々活動しています.これまでに,米国 Formula-SAE 大会に 1 回出場. 日本大会には第 1 回大会から参加しています. ○UUFD のこれまでの成績 ◇第1回日本大会'2003 年 9 月( 総合 5位 '全17チーム( スキッドパット 1位 デザイン審査 3位 衝突安全賞'特別賞(受賞 ◇カレッジフォーミュラ'2003 年 9 月( 総合 1位 '全5チーム( ◇2004 年アメリカ大会'2004 年 5 月( 総合 37位 '全134チーム( ルーキー 3位'ルーキー賞受賞( ◇第2回日本大会'2004 年 9 月( 総合 5位 '全34チーム( スキッドパット 2位 エンデュランス 4位 自動車工業会会長賞'特別賞( 4位 ◇第 3 回日本大会 (2005 年 9 月) 総合 14 位 '全 41 チーム( スキッドパット 1 位 オートクロス 2 位 静的競技 総合 5 位 ◇第 4 回日本大会 (2006 年 9 月) 総合 5 位 '全 50 チーム( デザイン審査 6 位 'デザインファイナル進出( 8 ◇第 5 回日本大会 (2007 年 9 月) 総合 14 位 '全 59 チーム( ◇第6回日本大会 (2008 年 9 月) 総合 8 位(全 77 チーム) ベストスタイリング賞 3 位 ◇第7回大会(2009 年 9 月) 総合 9 位(全 80 チーム) 日本自動車工業会 会長賞 ◇第8回大会(2010 年 9 月) 総合 12 位(全 85 チーム) 日本自動車工業会 会長賞 加速性能賞 3 位 9 3.2011年度活動報告 3.1 チーム体制 ファカルティーアドバイザー 杉山 均 (大学院工学研究科 学際先端システム学専攻 教授) 加藤 直人 (大学院工学研究科 学際先端システム学専攻 助教) プロジェクトリーダー 牛山 駿一 (工学部 機械システム工学科 3 年) シャシー班 新田 諒 (工学部 機械システム工学科 2 年) 牧 幸一郎 (工学部 機械システム工学科 2 年) パワートレイン班 佐藤 徹哉 (大学院工学研究科 学際先端システム学専攻 博士前期課程 2 年) 江口 和成 (工学部 機械システム工学科 3 年) 池田 陽輝 (工学部 機械システム工学科 1 年) 木田 詠司 (工学部 機械システム工学科 1 年) カウル班 川畑 一馬 (工学部 機械システム工学科 2 年) 遊佐 和麻 (工学部 機械システム工学科 1 年) アドバイザー 木下 隆太 (大学院工学研究科 学際先端システム学専攻 博士前期課程 2 年) 阿久根 良斗(工学部 機械システム工学科 4 年) 川原田 翔悟(工学部 機械システム工学科 4 年) 伊沢 元貴 (工学部 機械システム工学科 4 年) 10 3.2 2011 年度車両 UF-09 ○開発コンセプト Smoothness & Stability 今年度のコンセプトを考えるにあたり,動的競技においてトップチームとどの点に差がある のかについて分析いたしました.その結果,エンデュランス競技において,トップチ-ムとスラ ローム1区間につき0.5秒の差があり,コーナー出口の挙動の乱れによるパイロンタッチが6 回ありました.これらが単純に改善された場合,1周につき1.9秒タイムを短縮することが可 能です.これらを解決したマシンを開発すれば,私達はエンデュランスで1位を取ることができ ます. そこで,私達はこれらが解決されたマシンの走りのイメージをコンセプトとすることに致しま した.こうして,「Smoothness & Stability」というコンセプトが生まれました. また,このコンセプトを達成するために具体的なマシンの方針として,基本性能の向上はも ちろんのこと, ・スラロームのタイム短縮 ・コーナー出口の挙動の安定 ・操作性の向上 に重きをおいた開発を各パートで行いました. 第 9 回大会出場車両 UF-09 11 ○ UF-09 主要諸元 全長×全幅×全高 ホイールベース トレッド 車重 フレーム サスペンション形式 ダンパー ブレーキ タイヤ ホイール 外装 エンジン 出力 ミッション 変速機構 ECU ディファレンシャル 潤滑システム UF-09 主要諸元 2770mm×1380mm×1100mm 1600mm F/1200mm R/1190mm 220kg クロムモリブデン鋼管スペースフレーム ダブルウィッシュボーン プルロッド式 KIND SHOCK CX1.0 前:2 ローター 2POT キャリパー 後:2 ローター 2POT キャリパー Hoosier 20.5 × 7.0-13 Bias エンケイ 13inch C-FRP Honda PC40E (CBR600RR) 94PS/11000rpm 7.2kgf・m/8000rpm 6 速 シーケンシャル Translogic PowerShift System MoTeC M48 F.C.C. TRAC トルセン式 L.S.D. ドライサンプ方式 12 ○車両詳細 (1)パッケージレイアウト 車両におけるパーツのレイアウトは前年度の車両を踏襲し,ホイールベース及びトレッドの縮 小を行った.