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英語科 - 福岡市教育センター

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英語科 - 福岡市教育センター
平成11年度
研 究報告書
(第592号 )
G9−01
国際理解を深める英語教育の研究
−実践的な場面の工夫や活動を通して−
国際 化 の進 展に 対 応し た 英語 教育 の 在り 方を 探 るた め に, 小学 校 での 総
合 的な 学 習の 時間 に おけ る 外国 語会 話 ,中 学校 の 外国 語 教育 の目 標 から ,
国際理解を深める研究に取り組んだ。児童生徒にとって身近な場面の設
定 ,教 科 ・領 域と 関 連づ け た題 材構 成 ,A LT や GT を 活用 した 実 践的 な
場 面の 工 夫や 活動 を 通し た 学習 を行 う こと で, 児 童生 徒 は, 言語 や 異文 化
に 対す る 興味 ・関 心 を高 め ,国 際理 解 を深 める こ とが で きた 。
福岡市教育センター
英語科研究室
目
次
Ⅰ
主 題 設 定 の 理 由 ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英
1
Ⅱ
研 究 の 目 標 ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英
1
Ⅲ
研 究 の 仮 説 ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英
1
Ⅳ
研 究 の 実 際 と そ の 考 察 ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英
2
研 究主 題 につ いて の 基本 的 な考 え方 ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英
2
(1 )「 国 際理 解」 と は‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英
2
(2 )「 国 際理 解を 深 める 」 とは ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英
2
(3 )「 実 践的 な場 面 の工 夫 や活 動」 と は‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英
2
研 究の 内 容と 方法 ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英
2
(1 )実 践 的な 場面 の 工夫 や 活動 を取 り 入れ た学 習 ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英
2
(2 )年 間 学習 指導 計 画案 の 作成 ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英
3
指 導の 実 際と その 考 察‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英
3
(1 )小 学 校3 年生 「 レス ト ラン ごっ こ 」‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英
3
(2 )小 学 校4 年生 「 わた し の好 きな 動 物」 ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英
5
(3 )中 学 校1 年生 “Kumi in America” ‥ ‥‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥英
8
1
2
3
(4 )中 学 校3 年生 “A Blend of Cultures” ‥ ‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ 英1 2
Ⅴ
研 究 の ま と め と 今 後 の 課 題 ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英1 5
参 考文 献 ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ ‥‥ ‥‥ ‥ 英1 6
めるため,関心のある国や外国人の出身地を探
Ⅰ
主題設定の理由
すなど,外国に対する興味が広がっている。
しかし,日本と外国の文化等の違いを理解し,
今日,国際化が急速に進展する中で,国際社
外国の人々を自分たちと同じ立場で交流する相
会に生きる日本人の育成という視点に立った教
手として認識するまでにはいたっていない。
育の展開が一層重要になってきている。
中学生では,将来行ってみたい国として多く
教育課程審議会答申では,「我が国や郷土の
の国名をあげる生徒や,実際に渡航経験がある
歴史や文化・伝統に対する理解を深め,これら
生徒もいた。外国の生活様式や文化に対する関
を愛する心を育成するとともに,広い視野をも
心も高い傾向がある。しかし,それらを表面的
って異文化を理解し国際協調の精神を培うこと
にしかとらえられず,理解が深まっていないこ
は,これからの学校教育において一層重視する
とがわかった。
必要がある」と述べられている。現在,国際化
このように,国際化に対応した英語教育の必
の進展に対応した教育は,各教科,領域の特質
要性,児童生徒の実態を考えあわせ,当研究室
等に応じて行うこととされているが,新設され
では,児童生徒の発達段階に応じた,国際理解
る総合的な学習の時間の中でも,横断的・総合
を深める英語教育について研究を進めた。
的課題として,国際理解が例示され,現代的課
題として大きく取り上げられている。特に,小学
校では,国際理解に関する学習の一環として外
Ⅱ
研究の目標
国語会話が取りあげられ,小学校段階にふさわ
しい体験的な学習が行われるように求められて
国際理解を深める実践的な場面の工夫や活動
いる。また,外国語教育については,国際化へ
を通して,英語教育における学習指導の在り方
の対応として,中・高等学校で外国語が必修教
を明らかにし,年間学習指導計画を作成する。
科となり,実践的コミュニケーション能力の育
成が目標として示された。
外国語教育においては,国際理解は重要な目
Ⅲ
研究の仮説
標のひとつであり,現行学習指導要領では,
「言語や文化に対する関心を深め,国際理解の
英語教育において,次の4つの視点に立った
基礎を培う」,新学習指導要領では,「外国語
実践的な場面の工夫や活動を取り入れた学習指
を通じて,言語や文化に対する理解を深める」
導を行えば,児童生徒は異文化や生活習慣の違
と示されているように,コミュニケーション能
いを認識し,国際理解を深めることができるで
力の育成を図る上での,大きな核となっている。
あろう。
これらのことから,小学校における総合的な
(1) 異文化に対する関心を高める。
学習の時間での外国語会話,中学校での外国語
(2) 言語及び非言語的コミュニケーション
教育における国際理解に着目した。
(ジェスチャー等)を通して,習慣や考え方
国際理解に関して,事前調査(福岡市立小学
を知る。
校2校,中学校2校のアンケート調査)から次
(3) 多様な文化や価値観に対する柔軟性を養う。
のような傾向が見られた。
(4) 外国人に対して自分の考えを伝える。
小学校3年生では,テレビで見たことがある
地域や国名,外国人スポーツ選手や芸能タレン
トを外国としてイメージすることが多い。
小学校4年生では,社会科で地図帳を使い始
英―1
○
Ⅳ
研究の実際とその考察
身近な生活場面で使われる具体的な英語
を聞いたり,ジェスチャーを見たりして,
相手の意向を理解し,それに対応した行動
1
