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資料 - 中東協力センター

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資料 - 中東協力センター
トルコ内政・経済情勢
在トルコ大使館
2015年8月25日時点
総選挙(6月7日)の結果
与党・公正発展党(AKP)は2002年の政権獲得以来初めてとなる過半数割れ(全550議席,312⇒258)。
国民民主党(HDP,クルド系)は足切基準の全国得票率10%を超え,議席(80議席)を獲得。
7月9日にエルドアン大統領はAKP党首であるダーヴトオール首相を首班指名し,組閣を指示。
内政・治安
AKPによる野党との連立交渉
AKPはCHP及びMHPと連立交渉を行うも頓挫(7/13~8/17)
ダーヴトオール首相は首班指名の任務を返上(8/18)
エルドアン大統領は再選挙実施を決定(8/24,11/1予定)
エルドアン大統領は,選挙管理内閣の首相にダーヴトオール
AKP党首を指名。各大臣を指名し,8月29日までに組閣予定
経
済
• AKP 258議席(40.9%)
(▼ 312議席(49.8%))
• CHP 132議席(25.0%)
(△ 125議席(26.0%))
• MHP 80議席(16.3%)
(△ 52議席(13.0%))
• HDP
80議席(13.1%)
(△ 29議席(得票率なし)
トルコの短期的課題
相次ぐ選挙に伴う国内政治の不透明感
イラク,シリア等,周辺国における地政学リスクの高まり
和平プロセスの中断に伴うクルド問題の再燃
FEDの利上げに伴う国際金融市場の変化等
不安定な為替相場
トルコ経済の強み,ポテンシャル
トルコ国内治安状況の変化,ISILとの闘いを本格化
トルコ政府はクルドとの和平プロセスを凍結,クルド系テロ組織
PKK,ISIL等に対するテロ対策措置を強化したほか,ISIL及びPKK
に対する空爆を開始。米軍にもインジルリッキ空軍基地使用を
許可
トルコ南東部を中心に,治安情勢は流動的な状態
今後の内政・経済情勢の見通し
今後の経済成長への期待
ヨーロッパ,中東,北アフリカ及び中央アジアへの好アクセス
中東地域最大の経済規模
若い人口構造
安定した政府財政,健全な金融セクター
イランに対する制裁解除やEU圏の経済状況(特に同圏最大
貿易相手国であるドイツにおける成長見通しが緩やかながら
上向き傾向にある)
 短期的には再選挙後の新内閣が組閣されるまでの間は,シリア情勢及び国内治安情勢の影響も受け,政治・経済的に不透明な
状態が続く見込み。トルコ政府によるISIL及びクルド系テロ組織PKKに対する治安対策は引き続き強化されていく模様。
 再選挙でAKPが過半数の議席を獲得すれば,当面の単独政権という目標は達成。
過半数を取れない場合には,極めて不透明な事態に(他方,AKPの第一党は変わらない見込み)。
 国内政治の早期安定化等により,トルコ経済のポテンシャルを最大限発揮できる環境を整えることが不可欠。
(第40回中東協力現地会議)
トルコカントリーレポート
2015年8月
トルコ大国民議会総選挙(6月7日実施)の結果
8月5日時点
総選挙の概要・結果
6月7日(日),トルコにて任期満了に伴う議会総選挙(定数550議席,過半数276議席)が実施された。
 与党・公正発展党(AKP)は公示前の312議席から大幅に議席数を減らし,2002年の政権獲得以来初めて過半数割
れ(258議席)。
 野党・国民民主党(HDP・クルド系・左派)は全国での得票率10%を超え,議席(80議席)を獲得。
 与党・公正発展党(AKP)が,野党との連立政権を組むのか,早期選挙も念頭におきつつMHPの協力を得て少数与党単
独政権を続けるか,再選挙の可能性が指摘されている。
公示前
312
125
AKP
選挙結果
CHP
258
0%
10%
20%
連立に向けた交渉状況
