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血液培養同時複数セット採血の有用性

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血液培養同時複数セット採血の有用性
ビ
オ
メ
リ
ュ
ー
・
ニ
ュ
ー
ス
レ
タ
ー
N e w s l e t te r
Mar 2006
Contents
●血液培養同時複数セット採血 ・・・P1
の有用性について
Column
血液培養同時複数セット採血の有用性について
●推奨される血液培養の回数
・・・P3
∼ Cumitech 1C Blood Cultures
Ⅳより∼
特定医療法人仁愛会 浦添総合病院
臨床検査部 主任 大城 健哉 先生
●血液培養コンタミネーション ・・・P4
詳細検査の簡略化:検査室ベース
で設定した判定基準の実施と評
価
血液培養検査は、感染症を診断する上で
最も重要な検査であることは周知の通り
であるが、日本における血液培養実施件
数は欧米と比較して少ないとされてい
る。一方沖縄県では、一般細菌検査に占め
る血液培養の割合が20%を超える施設が
多く、当院における血液培養も2005年の1
年間では3,278件あり、一般細菌検査全体
の35.4%を占めている(図1)。この現象
は、沖縄県が血液培養に関しては日本本
土よりむしろ米国の影響を受けているた
めと考えられている。
●院内におけるウイルス感染症 ・・・P8
とその予防策
●いまさら訊けない遺伝子検査
その2 抽出編
●キャンピフードID寒天培地新
発売のお知らせ
●第6回アピセミナー報告
・・P10
●学会開催地ガイド∼島根編∼
・・P11
●お知らせ
・・P12
そこで、陽性検出率の向上を目的とし、血
液培養実施件数を増加させる第一段階と
して、欧米では日常的に行われている同
時複数セット採血を推奨すべく、その有
用性について述べ、他に血液培養実施件
数増加への我々の取り組みを紹介する。
3,278
血液培養実施件数
3,000
1
トルを1セットにつき好気用及び嫌気用
の2本用い、自動機器にて7日間の培養を
行っている。なお、当院では原則として
38.0℃以上の発熱または36.0℃以下の低
体温が見られた場合に血液培養2セット
以上の実施が推奨されている。
3,500
血液培養依頼件数
●第17回日本臨床微生物学会 ・・・P5
レポート
病院概要
当院は、沖
縄県本島那
覇市に隣接
する人口約
10万8千人
の浦添市に
立地し、病床
数302床、病
床利用率90.6%、一日平均外来患者数
371名、平均在院日数11.2日(2005年12
月)の地域医療支援病院、臨床研修指定
病院で、新型救命救急センターを併設し
日本における血液培養実施件数が少ない
地域の中核病院としての役割を担ってい
理由としては、コストの問題や陽性検出
る。
率の低さなど複数考えられる。コストの
問題はさておき、臨床上重要な検査であ 1. 同時複数セット採血で陽性検出率は
る血液培養が、陽性検出率が低いために 向上する
実施されず、実施されないために陽性検 2005年1月から12月の1年間に当院にて実
出率が低下するのであれば、単に実施件 施された血液培養3,278検体1,419エピ
数を増加させれば解決するようにも思え ソードから検出された568株を対象とし
る。
た。血液培養は抗菌薬等の吸着剤入りボ
一般細菌検査に占める血液培養の割合
35.4
2,500
40
30
2,000
20
1,500
1,000
10
500
0
0
97年
98年
99年
00年
01年
年次
02年
03年
04年
05年
図1. 浦添総合病院における血液培養実施件数と一般細菌検査に占める血液培養の割合の年次推移
血液培養の割合(%)
Number 3
Microbiology
当院の同時複数セット採血実施率は、
1997年に6%と低い状況であったが、
2000年頃から複数セット採血を推奨し
た結果、2000年には16%、2005年には
69%まで上昇した。それに伴って血液
培養実施件数は図1の通り年々増加
し、1997 年 に 1,204 件 で あ っ た の が
2005年には3,278件までに増加してい
る。また、陽性検出率は、エピソード
で 算 出 し た 場 合、1997 年 15.6% か ら
2005年20.0%と上昇し、日本ではおよ
そ10%前後とされている中で高い値を
示した。これは前述の通り、複数セッ
ト採血実施率の上昇によるものと考え
られた。2005年の陽性検出率を1セッ
ト採血と2セット採血で比較すると図2
の通りとなり、先の報告 1)と同様に複
数セット採血によって陽性検出率が上
昇するのが再確認された。
30
P=0.0043
*
16.0
10
3. 同時複数セット採血は有意菌判断に
も有用である
0
血液培養から検出されるCNSはそのほと
n=591
n=1,329
1セット
2セット
んどが皮膚や環境からの汚染菌と考えら
採血セット数
れているが、カテーテル関連血流感染症
図2. 血液培養採血セット数による陽性検出率の や人工弁置換後の感染性心内膜炎などの
比較(*有意差検定:χ2検定)
起炎菌となりえるため、安易に汚染菌と
してはならない。先の報告 1)では、複数
採血回数の増加はコンタミネーション セット中一部から検出された菌種につい
の機会の増加にも繋がり注意が必要で て診療録検索を行い、熱源の確定状況や
ある。複数セット採血による陽性検出 臨床症状などから起炎菌性について調査
率 の 上 昇 が Coagulase-negative した結果、CNSの 89.0%に起炎菌の可能
staphylococci (CNS) などの汚染菌の 性はなく汚染菌の可能性が高いと考えら
増加によるものであれば、複数セット れた。つまり、複数セット中一部から検
採血は無意味なことになる。しかし、 出されるCNSは汚染菌の可能性が高いこと
セット数による検出菌の割合の比較 が明らかとなった。一方、その中でも有
(図3)ではCNSの占める割合に有意な 意菌の可能性を否定できない症例も存在
する。中心静脈カテーテル留置されてい
増加は認められなかった。
る患者から30時間以内に陽性検出された
複数セット培養での検出菌を複数セッ CNSは起炎菌の可能性も否定できない5)の
ト中一部から検出されたものと、複数
で注意が必要である。このように、同時
100%
文献
1)
大城健哉、他:血液培養複数回採血の有用性,
医学検査 53:1127-1130,2004.
2)
Washington JA:Blood cultures:principles
and techniques,Mayo Clin Proc 50:91-98,
1975.
3)
Weinstein MP et al. : The clinical significance of positive blood cultures : a
comprehensive analysis of 500 episodes
of bacteremia and fungemia in adults. I.
Laboratory and epidemiologic observations, Rev Infect Dis. 5:35-53,1983.
4)
Weinstein MP:Current blood culture
methods and systems:clinical concepts,
technology, and interpretation of results,Clin Infect Dis 23:40-46,1996.
5)
大 城 健 哉、他:血 液 培 養 よ り 検 出 さ れ
るCNS の陽性検出時間を用いた有意菌 判 断
基準の設定,日本臨床微生物学雑誌 14:177182,2004.
