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Auto CADによる住居計画設計演習の話

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Auto CADによる住居計画設計演習の話
Nara Women's University Digital Information Repository
Title
Auto CADによる住居計画設計演習の話
Author(s)
瀬渡, 章子
Citation
瀬渡章子:奈良女子大学情報処理センター広報, Vol.2, pp. 81-90
Issue Date
1990-03
Description
URL
http://hdl.handle.net/10935/3772
Textversion
publisher
This document is downloaded at: 2017-03-30T11:43:01Z
http://nwudir.lib.nara-w.ac.jp/dspace
利用の事例
AutoCADによる住居計画設計演習の話
家政学部講師瀬渡章子
はじめに
建設業界における CAD(
ComputerA
i
d
e
dD
e
s
i
g
n:コンピュータ援助設計)システムの利用は、
近年加速度を増している。実務への CADの導入時期をみると、大手の建設会社や設計事務所では
かなり早いところもあるが、中小規模の会社へと利用の裾野が広がってきたのは、特にここ 1、 2
年のことである。
その背景として、何といってもコンピュータのハード・ソフトの進歩と低価格化をあげることが
できるだろう。近年のパソコンの普及と実務に使えるパソコン対応の多様な CADソフトの開発に
はまことに目覚ましいものがある。また、好景気にわきたつ建設業界における人手不足の解消や、
設備投資の増大なども CAD導入の誘因となっているようだ。
CADの急増に伴ってオペレーターの需要が高まっているが、建築設計に携わる人々にたいする
CAD教育は大変遅れているのが実情である。 CADに習熟するためには一定の期間を必要とするが、
現状の入手不足と、設計者一人につきパソコン一台というところまで設計環境が整えられていない
等の条件が相互に作用し合って、社内で少しばかりの CAD教育をやっても設計者はなかなか CAD
へ移行してし、かないようである。このような事情が、大学にたいする「社会的要請」というかたち
であらわれてきているように思える。
これに応えるかのように、建築系のコースを有する大学で CAD教育を実施するところが増えて
きた。ところが、この CAD教育については批判的な意見も聞かれる。この批判は、 CADには設
計製図の効率化、省力化、および完成図面の品質向上等の効果が期待されるが、これらを目的とし
た使い方であれば就職後に習得すればよいのだから、何も大学教育が応える必要はないという理由
に基づくものである。確かに、住居学、建築学を学び始めたばかりの学生にとって、デザイン力を
養うための従来の時間に割り込んでまでも、効率化、省力化のための CADオベレート訓練などを
行うことは、教育としてはあまり意味あるものではないだろう。
特に、先進的に CADを導入してきた大手某会社の使用例を間いていると、女子大で CAD教育
を行うのは考えものだと思ってしまう。というのは、そこでは実際に設計者が自分で CADを操作
するのではなく、専任のオペレーター(女性も多い)と設計者がマンツーマンで作業をしている。
オペレーターは CAD専門会社から派遣されることもあり、建築には全く素人でも、少しの教育で
オペレーターは勤まるらしい。そうなると、「私は CADができます。」といって就職しでも、男女
差別が色濃く残っている建築業界では、女性は「設計者」ではなく、単なる「CADオペレーター」
となってしまわないだろうか。専任のオペレーターが CADを操作するという話を耳にする時、い
8
1
つも気にかかることである。
演習に CADを導入する
大学教育に CADを導入する場合には、当然このような問題の検討は必要であろう。しかし、設
計教育を全面的に CADに置き換えるのではない限り、 CADも使い方次第というのが筆者の立場
である。
CAD自体の魅力は大きい。なにしろ、誰が書いても締麗な図面が、手を汚すことなく書けるし、
それは何枚もコピーができ、無限に修正可能である。また 3次元 CADであれば、設計した建物を
画面上に立ちあげ、模型を前にしているのと同様に任意の方向・角度から眺めてデザインを検討す
ることができる。従来は、長時間かけて模型を作成していたものが、 CADでは数個の図面の作成
と同時にこれをやってのける。また、カラーシェーディング( 3次元図面にカラーで、陰影をつける)
システムをつかえば、よりリアルな表現が可能となる。
従来の設計製図の方法では、時間の制約から代替案も少なくプレゼンテーションも十分ではなかっ
たものが、 CADを使うことで、少ない時間で多くの設計案を描くことができ、結果として設計の
質が向上するのではないか。また設計意図を伝達するためのプレゼンテーション技術の質の向上と
技法選択の幅の拡大は、教育としても有用であろう。
あくまでも仮説であるが、 CADをこのように位置づけた上で、住居学科 2回生の「住居計画設
計演習 l」の授業において試行的に CADを導入することになった。使用する CADは、情報処理
センターの情報処理教育室にある AutoCADとよばれるシステムである。この情報処理教育室に
は、教師用を含めて 37台のパソコンが設置されているが、そこに 41名の学生が受講したのだから、
今から思えば何とも冒険的な話である。
以下、この演習の流れに沿って、情報処理教育室における AutoCAD利用について紹介してみ
?