MHP
132
30%
AKP
52
40%
CHP
MHP
50%
HDP
60%
その他
80
70%
80%
29
17
HDP
80
90%
100%
欠員
※8月27日の時点で状況が大きく変わっていることが想定されます。
 7月9日にダーヴトオールAKP党首(首相)に対する首班指名がなされてから,8月5日時点でAKPはCHPと連立交渉を
続けている。CHPとの連立が成立しなければ,MHPとの連立交渉に移ることが予想される。MHPとの間でも連立が成立し
なければ,早期選挙も念頭におきつつMHPの協力を得て少数与党政権を続けるか,再選挙となるとみられる。
連立政権となった場合の大臣ポスト
 AKPが連立を組むことになった場合の各省大臣ポストについては,内務・法務等のポスト及びエネルギー天然資源省・
運輸海事通信省等の大型インフラ案件に関与する大臣ポストはAKPが死守するとみられている。
1
クルド問題和平プロセス
● トルコ共和国建国(1923年)以後,アタテュルク主義体制下のトルコ
政府は同化政策を推進。クルド人を「山岳トルコ人」と呼称し,クルド人の
存在自体を否定。
- これに対し,独立クルド国家樹立を主張するクルド労働者党(PKK)
が,1980年代から武力闘争を開始。以来30年にわたり,クルド
【クルド人居住地域(黄色)】
人が多く居住する南東部・東部を中心に活発なテロ活動を展開。
クルド人は,「国家を持たない世界最大の民族」と言われ,主にトルコ,
- 米国,EU等はPKKをテロ組織と指定。トルコ国軍は南東部・東部 シリア,イラン,イラクを始めとする中東諸国や,移民した欧州諸国に居
住。総数は約3000万人とも言われ,うちトルコ国内に約1500万人が居
住しているとされる。
や北イラクで掃討作戦を繰り返すも,鎮圧には至らず。
● 2002年に発足したAKP政権は,クルド人の存在をより積極的に認知。同化政策の強要やクルド人の不平等な待
遇を改めるべく諸改革に着手。クルド問題とテロ問題を分離し,「テロには軍事力,政治的には対話」との姿勢。
● PKK指導者オジャラン首領は1999年にトルコ当局に拘束され,現在マルマラ海のイムラル島刑務所に収監中で
あるが,依然,影響力を保持。2012年10月から,トルコ政府はオジャラン首領を相手とする和平交渉を開始し(「和
平プロセス」),2013年3月にはオジャラン首領が暴力停止を呼び掛ける声明を発出。これを受け,同年5月からP
KK戦闘員がトルコからの撤退を開始したが,政府側のその後の取組が不十分であるとして,同年9月,撤退の中
止を発表した。その後,紆余曲折ありながらも,現政権は、2015年の総選挙もにらみ,「和平プロセス」推進に取り
組んできた。
● しかし, PKKは,総選挙後の2015年7月20日に発生したISILによるとみられるスルチュでの爆破事件の報復な
どとして,トルコ警察等に対するテロを実施。これに対し,同24日トルコ軍は,対ISIL攻撃と並行して,北イラクのP
KKキャンプの攻撃及び国内での摘発を実施。PKKは,現在トルコ東部・南東部地域において軍・警察を主要ター
ゲットとしたテロを継続している。エルドアン大統領も,PKKがテロを継続している現状では,「和平プロセス」継続
は不可能と発言するなど,今後の見通しは不透明な状況となった。
2
トルコ各地の治安状況
8月5日時点
7月20日,シャンルウルファ県スルチュにて,ISILメンバーによるとみられる自爆テロが発生し32名死亡100名以上が負傷。
7月23日,トルコ政府は特別治安会議を開催し,シリア国内のISIL関連施設に対する攻撃を決定し,24日未明に実行。
7月24日夜には,北イラクのPKK拠点への攻撃を開始。
8月5日現在,PKKに対して計9回,ISILに対して計5回の攻撃を実施。
ダヴトオール首相は7月29日,総選挙後テロが657件発生,52名が死亡したと発言。
アルンチ副首相は7月29日,同日付けでのテロ関連容疑での摘発者数が1302名に達したと発言。