車両の小型化に至る理由としては,前年度大会におけるスラロームの通過タイ ムとトレッドの相関関係よりトレッドの縮小がスラロームのタイム向上につながると考えたため である.前年度に比べ,リアのトレッドをフロントに対して相対的に広げたのは,リアの安定性 の向上のためである. 13 (2)シャシー ・サスペンション スラローム時の運動性能向上のため,今年度は車両の姿勢変化に注目し設計を行った. 姿勢変化を抑制するために,ロール剛性を高めるのではなく,ロールセンター高を上げる事で ロールに伴うロールセンターの横移動の抑制することで車両のロール運動の低減を行った. キャンバー変化についてはあえて変更しないことで,ロールセンターの移動を抑えたことによ るキャンバー変化の影響を調べた ダンパーのレイアウトについては,縦置きレイアウトの採用により線形性の高いモーションレ シオを実現している.またダンパーのボルト締結部にダブルナットを採用することでフリクション の低減を行った. フロントアップライトにおけるキャンバー調節機構のレイアウト変更により,キングオフセット が減尐し,操作性の向上を行った.また,切欠きのシムによるキャンバー調節を採用すること や,キャンバー調節によるトー角の変化を抑制することで整備性の向上を行った. 14 ダブルナットの採用 縦置きダンパーレイアウト ベルクランクの構造解析 削りだしアップライト ・ステアリング ステアリングギア比を変更し,ステアリングの操舵量を減らすことでスラロームにおける方 向転換における操作性の向上や,キャスタートレール縮小における操舵力の低減を行った. ・ブレーキ ペダルユニット下にマスターシリンダを配置することで,ユニット本体をコンパクトにまとめ, 低重心化を図った.また,ペダルユニット本体は前後位置を調整可能となっており,ドライバ ーの対格差をカバーすることができる. ブレーキバランスバー,プロポーショニングバルブを採用し,ドライバーの好みに合わせてブ レーキバランスを調整することが可能となっている. ブレーキ配管の一部に鋼管を使用し,配管の取り回しを容易にするだけでなくコストの削減 にも貢献している. 15 (3)パワートレイン 今年度のパワートレインは,燃調セッティングの熟成,燃費の向上を開発の狙いとした.こ れは,UF-08 のパワートレインを踏襲し,ECU のセッティングで性能を引き出すためである. ・吸気 実用回転域を 7500rpm~11500rpm とし,ピークトルク発生目標を 8000rpm に設定. 解析'ANSYS,GT-POWER(,実験データを基にコレクタータンク形状,整流板,ファンネル, スロットル径等を決定. コレクタータンク内整流板 コレクタータンク内の圧力分布 ・排気 集合管による掃気効果を狙うため,計算式を用いおおよその値を計算により求め,解析ソ フトを用いて最終的な仕様を決定. サイレンサ入口にバッフルを入れ,シャシーダイナモ上で出力特性をテストした. 排気管長による出力特性の変化 サイレンサ用バッフル 16 エンジン出力特性 UF-09エンジン出力 最大出力 94PS/11000rpm 最大トルク 7.4kgf・m/8000rpm ・駆動 アクセラレーションのシミュレーションを元に,終減速比を昨年よりもローギアード化することで 加速性能を向上させた. シフトアップ時にパワーバンドを下回らないギアレシオとした. デフアーム・スプロケットの構造解析 17 ・冷却 コア厚 16 ㎜のクロスフロー型ラジエーターを採用.燃調を薄くしたことによる温度上昇を考 慮し,電動ファン強制作動スイッチを追加. 冷却パイピング ・潤滑 潤滑システムにドライサンプ方式を採用.底重心化と安定した潤滑性能の確保を実現.また, 燃調セッティングの変更によりブローバイガスによるオイルの劣化を解消. エンジン内摺動部品に DLC 処理を施すことで,焼き付きの防止とフリクションロス低減を図 った. ・燃料&電装 MoTeC M48 によるエンジン制御.A/F センサを用いた空燃比制御機能を元に,燃調マッ プを作成し,Lambda0.85 程度だった燃調を 0.93~0.95 に再設定を行った.これにより, 4500~8000rpm での燃調を見直すことでトルクが増加. スロットル操作に対する補正値(Accel Sensitivity)を調整し,燃調を薄くしたことによるレ スポンスの悪化を防止. エンジン始動~冷間時(水温 60℃以下)の燃料増量補正 (Cold Warm Up Enrich)を見 直し,暖機運転中の燃料消費量を削減. スロットル全閉時の燃料カット機能(Overrun Fuel Cut)を使用し,燃料消費量を削減. 上記の燃調セッティングの見直しにより,20%の燃費向上を達成. デュアルインジェクションシステムを採用.