研究主題についての基本的な考え方
(1)
ができるような学習。手だてとして,基本
「 国際理解 」とは
的な呼応(あいさつとそれに対する応答
「国際理解」とは,世界の国々の人々がそれ
等)・遊び・歌・ゲームなどを中心にした
ぞれ独特の文化を持っていることを理解するこ
活動を,音声の聞き取りや発音を中心に組
とに始まり,自国の文化との類似点や相違点を
み立てていくようにする。(視点2,4)
認識し,偏見を持たずにそれぞれの文化を尊重
こうした,小学校における英語の導入が,そ
し,違いを違いとして受け止めることができる
の後,他の外国語に対する興味へとつながるよ
ことであると考える。
うにしたい。
(2)
「国際理解を深める」とは
国際理解を深めるとは,自国の言語や文化に
中学校では,次の4点について,実践的な場
面の工夫や活動を取り入れた学習を行う。
基づいた価値観を尺度として他国の文化を判断
○
異文化に対する関心を高めるために,英
しないだけでなく,それらの相違を認識した上
文の中に出てくる単語がもつ文化背景的意
で積極的に異文化を理解し,尊重することであ
味(例えば, bathroom は風呂とお手洗いが
り,このことは,自国文化理解,異文化理解を
一緒になったものである)について考えさ
通して,人権感覚,共生意識,コミュニケーシ
せたり,教科書の挿し絵や写真などを手掛
ョン能力の育成をめざすものと考える。
かりとして,文化や生活習慣の違いに気付
(3)
「実践的な場面の工夫や活動」とは
かせるなどの活動を取り入れた学習。
実践的な場面の工夫や活動とは,児童生徒に
(視点1)
とって,身近に感じる場面や実際の状況を想定
○
言語及び非言語的コミュニケーションを
した場面の工夫を図りながら,その中での主体
通して,習慣や考え方を知るために,ロー
的な活動を促すものである。
ルプレイ等の活動の際に,単に話したり聞
小学校では,単元構成の中で,児童にとって
いたりするだけではなく,ジェスチャーも
身近な題材や教科との関連をもたせた題材を取
使いながら,さらに実際の会話に近づいた
り上げ,具体的な場面を設定して楽しく活動さ
活動を取り入れた学習。(視点2)
せることを重視する。中学校では,単元に含ま
○
多様な文化や価値観に対する柔軟性を養
れる国際理解に関する内容について,生徒の意
うために,世界の国々の文化や生活習慣が,
欲を高める場面を設定することによって,理解
長い歴史や伝統の上に引き継がれてきたも
を深めていく活動を重視する。
のであることに気付かせるとともに,質疑
2
・討論等を通して,文化や生活習慣の類似
研究の内容と方法
(1) 実践的な場面の工夫や活動を取り入れた学習
点や相違点についてさらに深く考えさせる
小学校では,英語に慣れ親しみ,楽しく学習
活動を取り入れた学習。(視点3)
するという姿勢が必要である。
○
そこで,次のような実践的な場面の工夫や活
ようになるために,ALTによる授業を組
動を取り入れた学習を行う。
○
外国人に対して自分の考えを伝えられる
み込み,相手の考えをしっかり聞いて理解
ALTが話す英語やALTを通じて知る
するとともに,自分の意見も憶せずに述べ
外国の生活習慣等を媒体として,異文化に
ることによって,相手がより的確に理解で
対する興味・関心を高め,多様な文化や価
きるように伝える態度を身につける活動を
値観に対する柔軟性を養う学習。(視点1,3)
取り入れた学習。(視点4)
英―2
(2)
年間学習指導計画案の作成
十分ではないのに,外国人に対しても気後れせ
年間学習指導計画案の作成にあたっては,以
ず好奇心旺盛な児童の特性がよく表されている
下のことに留意する。
と考える。
小学校では,常に4つの視点を取り入れた実
質問3では,人数は多くはないが,外国語を
践的な場面の工夫や活動と,次の6つの観点か
日本語と違う未知の言語として意識している児
ら題材を構成し,ALTとの活動を主体にした
童もいることがあらわれている。
年間学習指導計画案を作成する。
以上の結果から,児童は外国を興味あるもの,
①児童の興味・関心,②発達段階,③他教科
楽しいものとしてとらえており,何事にも物お
等との関連,④日常の生活体験,⑤日本や外国
じしないこの時期に,外国語の刺激を受けるこ
の伝統的・文化的行事,学校行事,⑥季節に関
とは, 外国に対する興味・関心を高め国際理解
すること。
の基礎を培うものと考えられる。
中学校では,教科書の題材について検討し,
イ
国際理解を深めるのに役立つものを抜き出し,
題材について
本題材の選定にあたっては,次の2点を考慮
各視点に基づいた実践的場面や活動を考え,授
した。
業の中で,それらをどのように効果的に活用し
○
身近な生活場面を設定し,ALTの英語
ていくかを明らかにする。
を聞いたり,ジェスチャーを見ることによ
3
り,それらを真似しながら楽しく活動できる
指導の実際とその考察
(1) 小学校3年生「レストランごっこ」
ア
題材。
児童の実態
○
児童の国際理解に関する意識を調査するため
ALTとの活動を通して,英語や外国の
習慣に対する興味・関心を高める題材。
に,小学校3学年児童21人を対象に,事前ア
検証授業として「レストランごっこ」を行っ
ンケートを実施した。(いずれの質問も複数回答)
た。「レストランごっこ」とは,児童が店員と
質問1
あなたが行ってみたい国は,どこですか。
また,その理由は何ですか。
国
名
人
(1)ハワイ
20
(2)オーストラリア・中国
各11
(3)フランス
10
(4)アメリカ・ドイツ
各 9
(5)インド
8
(6)イギリス・ニューヨーク
各 5
(7)カナダ・ニュージーランド
各 4
(8)南極
3
(9)香港・韓国
各 2
(10)ジャマイカ・アルゼンチン
各 1
イタリア・中央アフリカ
スウェーデン・ベトナム
客になり,英語で好きな食べ物を選び代金を支
払ったり,お釣りを渡したりするゲームである。
実践的な場面としては,児童が身近で容易にイ
メージできるファーストフード店を設定した。
またALTの英語を十分理解できなくても,
児童が経験したことのある場を設定することで,
ALTが話す英語の意味を感じ取ることができ
ると考えた。
ウ
理
由
人
(1)海に入りたい
17
(2)動物がたくさんいて,会いたい
5
(3)中国料理を食べたい
4
質問2「外国語が使えたらいいな。」と思うときはど
んな時ですか。
(1)外国の人がきたとき
8人
(2)外国にいったとき
7人
(3)ALTの先生に会ったとき
2人
質問3 外国語を耳にするときはどんな時ですか。
(1)ラジオを聴いているとき
7人
(2)テレビを見ているとき
2人
学習指導の実際
[第1時]
簡単な英語での挨拶の仕方に慣れさせるため,絵
カード(元気,病気,眠い,疲れた子の絵等)を使って
言葉と意味をつなぎ理解させる。また,模型のマイ
クを一人一人に回し,お互いに“How are you?”と
尋ねることによって,英語の言葉に慣れ親しませる。
[第2時]
“What's this?”の表現を使って物の名前の尋ね
質問1は都市名なども含まれ,児童にとって
方,答え方に慣れさせる。よく知っている果物や食
外国は本やテレビ等で見聞きするもので,絵本
のように楽しいイメージでとらえていると思われる。
質問2は,日本語でのコミュニケーションも
べ物の英単語を,模型や絵を使って練習させる。グ
ループごとに役割交替をしながら,英語の言葉に慣
れさせる。
英―3
時(
本 時)
[第3時・第 4
]
資料―1
「レストランごっこ」
「レストランごっこ」の活動の中で,店員と客の英
語での応対の仕方に慣れさせる。担任とALTのロ
ールプレイで,店員と客の英語の表現を聞かせ練習
させる。グループで役割を決め「レストランごっこ」
を行う。児童はお客や店員になって,英語でのコミ
ュニケーションを楽しむ。
工
本時
(4/4)
(ア) 本時の目標
「レストランごっこ」を通して,ALTの英
オ
語を聞いたり真似したりしながら楽しく活動し,
英語や外国の習慣に対する関心を高める。