こ
いc
最初の操作は簡単
この授業は後期(半期)に開講されており、期間中 2つの課題が与えられる。このうち 1課題に
CADを利用することにし、筆者が担当した。通常の割当時間は、約 7週( ×1
8
0分)であるが、
実際にはパソコンの絶対数不足に加えてハード環境のトラブルも重なり、けっこう時間を費やして
しまった。
さて演習内容は大きく 2つに分かれる。一つは、 AutoCADの基本操作の習得であり、もうひと
つは独自の課題である。
前者の課題は、情報処理センターの講習会で配布された資料を活用させていただいた。情報処理
教育室の限られた時間を有効に使うために、これらの資料の一部は事前に配布してあったので、一
部の人達は読んできているようであった。
まず、 AutoCADそのものの操作に入る前に、パソコンの電源の投入、フロッピィの初期化等の
説明を行わねばならない。このあたりの話は、情報処理センターで「情報処理教育室利用の手引」
8
2
が作成されているので、たいていの学生はそれを読みながら結構手早く作業を終えてしまった。
次に AutoCADに入っていくのであるが、その手I
J
債は実に簡単である。パソコンの初期メニュー
画面においてカーソルで 〔
OAソフト〕を選択実行し、次の画面で 〔
AutoCAD〕を選択実行する。
すると図 1のような AutoCADの初期メニュー画面が表示される。ここで、最初はまず「新しい
図面を描く 」わけだから、メニュー〔 1〕を実行し、次に、図面に任意の名称を与えて(ここでは
TESTとなっている)入力すると図 2の画面に変わる。この状態で初めて図形を描くことができる。
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権
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⋮
「
盤
0
.
0
0
0
0
,
0
.
0
0
0
0
.画層。
~
o
c
設
制
事T
事 事的
定
事
:図面保管
グラフイ ツク ・;
I
Jーソル
コ
メ
マ
ニゃ
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ュ D:
納U
T
O
C
A
D鞘C
他.
r
m
xをロードしました:
J~ ・
a
ス z._•J - ン ・メニュー
コマンド /プロ γプト銅線
図 2 AutoCAD の標準画面と名部の名称、
8
3
室の AutoCADでは現在、マ
m
語)の入力によって行う。教育
ユ
一 D *︷疋
*
ニ
一
メ一叩*
主一間*設
作図は様々なコマンド(命令
(補助メニュー
(補助メニュー 2)
A
U
T
O
C
A
D
ウスとキーボードの 2種の入力
装置がある(教育室にはないが、
1)
****
A
U
T
O
C
A
D
円 弧
****
:属性定義
円
:ドーナツ
吟|:文字記入
:楕円
その他の入力装置にはメニュー
シート対応のタブレットなどが
ある)。
:
ハ
ヅ
チ
ン
ク
:図形挿入
マウスとは、その名の通り形
k線
がネズミに由来するが、それを
日:分 f
I吟
:線分
:継続
C
=閉じる
か取消
:一括挿入
:
オ
フ
セ
ヅ
ト
:
ポ
リ
ラ
イ
ン
動かして画面に表示されたカー
ソルの動きをコントロールする
ものである。このマウスを{吏っ
て画面右端のスクリーン・メニュ
選択できるようになっている
(
図 3。
)
一成集
ユ作編
り、ページをめくる感覚で順次
」
一
メ面面
にはそれぞれ補助メニューがあ
ニのの
ができる。これらの各メニュー
次画面
前図図
ーからコマンドを選択すること
:図面保管
前メニュー