100%
80%
その他
Bacillus
嫌気性菌
肺炎球菌
腸球菌
連鎖球菌
MSSA
MRSA
CNS
非発酵菌
腸内細菌
60%
40%
20%
0%
複数セット採血での検出状況と陽性検出
時間を組み合わせることで、より信頼性の
高い有意菌判断が可能になると思われる。
4. 血液培養実施件数増加への臨床検査部
側の取り組み
血液培養陽性検出率は同時複数セット採
血で向上することが明らかとなったが、そ
2. 最良の同時複数セット採血回数は?
れだけでは臨床検査部側としては受動的
Washingtonが行った血液培養のセット数 な取り組みに留まるのみで、一時的に同時
による陽性検出率の検討2)では、24時間以 複数セット採血が行われ陽性検出率が向
内に1セットで80%の菌血症を検出でき、2 上したとしても、その結果報告がこれまで
セットで88%、3セットで99%を検出できた 通りであれば、臨床診断や治療への貢献度
ことから、合計3セットの採血を推奨して は決して高くはなく、やがて同時複数セッ
いる。一方Weinsteinら3)は、菌血症または ト採血実施率も低下する恐れもある。我々
敗血症と確定された症例を対象とし、24時 は2001年から自発的に24時間体制で陽性
間以内に3セット採血した血液培養のう 検出検体のサブカルチャーを行い、グラム
ち、1セットで91.5%、2セットで99.3%を検 染色結果をリアルタイムに報告している。
出できたと報告している。またWeinstein この取り組みは微生物検査未経験の技師
は、後の全自動血液培養装置を用いた検 が大多数を占める中で、良質な医療を提供
討4)でも同様の結果が得られたことから、 するという共通の目的を持った全ての臨
血液培養2セット採血で十分に菌血症ま 床検査部スタッフの全面的な協力の下で
たは敗血症を診断できると結論されてい 行われている。実際に、陽性検出時のグラ
る。我々の検討では、対象となった複数回 ム染色結果報告の64%が夜間休日などの
採血の99.3%が2セットであったため、最 時間外に行われており、それによって早期
良の採血回数を提示することはできない 診断、早期治療に貢献できたと思われる症
が、Weinsteinの報告3)や日本の血液培養 例も多数経験している。このように、血液
検査の現状を考慮すれば、まずは最低限 培養複数セット採血を有意義なものにす
の同時2セット採血を徹底させることが るためにも、臨床検査部側の能動的な取り
組みも必要と考える。
重要であると考える。
n=95
1セット
n=293
2セット
図3. 血液培養セット数による検出菌頻度の比較
80%
検出菌の割合(%)
2
20
検出菌の割合(%)
陽性検出率(%)
21.7
セット全てから検出されたもので割合を
比較すると(図4)、一部での検出菌に占め
るCNSの割合が大きいものの、腸内細菌な
どの有意菌も多く検出されており、1セッ
ト採血では検出し得なかった有意菌を複
数セット採血で検出できたことが明らか
となった。
その他
Bacillus
嫌気性菌
肺炎球菌
腸球菌
連鎖球菌
MSSA
MRSA
CNS
非発酵菌
腸内細菌
60%
40%
20%
0%
n=147
n=146
一部
全て
図4. 血液培養複数セット採血における陽性検出セット数による検出
Microbiology
From overseas
推奨される血液培養の回数
∼Cumitech 1C Blood Cultures Ⅳより∼
いくつかの検討文献で、成人における
BSIs(カテーテル関連血流感染;Blood
Stream Infections)の検出に必要な血液
培養の回数について述べられている。
1975年、基礎液体培地をベースにしたマ
ニュアル血液培養システムを用い20mLの
血液を接種して検討したWashingtonは
Mayo病院の80人の菌血症患者から連続し
た結果を得た1)。1回目の血液培養では症
例中の80%が検出され、2回目の血液培養
では88%が、そして3回目の血液培養で
99%(菌血症例80件中79件)を検出するこ
とができた。
WeinsteinらはColorado大学の282人の菌
血症と真菌血症患者から得た結果につい
て報告している 2);この検討は基礎液体
培地をベースにしたマニュアル血液培養
システムに15mLの血液を接種して行なわ
れた。その結果、91%の症例が1回目の血
液培養で検出され、99%(282件の菌血症
例中281件)が2回目の血液培養で検出さ
れた。
も関わらず、なぜ、より多い回数
の血液培養が必要だったのかと
いう原因について考察している。
一つ目の可能性としては、彼らの
検討でより低レベルの菌血症も
しくは真菌血症を検出していた
が、その菌数が少なかったために
さらに多くの血液培養回数を必
要としたということである。細菌
増殖に対し障害をもたらしたと
考えられるもう一つの原因は、よ
り多くの患者が広域スペクトル
の抗菌薬治療を受けていたとい
うことである。
を普及させるためには、それが複製のオー
ダーではなく別個の手続きによる検査で
あるということを検査オーダーシステム
上で認識させることが必要である。
Cockerillらは、最近1990年代半ばに得
られた結果を報告している。彼らは連続
的にモニタリングを行う血液培養システ
ムを用いて20mLの血液を接種し検討を行
なった 3)。心内膜炎を除く163例のBSIs
のうち、65%が1回目の血液培養で検出
され、80%が2回目の血液培養で、96%
が3回目の血液培養で検出された。そし
て残りは 4回目の血液培養で検出され
た。心内膜炎患者においては、1回目の
血液培養で約90%の症例が陽性となっ
た 3)。Cockerillらは、新しい血液培養
システムと栄養豊富な培地を使用したに
以上の有用なデータから、2∼4回の血液
培養が菌血症と真菌血症を適切に検出す
るのに必要であると結論づけることがで
きる。ルーチン検査における従来の推奨
は最低20mLの血液培養を2回または3回行
うということだったが、Cockerillらに
よる最近の報告によると3)、他のシステ
ムと培地の使用に補強するならば、4回
の血液培養(合計80mL)が最適条件とな
り得るかもしれない。しかし、この血液
量の採取により院内貧血症が発生する恐
れがあるため、一部の重症敗血症の患者
からの採血は安全とは言えない。もし、
血液培養がたった1回しか行われなかっ
た場合、相当数の菌血症が見逃される危
険がある。よって検査室の方策として
は、適切な医学委員会の承認を得て、た
とえ医師が1回だけの血液培養を指定し
たとしても、自動的に2回目の血液培養
の実施を促すべきである。もちろん、医
師がこの標準的プロトコルから外れた方
法を選択できるようなシステムも必要で
ある。2回目の血液培養の医学的必要性
Washington, J. A,, et al
Weinstein, M. P., et al
Cockerill, F.R., et al
100%
80%
80%
88%
99%
100%
91%
99%
100%
文献
1)
Washington, J. A. 1975. Blood cultures:
principles and techniques. Mayo Clin.
Proc. 50:91–98.
2) Weinstein, M. P., L. B. Reller, J. R. Murphy, and K. A. Lichtenstein. 1983. The
clinical signficance of positive blood
cultures; a comprehensive analysis of 500
episodes of bacteremia and fungemia in
adults. I. Laboratory and epidemiologic
observations. Rev.Infect. Dis. 5:35–53.