(イ) 本時の授業仮説
実践的な場面として,身近なファーストフー
ド店を設定し,メニュー,本物の店員の帽子,
トレー等実際の店のような環境を作り,ALT
と一緒に客や店員の役割を演じれば,英語を使
考察
本校は,過去,英語教育研究開発委嘱校であ
り,本学級の児童の半数は, 1年生の時に月1
回程度ALTを迎えて, フルーツバスケットや
簡単な単語を使っての遊び, 英語の歌を歌うな
どの英語学習の経験を持っている。また学期毎
にALTを交えて全校で集会を行ったり,給食
って話してみようとする意欲が高まり,楽しく
を一緒に食べ,昼休みに一緒に遊んだりするな
活動できるであろう。
ど,児童のほとんどは,過去の英語活動を楽し
(ウ) 授業の実際
1
あいさつ
ALTが児童一人一人に名札を手渡しながらあい
さつをする。
2 食べ物,飲物の発音練習
レストランごっこで使う絵カードを見ながら練習
する。
3 レストランごっこの活動の説明
客と店員の話す英語を,役割交替しながら練習する。
4 レストランごっこ
(1)ルールを確認する。
(2)客と店員に分かれ,自分のグループの店に
行く。
(3)それぞれの店で注文をしながら,英語の会話
を楽しく行う。
5 まとめ
6 英語の歌
“10 1ittle Indians”
7 あいさつ
いイメージとして捉えている。3年生の5月か
ら始まった英語活動では,児童は, ALTに対
しても楽しくリラックスして接することができ,
英語活動を心待ちにしている様子が見られる。
題材を選定するにあたって,児童が英語に慣
れ親しみ,楽しく学習するという姿勢を大切に
した。そのために,実践的な場面を設定し,活
動を中心とする学習を行った。「英語は楽し
い」という気持ちを大切にしながら,身近な生
活場面で使われる具体的な英語を, ゲームなど
を中心とした活動として,音声の聞き取りや発
音を中心に組み立てた。そのことについて児童
は,次のような感想を持っている。
今日,英語でレストランごっこをしました。言う
言葉がちょっと難しかったです。でも,すごく楽し
前時までに児童はALTと一緒に,英単語や
かったです。私はあんまり言う言葉が分からなかっ
短い会話の練習を3時間行った。発音練習の時
たです。でも先生に教えてもらって少し分かってき
など,ALTの口元に注意を払って,一生懸命
ました。楽しくレストランごっこをしました。楽し
真似しようとしている児童の姿も見られた。
かったです。
また,次のような感想も多く見られた。
上手にできた時, 手と手をタッチさせてほめ
レストランごっこで,私は最初お客さんでした。
てくれるALTのジェスチャーに喜びを感じて
I'd like
いる児童も多かった。また,分かりやすい英語
というのが難しかったので,ドキドキし
ながら言いました。でも言えたので,とってもうれ
の言葉を使い,動作を交えながら表現すること
しかったです。またしたいです。
を楽しんでいた。
児童の感想のほとんどは,「英語を話すこと
英―4
ができたことがうれしかった。」と書かれてい
う
た。これは,ALTの話す英語は少し難しいと
5 好きないろ
かぞえてみよう
感じながらも,英語で会話できたことの満足感
を味わったものと思われる。
6 楽しいスポーツ カードとりゲーム
∼をしますか? 歌− 10 little Indians
7 好きな果物
What's this ? ,インタビュー
ゲーム
歌−Twinkle Twinkle Little Star
9 好きな食べ物
ビンゴゲーム(果物)
∼は好きですか 歌− finger song
10 買い物ごっこを 果物屋
しよう
11 買い物ごっこを ファーストフード店
しよう
12 楽しいクリスマ 飾りの色ぬり,カード作り
ス
歌-We wish you a merry X'mas
1 ふくわらい
ふくわらいゲーム
2 わたしの体
サイモンゲーム,タッチゲーム
歌− Head and shoulders
3 3年生のまとめ
- ありがとう - サンクスカード
これらのことから,国際理解を深める学習を
行う際の留意点を次のように考えた。
○
題材の選び方と活動の仕組み方の重要性
教科のように到達目標を設定するのでは
なく,一人一人の興味・関心や意欲を大切
にする。
○
ALTと担任のTT授業時の役割分担
導入時の担任とALTのロールプレイは,
児童に活動の内容を知らせると共に,積極
的にALTの英語を聞こうとする意欲を持
たせるようにする。
○
ALTと担任のTT授業の回数
授業回数は,活動を中心にすることから
考えて,月2回を連続週で行うのが意識を
つなぐ上からも効果的と考える。
(2) 小学校4年生「わたしの好きな動物」
このようなことに留意して,児童にとって興
ア
味ある題材を楽しい活動の中で展開すれば,国
児童の実態
児童の国際理解に関する意識を調査するため
際理解を深める素地づくりとなるであろうと考
に, 小学校4学年児童32人を対象に,事前ア
える。
カ
ゲーム
歌− Good morning to you
色つきおに,ナンバーバスケ
ット
歌− 10 little Indians
ンケートを実施した。(いずれの質問も複数回答)
年間学習指導計画案
質問1
あなたが知っている国は,どこですか。
また,その理由は何ですか。
国
名
人
(1)オーストラリア
26
(2)アメリカ
25
(3)中国
25
(4)イギリス
18
(5)インド
18
その他にブラジル,オランダ,スイス,ス
ペイン等30カ国
年間学習指導計画案を考えるにあたって,ま
ずALTとの活動を主体におき,4つの視点を
取り入れた年間学習指導計画案を作成した。そ
の際,実践的な場面の工夫や活動を通して,英
語への興味,英語を通しての国際理解を深める
ような学習が期待できるように考えた。
活動は月2回を基本に計画し,創意や特別活
動の時間を充てた。題材は,児童の興味・関心,
日常の生活体験,日本や外国の伝統的・文化的
質問2
行事等を基にした。また,季節を感じる歌やジ
ェスチャーを伴った歌を考えた。これは児童が
あなたが行ってみたい国は,どこですか。
また,その理由は何ですか。
(1)アメリカ
13人
ディズニーランドに行きたい・マグワイヤーや
サミーソーサに会いたい・大リーグを見たい
(2)ハワイ
13人
泳ぎたい・海がきれい・果物がおいしそう
(3)オーストラリア
10人
たくさんの動物がいる・自然が気持ちよさそう
・コアラやカンガルーに会いたい
(4)スイス
6人
建物がきれい・きれいな景色がたくさんある
英語に音声から慣れ親しむ上で大変適している
と考えたからである。題材によっては隔週より
も連続の方が望ましいものもある。
第3学年年間学習指導計画案
月
題
材
4 あいさつをしよ
地図帳で知っている・テレビで見たことがある
・新聞で見たことがある等
実践的な場面の工夫や活動
ボールゲーム,インタビュー
英―5
表現を練習するなどして,英語に親しませたい
・空気が気持ちよさそう
(5)イギリス
4人
ALTの先生の国・自然があって気持ちよさそう
その他 イタリア,エジプト,カナダ等
と考えた。
またALTの英語を聞くことにより,日頃カ
タカナで耳にしている動物の名前が違ったよう
質問3「外国語が使えたらいいな。」と思うときは
どんな時ですか。
外国人に会ったとき・海外に行ったとき・ALTの先生
と話したいとき・テレビの中で外国の人が話しているとき
・英語のテレビや映画を見ているとき・大人が英語をペラ
ペラ話しているとき等
質問4 外国語を耳にするときは,どんな時ですか。
また,どんな場所で聞こえましたか。
外国人が日本に来ているとき・ALTの先生が英語クラ
ブ にきたとき・英語教室に行ったとき・CDを聴いたと
き・飛行機や新幹線でのアナウンス・テレビ・駅・公園・
マーケット・映画館・エレベーター等
に聞こえることや,動物の鳴き声も自分たちが
聞く鳴き声とは違って聞こえることにも気づか
せたいと考えた。
ウ 学習指導の実際
[理科1時間]
校庭で,観察を続けている動物の様子を調べ,秋
になって動物の様子が変化したことを,季節の変化