図面の作成
図面の編集
図 3 スクリーン・メニューの主メニューと補助メニュー
キーボードからコマンド領域に直接コマンドを入力することもできるが、コマンドの数は 100余
りもあって初心者には大変である。この点スクリーン・メニューは楽であるが、 1つのコマンドを
実行するのむページを何枚もめくっていくような操作は大変疲れるし時間がかかるという欠点もあ
る。 したがって、よく使うコマンドはキーボードから入力することをお勧めしたい。
課題にチャレンジ
学生への AutoCADの概要説明を一通り終えると、次にフロッピィの初期化、図面ファイルの
作成を行い、いくつかのコマンドを実行してもらう。ここまでに要した時間は 90分程度。とにか
く長々とした説明よりも実際に操作してみる方が早いようだ。
次の時間は、講習会で使用された自習用テキストを配布し、 AutoCADの基本的な操作について
理解してもらう。このテキストは、室内設計をモデルとしており、 3部で構成されている一①部品
登録(椅子、テーブルを作図後、これを「複合図形」として登録する。登録された図形は他の図面
ファイルにも共通に利用できる)②種々の設定(用紙サイズ、図面の尺度など)を行い、簡単なオ
フィスの平面図を描く(ここでは、①で登録した複合図形を呼び出し、所定位置への配列も行う)
③ 2次元要素に高度と厚み与えて 3次元の図面を作成する。
以上の作業に要した時間は、早い学生で 5∼ 6時間である。この段階は、自習用テキストにそっ
8
4
て作業をすすめるので、座標値も既に与えられており、自分で決定することはほとんどなし」した
がって比較的スムーズに作業が進んでいった。
さて次の課題は
さて、 CADによる作図におおよその理解が得られた頃に、いよいよ白紙の状態から描くという
課題に移る。
その課題について説明しておこう。まず、マンションの住戸プラン(平面図)を配る。基本とな
る住戸プランには、外壁および水廻り部分(浴室、台所など)の壁はあるが、それ以外には部屋の
間仕切りは示されていなし」その基本プランを CADを使ってコピーすることがまず最初の作業で
ある。この住戸は、間仕切り収納家具や可動間仕切りを利用して間取りの変更が可能な、いわゆる
「可変型住宅」のモデルである。そこで、間取りのいくつかのバリエーションについてこちらから
示唆を与えておき、家族のライフステージに応じた間取り、家具配置を考えて、先の基本プランを
アレンジしていくのが、次の作業となる。
家族のライフステージとして、①夫婦と子供 1人( 3才女)、②夫婦と子供 2人(小 2女・ 3才
男
)
、 ③夫婦と子供 2人(高 2女・中 1男)の 3ステージを与えた。これらの課題は、時間的にみ
て少々過大に思われるかもしれないが、基本プランができてしまえば山を越したことになる。
設定を行う
その手順について要点を簡単に説明していこう。
まず、「( 1
)新しい図面を描く」ので、そのメニューを選択して、図面に名前もつけておく (これ
で先の TESTファイルとは別のもうひとつの図面ファイルが作成される)。これで準備 OKである
が、描き始める前にいくつかの設定を行う必要がある。まず尺度、用紙サイズの設定がある。スク
リーン・メニューから<設定>をマウスで選択し、次からは<メートル法>→尺度< 1:s
o
>→用
紙サイズ<420×297>と順に選択していく 。これで、 A4サイズの用紙に 5
0分の lの大きさで作
図されることになる。
その他の設定としては、作図モードの設定がある O まず<グリッド>の設定。これによって指定
した間隔で画面上に格子点が表示されるので、作業効率があがる。次いで<スナップ>を設定する。