3) Cockerill, F. R., J. W. Wilson, E. A. Vetter, K. M. Goodman, C. A. Torgerson, W.
S. Harmsen, C. D. Schleck, D. M. Ilstrupt, J. A. Washington II, and W. R.
Wilson. 2004. Optimal testing parameters
for blood cultures. Clin. Infect. Dis.
38:1724–1730.
100%
80%
80%
60%
60%
60%
40%
40%
40%
20%
20%
20%
0%
0%
1回目
2回目
3回目
96%
100%
3回目
4回目
80%
65%
0%
1回目
2回目
3回目
図1. 複数回採血による検出率の向上
1回目
2回目
3
Microbiology
血液培養コンタミネーション詳細検査の簡略化:
検査室ベースで設定した判定基準の実施と評価
Minimizing the Workup of Blood Culture Contaminants:Implementation and Evaluation of a Laboratory-Based Algorithm
S. S. Richter,et al.
J.Clin. Microbiol., 40(7): p.2437–2444, 2002
今回我々は、血液培養からしばしば汚
染菌として分離される微生物(コアグ
ラーゼ陰性ブドウ球菌、ジフテロイド、
Micrococcus spp.、Bacillus spp.、そ
してviridans group streptococci)の
臨床的重要性を評価するための判定基
準を作成し、臨床微生物検査室におい
て検討した。
4
1999年8月25日から2000年4月30日まで
の期間に、アイオワ大学の臨床微生物
検査室に12,374件の血液培養検体が提
出された。1,040件の陽性検体の中か
ら、コンタミネーションの可能性が考
えられるものを495件回収した。追加し
てさらに1回もしくはそれ以上の回数
の血液培養検査が±48時間以内に行な
われており、かつ全てのボトルが陰性
であった場合には、その菌株は汚染菌
であると判定した。これら汚染菌の可
能性があるものについては要求の無い
限り、抗菌薬感受性試験(AST)は実施
しなかった。追加の血液培養検体が提
出されない、もしくは血液培養陽性が
ない場合は(±48時間以内)、担当医は
患者の臨床的情報を収集し、分離株の
重要性について判断した。
これらの判定基準に基づく判定結果の
精度を評価するために、感染予防ナー
スは約60%のケースにおいてレトロス
ペクティブ調査を行なった。レトロス
ペクティブ調査の結果と、追加血液培
養検査の陰性結果からコンタミネー
ションを予測し分離株を自動的に分類
する方法での結
果の一致率は、
225 株 中 85.8%
であった。
追加血液培養検
査の結果が陰性
だった32株中15
株においては、
レトロスペク
ティブ調査から
臨床的重要性が
確認されため、
医師の要求によ
り ASTを 実施し
た。担当医の指
示とレトロスペ
クティブ調査の
間における一致
は71株中74.6%
であった。検査
室ベースで設定
したコンタミ
ネーションの判
定基準は、血液
培養から分離さ
れる汚染菌の可
能性がある微生
物の臨床的重要
性を評価するた
めの精度の高い
手段となり得る
と考えられる。
コンタミネーションの可能性がある
コンタミネーションの可能性がある
菌が血液培養から分離された場合
菌が血液培養から分離された場合
追
追 加
加 採
採 血
血 が
が
++ // -- 44 88 時
時間
間に
に
有
る
?
無
い
?
有 る ? 無 い ?
N
O
担
担 当
当 医
医 に
に よ
よ る
る 検
検 討
討
Y E S
同
同一
一菌
菌種
種に
によ
よる
る
陽
陽 性
性 結
結 果
果 は
は
有
る
?
無
い
?
有 る ? 無 い ?
N
O
N
O
コンタミネーションが疑われる;
コンタミネーションが疑われる;
依頼のない限りASTは行なわない
依頼のない限りASTは行なわない
Y E S
Viridans
Viridans Group
Group
Streptococci?
Streptococci?
担
担 当
当 医
医 に
に よ
よ る
る 検
検 討
討
Y E S
病
病原
原性
性有
有り
り;
; AA SS TT を
を実
実施
施
図1. 今回の検討で使用した検査室ベースの判定フローチャート
Information
ビオメリュー参加予定学会 (2006年4月∼7月)
●5/19(金)∼20(土)
●6/17(土)
第55回日本医学検査学会
http://shimane-amt.cup.com/gakkai/
会場:島根・くにびきメッセ、島根県民会館他
事務局:松江赤十字病院 検査部
TEL 0852-32-6913 FAX 0852-32-6957
E-mail:igaku55@matsue.jrc.or.jp
第19回 臨床微生物迅速診断研究会総会
http://www.jarmam.gr.jp
会場:愛媛・松山市総合コミュニティセンター
事務局:愛媛大学医学部附属病院 診療支援部
臨床検査技術部門
TEL:089-960-5621 FAX:089-960-5627
予定イベント:展示会、セミナー(詳細は12pへ)
予定イベント:展示会
●5/30(火)∼31(水)
日本防菌防黴学会第33回年次大会
http://wwwsoc.nii.ac.jp/saaaj/conference.html
会場:東京・きゅりあん(品川区立総合区民会館)
事務局:日本防菌防黴学会事務局
TEL 06-6538-2166 FAX 06-6538-2169
E-mail:[email protected]
●7/22(土)∼23(日)
日本検査血液学会第7回学術集会
http://www.jslh.com/7thmeeting1.html
会場:東京・東京慈恵会医科大学 西新橋キャンパス
事 務 局:東京 慈 恵 会 医 科 大学 附 属 病 院 中 央 検 査 部
TEL: 03-3433-1111 FAX: 03-5400-1264
E-mail: [email protected]
予定イベント:展示会
予定イベント:演題発表
Microbiology
Report
第17回日本臨床微生物学会レポート
本年1月28日(土)∼29日(日)、パシフィコ横浜にて、第17回日本臨床
微生物学会総会が開催されました。日本ビオメリューでも、ランチョンセ
ミナーおよび展示を行い、多数の方にご来場いただきました。また、
American Society of Microbiology :ASM (米国微生物学会) 学会長、
Stanley Maloy教授をお招きし、本学会の招請講演にてお話いただくこと
ができました。
以下に、Maloy教授の講演、ランチョンセミナー講師 Payen 教授の講演、
そしてビオメリュー展示会の様子についてご報告させていただきます。
●日本臨床微生物学会招請講演●
微生物学のグローバリゼーション
Stanley Maloy,ph.D.