(うちPKK:857名,ISIL:137名,DHKP-C:77名。)
イスタンブール
中国共産党に反対する極右団体のデモが頻
発、7/4,韓国人観光客が中国人に間違われ
て暴行され、7/8,タイ総領事館が襲撃され
た。
キリス県キリス
7/23,ISILの兵士が銃撃を行い、ト
ルコ兵1名が死亡、2名が負傷した。
公表されたテロリストの捜索場所
アンカラ
7/9,中国共産党に反対する極右
団体のデモが、中国大使館、タイ大
使館に対して実施された。
ディヤルバクル県
7/23,警察官1名が襲撃を受け,殺害された。
ディヤルバクル県
6/5,駅前広場にてHDPの集会
中2個の爆弾が爆発し5人が死
亡、数百人が負傷した。
7/24
空爆開始
このほか,トルコ南東部地域を中心に各県にて
PKKと見られる者たちによる警察署,警察官
舎,警察官,警察車両,軍車列に対する攻撃
や,大型作業車両の放火が発生している。
シャンルウルファ県スルチュ
7/20,ISIL関係者による自爆テロが
発生し、32名が死亡,100名以上が
負傷した。
シャンルウルファ県ジェイランプナル
7/22,警察官2名が殺害され,PKK
が犯行声明を出した。
3
2.トルコ外交
○国際社会での役割増大を追求
-国際社会・国連での役割増大を追求:リージョナルパワーから,グローバルプレーヤーへ。
-トルコは2015年G20議長国。
(政府綱領) 「国際システムを決定する国の一つ」,「影響力のある世界的な意志決定機関に参加」
対近隣・更にはアフリカ・アジアまで視野に入れた積極外交を推進。
・トルコの大使館数: 132公館(地域の他の中東主要国の在外公館数,サウジ:99,エジプト:136,カタール:89,イスラエル:80)
・アフリカ:ソマリア支援,第2回トルコ・アフリカ協力サミット(2014年11月赤道ギニア・マラボで開催)
・アジア・ミャンマー・ロヒンギャ・ムスリム支援,・ロシア:2年に一度ハイレベル協力協議の実施(2014年12月に第5回目がトルコで開催)
アフガニスタン支援
【最近の外交面での注目点】
1.対シリア関係
●トルコは,アサド退陣を優先事項と位置づけ,ISIL対策に必ずしも積極的でないと見られたが,2015年7
月24日にはISIL空爆に踏み切るなど,対シリア政策に変化が見られる。
●主に国境地帯において,多数のシリア避難民を受け入れ(2015年8月現在,約180万人)。「オープンド
ア」ポリシーを維持しつつも,負担増から欧米を中心とする国際社会の対トルコ支援の不足に不満。他
方,現在のシリア情勢の泥沼化を背景に,トルコ国内には政府のシリア政策に対する批判があり,内政
上も政権への支持に影響を及ぼし得る機微な面あり。
●トルコはISILに対峙してきたPYDがシリア北部で勢力を拡大することを警戒。米国との間で,反体制派
に対する訓練・武器供与を行うことで合意したほか,2015年7月にはインジルリッキ空軍基地の使用に
つき合意した。
4
2.対イラク関係
●アバーディー政権との間で,ダーヴトオール首相のイラク訪問(2014年11月),アバーディー新首相のト
ルコ訪問(同12月)など,ハイレベルでの往来が続いており,両国関係は改善。
●エネルギー資源の確保等を念頭に,トルコと北イラク・クルド地域政府(KRG)とも関係強化が図られて
いる。しかし,トルコ政府は,KRGによる独立に向けた動きはイラクの分裂につながるとして,KRG独立
には反対の姿勢。
●ISILの伸張に伴い、イラクで大量の国内避難民が発生したほか,10万人を超えるイラク人避難民がトル
コに流入。トルコは,難民の大量流入を防ぐべく,イラク国内に難民キャンプを設置したほか,イラク北部
に数多く住むトルコ系のトルクメン人に対する支援活動等を実施。トルコは,ペシュメルガに対する軍事
訓練を実施しているほか,3月には,イラク軍に対し非殺傷性軍事物資の供与も実施。
3.その他中東諸国との関係