と関連づけて考える。
質問1,2では,新聞やテレビ等の情報から
[国際理解(図工)1時間]
たくさん国を知っており,中には都市名なども
色カ−ドを見て,ALTの正しい発音を聞きなが
含まれていた。また,社会科で地図帳を使い始
ら,色の名前の発音練習をし,色カルタを使ったグ
めるために外国に対して関心が高まっていると
ル−プ活動を行う。さらに,英語で習った色の名前
思われる。質問3,4では,児童の生活経験の
が入った歌「I can
中から感じたり,興味のあることから外国語を
[国際理解(理科)1時間
意識している様子が伺える。
方を練習し,グル−プでカ−ド遊びをする。さらに,
ある。ALTとの出会いに対しては,初めとま
動物の鳴き声の聞こえ方について考える。最後に,
どいがあり自然に言葉が発せられなかったが,
前時に練習した歌を英語で歌う。
回数を重ねるごとに,緊張感もなくなり,廊下
エ
で会ったときなど,“ Hello!”と声をかけて
本時(3/3)
( ア)本時の目標
いる。このように,児童がALTと自然に接し
ALTの英語を聞いたり,真似したりしなが
ている姿が,アンケート結果にも表れている。
ら,動物の鳴き声には聞こえ方に違いがあるこ
題材について
とを知り,ALTとのゲ−ムを通して楽しく活
本題材の選定にあたっては,次の2点を考慮
動する。
した。
( イ)本時の授業仮説
児童の興味・関心を大切にしながら,教
○
科の学習内容と国際理解を関連させた題材。
○
本時]
英語で発音する。また,「Do you like ∼?」の言い
の教科の中で,ALTと一緒に学習した経験が
○
rainbow」を歌う。
a
動物カ−ドを見ながら,いろいろな動物の名前を
本学級の児童は,3年生の時,音楽,国語等
イ
sing
実践的な場面の工夫として,児童にとっ
て関心がある動物を取りあげ,日本語と英
ALTの英語やALTを通じて知る異文
語での鳴き声の聞こえ方に違いがあること
化に関心を持ち,楽しく活動できる題材。
に気づかせれば,異文化に対する興味・関
検証授業として,理科との関連を中心とした
心が高まるであろう。
「わたしの好きな動物」を行った。
○
児童は,理科の単元「季節と生き物」で,季
ALTと楽しく動物の絵カ−ドを使って
遊び,身体を動かしながら英語の歌を歌え
節の変化に気づきながら,校庭で見かける動物
ば,英語に親しみ楽しく学習に参加できる
や植物の観察を続けてきている。そこで,本題
であろう。
材を「わたしの好きな動物」として,動物の名
前を英語で発音したり,ゲ−ムを通して英語の
英―6
(ウ) 授業の実際
1
りしました。もっといろいろな動物の英語やイギリ
あいさつ
スの鳴き声を知りたかったです。ALTの先生のや
ALTが児童の名札を渡しながら,児童とそれ
る鳴き声がそっくりだったので,とてもびっくりしま
ぞれ英語であいさつをする。
2
した。ALTの先生との授業は楽しかったです。ま
動物の名前
た英語の学習をしたいです。
提示された動物カ−ドを見ながら,いろいろな
動物の名前を英語で発音する。
dog, cat,chicken, cow, pig, horse, crow, duck,
monkey, rabbit, elephant, lion, koala, giraffe, bear
これらのことから,児童は,動物の名前を楽
しく覚え,動物の鳴き声については,自分たち
が普段耳にする鳴き声と同じように聞こえたり,
動物の名前を使いながら,“Do you like ∼? ”
あるいは,全く違うように聞こえることに驚い
の言い方を練習する。質問に対して,“Yes.” や
ていた。さらに,他の動物の名前や鳴き声をも
“No.” で答える。
っと知りたいと感じていた。ほとんどの児童が,
3
グル−プ゚練習
これからの学習をとても楽しみにしている。
グル−プに分かれて,動物カードを取って遊ぶ。
4
動物の鳴き声
英語で覚えた動物の名前の中から,鳴き声の聞
5
それらを国際理解の学習に結びつけることで,
こえ方について考える。
児童が,相互に興味・関心を高めることができ
歌
た。また,ALTとの活動を通して,異文化に
「きらきら星」を英語で歌う。
6
本単元は,教科との関連を考えた学習である。
対する興味・関心も高まった。
あいさつ
カ
終わりのあいさつをする。
資料―2 「わたしの好きな動物」
次の視点から年間学習指導計画案を作成した。
○
年間学習指導計画案
児童の興味・関心を大切にした,教科・
領域との関連を図った題材構成
○
4つの視点を取り入れたALTとの学習
○
ALTの教科での活用時間
○
ジェスチャ−,リズム感のある歌の工夫
月
オ
4
考察
児童に,異文化に対する興味・関心を高めさ
せ,英語に慣れ親しみ,楽しく学習させること
5
を心がけた。
児童は,ALTとのゲ−ムや歌等を通して英
6
語を楽しみながら覚え,覚えた英語を積極的に
使おうとしている。消極的だった児童も,これ
らの学習に取り組むことによって,他の授業に
7
も意欲的に参加するようになった。
検証授業後には,次のような感想があった。
わたしは,今日動物の名前をいろいろ覚えられた
9
ので,とてもよかったです。日本の言い方とALT
の先生の言い方はとても違っていたので驚きました。
これからも,外国のいろいろなことを知りたいです。
10
動物の鳴き声がイギリスと似ていたので,びっく
英―7
第4学年年間学習指導計画案
教科・領域
題材
実践的な場面の工夫や活動
学級指導(4年 あいさつ 英語の自己紹介遊
しよう
生になって)
び,カ−ドゲ−ム
国語(楽しかっ 花
歌− Good morning
to you
た遠足)
算数(わり算) 今,何時 英語のナンバ−コ
理科(ものの重 私は科学 −ル,カ−ドゲ−
さとてんびん) 者
ム
歌−10 little Indians
音楽(エ−デル 楽しい歌 カ−ドゲ−ム,フ
ワイス)
ル−ツ・バスケッ
学級指導(給食 好きな食 ト
べ物
指導)
歌− Edelweiss
水と遊ぶ インタビュ−ゲ−
体育(水泳)
学級指導(夏休 一週間
ム,英語の曜日と
みのすごし方)
月遊び
歌− Twinkle Twinkle
Little Star
社会(わたした 地図の見 ジェスチャ−ゲ−
方
ちの福岡県)
ム,ロンドン橋遊
体育(バスケットボー スポーツ
び
ル)
歌− London Bridge
図工(飛び出せ 好きな色 カ−ドゲ−ム,色
お話)
理科(季節と生
き物)
11 算数(かくれた
数はいくつ)
体育(かけ足と
なわとび)
12 国語(一本の鉛
筆の向こうに)
算数(調べ方と
整理のしかた)
1 学級指導(今年
のめあて)
社会(寒い土地
のくらし)
2 学級指導(成長
する体)
国語(四年一組
物語)
3 お別れ集会
(歌,ゲーム等)
わたしの好
きな動物
数字
ジェスチャー
机の中の
もの
数字
新年のあ
いさつ
寒い冬
大切な体
僕の夢,
私の夢
4年生の
まとめ
-ありがとう−
つきおに
歌− I can sing a
rainbow
カ−ドゲ−ム,ド
ント・セイ・21ゲ
−ム,ジェスチャ
−ゲ−ム
歌− Cuckoo
インタビュ−ゲ−
ム,飾りの色ぬ
り,カ−ド作り
歌− We wish you a
merry X'mas
すごろく,カ−ド
ゲ−ム
歌− BINGO
福笑い,タッチゲ
−ム
歌− Head and
shoulders
以上のアンケート結果から,外国語を話すこ
とに加えて,外国の文化や生活様式,外国人の
考え方を学ぶことによって,国際理解を深める
ことができるのではないかと考えられる。
イ
単元の目標
検証授業としてProgram 7の単元を取り上げ
た。この単元の題材は,空港における入国審査
やアメリカの日常生活である。入国審査で用い
られる表現は,店やレストラン,ホテル等でも
応用が可能であり,アメリカの日常生活につい
て知ることは,国際理解を深める上で役立つと
考えられる。
そこで,国際理解を深めるための実践的な場
面の工夫や活動に取り組むにあたり,以下のよ