President,American Society for Microbiology
Director,Center for Microbial Sciences,
San Diego State University
微生物学の歴史を振り返ると、1967年に
米国公衆衛生局長官は「感染性疾患に関
する本を閉じ、疾病との戦いの勝利を宣
言し、
がん・心疾患等の慢性病に資源を利
用するべき時がきた」
と発言している。し
かしながら、現在も抗生物質の耐性化は
世界的規模で拡大、そして抗生物質の流
通過程は停滞し、感染症抑圧の世界的な
普及には至っていない。そればかりか感
染性疾患はより複雑化し、新興・再興感染
症、
微生物が原因の慢性疾患、
生物テロや
自然災害にともなう感染症の蔓延と、米
国公衆衛生局長官の発言を裏切る報告が
相次いでいる。微生物学は、公衆衛生の立
場からも今後危惧される数多くの問題点
を秘めている。抗菌剤による耐性化を生
じる菌の急速な増加や新興感染症の拡大
化など、臨床のみならず環境を含めた広
範囲の疫学的に基づいた対応が求められ
ている。
左から右に、ブルーノ・ ボン
バルド(日本ビオメリュー社
長)、Lily Schuermann氏
(ASM国際事業部部長),
Stanley Maloy教授(ASM会
長), Didier Payen教授
(Lariboisiere大学病院 麻
酔・集中治療科)、菊池英治
(日本ビオメリュー臨床検査営
業本部長)、Shingo Tsuji氏
(Maloy教授アシスタント)
染症に関する情報・データ解釈を行い、微
生物がもたらす複合的な疾患についても、
感染とその他の疾患の関連を把握し、そし
て統合された検査データの解釈を行うた
めの医学的知識と認識をもつ必要がある。
細菌検査と言う枠の中での細菌感染症、
即ち、細菌検査=細菌感染症という対応
のみならず、遺伝性疾患を持つ患者の急
性感染症・慢性感染症など、複数の細菌
性病原体の負荷により、がん・関節炎・
心血管系疾患・糖尿病等と感染性疾患の
関連性に着目し、感染症と他の疾患の関連
性について、より深い見識を持つことが必
要となると推察している。環境・病原因子
となる細菌・ウイルスと人類という生物体
との関連を明らかにすることが、今後の微
生物学に求められるであろう。また微生物
検査技師は、これらの慢性疾患と微生物の
関連性を調べるために、高度な分析機器
(従来の細菌検査機器とは異なる)を使用
することとなり、機器の取り扱いや結果検
証についても経験に基づく知識が求められ
る。今後も新たな検査手法の開発に伴い、
抗生物質耐性と感染症疾患の出現
これらの問題を解決するために、遺伝子
学的検査(DNAシークエンサー・プロテオ
ミクス・ナノテクノロジー等)
の新しい手
法での検査が必要となり、
現在、
臨床微生
物検査において、
これらの手法が実践、展
開されつつある。微生物由来疾患の新し
い検査法は、従来の参考書の変更点であ
り、また臨床報告の変更においても考慮
せねばならない点といえる。
微生物検査技師は、また臨床に対して迅
速なアプローチを提供する必要性に迫ら
れている。臨床検査部門にて、
広域的な感
From Morens et al. (2004) Nature 430: 242-249.
5
Microbiology
常に新しい情報を得て、対処する必要が
ある。
その細菌がどのよ
うな疾患を発症さ
せる可能性を秘め
ているかまでを認
識し、臨床に報告
することが必要で
あると確信してい
る。米国微生物学
会ではこの方向
で、既に動きつつ
ある。
感染性疾患に国境は存在せず、これを解
決するためには、公衆衛生・政策(輸送
等)や 科学的見 識(研修・ネ ットワー
ク)の面で世界的なパートナーシップが
必要となる。今、日本における大部分の
細菌検査室は、自動機器を用いた従来の
細菌検査法の効率化を重視しているので
はないだろうか。生化学・免疫等の検査
と明らかに異なる点として、微生物検査
では細菌と言う生物体を確実に同定し、
微生物学の3度目の黄金時代
ゲノミクスおよび微生物生態学からの見識
• 細菌は迅速に進化する
• 細菌は未知の役割をもつ
• 微生物学は、公衆衛生の重要な構成要素であり続
ける
臨床微生物学に対する影響
•
•
•
新しいアプローチと従来のアプローチをミックスさせ
る必要がある
新しい学問領域と機器の統合
全世界的な解決には、国際協調が必要
Maloy教授のご講演から・・・
6
Maloy 教授は サンディエゴ大学 Microbial Scienceの教授であり、ASM(米国微生
物学会)学会長です。ASMは米国における最
大の微生物関連学会であり、毎年1週間の
長期に渡り米国の大きな都市で開催され
ています。昨年はアトランタで5月末に開
催、本年はフロリダで5月21日より開催
されます。ASMは世界的規模での微生物学
に関する学術講演、研究者の演題発表、多
数のポスターセッションと大会期間中に
全てを見聞するには余りにも多岐にわた
る分野の報告で満ち溢れています。また企
業展示も微生物関連企業が大変に力を入
れている学会といえます。
今回、ASM学会長であるMaloy教授が訪日
された主な目的は、感染症における国際
的な潮流の認識を日本の臨床微生物検査
技師の方々に直接伝えることであり、ビ
オメリューの呼びかけにより日本臨床微
生物学会にてご講演いただくことができ
ました。
「感染に国境は存在しない」とMaloy教授
は講演で述べられていますが、細菌・ウイ
ルスに関してその伝播に、国境・人種は関
係なく、世界的な観点から感染症を把握す
ること、また各国のローカル情報が世界的
認知項目となるように試験方法・診断基
準・薬剤選択の共有化すること、そして感
染症の問題を世界規模でとらえ、世界的レ
ベルでの協力体制が必要な時期に来てい
るといえるのではないのでしょうか。
また、ビオメリューにおきましても世界
規模での感染症の解決策にできる限り貢
献できるよう、努めてまいります。
●日本ビオメリューランチョンセミナー●
敗血症における検査の役割
−発症メカニズムと診断−
Didier Payen,MD,Ph.D.