●イラン:2015年4月,エルドアン大統領がイランを訪問するなど,ハイレベルの往来が継続している。他
方で,イラク・シリアにおけるイランのシーア派主義的動向に対し神経を尖らせ牽制的な姿勢。
●イスラエル:トルコのガザ支援船団拿捕事件の謝罪,賠償及びガザ地区包囲解除を巡って政治関係が
凍結状態にあったが,2013年3月にネタニヤフ首相が謝罪を表明。関係正常化が近いとの観測もあった
が,2014年夏以降のガザ情勢の悪化を受け,再度関係悪化。
●エジプト:トルコは,2013年7月のエジプトにおける政変につき当初から「軍事クーデター」であると非難
し,11月,両国は相互に大使を国外追放処分とし,外交関係が悪化。
●湾岸アラブ諸国:シリア情勢等に関し利害が一致することが多く,経済的にも緊密な関係を構築している
ことから概ね良好。
5
4.EUとの関係
● EU加盟交渉については,2013年6月のゲジ公園デモにおけるトルコ政府の対応や,2014年3月のソー
シャルメディア(ツイッター・ユーチューブ)規制等,トルコの人権意識を問題視する声がEU内で高まるな
ど,加盟交渉は進捗していない状況。
5.対米関係
●NATO加盟国であるトルコにとり米国は最重要同盟国。最近はシリア情勢に関する利害の一致から,イ
ンジルリッキ空軍基地の使用を許可するなど,緊密に協力しようとの姿勢がみられる。
●AKP政権と対立するフェットフッラー・ギュレン師が米国に居住していることや,トルコにおける「報道の
自由」やアルメニア人「虐殺」問題などの火種が両国間に存在するが,両国外交関係への大きな影響は
見受けられない。
6
3.トルコ経済概要
○AKPは2002年の政権樹立以来,国民の安定した支持を背景に経済成長の実現に注力。1人あたりの
GDPは1万ドルを超え,名目GDPは約3倍にまで成長。
○一方で,2012年以降,経済の構造的問題から経済成長率が減速。構造改革の推進が急務。
○ダヴトオール首相は,構造改革を推進すべく1,200以上に亘る具体的なアクションプランを発表。
【経済成長の軌跡】
■2002年からの平均経済成長率は約
5%。経済危機後もいち早く回復。
■IMF及び財務省の指導の下,財政の
健全化,ハイパーインフレ抑制を実現。
■1人あたりのGDPは10,404ドル。(人
口7,000万人以上で,1人あたりGDPが1
万ドルを超える国はトルコを含め7ヵ国
(日,米,独,露,伯,墨,土)のみ。
名目GDP及び経済成長率の推移(億ドル,%)
10000
12
10
8000
8
6
6000
4
2
4000
0
-2
2000
-4
0
-6
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
出所:トルコ統計庁
【トルコが抱える主な構造的問題】
■経常赤字
・エネルギーの海外依存
・国内における低付加価値
■外資依存
・国内における低貯蓄率
■教育水準
・特に地方における教育水準の低さ
■インフレ
・リラ安に伴う輸入価格の高騰
4
新興国の経常収支GDP比(%)
2
0
-2
-4
-6
出所:IMF
7
4.中東経済におけるトルコ
○トルコの経済規模は,中東諸国中最大の23%を占める。
○トルコと中東地域の貿易・投資関係は10年前と比べ大幅に拡大。
○トルコ企業の中東地域におけるプレゼンスを利用した日本企業による第3国進出の可能性。
【中東経済の構成(GDP総額3兆8704億ドル)】
〈トルコの位置〉
クウェート その他
カタール
■中東地域第1位の経済規模。名目GDPは8,001億ドルで中東地
5%
7%
6%
トルコ
イラク
域経済(3兆8704億ドル)に占める割合は23%。
23%
6%
■人口はイランに次ぐ中東第2位の規模(7,769万人)であり, 2040 イスラエル
サウジアラビ
8%
ア
年頃まで人口増加が見込まれる。
22%
UAE
イラン
■中東地域においては例外的に製造業が発達。