うな目標を考えた。
サンクスカ−ド
○
入国審査の場面で用いられる表現を用い
て,英語で積極的にコミュニケーションを
(3) 中学校1年生
ア
図る活動に取り組むことにより,外国人に
“Kumi in America”
対して自分の考えを伝えることができるよ
生徒の実態
うになる。
生徒の実態を把握するため,中学校1学年生
○
徒177人を対象に,事前アンケート調査を実
アメリカの日常生活(住まい,学校生活
施した。
等)について,資料収集を行ったり,AL
質問1 外国の文化に興味がありますか。
①大いにある
17%
②かなりある
37%
③あまりない
41%
④全くない
5%
質問2 国際理解を深めるために必要なことは
何だと思いますか。(複数回答)
①外国語を話せるようになる
73%
②外国人と差別なく接する
71%
③外国人の考え方を理解する
62%
④外国の文化や生活様式を理解する
57%
⑤誰に対しても自分の考えを言える
48%
⑥外国に積極的に出かける
31%
⑦その他
6%
Tを通して学習することにより,異文化に
対する関心を高め,習慣や考え方を知ると
ともに,多様な文化や価値観に対する柔軟
性を身につけることができる。
ウ
学習指導の実際
[第1時]Program 7-1
新出単語,本文,入国審査の場面で必要な表現
を学習する。
[第2時]Program 7-1 (本時)
「入国審査にチャレンジ!」による対話練習を
する。
質問1では,半分以上の生徒が外国の文化に
[第3時]Program 7-2
興味をもっていることが分かる。
新出単語,本文を学習する。
[第4時]Program 7-3
質問2では,「外国語を話せるようになる」
新出単語,本文を学習する。
「外国人と差別なく接する」が約7割,「外国
[第5時]Program 7 のまとめ(1)
の文化や生活様式を理解する」「外国人の考え
Program 7-2 と7-3 で学習した内容(住まいの
方を理解する」が約6割で,外国語を話すこと
様子,学校生活等)について,学校図書館にある
だけではなく,外国の文化や生活様式,外国人
資料も参考にしながら,班ごとに疑問点等を出し
の考え方等を理解することをも重視している傾
合う。
向が伺われる。
[第6時]Program 7 のまとめ(2)
英―8
ALTを迎えての授業。前時で班ごとに出し合
次に,そのワークシートを用いながら,班ご
った疑問点等をALTに質問し,ALTからもそ
とに対話練習を行った。隣同士の二人が一組と
れらに関連する内容でスピーチをしてもらい,理
なり,入国審査官と旅行客の両方の立場とも練
解を深めていく。
[第7・8時]問題練習
文法事項に関する問題練習を行う。
エ
本時(2/8)
習をした。対話練習を十分に行うことで,自分
の名前や入国目的等を英語で説明できるように
した。
その後,実際に生徒が入国審査官や旅行客に
( ア)本時の目標
ロールプレイ「入国審査にチャレンジ!」に
取り組み,入国審査官と旅行客の両方の立場で
積極的に対話をすることにより,自分のことに
ついて英語で説明できるようになる。
( イ)本時の授業仮説
実践的な場面の工夫や活動として,入国審査
の場面を取り上げ,積極的に対話活動に取り組
なり,自作のパスポートを使いながら,英語で
入国審査を行う(あるいは受ける)活動に取り
組ませた。最初に教室の前半分の生徒が,隣同
士の二人一組で入国審査官(9か国)になり,
後半分が旅行客(18人)になる。旅行客は自
由に各国を行き来して,入国審査を受ける。そ
して途中で役割を交替して活動を続けさせた。
ロールプレイの際は,あらかじめ練習した表
めば,生徒は自分のことについて英語で説明で
きるようになり,活動を通して国際理解が深ま
るであろう。
(ウ) 授業の実際
現だけではなく,各自がこれまで学習した単語
や文,あるいはジェスチャー等をできるかぎり
活用しながら対話を行うように促した。また,
1
あいさつ
旅行客の発言について,表現や発音に多少間違
2
入国審査に必要な表現を用いた対話練習
いがあっても,内容が理解できれば,入国を許
(1) 前時で学習した入国審査に必要な表現を,口
頭練習で確認する。
可できるものとし,間違いを恐れずに対話を続
けるように指示した。
(2) 自分の名前や入国目的等を取り入れながら,
必要な表現をワークシートにまとめる。
(3) 班(ペア)で,対話練習をする。
3
「入国審査にチャレンジ!」
ロールプレイの後,パスポートに添付されて
いる自己評価表を用いて,自己評価をさせた。
感想の欄には,感じたことや疑問点等,自由に
記入するように指示した。
入国審査官と旅行客の立場で,交替で対話活
4
生徒の感想には,次のようなものがあった。
動に取り組む。
「楽しかった。熱中した。」
自己評価
「少し分からない単語があったけど,きちんと全部
言えたのでよかった。」
自己評価表を用いて自己評価をする。
5
本時のまとめと次時の予告
6
あいさつ
「英語できちんと言えたのでよかったと思う。」
「入国審査と聞いて『むずかしそう』と思っていた
けど,ちゃんとできてよかった。」
指導にあたっては,国際理解を深めさせるた
「全部の国を回れなかったけど,とても楽しく,勉
めに,入国審査の場面に即したロールプレイを
強になりました。これで本当の入国審査もバッチリ
取り入れた。
だと思います。」
「今日は海外旅行の時役立つことができてよかった
まず,前時に学んだ入国審査の場面で必要な
です。」
表現を,口頭練習を行いながら確認した後,そ
「みんなといろいろ対話できて,これでもう外国旅
れらの表現について,名前や入国目的等,自分
行に行っても心配ないです。」
の場合に当てはめながらワークシートに記入さ
せた。その際,班でお互いに教え合いながらま
とめさせた。
英―9
資料―3
「入国審査にチャレンジ!」
LTに質問し,ALTからもそれらに関連する
内容でスピーチをしてもらいながら,外国の文
化や生活習慣等に対する理解を深めさせるよう
にした。ALTとの授業後,次のような生徒の
感想があった。
「すごく楽しかった。自分の意見がちゃんと伝わっ
たので,よかったです。」
「楽しかった。話が難しかったけど,外国の文化も
最後に,本時で用いた表現を口頭で確認し,
いろいろだなあと感じました。」
まとめた。
「昨日の授業で,アメリカの学校生活や文化などが
検証授業後は,外国の住まいの様子や学校生
少し分かったような気がする。」
活等について,学校図書館にある資料も参考に
「こういう機会があると,国際的だしすごく勉強に
しながら,班ごとに疑問点等を出し合わせた。
なるので,またあるとうれしいです。」
「英語で会話とまではいかなくても,それぞれの国
そしてALTを迎えて,それらの疑問点等をA
の文化を教えあうのは楽しかった。」
外国 の 文化に 興味 が あ ります か
45
40
35
30
25
%
20
15
10
5
0
国 際理 解 を深 め る ため に 必要なことは
90
80
70
60
学習前
学習後
50
40
%
学習前
学習後
30
20
10
①
②
③
0
④
①
②
③
④
⑤
①大いに ある
②か なりある
① 外国語を話せるよ うになる
③あまりない
④全くない
接する
⑥
⑦
②外国人と 差別なく
③外国人の 考え方を理解する
化 や生活様式を理解す る
⑤誰に対しても 自分の考
え を言える ⑥外国に積 極的に出かける
オ
考察
④ 外国の文
⑦そ の他
「外国の文化や生活様式を理解する」「外国人
学習の成果としてあげられるのは,英語の学
の考え方を理解する」「外国人と差別なく接す
習の目的が,単に単語や文法を知ることではな
る」が7∼8割を占めるなど,今回の一連の授
く,外国や自国の文化・生活習慣等を知ること
業を通して,国際理解の必要性を十分に感じ取
により,国際理解を深め,幅広くものごとを考
ったものと思われる。
えられるようになることであるということを,
カ
生徒がより深く実感するようになったというこ
仮説の4つの視点をもとに,国際理解を深め