Lariboisiere大学病院
麻酔・集中治療科
敗血症
(sepsis)は感染症の中でも特に重篤
な疾患であり致死率も高い感染症である。
敗血症に関する定義を確認しておくと、近
年、その病態が徐々に解明されると従来の
考えとは異なり、起因菌の侵襲を引き金に
炎症が全身に波及した状態である全身性炎
症反応症候群(SIRS)の一部として捉えるよ
うになった。このSIRSの診断基準は ①体
温:>38.0℃または<36.0℃ ②脈拍数:
>90/分 ④白血球数:>12,000/mm3 また
は③呼吸数:>20/分またはPaCO2<32Torr
<4,000/mm3 または未熟顆粒球>10% の4
項目のうち2項目以上を満たすことである。
つまり敗血症は「感染によるSIRS」と定義
される。次に重症敗血症(severe sepsis)
は臓器不全、脱水または低血圧症を伴う
敗血症で脱水や循環不全には乳酸アド
トーシスや乏尿、低酸素血症、凝固障害の
1つ以上を満たすものである。また、敗
血症性ショック(septic shock)は輸液や
カテコールアミン投与にもかかわらず、
臓器不全、脱水または低血圧症を伴う敗
血症である。血液は無菌的な材料であり、
これは次のような因子によって効率よく
保たれている。すなわち、血管が物理的に
閉鎖系であること、各種クリアランス器
官(肝 臓、脾臓、肺 など)の 作用 によ
るもの、それと免疫の働きによるもの
である。したがって、本来無菌的な血
液から何らかの感染症の形跡を検出す
ることは非常に重要であり、そのため
血液培養は敗血症の診断には重要な検
査項目である。
我 々 の 病 院 で は 38.5℃ 以 上 の 発 熱、
SIRSもしくは敗血症性ショックの診断
基準に該当するときには血液培養を行
うこととなっている。ICUでの3年間の
レトロスペクティブな調査ではICUに
Microbiology
48時間以上入院した935名の患者のうち511
名(6,800ボトル)で血液培養を実施してお
り、好気ボトル+嫌気ボトルを1セットとし
て1名につき平均6セットの培養を行った事
となる。これらの患者のうち培養陽性と
なったのは174名(34%)だが、そのうち有
意な陽性と判断され医療チームが感染症の
治療を決定したものは41名(培養陽性者中
の23.6%、血液培養施行患者の8%)
であった。
また、血液培養陽性となる予測因子を解析
したところでは、敗血症性ショックの場合
には有意に血液培養陽性となることが示さ
れた。血液培養では自動機器の導入やボト
ルの改良により陽性検出率が上がり、検出
時間も早くなってきているが、しばしば臨
床ニーズよりも結果報告が遅れることもあ
る。
そこでより迅速に報告するために、培養
によらずに菌の検出を行う方法が考えられ
てきている。
Venetらはエンドトキシンの検出が感染症
の診断ツールとなるかを解析した。ICUで重
症敗血症または敗血症性ショックと診断さ
れた患者116例でエンドトキシンを測定し
たところ、51.2%の患者でエンドトキシン
を検出した。エンドトキシン陽性では菌血
症の発生率が高く、特にグラム陰性菌の頻
度が高い傾向があった。しかし、著者らは
エンドトキシンと感染症の重篤度は相関
せず、エンドトキシンは重症敗血症の診断
ツールとはならないと結論付けている。
我々の施設では、菌血症における血中の微
量な細菌を迅速に検出するために集菌に
よる「塗抹法」を提案している。これは血
液を遠心分離し菌を集菌させてその沈渣
を観察するものである。塗抹はグラム染色
し、油浸で3個以上の菌が観察されれば
陽性と判定する。この方法を5施設からの
患者39例にて評価した。これらの患者は全
員が重症敗血症の診断基準に合致し、その
うち15人(39%)が敗血症性ショックに合
致したものでそのうち20名(51%)が抗菌
薬投与を受けていた。なお、血液はこれら
の患者が感染を微生物学的に証明されて
いなかった段階で採血されており、患者1
名に対し血液培養と「塗抹法」を3回行っ
た。そして感度100%、特異度83%の良好な
結果を得ることができた。ただし、これは
39例という非常に少ないサンプル数での
結果のため我々は今後もサンプル数を増
やし、改良を行っていく予定であるその
他にもPCRによる検出方法がある。真菌症
は院内感染等でも問題となっており、予
後不良が多く、早期治療開始が望まれる
疾患であるが血液培養や組織生検での診
断は感度が低く、時間も遅いのが問題で
あった。Bougnouxらは兎を使用した検討
で血液培養とPCR法を比較し、PCRの感度
が全血で86%、血清で93%であったと報
告している。PCRも操作性などが改善され
ばより有効な方法となるものと考えられ
る。また、今後注目したい技術としてマイ
クロアレイがある。
ICUにおける敗血症での死亡率は高く、
臨床医としては頻回な血液培養実施や正
しい採血方法、時期を考慮するとともに
今後の新しい診断基準・技術によってよ
り迅速に診断できるようになることを望
んでいる。検査に携わる方々も常に新知
識・技術を取り入れて共に治療への貢献
できるよう頑張っていただきたい。
塗抹法
SIRS : 全身性炎症反応症候群
以下の基準の2つ以上:
塗抹
- 心拍数 > 90/分
- 体温 > 38℃ または < 36℃
- 白血球数
> 12000/mm3 または
< 4000 /mm3 または
未成熟細胞 > 10%
- 呼吸数 > 20 /分 または PaCO2 < 32
微生物検査製品では、ご好評をいただいて
います全自動感受性検査装置「バイテッ
ク2コンパクト」、全自動血液培養抗酸
菌培養検査装置「バクテアラート3D6
0」、そして生培地各種の展示を行いまし
た。免疫検査製品としては、本学会では
血液培養
陽性
陰性
合計
陽性
8
5
13
陰性
1
25
26
4時間で得られた結果;感度100%;特異度83%
共催展示会
このたびの展示会で日本ビオメリューは、
Empowering clinical decisions 「医療
現場での診断をサポート − ビオメ
リューは価値ある医療情報を提供しま
す」をテーマに、微生物検査、免疫検査、
遺伝子検査のビオメリュー最新製品を展示
いたしました。
7
初展示であった新製品、自動免疫蛍光
測定装置「ミニバイダスブルー」を、
また遺伝子検査製品では、本年2月に発
売を開始した自動核酸抽出装置
「ニュークリセンス easMAG」を展示い
たしました。
ビオメリューブースには多数の方々に
ご来場いただき、大変ありがとうござ
いました。
日本臨床微生物検査学会展示会での
ビオメリューブース
Immunoassay
Column
院内におけるウイルス感染症とその予防策
近年、職員検診により麻疹、風疹、ムンプ
ス、水痘のウイルス感染(IgG抗体)免
疫抗体を測定して、抗体を持たない職員へ
のワクチン接種や院内感染発生時の対応
方法などを含めた職業感染対策を病院全
体として取り組む方向性にあります。
院内におけるウイルス感染発生リスク
ウイルスによる院内感染が発症した場合
には非感染既往職員や患者、特に易疫患
者への2次3次感染の恐れがあります。
したがって、職員・患者間による感染拡大
を防止するために
患者、病院職員(職業感染)の発症により
他の職員や患者への感染が拡大した場合、
易疫患者(免疫機能低下患者:表1)に重篤
な感染症が発生するだけではなく、費用負
担の増加や病院の信頼の損失を招くため、
院内におけるウイルス感染発症の予防策
を講じることは重要であると言われてい
ます1)。
①職員検診を実施して抗体陰性者には
ワクチン接種を行う。
② ワクチン接種により100%免疫抗
体を獲得するわけではないのでIgG