12%
11%
〈貿易投資関係〉
■トルコの貿易総額に占める中東地域の割合は増加傾向。
貿易額 2002年 6.6% → 2014年 14.0%
輸 出 2002年 9.5% → 2014年 22.5%
輸 入 2002年 4.5% → 2014年 8.5%
■中東地域への投資は,トルコからの投
資全体の44%を占める。
■中東地域からトルコへの投資は,トルコ
への投資全体の14%。
中東
6.6%
アジア
(除中東)
10%
その他
9.4%
EU
52.7%
北アメリカ
8.0%
北アフリカ
2.4%
出所:IMF
【トルコの貿易相手地域】
その他
欧州
11%
2002年 貿易総額876億ドル
アジア
(除中東)
17%
その他
8.3%
EU
39.3%
中東
14.0%
北アメリカ
5.3%
北アフリカ
3.3%
その他
欧州
14%
2014年 貿易総額3,999億ドル
出所:トルコ統計庁
〈トルコ企業との共同による中東地域への進出〉
■ドバイメトロ(三菱商事,三菱重工,大林組,鹿島建設とトルコ企業のJV),新ドーハ国際空港ターミナル
(大成建設とトルコ企業のJV),イラクの火力発電所改修工事(三菱パワーシステムズとトルコ企業のJV)
等の例に見られるように,トルコ企業の中東地域におけるプレゼンスを活かした日本企業による第3国進
8
出の可能性。
5.日トルコ貿易・投資関係
○日トルコ貿易・投資関係は,地理的要因もあり両国の経済規模から考えると十分な規模とは言い難い。
○両国の経済関係を潜在的レベルにまで引き上げるため,2014年1月,両国間で日トルコ経済連携協定
(EPA)の締結に向けた交渉の開始を決定。
【貿易】
■対日貿易では,2014年における輸出額は3.7億ド
ル,輸入額は31.9億ドルで,大幅な貿易赤字(28.2億
ドル)を計上。
■日本が主として自動車・機械機器,部品等を輸出
し,トルコは水産品,果物等の加工食品,衣類,絨毯
等の繊維製品,革製品,自動車・機械部品等を輸
出。
■トルコ政府は経常収支の改善に向け,観光客の
呼び込みに注力しているが,ISILの影響もあり,日
本からの観光客は減少傾向。
日本からトルコへの直接投資(百万ドル)
600
500
400
300
200
100
0
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
データ:トルコ中央銀行
日トルコ貿易額の推移(百万USD)
5000
輸出
4000
輸入
3000
2000
1000
0
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
データ:トルコ統計庁
【直接投資】
■日本からの投資は,2010年以降大幅に増加。
2013年は,三菱東京UFJ銀行の現地法人設立等
により,4.94億ドルでアジア地域で第1位,世界第8
位となった。
■ 2014年も日清,三菱重工,パナソニック,日経
BP等が投資を発表。引き続き日本企業の関心は
高く,2.12億ドル,世界第11位の実績。
■2015年5月時点では,三菱商事による地場企業
への出資等により,2.04億ドル,第6位。
9
6.トルコの投資環境
○国内市場及び周辺諸国へのビジネス拠点という観点から,トルコは注目すべき国の一つ。
○今後のトルコ及び周辺国市場の中長期的な成長への期待から日本企業の進出が加速化。
■近年,トルコに進出している日系企業は増加傾向にあり,イスタンブール及びその近郊を中心に約100
社超が進出。
■業種も,これまで中心であった商社,建設,製造業に加え,金融,食品,マスコミ等へ裾野の広がり。
■トルコ政府の提供する新投資インセンティブスキームを利用し,これまで中心であったイスタンブール及
びその近郊だけで無く,地方都市への進出が見られる(住友ゴム:チャンクル,ブリヂストン:アクサライ,東
洋鋼鈑:オスマニエ)。また,クルド問題の進展状況によっては,将来の南東部への進出可能性も広がる。