高回転時にセカンダリインジェクションを使用する ことで,9500rpm 以上でのトルクの落ち込みを低減. 電動シフター,パドルクラッチによる変速方式により,ステアリングから手を離さずにシフトチ ェンジが可能. 18 デュアルインジェクションシステム(左)と作動時のトルク比較(右) DLC コーティングを施したカムシャフト ステアリング上の変速ボタン 19 (4)ボディ ・フレーム 1/1 モックアップや CAD により,ドライビングポジションの検討を行い,下図のような変更を 行った.調節可能なペダルユニット、ヘッドレストを採用し、 身長 165~185cm のドライバー に対応.フライス盤を用いたパイプのすり合わせにより,生産性の向上を行った. ステアリング 位置の最適化 +20mm フロントオーバ ーハングの短縮 -20mm +10° -30mm 多角形フロントフープ シートポジションを下げ低重心化 ドライバーの視野の確保 ・カウル デザインについては,流れを意識する事で統一感あるカウルを目指した. 材料に CFRP を採用することで,軽量・高強度な製品を実現.車両下面のアンダーパネル にはハニカムコンポジットを採用し,走行時の衝撃に耐えうる剛性をもたせた. 製作時の型には熱に強く,CFRP より安価な GFRP を使用することで量産を可能にし, CFRP の成形時にはオートクレーブではなく断熱版を使用した簡易炉を用いることでコストを 抑えている.CFRP の成形技術は毎年向上しており,パテなどの形状修正による重量増を限 りなく抑えている. ハニカムコンポジット 自作簡易路 20 第 9 回大会 参戦レポート ○9 月 5 日(Mon)大会1日目 前日の夜に出発し,今年も大会会場のエコパに到着しました.初日は昨年と同様,台風 に見舞われ,雤の中でのピット設営,車両整備を行いました. 昨年度大会の上位 14 チームには,事前技術検査ということで優先的に指定された時間 に車検を受けることができます.UUFD は 14:30 から車検であり,この頃には台風も遠ざかり 小雤が降る程度でした. 車検は得点競技ではありませんが,これを通過できなければ大会で走行することができず, 一年間の成果を発揮できないので,丌安と緊張の面持ちで車検場に向かいました. 車検では,サスペンション取り付け部分の一部のボルトの山が一山程度足りないこと,燃 料系の部品とエキゾーストマニホールドとの断熱が丌十分であることで指摘を受け,再車検と なりました.ピットに戻り指摘された点を修正し,再車検で無事に通過することができました. また,車検項目とは関係のない点ではありますが,ECU の防水対策,電装の配線のまとめ 方など,車検項目とは関係のない点ではありますが車両を商品として考えた上では丌十分で ある点についても指摘されました. 車両をきれいに作るという点では毎年課題になっていますが,作業が日程通りに行かずに 後回しにされ,そのまま大会を迎えているため,来年は車検項目を満たすだけでなく,完成度 の高い車両製作を行う必要性を再認識しました. ピットクローズ後はホテルに行き,明日の静的審査に向けて最後の詰めを行いました. 21 ○9 月 6 日(Tue)大会 2 日目 大会 2 日目は,ドライバー脱出テストから始まりました.ドライバーの 5 人が無事に 1 回目 で合格し,そのまま動的エリアへ次の車検へ向かいました. 燃料を給油し,チルト車検による燃料・オイル漏れの確認が行われました.これを無事に通 過し,続いて重量計測を行い,騒音テストへ向かいました.騒音は前年度がぎりぎりで通過 でしたので,今回はしっかりと対策と計測を行いました.結果,騒音は 106dB と難なく通過 することができました. ブレーキテストでは,左前輪がロックせずピットに戻ることとなりました.原因は,ブレーキキ ャリパーのブリーダーボルトの締め付けの緩みであり,エア抜き後,再びブレーキテストを行い 合格しました. 準備や整備の段階で丌備が多く,すべての車検項目を一発で通過することはできませんで したが,2 日目の午前中までには車検を終えることができたのは良かったと思います. プレゼンテーション審査は,江口,牧が行いました.今年度は江口がプレゼンテーションを専 任したことで前年度に比べて資料の完成度が上がり,14 位となることができました.発表時 の時間配分など改善点も見つかり,来年度はこれらを改善し上位を狙いたいと思います. コスト審査では,前年度に比べて資料の充実を図りましたが,図面どうしの関連付けや図 面とコスト表との関連付けがしっかりと行えておらず分かり難いレポートであることや,部品の 丌備などによる完成度の低さを指摘されました. 順位は昨年度よりは良くなりましたが,技術を次の世代に引き継ぐ点でも図面の管理をしっ かりと行う重要性を感じました. デザイン審査については,今大会における動的競技の好成績のとおり,車両の設計方針と しては良いと考えられますが,それを実証する解析結果や実験結果などのデータの丌足によ る車両の特徴を押し出すには物足りなさを感じました. 