とである。一連の授業後に,授業前と同じアン
る単元,指導にあたっての留意点を考慮した年
ケートを実施した。
間学習指導計画案を作成した。
いずれの質問に対しても,事前アンケートに
年間学習指導計画案
(特に重視する視点
①異文化への関心
比べて,積極的な意見が見られる。特に質問2
的コミュニケーション
については,各項目とも回答率が大きく伸びて
人に自分の考えを伝える)
おり,なかでも「外国語を話せるようになる」
英―10
②言語及び非言語
③文化,価値観への柔軟性
④外国
第1学年年間学習指導計画案
月
Pro. 学習内容・題材
実践的な場面の工夫や活動と
指導にあたっての留意点
特に重視する視点
4
1
2
あいさつ
ロールプレイにより,簡単
自己紹介
なあいさつ,自己紹介等を ② ・英語の会話の中では,ひんぱんに相手の名前を呼びあう。
・紹介の際は,①目下を目上へ②身内を身内以外へ③男性を女性へ,の順。
他者の紹介
行う。
・握手の際,手を差し出すのは女性が先。
アメリカの家屋
個人またはグループで調べ
・アメリカの家は建物の前面に広い敷地があり,それがプライベートな部分
イースター
学習を行い,発表しあう。 ①
5
とオフィシャルな部分(公道)とを区分。特にブロック塀等はない。
・イースターエッグは,キリスト復活の記念祭で贈物にするものである。
日本と外国の学校 相違点をテーマにディベー
・英語の会話では,自分のことや意見ははっきり主張することが大切。
生活の相違点(昼 トを行う。また,ALTに ① ・カフェテリアで昼食を取る,掃除は業者が行う,というのが一般的。
3
食,掃除等)
相違点について話を聞く。 ③ ・会話では,Yes./No.だけの返事ではなく,その理由を述べたり,別の話題
④
6
につないでいくのが,円滑なコミュニケーションのかぎである。
国際電話のかけ方 ロールプレイにより,実際 ① ・国際電話には,ダイヤル直通通話,指名通話,コレクトコール等がある。
4
日米の時差
の電話の会話を体験する。 ②
日本の風物
日本の伝統行事や,外国と
5
(たこ焼き,伝統 の食文化の違いについて調 ①
7
行事)
・相手から何かを勧められた時,受ける場合も断る場合も,はっきりと相手
べ学習を行い,発表しあう
自己紹介
に伝える。相手から断られてもさらに勧めることは,礼儀に反している。
・相手からほめられた場合,それを素直に受け入れる。
初対面のあいさつ ある程度の長さの自己紹介
6
電話をかける際に,相手の居場所との時差を考慮すること。
・Nice to meet you. は,初対面の喜びを表現したものであり,日本語の
文を作り,他の生徒の前で ②
発表する。
「はじめまして」のような,へりくだった表現とは異なる。
・先生や友達同士でも,相手を名で呼ぶ。これは姓が表す「家族」が社会の
9
単位となっている文化と,「個人の尊重」を掲げる文化との違いである。
入国審査
ロールプレイで入国審査を ② ・海外へ行く際,パスポート以外にビザ等を必要とする場合がある。
外国の家庭生活の 体験する。ALTに家庭生
7
様子
活について話を聞く。
・日本では昔から,畳の部屋を食堂・寝室等,色々な用途に用いてきた。
③
アメリカでは,各部屋は独立した用途がある。
・日本では親子が一緒になって寝る習慣があるが,アメリカでは幼い頃から
④
10
独立した寝室に寝かせる。親子の結び付きを重視する考え方と,たとえ自
分の子どもであっても,独立した人格とみなす考え方の違いともいえる。
カナダとイギリス 個人またはグループで調べ
8
・カナダの国旗は,カエデの葉を中央に,太平洋と大西洋を表す左右の赤い
学習を行い,発表しあう。 ①
帯からできている。英語とフランス語が公用語。イギリスの国旗は,イン
グランド,スコットランド,北アイルランドの旗が組み合わされたもの。
アメリカの有名な 個人またはグループで調べ
人物,観光地
・ワシントンD.C.は連邦直轄の特別区で,コロンブスの名に由来。
学習を行い,発表しあう。 ① ・リンカーンは,民主主義の理念を表した「人民の,人民による,人民のた
9
めの政治」という言葉で知られている。
11
・ナイアガラの滝は世界第3位の規模で,アメリカとカナダの国境にある。
・自由の女神は,左手に独立宣言書,右手には世界を照らすたいまつを持つ
イギリスとサッカー 個人またはグループで調べ
10
・サッカーはイギリスで人気があり,正式名はassociation football。
学習を行い,発表しあう。 ①
footballといえば,アメリカ以外ではサッカーのことを指す。
得意なこと・不得 日本と外国との価値観の違 ① ・日本では,相手の気分を害するような自己主張はせず,皆が横並びに(同
12 11 意なこと
いをテーマに,討論をする
じに)なることが好まれてきた。しかし,アメリカには,色々な国から色
③
会話表現の復習
1
12
クイズ番組づくりを通して
々な人種の人々が集まっているので,逆に同じであることが不自然。
・Excuse me.は軽いおわびに(あるいは相手に迷惑をかけるかもしれないので、事前に断わっておく場合に)用いら
既習の会話表現を復習する ②
アメリカの授業の 個人またはグループで調べ
れ,I'm sorry.は過失の謝罪に(あるいは相手に迷惑をかけた後に) 用いられる。
・アメリカの学校において,生徒が使う言語は多様であり,英語を理解でき
13 様子と国内の時差 学習を行い,発表しあう。 ①
ない生徒のための特別クラスを設けたりしている。
・アメリカの標準時は6種類。サマータイムの時期には1時間早くなる。
2
日本の生活習慣と ALTに,題材に関連する ③ ・世界にはいろいろな国があり,いろいろな人種の人がいる。当然考え方も
14 文化
3
内容で話を聞き,意見交換
をする。
多種多様であり,お互いに共通点や相違点,良い点と悪い点をお互いに認
④
めあうことが国際理解の第1歩である。
英―11
(4) 中学校3年 “A Blend of Cultures”
T(ゲスト・ティーチャー)に,質問した
ア
り意見を聞いたりして,英語のネイティブ
生徒の実態
生徒の実態を把握するため,中学校3学年生
・スピーカーではない外国人に,英語で自
徒67人を対象に,事前アンケート調査を実施
分の考えを伝えることにより,国際語とし
した。
ての英語の役割を認識させる。
質問1
○
外国の文化に興味がありますか。
諸外国との交流の中で,日本文化が形成
①大いにある
20%
②かなりある
31%
③あまりない
43%
への関心を高めるとともに,多様な文化や
6%
価値観に対する柔軟性を養い,生徒の国際
④全くない
質問2
されてきた過程を学習することで,異文化
国際理解を深めるために必要なことは何だと思い
理解を深める。
ますか。(複数回答)
①外国語を話せるようになる
72%
②外国人と差別なく接する
66%
③外国の文化や生活様式を理解する
60%
④外国人の考え方を理解する
55%
ウ
学習指導の実際
[第1時]Program4-1
新出単語,西欧との最初の接触とポルトガル文
⑤誰に対しても自分の考えを言える
54%
化の影響について
⑥外国に積極的に出かける
46%
[第2時]Program4-2
⑦その他
7%
新出単語,外来食物であるジャガイモとカボチャ
の語源
質問1では,半数以上の生徒が外国の文化に
[第3時]Program4-3
興味を持っているが,半数近くの生徒は興味を
新出単語,日本と英語の最初のかかわり(ウイ
示していないことが分かった。
リアム・アダムズの活躍)
質問2では,7割以上の生徒が「外国語を話
[第4時]Program4-4
新出単語,オランダとの交易による日本文化の
せるようになる」ことが必要だと感じており,
輸出と蘭学の輸入
言語習得が第一と考えている生徒が多いことが
[第5時]Program4-5
分かった。また,半数以上の生徒が,「外国人
新出単語,中国と韓国の日本文化への影響と
の考え方を理解する」「外国人と差別なく接す
異文化の混合体としての日本文化
[第6時]Program4のまとめ(1)