■トルコ市場のみでなく,トルコ企業との協力による第3国へのビジネス展開にも可能性。
【参考】新インセンティブスキーム
2012年1月トルコ経済省が発表した投資誘致
のためのインセンティブスキーム。トルコ国内を
1~6の地域に分け,地域ごとにインセンティブ
の度合いを変えることで,より発展度の低い地
域への投資誘致を目指す。地域によって,投
資用地割当,社会保障費,各種租税の軽減等
の優遇措置が受けられる。また,一定規模以
上の大規模投資,ハイテク分野など戦略的分
野における投資に関しては,更なる優遇措置を
用意。
チャンクル
オスマニエ
アクサライ
出所:トルコ経済省
●第1地域,●第2地域,●第3地域,●第4地域,●第5地域,●第6地域
【ビジネス環境向上に向けた政府間交渉の実施状況】
■日トルコEPA交渉
2014年1月に日トルコ経済連携協定の開始に合意。同年12月に日トルコ経済連携協定締結に向けた第1回交渉を実施。
これまでに計2回の交渉を実施。
■日トルコ社会保障協定
10
2014年5月に日トルコ社会保障協定政府間交渉を開始。これまで計3回の交渉を実施。
7.トルコにおけるインフラ・プロジェクト
イスタンブール運河計画・第三空港計画:
●ボスポラス海峡に並行した全長40~
50kmの新運河建設計画。2023年完成を
目標。
●黒海沿岸に第三空港を建設する計画が
BOTプロジェクトとして公示され,トルコ企
業JVが約220億ユーロで落札。2018年完
成予定。
ボスポラス海峡3層式海底
トンネルプロジェクト:
●2020年完成予定,BOT方式,
35億ドル規模
ボスポラス第三大橋建設計画【韓国】:
●北マルマラ自動車道路全長約400kmの高速道路計画
(事業費約65億ドル)の内,ボスポラス海峡を横断する道
路・鉄道併用橋計画。
●第三大橋(約10億ドル規模)を含む約95kmの高速道路
計画がBOTプロジェクトとして公示され,IÇTAŞ(土)-アス
タルディ(伊)JVが受注。橋梁部分を韓国企業(現代/SK)
のJVがEPC契約で受注。 2015.10.29完成予定。
モノレール・プロジェクト:
●イスタンブール市が6,7路
線のモノレール整備を計画中
シノップ原子力発電所建設計画【日本】:
●地中海沿岸アックユに次ぐ第2サイト。
●日土の政府間協定をトルコ国会が承
認。
●三菱重工・伊藤忠・GDFスエズ(仏)・
EUAS(土)とともに事業会社を設立予
定。
ユーラシアトンネル【韓国】:
●ボスポラス海峡を横断する
地下道路トンネル。2016年末
完成予定,BOT方式。韓国・ト
ルコ企業JV。
アンカラ・イスタンブール高速鉄道
計画【中国】:
●2014.7.25にアンカラ・ペンディッ
ク区間が開通したものの一部在来
線が使われており未だ建設中。中
国・トルコJVが施工。設計時速
250km/h。
ダーダネルス海峡大橋建設計
画:
●クナルーサバァシュテペ間
約360kmの高速道路計画のう
ち,ダーダネルス海峡を横断す
る長大橋梁建設計画。
イズミット湾横断大橋建設計画【日本】:
●イズミット湾を横断する全長約3km(中
央径間1550mは世界第4位の規模)の
長大橋建設計画。
日本
ボスポラス海峡横断地下鉄整備計画【日本】:
●ボスポラス海峡を横断する地下鉄道トンネルプロジェ
クト。
●大成建設とトルコ企業のJVが事業実施。2013年10月
29日に開通。円借款供与額約2,000億円。
韓国
中国
通信放送衛星機調達計画【日本】:
●通信放送衛星2機(Turksat4A,4Bを日本
が受注。4Aは2014年2月に打上成功。4B
も2015年に打上予定。
●今後,5A, 5B, 及び6Aが計画されてい
アンカラ・イスタンブール超高速鉄
道プロジェクト:
●BOT方式を予定,45億ドル規模,
最速350km/h
病院プロジェクト:
●トルコ各地約50カ所にPPP方式に
よる総合医療キャンパスを整備。