抗体検査により効果判定を行う(表
2)。
③潜伏期間中に感染が拡大する可能が
あるので、感染源、感染経路を確定し
遮断することが院内感染拡大対策の基
本となる。
以下に院内におけるウイルス感染症とそ
の予防策についてご紹介いたします。
表1
免疫機能低下患者
表2
8
年
齢
者
入
院
患
者
引用文献
1)風疹、水痘、麻疹、ムンプスなどウィルス性
疾患の職業感染管理 柴谷涼子 INFECTION CONTROL 2004 vol.13 no.6
空気、飛沫、接触感染の恐れがある院内感染症の特徴と対応 2)
水
痘
麻
疹
風
疹
ムンプス
潜伏期間
10∼21日
10∼18日
14∼21日
16∼25日
感染源となる期間
発生前2日∼
痂皮形完了
接触日∼
発疹出現後5日
潜伏期間7日∼
発症後5日
発生前7日∼
発症後9日
72時間以内の感受性職員
緊急ワクチン接種
効果あり
効果あり
効果なし
効果なし
ワクチン接種効果※
90∼95%
95∼98%
95%
90%
職員発生時対応
感染期間就業停止
感染期間就業停止
感染期間就業停止
感染期間就業停止
臓器移植、手術、透析、輸血
高
免疫IgG抗体測定の意義
①免疫抗体陰性者を確実に検出し、
ワクチン接種実施
②検査結果が即日得られ即時対応が可能
③易疫患者(免疫不全患者、移植患者、新
生児など)への感染防止
④ワクチン接種効果判定ならびに
職員、患者の感染情報管理
2)医療施設における院内感染の防止について
厚生労働省医政局指導課長 医政指発第0201004号
妊婦・胎児、新生児、小児
AIDS患者、免疫不全症患者
以上のことにより、各ウイルスに対する免
疫抗体の有無を測定することが重要です。
免疫抗体検査の測定の意義を以下にまと
めます。
※ 陰性者に
対するワクチ
ン接種による
抗体産生率
院内感染対策のためには、当社のバイダスシステムをお勧めいたします。
自
ミ
動 蛍 光 免 疫 測 定 装
ニ バ イ ダ ス / バ イ ダ
置
ス
全ての反応プロセスが1対の試薬パックで
行われる画期的なシステム
9 試薬調整の必要がないモノテストタイプ
9 使い捨てスパーを使用することにより
コンタミネーション解消
9 流路系がないため、水管理不要
9 故障が少ない機械構造
(平均故障周期:3年以上)
9 24時間スタンバイ
Column
いまさら人に訊けない遺伝子検査 その2 抽出編
前回のニュースレターでは、
「いまさら人に
訊けない遺伝子検査 その1」と題して、
遺
伝子の基礎を解説致しました。今回はいよ
いよ、遺伝子検査について解説していきた
いと思います。
特に、
一番初めの工程にあた
る、核酸の抽出についてお話して行きま
しょう。
核酸の抽出
遺伝子検査は通常、核酸抽出→増幅→検出
という工程を取ります。現在、様々な遺伝
子検査用のキットが販売されていますが、
どのキットを用いても、この検査の流れは
変わりません。遺伝子検査の最初の工程に
あたる核酸の抽出とは、検体である細胞や
病原性微生物から核酸を取り出してくる
工程のことを言います。タンパク質の殻や
膜に包まれた検体の内部に含まれる核酸
を露出して、核酸のみを分離しておかない
と、その後に続く増幅の反応原理上、核酸を
増幅出来ないことからこの工程が必要とな
ります。
抽出の工程自体はとてもシンプルで、まず
1)検体を溶解して核酸を露出する2)分離し
た核酸を磁性シリカやメンブレンに吸着さ
Molecular biology
せる3)磁性シリカやメンブレンに核酸が
吸着した状態で洗浄し、増幅反応を阻害
するタンパク質や脂質を洗い流す4)溶出
液を使って磁性シリカやメンブレンに吸
着された核酸を再度分離し、精製された
核酸のみを回収する、と言う流れになり
ます。
抽出は遺伝子検査の肝!?
核酸の抽出工程そのものは、とてもシン
プルなものですが、この工程が遺伝子検
査の肝である、と言っても過言ではあり
ません。この抽出と言う工程は、最近に
なって自動化が進んできたものの、まだ
まだ用手法が主流となっています。文章
で書くと簡単に思える抽出の工程です
が、このステップでデータにブレが出や
すいのです。それは抽出を行う方の習熟
度の差が大きいと考えられます。つまり
検体の攪拌やピペット操作など、キット
に附属している手順書に忠実に従って操
作したとしても、操作を行う方の手技の
個人差・習熟度の差が大きく左右すると
考えられるからです。そこで抽出を機械
が自動で行ってくれるのであれば、作業
担当者間によるデータのブレが出る心配
もなくなります。
BOOM法による核酸抽出
ここで抽出の原理について説明しましょ
う。ビオメリューの核酸抽出ではBOOM法
と言う方法を用いて、核酸の抽出を行い
ます。ビオメリューが特許を持つ技術で、
グアニジンチオシアネートを含む細胞溶
解液で検体を溶解し、露出した核酸がシ
リカに吸着する性質を利用しています。
抽出工程の自動化によるメリット
抽出工程を自動化することによって、言
い換えれば作業担当者間のデータの安定
化が図れるわけですが、他にどのような
メリットが得られるのか、詳しく解説し
たいと思います。欧米では抽出法のゴー
ルデン・スタンダードとして認知されて
います。これは、様々な会社が、この方法
を用いて抽出のキットを販売しているこ
とからも明らかであり、
また、
核酸抽出の
自動化に適した方法としても注目されて
います。
1. 高品質の核酸 遺伝子検査におい
て、核酸の精製度や回収率と言うの
は非常に大きな問題となります。例
えば、検体の中に微量の核酸しか含
まれない場合、習熟度の低い方が操
作を行って核酸を回収できない、と
言うことも考えられます。また、洗
浄が十分に行われなかったため、不
純物質が混入し、抽出の後に行う増
幅工程の反応がうまく進まない、な
どと言うことも起こり得ます。機械
を用いて核酸を抽出することによ
り、常に安定した高品質な核酸を得
ることができます。つまり、より感
度の高い、精確な結果を得られるこ
とになります。
2. 作業時間の短縮 自動化により、こ
れまでは専任の方がつきっきりで
核酸を抽出しなければならなかっ
た操作が、検体を機械にセットして
ボタンを押すだけで、核酸の抽出が
行われます。これで抽出作業に追わ
れることなく、他の作業を行う時間
を得ることができます。さらに、用
手法では扱う検体数にも限界があ
りましたが、自動化によって、処理
能力も向上します。
このように、遺伝子検査における抽出工
程を自動化することによって、様々なメ
リットが得られることがお分かりいただ
けると思います。
ニュークリセンスeasyMAG
抽出工程の自動化によるメリットをご説
明したところで、この度ビオメリューが
発売しました、自動核酸抽出装置ニュー
クリセンス®easyMAG™をご紹介したいと
思います。この装置は、BOOM法に基き、臨
床検体からの核酸抽出を自動化した第二
世代のシステムとなっております。BOOM
法によるビオメリューの核酸抽出装置は
欧米において、その優れた抽出能力が既
に広く認められています。
誰でも簡単な操作
サンプル、
試薬、
消耗品をセットするだけ
で、自動で核酸抽出を行うことが可能で
す。そして全ての操作はタッチスクリー
ン・インターフェースによって行うこと
により、試薬及び消耗品の管理を簡略化
し、全てのユーザーに利用し易くなって
います。また、付属のソフトウエアによ
り、検体のセットから結果の報告までの
完全なトレーサビリティ及び大容量の
データ保存が可能です。これらにより遺
伝子検査はより身近で簡単に、また処理
能力も大幅に向上します。
共通プロトコールと操作の標準化
ほとんどのアプリケーションを標準化さ
れた単一のプロトコールで実施すること