この機能は、カーソルを指定間隔に強制的に移動させるもので、スナップ上の座標点はマウス操作
だけでも正確にヒットすることが容易となる。この課題では、グリッド間隔を 900mm、スナップ
間隔を 300mmとした。さらに、画面上の座標表示で少数点以下の表示を省略するための<単位設
定>、あるいは破線の幅を決める<線の尺度>などの設定を行う。
また、重要なのは<画層( LAYER)>の設定である 。 これはとても便利な機能で、簡単にいえば
トレーシングペーパーを重ね合わせるようにして作図していくことができる。作業の進行につれて
何本もの線が重なり合ってくると、削除、移動など様々な図面編集を行う際に、対象となる図形の
選択がやりにくくなる。こうした場合に画層が設定されていると、操作が能率よく行える。また必
要な画層のみの表示やプロッタへの出力も可能とある。 AutoCADではこの画層数を無限に設定で
8
5
きるが、これは他のパソコン CADにはあまり見られない大きな特徴である。
この課題では、次の 4つの画層を設定した−HOJYO (補助)、 KABE (
壁
)
、 SUNPO (寸法)、
KAGU (家具)。各画層ごとに、色、線種(連続線、破線など)を定義する。こうしておくと、壁、
家具など各要素別に色や線種が異なり、画面はとても見易くなる。
描き始めよう
さて、このようにいくつかの設定を終えるといよいよ描き始める。この課題で使用する主なコマ
ンドは表 lのようである。ただし実際の場面では、同じ作業であってもコマンドの使われ方は多様
である。ワープロでも文書の更新や編集の仕方に幾通りかあるのと同様に、それは効率性や各人の
癖の問題でもある。たとえば、一本の直線があって、それと同じ長さの平行な線分を隣に描くとし
よう。ある人は、<複写( COPY)>コマンドを用いるだろう。またある人は、<線分( LINE)>コ
マンドで座標値と線分の長さを入力して 2本目の線分を描くかもしれない。あるいは<オフセット>
マンド(元の図形の周りに相似図形を描く)を使うこともできる。
表 1 演習で使用した主なコマンドと機能
コマンド
機
線
分 L
I
N
E
C
I
R
C
L
E
円
円
弧I
A
配
L郎
!ボリライン P
|
文
子.
『
FA
T
E
X
T
!
U ND 0 I
開即
REDO R
E
O
O
円を措く
・図面?新機能
用原を描く
ズーム Z
O
O
M
画面表示を拡大・縮小する
璽面清掃 問D
R
.
4
制
画面を清;毒する
防と円弧の溜赫を措く
|時や文明を表示する
l
複合間三を登録する
i
図形掃入
|複合図形を挿入する
図面の基点を設定する
N
S
E
町
!一括挿入門I
同四割記入し||醐附
側
除
!
ER.~SE
O
O
P
S
図形復活 I
・設定機能
i函
建 L
A
Y
E
R
O
R
色 設 定 印L
i
線
種
す法を記入する
グリッド G
R
I
D
|図面的図形を再燃する
問主って削除した図形を復活する
I
0スナップ' O
S
N
A
P
Q
7
J
.
,
j
範囲
Y
写 印P
指定した図形を複写する
i
トリム
T
R
i
i
l
i
O
町H
O
!車交モード i
複
M
I
R
R
O
R
L
I
N
E
T
Y
P
E!維の綻・倣などを行う
N
A
P
スナップ S
指定した図形を別の位置に移動する ー補助機能
像
画層あるいは図形の色を設定する
罰死ファイルに書き出す
'
1
0
V
E
動 l
R
E
A
.
I
(
部分削除 B
!輔の倣変更.管理的う
線 の 尺 度 問 位E 憾の尺度を設定する
移
|
鏡
86
Ij
能
UNDO (U)を取り消す
複合留形を~c声明軍人する
1・闘編集機能
!