11
【参考1】トルコの貿易関係
■総額(2014) 3,999億ドル
輸出 1,577億ドル
輸入
■主要貿易相手国(2014)
順位
国名
ドイツ
1位
ロシア
2位
3位
中国
5位
米国
12位
韓国
25位
日本
2,422億ドル
貿易額
375億ドル
312億ドル
277億ドル
190億ドル
80億ドル
35億ドル
■主な貿易品目(2014)
輸出
順位
品目
1 自動車及びその部品
割合
9.3%
7.8%
6.9%
4.7%
2.0%
0.8%
輸入
輸出額
(億ドル)
割合
順位
輸入額
(億ドル)
品目
割合
180
11.4%
1
鉱物性燃料
548
22.6%
135
8.6%
2
原子炉、ボイラー及び機械類
並びにその部品
281
11.6%
3 ニット及びかぎ編み衣類
100
6.3%
3
電気機器及びその部品
179
7.4%
4 電気機器及びその部品
96
6.1%
4
鉄鋼
175
7.2%
5 鉄鋼
92
5.8%
5
自動車及びその部品
157
6.5%
1,577
100%
2,422
100%
2
原子炉、ボイラー及び機械
類並びにその部品
総 額
総 額
データ: トルコ統計庁
12
【参考2】トルコの投資関係
■トルコへの主な投資国(2014)
国名
■主な投資分野(2014)
投資額(百万ドル)
1 オランダ
2,017
2 イギリス
1,046
3 ロシア
730
4 アゼルバイジャン
718
5 ドイツ
693
6 ルクセンブルク
555
7 イタリア
490
8 アメリカ
325
9 フランス
280
10 クウェート
234
11 日本
212
その他
1,541
総 額
8,699
投資分野
農業分野
鉱工業分野
投資額(百万ドル)
61
4,666
製造業
2,891
その他
1,775
サービス分野
3,972
小売り
1,165
銀行・保険業
1,535
その他
1,272
総 額
8,699
13
【参考3】トルコ及び周辺国の主要経済指標比較
主要経済指標比較2014(トルコ=1)
経済指標
国土面積
出典:Statistical Year Book (UN)
人口
出典:国連人口基金「世界人口白書2014」
名目GDP
出典:World Economic Outlook Database(IMF)
一人当たりGDP
出典:World Economic Outlook Database(IMF)
経常収支(GDP比)
出典:World Economic Outlook Database(IMF)
政府歳出
出典:World Economic Outlook Database(IMF)
失業率
トルコ
イラン
イラク
サウジアラビア
ア首連
エジプト
リビア
イスラエル
日本
1.00
2.12
0.57
2.79
0.10
1.30
2.29
0.03
0.48
77万㎡
1.00
出典:The Military Balance 2014
石油産出量
出典:Petform,BP統計
天然ガス産出量※2
出典:IEA,BP統計
輸入額
出典:Trademap (International Trade Center)
輸出額
出典:Trademap (International Trade Center)
1.04
7,580万人
1.00
1.00
7,850万人
4,041億ドル
1.00
▲0.67
▲5.69%
1.00
3.81%
0.23
2,463億ドル
1.00
577億ドル
1.13
9.92%
1.00
100.4億ドル
1.00
6.3億㎥
1.00
2,422億ドル
1.00
1,577億ドル
6,164ドル
0.62
1.56
2,940万人
7,524億ドル
0.39
N.A
43,180ドル
N.A
▲2.12
▲0.82%
0.41
1,216億ドル
N.A
8.04
3,303ドル
0.14
12.06%
5.55%
2,864億ドル
0.32