ができます。また、
様々な臨床検体(血漿、
血清、
全血、喀痰など)
から、そのインプッ
ト容量と溶出容量をユーザーのニーズに
応じて選択することができます。試薬
セット、消耗品は全ての検体タイプに共
通です。このように、ニュークリセンス
easyMAGは高品質の核酸抽出能力と柔軟
性を、同時に兼ね備えています。
新製品の自動核酸抽出装置
ニュークリセンス®easyMAG™
®
●ニュークリセンス easyMAG™試薬および消耗品
品名
3. 高い安全性 検査室や実験室では、
様々な種類の検体、そして病原微生
物を扱うことになりますが、これま
では作業担当者がそれらの微生物
に暴露されながら抽出作業を行っ
ていました。これが自動化されるこ
とにより、作業担当者が病原性微生
物に曝される時間は、最小限に抑え
られることになり、検査室・実験室
の安全性につながります。また、抽
出作業中も複雑な作業を人の手を
介さないことから、検体間のコンタ
ミネーションを抑制することにも
つながります。
品番
統一商品コード
280130
585002710
ニュークリセンス easyMAG 抽出試薬1
384回分
包装
280131
585002727
ニュークリセンス easyMAG 抽出試薬2
384回分
280132
585002734
ニュークリセンス easyMAG 抽出試薬3
384回分
280133
585002741
ニュークリセンス easyMAG 磁性シリカ
384回分
280134
585002758
ニュークリセンス easyMAG 細胞溶解液
384回分
280135
585002765
ニュークリセンス easyMAG 専用チューブセット
384回分
280140
585002772
ニュークリセンス easyMAG スターターパック
1式
ニュークリセンスeasyMAGは、あらゆる検
査室・実験室に適応可能な自動核酸抽出
装置といえます。
9
Industry
New products
新製品発売のお知らせ
キャンピロバクター検査用培地
日本ビオメリュー産業事業本部では、
食品・医薬品中の検査や製造環境のモ
ニタリング用途で、特徴的且つ高性能
の各種培地を提供してきましたが、こ
の度キャンピロバクター検査用培地で
ある、キャンピフードID寒天培地を発
売します。
キャンピロバクター食中毒は、サルモ
ネラ食中毒、病原性大腸菌食中毒など
と並ぶ代表的な食中毒のひとつで、国
内では毎年450件前後発生してお
り、患者数は1700∼2000人前
後を推移しています。主な感染経路は
キャンピロバクターに汚染された鶏肉
など動物由来の生肉(もしくは充分に
加熱されていないもの)の摂取で、国
内、欧米諸国ともに近年増加傾向にあ
り、WHO(世界保健機構)ではリスクア
セスメントに関する活動を開始してい
ます。
キャンピフードID寒天培地
キャンピロバクター検査用培地
キ ャ ン ピ フ ー ド I D 寒 天 培 地
キャンピロバクターの検査には、従来で
は、同細菌以外の雑菌の生育を抑制する
ための抗菌・坑カビ剤が添加され、かつ同
細菌の生育を促進するため、血液を添加
したもの(スキロー寒天培地等)や活性炭
を添加したもの
(CCDA等)が広く使用され
ていいます。しかし、
雑菌の抑制が不十分で、キャンピロバク
ターのコロニーの分離が困難であった
り、添加されている血液や活性炭の色
10
:キャンピフードID寒天培地
品
番
:43471
包
装
:20枚(生培地)
保管温度
また、培地上に生育するキャンピロバ
クターのコロニーは、赤∼橙赤色を示
します。クリアーなバックに赤∼橙赤
色のコロニーが生育するため、キャン
ピロバクターの鑑別が非常にし易く、
またコロニーの単離も容易となりま
す。
国内外での評価試験では、既存の培地
と同等もしくはそれ以上の検出率を示
し、また雑菌抑制に優れ、コロニーも
見易く鑑別に優れることが確認されて
います(資料については各営業担当者
までお問い合わせ下さい)。
製品仕様
製 品 名
により、培地上に生育したキャンピロ
バクターのコロニーの鑑別がし難くい
ため、長い培養時間すなわち長い検査
時間を要しているのが現状です。キャ
ンピフードID寒天培地は、独自の抗菌・
坑カビ剤ミクスチャーの添加と、キャ
ンピロバクターの生育促進には血清を
用いることで、従来用いられている培
地よりも雑菌の生育に対する抑制力を
高めるとともに無色透明な培地を実現
したものです。
:冷蔵保管(2∼8℃)
Report
第6回アピセミナー報告
あいにくの冷たい雨となった2006年3月
1日(水)、世田谷区の閑静な住宅街に佇
む東京栄養食糧養専門学校の実験室に
て、6回目となるアピセミナーを開催い
たしました。今回のセミナー参加者は前
回よりも少人数の18名ではありました
が、参加者と講師担当者・スタッフとの
距離が近く、より濃度の高い講義と実習
を行なうことができたと思います。
普段よりお問い合わせの多いアピ製品
群への様々なご質問(例えば「分注に失
敗して空気が入ってしまったが、どのよ
うに対処すればよいか?」、
「黄色と赤色
の中間色はどのように判定すればよい
のか」)や、微生物の一般的なご質問(例
えば「生育の悪い菌を上手に培養する方
法は?」、「OF試験とオキシダーゼ試験
は両方行なう必要があるのか?」)につ
いて直接回答させていただきました。ま
た電話でのお問い合わせではなかなか
説明し辛かった色調の変化や、添加試薬
添加後の反応などを、実際の試験を通じ
て説明させていただくことができまし
た。実習を含むセミナー形式でありが
ちな対応不足へのご不満はなかったの
ではないかと自負しております。
本セミナーの参加者には、研究目的で
アピを使用される方、品質管理業務で
の使用を考えている方、今まで機械的
にアピを使用していたが、基礎から学
びたいという方など、様々な業種の、
様々な目的を持つ方がいらっしゃいま
した。特に今回は再生医療の研究開発
メーカーの方も参加されていて、時代
の流れを感じることができました。
アンケートの結果からも、
「こんなに簡
単に微生物が同定できるとは知らな
かった」というご意見や、「普段から疑
問 に感 じて いた部 分が、一日 のセ ミ
ナーで全て解消された」、「実技を伴う
無償セミナー、特に微生物検査に関連
するセミナーは数が少なく、非常に参
考になった」というようなお褒めの言
葉を頂戴いたしました。
Industry
アピキットの選択 チャート
日本ビオメリュー㈱産業事業本部では、ア
ピの正しい使用方法だけではなく、微生物
同定検査に関連する補足試験の実施方法、
及び微生物同定検査の必要性・重要性をお
客様へお伝えし続けていくことを使命と
考えております。そして、その一環として、
これからもより充実したアピセミナーを
開催していく所存です。
グラム (-) 桿菌
オキシダーゼ(+)
オキシダーゼ(-)
アピ 20
アピ20
NE
アピ20NE
グラム (+) 桿菌
カタラーゼ(+)
小桿菌、多形性、異形性を示す
小さい不透明なコロニー
アピコリネ
カタラーゼ(-)
短桿菌
運動性 20-25℃
非運動性 37℃
長桿菌 芽胞+
長桿菌
アピリステリア
アピ50
CHB
アピ50CHB
アピ50
CHL
アピ50CHL
アピウエブ検索結果画面
アピスタフ陰性陽性反応の色見本
データベースにおける、その菌株に対する近似値
各菌株の最も典型的なプロファイルに対する近似値
結果に関するメッセージ
本キットで完全に同定できない場合の追加試験
典型的なプロファイルから外れた反応
Column
学会開催地ガイド/日本医学検査学会開催地
宍 道 湖 の
シ ジ ミ 舟
神々の国「島根」へようこそ!!