削
機
-_§j
訴すした複数のコマンドを取り消す
2点を結ぶ直線を描く
悶 k
|複合図形 B
I
N
S
E
貯
コマンド
能
1・臨作成機能
解
スナップ間隔の指定スナップのオン/オフ
グリッド間隔の指定グリッドのオン/オフ
線を引く方向を水平・垂直に臣従する
既存図形の特走者をt
歌目する
A
P
E
前U
即 0スナップ指示枠のサイズを指定する
E
L
P
説 H
E
N
D
コマンドの説明を表示する
指定した図形を反転する
l
保管終了
図形の一宮F
を1
@
余する
U
I
T
|放棄終了 lQ
図面を放棄し, AutoCADを終了する
h
図形の一宮F
を切り落とす
:
図面保管 S
A
V
E
図面を保管する
フィレット
F
I
L
L
E
T :2本の線を円滑につなぐ
u
u
トE実行したコマンドを取り消す
E
N
A
f
I
E
名前変更 R
U
R
G
E
j
名前削除 P
図面を保管し, AutoCADを終了する
複合図形などの名前を変更する
複合図形などの名前を除隊する
さて次の作業に話を進めよう。まず初期画面は、画層 Oになっているので、<画層( LAYER)>
コマンドで〔 HOJYO〕に画層変更する。この後、主要な壁の中心線を描く。このとき<線分
(LINE)>コマンドを用いるが、これによって描かれる線分は、画層を設定した時の色および線種
(例えば、一点鎖線など)になっているはずである。
ここで少しくLINE>コマンドの説明をしておこう。このコマンドを選択すると、「どこから(始
点)」というプロンプト(問いかけ)が画面上にあらわれる。始点を指示する方法には主に 2通り
ある。一つは、マウスによって画面上に直接始点を指示する方法であり、もうひとつは、キーボー
ドで座標値を入力する方法である。始点を入力すると次に「どこへ(終点)」というプロンプトが
表示される。この時に始点と同様にマウスまたはキーボードから座標を入力するが、その方法には、
①画面の左下端を原点とした時の座標値を入力する方法(絶対座標入力)と、それ以外に、②先に
指定した起点を原点として X方向、 Y方向それぞれの移動量を入力する方法(相対座標入力)、ま
た③始点にたいする終点の距離と角度を指定する方法(極座標入力)の 3通りがある。①、③の方
法はマウスでも可能である O これらの方法をうまく使うと矩形ならばいとも簡単に描けてしまう。
次に壁を描くので、画層を〔 KABE〕に変更する。この図面では、壁は塗り潰しで表現したいの
で、ここでは<ポリライン( PLINE)>コマンドを用いる。このコマンドを使うと任意の太さの線
分を描くことができる。壁には窓があるので、壁の部分のみを描いていってもよいが、最初から窓
のない壁として描き、後から<部分削除( BREAK)>コマンドで窓の部分を切り取ってもよい。
これができると主要な建具を描く。ドアは、<LINE>コマンドと<円弧( ARC)>コマンドの組
み合わせで描ける。直線と円弧というように図形を連続させる場合には、後続の線分が前の線分の
端点にきっちり接続することが重要である。その場合、接続しようとする端点の座標値がはっきり
やj
っている時はいいが、通常、小さな画面上のマウス操作だけでは端点を正確にヒットすることは
容易ではない。こういう場合に、<オブジェクト・スナップ( OSNAP)>という便利なコマンド
がある。これを使うと、指示したい点の近くに指示枠のついたカーソルをもっていくだけで、線分
の端点はもとより、明示されていない円の中心点なども容易にヒットすることができる。
基本プランの応用
ここまでの作業で基本的な住戸プランが出来上がる。
この課題では、家族のステージ別に 3種類の住戸プランが求められている O そこで、基本的な住
戸プランが完成した時点で、この図面ファイルと全く同ーの図面ファイルを 3個つくる。この操作
は簡単である。そして、それぞれのライフステージに応じた間取りを考え、基本フ。ランに家具を描
き入れていけばよい(このとき、画層を〔 KAGU〕に変更する)。イス、テープル、ベッドといっ
た家具は、複合図形として登録しておくと、いつでもそれを呼び出して別の図面ファイルの中で、使
うことができる O この課題でも、使用頻度の高い家具についてはそのような作業を行っている。
家具の記入に続いて、画層を〔 SUNPO〕に変更し、す法記入や室名の記入を行う。もう少し効
。
ょ
率的にやる場合には、始めから基本プランの中に 3ステージに共通した家具、寸法を描いておくと
8
7
寸法記入は、<寸法記入( DIM)>コマンドで行い、寸法線の両端および寸法記入位置を指定す
ると、計測されたす法が自動的に記入される。 AutoCADでは、寸法記入の既定値は ANSI (米国
規格協会)規格にもとづくが、 J
I
Sを考慮した様々な寸法記入も可能であり、またユーザが任意の
記入形式を設定することもできる。
図 4∼6は、このようにして完成した図面である。基本プランの作成が、 CADに慣れる前の最