る」と答え,人権感覚や共生意識が必要だと感
この単元で学習した異文化交流の中から隣国
じている生徒が多い。
の韓国文化について班ごとに調べ,レポートに
以上のアンケート結果から,多数の生徒は,
まとめる。
国際理解を深めるためには,まず言語習得が必
[第7時]Program4のまとめ(2)[本時]
要であると考えており,他の項目の重要性を深
GTに韓国人のK先生を迎え,班ごとにできる
く感じ取っていないことが分かった。そのため
限り,英語を使ってレポートを発表し,質疑の後
K先生と意見交流を行う。
に,外国語を話すことに加えて,外国の文化や
[第8時]
生活様式,外国人の考え方を,意識して学ぶこ
Program 4 に出てきた文法事項に関する問題練習を
行う。
とによって,国際理解を深めることができるの
エ
ではないかと考えられる。
イ
本時(7/8)
(ア) 本時の目標
単元の目標
○
検証授業として, Program 4の単元を取り上
韓国の衣食住について,発表したり,G
げた。ここでは,国際理解を深めるための,実
Tと質問や意見交換することで,日本との
践的な場面の工夫や活動に取り組むにあたり,
文化や生活習慣の違いに気づき,隣国であ
以下のような目標を考えた。
る韓国に対する理解を深めさせる。
○
○
異文化との交流,特に韓国の文化につい
英語を通しての意見交流を試みることで,
国際語としての英語の役割を認識させる。
て調べた内容を英語で発表し,韓国人のG
(イ) 本時の授業仮説
英―12
韓国人で,本校のハングル語会話教室のK先
生をGTに迎え,英語を通してコミュニケーシ
かったことや日本との違い等について,感じた
ことを自由に書かせた。
ョン活動を行わせることで,生徒は異文化や生
生徒の感想には,次のようなものがあった。
活習慣の違いを認識し,国際理解を深めること
「(韓国は)いろいろな面で楽しい。日本とは,ほ
とんど変わらないと聞いて,ちょっと行ってみた
いと思った。」
「発表はスムーズにいっていたけれど全体的に声
が小さかった。」
「(K先生の英語は)僕たちよりもかなり上手だっ
た。今の韓国の子供たちは,小学生の時から英語
を学習しているのなら,日本もそうすればいいと
思う。けど,日本語の方が上手かった。」
「隣国の韓国ともっと交流したい。英語をマスタ
ーしたら,KOREANを習いたい!」
「韓国のご飯は焼き肉だと,思っていたのに,た
まにしか食べないと聞いてビックリしました。」
「オンドルというものがあることをはじめて知り
ました。」
「K先生の話を聞いて私はますます韓国に行きた
くなった。」
「(K先生の英語は)僕にも分かるくらい簡単だっ
た。」
「発表になかったことも話してくれてとても勉強
ができるであろう。
(ウ)授業の実際
1
あいさつ
2
本時の導入
(1) GTのK先生の紹介
(2) 班ごとに発表
本文中の “ Do you know where udon and miso
came from?” をもとに特に,韓国の衣[衣
類
(ファッション)],食,住[家]の3点について,班ごと
に分担して調べ学習をし,日本との類似点と相
違点をまとめ班別に発表する。
3
GTとの質疑応答
班ごとのレポートの発表中で出てきた疑問点
を,K先生を交え話し合う。
4
韓国と日本についてGTと話し合う。
日本文化と韓国文化の違いについて意見交換
になった。」
をする。
5
「英語が上手だった。日本語も英語も話せるなん
本時のまとめ
てすごいと思った。」
今日の授業でわかったことや,驚いたこと等
「住居のことは全然知らなかったけど,他の班の
を感想にまとめる。
6
終わりのあいさつ
発表でよくわかった。」
指導にあたっては,韓国の衣,食,住の3点
資料―4
「韓国人のGTとの授業」
について,1つの班が1項目を担当し,それぞ
れが分担して発表を行うようにした。
発表のすべてを英語で行うことはできなかっ
たが,ポイントをいくつかに絞って表現や発表
の仕方を工夫しながら,英語で話す姿がみられ
た。
GTのK先生もこの10年来はじめて使うと
いう英語で,流暢ではないが,ゆっくりと力強
オ
い口調で話していた。生徒も普段のALTの先
お互いに第2外国語となる英語を媒体として,
考察
生とは全く違う英語を,一生懸命集中して聞き
日本人と韓国人がコミュニケーションを行うと
取っていた。
いう試みは,生徒たちにも新鮮な驚きがあった。
K先生は,表現の難しい部分については日本
各班とも自分たちが調べ学習した内容に英語
語で,また生徒が調べた韓国文化については,
を取り入れながら発表するのにかなり苦労して
写真やパンフレットを用いてわかりやすく説明
いたが,それぞれに工夫をこらした発表がみら
していた。
れた。
授業の後,生徒に本時の授業で,はじめて分
また,K先生もゆっくりとした英語で,力強
英―13
く話していたのが生徒の印象に残っていた。
一方では,全く違った面もある隣国の韓国につ
韓国の衣食住について,各班の調べた内容に
いての学習を通して,生徒たちは国際理解の面
付け加えながら,実生活に基づいた話をしても
で学習を深めることができたものと考える。
らった。生徒がまとめた知識としての韓国の文
カ
化に,具体的でわかりやすい説明や実体験が加
仮説の4つの視点をもとに,国際理解を深め
わり,韓国に行ってみたいという思いを強めた
る単元,指導にあたっての留意点を考慮した年
生徒もかなり出てきた。また,生徒たちは,韓
間カリキュラムを作成した。
国人のK先生から見た日本文化や日本人観につ
( 特に重視する視点①異文化への関心
いての話にも,熱心に耳を傾けていた。
コミュニケーション
外見だけでなく共通な部分もかなりあるが,
年間学習指導計画案
②言語及び非言語的
③文化,価値観への柔軟性
④外国人
に自分の考えを伝える)
第3学年年 間学習指導計画案
月 Pro.
学習内容・題材
4
電話の英語表現
電話での道案内
1
日英の桜花と
バラの花
5
2
日英の身ぶり
の相違点
6
3
コンピュータ
の発達
Pop
Box1
日本文化
の成り立ち
外国文化との混
じり合いで形成
された日本文化
7
4
9
5
6
国家間の枠を越
えた旗やシンボ
ルの持つ意味
日本人医師の国
際貢献
10
宇宙から見える
地球の姿
11
7
12
1
8
2
3
Reading
アジア人留学生
から見た日本人
自分の夢につい
てスピーチ作
り。
飢餓救済に尽力
した米国の音楽
家たち
実践的な場面の工夫や活動
と特に重視する視点
フィリピン人のエディにつ
いての英文を聞き取り日本
①
との違いを発表しあう。
日英での桜の開花期間の違
いや硬貨のデザインから桜
①
花やバラの花に対する見方
の違いを読みとらせる。
ロールプレイを行うことで
相違点に気づかせる。
②
コンピュータ技術の発達に
大きく貢献した日本人につ
いて意見を発表しあう。
日本文化について意見をま
とめ,英文にしてみる。
日本語の中に残る外来語に
ついて調べ発表しあう。
ウイリアム・アダムズの活
躍を読み取り,日本への影
響について話し合う。
長崎・出島の果たした役割
について,読み取り,発表
し合う。
日本の隣国である中国や朝
鮮との文化交流について,
調べ学習をし,話し合う。
国連旗,赤十字旗,エコ・
マークの成り立ちや意味に
ついて聞き取り,話し合う
アジア保健研究所を創設し
た川原医師に学び,自分た
ちにもできる国際貢献につ
いて,意見を出し合う。
新参者の人類によって瀕死
の状態に追いやられた地球
について読み取り,地球を
救うために何をすべきかを
話し合う。
浪費家で討論べたとの指摘
について,意見を出し合う
国際社会で生きる世代とい
う点を考慮して,自分の夢
を英文にさせる。
アフリカの飢餓救済に行動
を起こした米国の音楽家に
学び,感想を出し合う。
④
③
③
③
①
④
①
①
③
④
③
④
④
英―14
指
導
に
あ
た
っ
て
の
留
意
点
アメリカの影響下,公用語となっている英語と
近年の政策によって公用語化しているタガロ
グ語。