お参りするもよし、「幸せ」を願いお参
りするもよし、一度参拝に訪れて自分
の心の中を覗いて見るのも良いかもし
れません。
出雲大社に並び有名なのが「宍道湖」。
おいたちを辿れば7000年前(縄文時代
初期)まで遡ります。松江市の西にひろ
がる湖で、昔から夕景で名高く湖畔に
名所が点在しており、宍道湖七珍(アマ
サギ・ウナギ・エビ・コイ・シジミ・シ
ラウオ・スズキ)に代表される魚介類の
宝庫としても知られています。中でも
「シジミ」は昔から食の知恵として好
まれ、栄養学が発展した今日でも評価
されています。
出
雲
大
社
島根と言えば神の国・神話の国として知
られています。その中心は「大国主大神」
をおまつりしている「出雲大社」です。
大国主大神は「だいこくさま」と申して
慕われている神さまで、医薬の道をお始
めになられた神さまでもあり、私たち医
療業界に従事している者にとっては先
生とも言える神さまです。と同時に、出
雲の神さまと言えば「縁結びの神さま」
として知られています。「先生」として
まず評価したいのが、
「良質のタンパク
質」で、必須アミノ酸配合比率100%で貝
類の中でも際立っています。お酒はタ
ンパク質をとりながら飲むと、体への
負担が少ないと言われています。次に、
「豊富なビタミンB群」昔から「土用し
じみは○○」と言葉があるように栄養
価が高く旨味成分も多いしじみ汁を飲
んで体力を養っていました。まさに機
能性食品と言えます。懇親会での飲み
すぎ、学会発表での体力低下に
是非「しじみ汁」を一杯!
夕 暮 れ の
宍 道 湖
ほかにも、「出雲そば」「松江城(城下
和菓子)」「温泉(美人の湯)」と見所・
食べ処は沢山あります。
神々がお集まりなられる神無月(陰暦
の十月)前に、島根に集い「知られざ
る 島 根 の 面 影」を 探 訪 し て み ま せ ん
か!?(島根に縁のある小泉八雲「知
られざる日本の面影」を少々利用させ
ていただきました)
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Customer service
Information
Rare Organism Clubのご紹介
ビオメリューが主催する Rare Organism Club をご紹介いたします。
Rare Organism Club は、全自動血液
培養・抗酸菌培養検査装置バクテアラート
シリーズをご使用いただいているお客様
からご報告をいただきました、臨床的に稀
な細菌の検出事例を収集、データベース化
し、全てのお客様とワールドワイドでこれ
らの情報を共有化することを目的とした
ビオメリューの新しいサービスです。
Rare Organism Club のデータベース
からは、稀な細菌の検出事例、検出までの
時間、使用ボトルタイプなどの情報をご確
認いただけます。また、 Rare Organism
Club のデータベースは、お客様からご報
告いただきました情報に基づき定期的に
アップデートされますので、ご報告いただ
ける事例が多ければ多いほど内容が充実
し、より一層お役に立てるシステムへ
と成長してまいります。もし、稀な細菌
の検出を経験されましたらぜひ Rare
Organism Club へご一報ください。
ご協力いただきましたお客様には、弊
社 か ら Rare Organism Club の 証
明書とちょっとした記念品をお送りさ
せて頂きます。
Rare Organism Club への参加方
法、およびご意見・お問い合わせにつ
きましてはフリーダイアル0120-064733にてお受けしております。 Rare
Organism Club は皆様のご報告によ
りまして、より多くの最新情報をお客
様と共有してまいりたいと思っており
ますのでご報告をお待ちしておりま
す。
第 5 5 回 日 本 医 学 検 査 学 会 併 設
ビオメリューランチョンセミナーおよび展示会のご案内
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2006年5月19日(金)∼20日(土)に第55回日本医学検査学会(http://shimane-amt.cup.com/gakkai/)が島根県松江市にて開
催されます。ビオメリューにおきましてもランチョンセミナーと製品展示を行います。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げて
おります。
●ランチョンセミナー
「感染症の現状と最新の検査 —微生物・血清検査・遺伝子検査まで—」
検査室の臨床検査技師を評価すると、(1) 微生物検査の経験者は生化学検査を担当す
るのに苦労が少ないが、(2) 逆に生化学検査を専門した者を微生物検査へとなると非
常な苦痛が伴う。 何故、一方通行なのか ・・・どうも生化学検査を専門とする臨
床検査技師は、原因と結果に最も単純な 1対1の因果関係 を求めるのに対し、微生
物検査を担当する者は「生物現象はそんなに単純なものではない」と心得ているよう
である。微生物検査は正しく応用科学 applied scienceの集大成である。哲学がすべ
ての学問体系の頂点にあるように、感染症へのアプローチは、染色から始り、抗原・
抗体反応、遺伝子検査、さらに広く社会科学をも視野に入れる必要性を強く認識した
い。
演
座
者:山根 誠久先生(琉球大学 医学部 臨床検査医学分野 教授)
長: 柴田 宏先生
(島根大学医学部附属病院 検査部 臨床検査技師長)
日
会
時: 5/19(金)12:00∼13:00
場: 島根県民会館1F 展示ホール(第3会場)
●展示発表会
日 時: 5/19(金)9:00-18:00 5/20(土)9:00-16:00
会 場: くにびきメッセ1F 大展示場 ビオメリューブース 57番
展示予定品:
・全自動細菌同定感受性検査装置 バイテック2コンパクト
・全自動血液培養抗酸菌培養検査装置 バクテアラート3D 60
・自動蛍光免疫測定装置 ミニバイダスブルー
日本ビオメリュー株式会社
発行 2006.03.27
〒107-0061 東京都港区北青山2-12-28 青山ビル
問い合わせ先:
臨床検査関連製品(病院・検査センターなど)[email protected]
産業関連製品(企業・官公庁研究機関・保健所など)[email protected]
情報誌関連 [email protected]
www.biomerieux.com/jp
昨年の国立京都国際会館での日本医学検査学会
ビオメリューブースおよびランチョンセミナー
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