も大変な作業であったが、それが完成する頃には学生にも余裕がみられた。その証拠に、家具の作
図にいたってはかなりの凝りょうであった一一和室の座ぶとん、観用植物、流し台の排水口、カー
ペット周りの房、デスクのライトスタンド、といった具合である。また図では縮小されていてわか
りにくいが、画面上で拡大するとプッシュホンのボタンまで鮮明に描かれていたりする(図 6の
「廊下」の文字の右下にある)。ここまでくるともう「趣味」の域である O
AutoCADの機能
ここで、今回の演習では使用しなかった機能も含めて AutoCADの特徴をまとめておきたい。
AutoCADは
、 1982年に米国 Autodesk社によって開発された汎用的なパソコン CADソフトで
1ヶ国語に翻訳され、 64カ国で CADのスタンダードとして使用されている。
ある。既に世界中で 1
わが国においても 1985年以来、建築、機械、電気、土木など多くの分野で使われており、パソコ
ンCADに占める国内のシェアは 30%以上ともいわれている。
このように高いシェアを占めている理由として、まずパソコン CADとしては大型 CADに匹敵
するだけの基本性能を備えていることがあげられる。たとえば図面の縮小・拡大率は 1対 1兆であ
り、実質上無限大である O また画層数・登録シンボル(部品など)数・作図要素数の無制限性や、
ノてージョンの上位互換性および異機種間互換性といったデータの互換性が特徴としてあげられる。
さらに大きな特徴として、豊富なカスタマイズ機能がある O カスタマイズとは、ユーザがコマンド
を追加して自分にあったように CADを特化し、専用のシステムを構築することである。たとえば、
新しいハッチング・パターンや文字、線種を作成したり、一連の連続作業に要する複数のコマンド
を 1つの新しいコマンドとして登録することができる O 実際、 AutoCADのこの機能を使って、分
野別に多くのアプリケーションソフトが売り出されており、実務における AutoCADは、このよ
うなソフトとの同時使用が一般的である。
コマンドの操作性にも特徴がある。それは、コマンドの連続実行(同一コマンドの繰り返しには、
リターンキーのみで直前のコマンドが実行可能)や割り込みコマンド(他のコマンドの実行中に割
り込みができるコマンド)、 UNDO機能(それまでに実行したコマンドを無限に遡って取消が可能)
などである。
しかし、 AutoCADにも短所がないわけではない。高精度、多機能であるが故に、習熟するため
に時間がかかることや、描き進むにつれて作図要素(線など)が増加すると、コマンドの実行や再
作図の処理スピードが極端に低下することは、他の CADと比較した場合の欠点としてよく聞かれ
るところである。
8
8
おわりに
以上、「AutoCAD演習記録」のような話になってしまったが、 AutoCADにはこういう利用の
仕方もあるということが、少しでも御理解いただけたのではないだろうか。 AutoCADは汎用的な
CADである。幾何学的な図形はもとより様々な図形をスケッチ感覚で自由に描くこともできるし、
その使い方・応用分野は無限である。言うまでもないが、とにかく慣れることが道具として使いこ
なすための近道である。情報処理センターでは、教育室以外でも AutoCADが使えるので\これ
を機会に一度さわってみょうかと思っていただければ幸いである。
さて、この演習を終えて、筆者はまた CAD教育について考えてみた。設計教育における CAD
の効用が、これだけの短い期間に明確になるとはとても思えな l¥o しかし詳細な家具配置にみられ
るように、学生が、住宅の中で展開されるであろう具体的な生活をイメージしながら様々な住宅プ
ランを描いたのを見ていると、教育の道具として使えそうだという感触が得られたのは確かである。
CAD教育はまだ実験段階である。今後の CADの機能・操作性の向上および教育設備環境の一層
の充実によって、 CAD教育の可能性がもっと広がっていくことを期待して、この稿を終えたい。
ライフステージ 1 (家族構成:夫婦、子供 1人… 3才女)
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図 4 マンションの住戸プラン 1 (設計:満田淳子)
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、 3才男)
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図 5 マンションの住戸プラン 2 (設計:松下智美)
ライフステージ
3 (家族構成:夫婦、子供 2人…高 2女、中 1男
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図 6 マンションの住戸プラン 3 (設計:赤沢佐恵子)
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