成績が前年度より下がったのは,前述の点に加えて,パワートレインやフレームの変更が尐 なかったことによるものと考えられます. 22 ○9 月 7 日(Wed)大会 3 日目 大会3日目は.午前オートクロスとスキッドパッドとなります. 今年は前日までに車検を通過している大学が30校以上と台数が多く,またファーストドラ イバーの優先権が導入されました.このことより,午前の競技に関してはセカンドドライバーま で競技を済ませるには,早い時間帯に競技を始めないとならないと考えました. まずは,アクセラレーションに伊沢が向かいました.2本とも好タイムを記録し,4秒223が 暫定トップタイムとなりました. 続いて,伊沢がそのままスキッドパッドへ向かいました.2本走行しベストタイムは5秒413 とタイムが伸びませんでした.走行中,タイヤのスキール音が常になっておりタイヤの剛性丌 足が原因と考えられました.これは今年度より Hoosier 製のタイヤとなり,1セットしか用意で きなかったため,このタイヤのセッティングが行えなかったことより起こりました. そこで、タイヤの空気圧を変更し,次のドライバーの阿久根がスキッドパッドへ向かいました. 今回は5秒212とタイムを更新することができました. このスキッドパッドを行っている間に,アクセラレーションは2校にタイムを更新されました. UUFD は路面が暖まるまで待機し,それからタイムアタックすることでタイムの更新を狙いまし た.11 時頃,阿久根がタイムアタックに臨みましたが,電動シフターのトラブルでシフトダウ ンができなくなり,3 速でのみで走行しタイムを更新することができませんでした. 結果として、アクセラレーションが 3 位,スキッドパッドが8位という成績を取ることができま した.そして,電動シフターのトラブルが悔やまれました. 午後は,オートクロスとなります. コースは前年度に比べさらに低速区間が多いレイアウトとなり,ドライバーの技術の差がタ イムにしっかりと表れるコースとなっています。 まずは,牛山が走行し,タイムは 1 分 1 秒980といまひとつのタイムでした. 続いて,佐藤が出走し,56秒061と好タイムを出し,オートクロスでは見事2位を取ることが できました. 明日のエンデュランス競技への期待が高まり,3日目を終えました. 23 24 ○9 月 8 日(Thu)大会 4 日目 前日のオートクロスのタイムのみでの結果より,エンデュランスでの UUFD の走行順は 4 番 目で 2 組目に走行する予定でした.しかし,走行順が前の 2 校がトラブルなどにより,走行 時間に出走することができず,急遽 1 組目に走行することになりました.走行順が変わり驚 きはありましたが,焦ることなく走行することができたと思います.第一ドライバーは牛山で, 走行中に膝でメインスイッチを切ってしまうというトラブルがありましたが,無事に走りきること ができました. 第 2 ドライバーは佐藤でハイペースに周回を重ねました.途中 2 回のスピンがありましたが, ミスなくコース復帰を行い,見事完走することができました. 25 ○9 月 9 日(Fri)大会 5 日目 大会の日程では,前日に引き続きエンデュランス競技が行われていますが,UUFD は競技 を終えていたので,ピットに車両の展示や,他大学のピットを見学することで技術的な交流を 深めました. 午前中でエンデュランス競技が終了し,エンデュランスで 9 位,燃費で 19 位となりました. 燃費に関しては,昨年度に比べて大幅な向上となりました.エンデュランスについては,スピ ンが 2 回あったことなどマシンセッティングがまだ丌十分であることを感じました. 今日ですべての競技が終了し,総合順位は 5 位入賞を獲得することができました.この順 位は 5 年ぶりで歴代タイの記録であり,念願の入賞を果たしチームは喜びに満ち溢れました. 今年度は,全競技において好成績を残すことができたので入賞することができました.また, 今後さらなる上位を目指すための改善点も多く見つかりました.今回の経験をもとに来年度 はより完成度の高い車両開発に取り組みたいと思います. 26 ○大会結果 競技 デザイン コスト プレゼンテーション アクセラレーション スキッドパッド オートクロス エンデュランス 燃費 総合 ・ ・ ・ ・ 配点 150 100 75 75 50 150 300 100 1000 総合 5 位 加速性能賞 3 位 オートクロス賞 2 位 日本自動車工業会会長賞 受賞 27 得点 80 57 48.75 69.48 41.82 135.61 230.95 64.56 736.74 順位 21 18 14 3 8 2 9 19 5 3.5 2011 年度スポンサー たくさんのご支援,ご声援,誠にありがとうございました 28