気温の緩やかな変化で延々咲き続ける英国の桜
とすぐに散る日本の桜。また,日本の硬貨のデ
ザインとなっている桜と英国硬貨のバラを切り
口にして考えさせる。
日本では,こちらへと手招きする身ぶりが英国
では,「立ち去れ」の意味であり,これがもと
でコミュニケーション・ギャップが生じる。
芸能・音楽・科学・数学・スポーツ等の各方面
で活躍する日本人について意見交流し,自分の
将来への目標を世界へ広げさせる。
日本古来の布団,畳,襖などに対して,輸入文
化の洋食や洋食器,靴。また日本に古くからあ
るが中国から伝来の書道等に着目させる。
教科書のパンやカルタ,カボチャやジャガイモ
から,他にも日本語に残る外来語を見つけさせ
ることで,異文化交流の歴史を探らせる。
英語の伝授,造船法や繰船法の伝授等や日本人
名まで持っている理由を考察させる。
浮世絵や陶磁器が,西欧に与えた影響や逆に蘭
学の名で,日本中に流布した西欧の科学や医学
に着目させる。
うどんや味噌の伝来を着眼点として,鎖国時代
を含め,常に門戸を開放していた中国と朝鮮と
の異文化交流について考察させる。
国境を越え,敵味方を越えたところに存在する
国連旗や赤十字旗の持つ意味と地球環境に配慮
したエコマークの意義について考察させる。
上から恵み与える援助ではなく,一緒に汗をか
きながら,相手の自立をめざした川原医師とそ
の仲間たちの,アジアを中心とした国際貢献に
着目し,自分たちにできることを考えさせる。
宇宙空間でひときわ美しく見える地球が,新参
者の人類によって破壊され瀕死の状態にあるこ
とを認識させ,どうすれば地球を救えるか考え
ることで,地球全体として共に生きる気持ちを
育てる。
昼食のパンでいっぱいのゴミ箱や意見交流のた
めの討論が苦手な日本人について考えさせる。
国際社会で共に生きる世代の一人という視点を
考慮に入れながら,自分の将来について英文作
りをさせる。
超一流の音楽家たちが名曲を作り上げ,それが
多くの人々の飢えを救済した事実に学び,自分
の意見を英語で表現してみる。
的に学習に参加し,楽しく活動する姿が見られ
Ⅴ
研究のまとめと今後の課題
た。また,使う英語は,児童の生活の中でよく
使われる単語を重視した。このことは,児童に
1
研究のまとめ
とって,親しめる無理のない活動に結びつける
本年度は,国際理解を深める英語教育の研究
ことができたと考える。
に取り組み,実践的な場面の工夫や活動を通し
中学校では,実践的な場面の工夫として,空
た英語教育の在り方についての研究を行った。
港における入国審査を扱ったロールプレイや,
その結果,次のようなことが明らかになった。
GTを迎えての意見交換を試みた。入国審査の
(1) 「国際理解を深める」ことについて
場面では,生徒全員が入国審査官や旅行客を演
小学校の事前アンケートから明らかになった
じ,本文をさらに発展させた内容で入国審査を
ことは,新聞やテレビ・ラジオ等で外国を何と
する(受ける)活動を取り入れた。その後,生
なく楽しいイメージとして捉えているが身近な
徒の関心のある内容を,直接ALTに質問させ
ものとしては感じていない,ということであっ
る活動も行った。韓国人のGTとの学習では,
た。それが,ALTとの学習活動を重ねるうち
あらかじめ班ごとに韓国について調べ学習を行
に,挨拶や自分の聞きたいこと,言いたいこと
い,疑問点を整理した上で,発表や質疑応答を
を英語でALTに伝えようとする態度が見られ
行わせた。GTから説明を受けることによって,
るようになってきた。
学習した内容の理解が深まった。授業後の生徒
このように,ALTとの学習活動を行うこと
の感想からは,どちらの学習でも,実践的な場
は,児童にとって外国語に対する関心を高める
面の工夫や活動を取り入れることで,単元に含
と共に,ALTという外国人を通して異文化に
まれる国際理解に関する内容について,理解を
触れることができ,国際理解が深まったと考える。
深めることができたと考える。
2
中学校の事前アンケートから明らかになった
ことは,外国に対する関心は高いが,表面的に
今後の課題
小学校では,ALTと担任とのTT授業を組
しか捉えていない,ということであった。
むことで,児童の国際理解への関心を高め,活
中学校1年生の授業後のアンケートでは,生
発な活動を引き出すことができたと考える。
徒の意識が大きく変わっている。生徒は,日本
その一方で,以下にあげる点が今後の課題と
と異なる生活習慣や文化について知ることが,
して考えられる。
国際理解を深めるためには大切であるというこ
○
とを,いっそう深く理解した様子が伺える。
国際理解は,あらゆる教科・領域の中で考え
中学校3年生は,GTとのTT授業によって,
教科・領域との関連を図った年間学習指導計画
ていかなくてはならない。児童の発達段階や興
日本文化にはない独自の文化があることを理解
味・関心を重視し,教科・領域との関連を図った
した。学習後のアンケートで,実際に韓国へ行
年間学習指導計画を立案することが大切である。
って,自分の目で韓国を見てみたいという生徒
○
の数が増加したことは,日本と違う文化に接す
本研究では,ALTを主体とした活動を行っ
ることができ,生徒の国際理解を深めることが
たが,ALT以外の外国人の活用も望まれる。
できたと考えられる。
GTの活用
今後,地域の外国人(留学生や永住者等)を
(2) 「実践的な場面の工夫や活動」について
GTとして招き,その国の言語や文化について
小学校では,英語に慣れ親しみ,楽しく活動
学ぶような学習も考えられる。
できる実践的な場面を設定した。
○
英語以外の外国語会話
英語を完全に理解できなくても,児童はAL
今年度の研究は英語を中心に行ったが,これ
Tの言葉を聞き取ろうと,目と耳を使って意欲
からは他の言語についても研究を進める必要が
英―15
ある。小学校での総合的な学習の時間における
○
資料や情報の効果的活用
外国語会話の指導について考えたときに,英語
国際理解を深める英語教育を推進していくた
だけでなく,他の言語(例えばアジア圏の言
めには,豊富な資料や情報の活用が不可欠であ
語)等への取り組みが今後の課題と考えられる。
る。資料や情報には,人的なものと物的なもの
また,中学校では,以下にあげる点が今後の
がある。人的活用として,ALTやGTが挙げ
課題として考えられる。
○
られ,地域の様々な人材を,今後活用していく
3年間を見通した年間学習指導計画
ことが必要であると考える。
今回は,1学年と3学年について,年間学習
物的な資料や情報としては,図書館の資料や
指導計画の作成に取り組んだ。これに2学年の
在外公館等の資料,さらにはインターネット等
計画を加え,さらにそれを3年間で見通したも
が考えられ,人的なものと組み合わせていけば,
のに再編していく必要がある。
さらに効果が高まるものと思われる。
( 参考 文 献)
1
文 部省
小 学 校学 習 指導 要領
文部省
( 平 成1 0年 )
2
文 部省
中 学 校学 習 指導 要領
文部省
( 平 成1 0年 )
3
文 部省
コ ミ ュニ ケ ーシ ョン を めざ した 英 語の 指 導と 評価
4
佐 野正 之
異 文 化理 解 のス トラ テ ジー
大修館
( 1995年)
文部 省( 平 成5 年 )
水 落一 朗
鈴 木龍 一
5
野畑
昭徳
英 語 授業 ア イデ アシ ー ト事 典
明 治 図書
( 1996年)
6
原田
昌明
英 語 の言 語 活動 WHAT&HOW
大修館
( 1991年)
7
青木
昭六
英 語 授業 実 例事 典Ⅱ
大修館
( 1994年)
研究指導者
谷
口
政
研究助言者
昭 (主 任 指導 主 事)
武
井
俊
詳 (西 南学 院 大学 教授 )
非 常勤 研修 員
安
岡
和
子
( 飯 倉中 央 小学 校)
中
山
正
男 (百 道中 学 校)
生
方
光
子
( 笹 丘小 学 校)
小
原
正
行 (三 宅中 学 校)
英―16
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