0.49
0.56
1.88
4,016億ドル
24,454ドル
3,217億ドル
8,340万人
0.36
4.12
1.31
963億ドル
940万人
2.33
14.11%
100万㎡
1.10
0.50
▲2.48
▲3.50%
8万㎡
0.12
0.93
2,211億ドル
11.21%
1,008億ドル
1.35
N.A
1.38
176万㎡
0.08
630万人
0.05
411億ドル
0.63
6,623ドル
5.30
N.A
13.36%
0.46
54.4億ドル
46.5億ドル
69.21
63.83
225.96
69.04
14.38
19.38
153.2百万トン
542.3百万トン
165.7百万トン
34.5百万トン
46.5百万トン
264.44
0.95
163.49
88.89
89.05
19.05
1666.0億㎥
6.0億㎥
1030.0億㎥
560.0億㎥
561.0億㎥
120.0億㎥
0.23
0.16
0.63
0.96
0.29
0.07
0.41
641億ドル
0.54
858億ドル
2.21
3,489億ドル
2,322億ドル
1.28
2,019億ドル
713億ドル
0.17
268億ドル
36,990ドル
36,331ドル
▲0.09
2.97%
162億ドル
0.13
201億ドル
0.53%
6.41
1,152億ドル
N.A
139.0億ドル
1,524億ドル
3.47
0.60
0.54
46,163億ドル
3.53
0.47
322億ドル
12,700万人
5.73
3,037億ドル
▲30.11%
807.6億ドル
386億ドル
780万人
▲0.52
0.13
37万㎡
1.68
0.38
188.6億ドル
556億ドル
2万㎡
0.10
157.1億ドル
2.4百万トン 166.1百万トン
1.00
3,480万人
0.59
5,183ドル
215万㎡
0.39
0.27
0.49
10,482ドル
44万㎡
0.46
0.50
8,061億ドル
出典:World Economic Outlook Database(IMF)
軍事予算※1
163万㎡
15,790億ドル
0.36
5.95%
2.00
3.58%
4.75
201.3億ドル
N.A
476.8億ドル
N.A
N.A
N.A
N.A
N.A
N.A
0.30
723億ドル
0.44
689億ドル
N.A
3.39
8,222億ドル
4.34
6,838億ドル
※1 リビアは2013年予算。※2 トルコは2012年産出量。
14
【参考4】リラの対ドル変動に見るトルコ経済主要イベント
○2013年5月の米国における量的金融緩和縮小示唆,同時期に国内で起こった反政府デモ,同年12月
の汚職事件に絡む閣僚の辞任等の影響により,リラは対ドルで過去最安値を更新。
○2014年1月の緊急金利引き上げ,同年3月の地方選挙におけるAKPの勝利等により,リラは一時若干
値を戻したものの,世界的なドル高の動きを受け,リラ安が継続。
○2015年6月の総選挙において,AKPの得票が過半数に満たなかったことを受け,リラは最安値を更新。
○各党の連立政権樹立を模索する動きを受け,リラは比較的安定的に推移していたが,国内及び周辺国
における地政学リスクの高まりを受け,再度リラ安傾向。
2.9
大統領選挙
2.7
エルドアン大統領就任
金利引下げ
緊急金融政策策定委員会招
集、金利大幅引上げ
金利引下げ
QE3終了
2.5
金利引下げ
内閣改造
反政府デモ
の広がり
2.3
議長選挙
総選挙
汚職事件
の発覚
金利引下げ
2.1
FOMCテーパ
リング示唆
1.9
FOMC、毎月の資
産買入額削減決定
1.7
金利引下げ
ロシア・ルーブ
ル下落、国内メ
ディア関係者の
相次ぐ拘束
地方選挙
ISIL活動
活発化
シャンルウルファ近郊で
の大規模爆発事件、地
政学リスクの高まり
大統領の金利に関する発
言がエスカレート
1ドル=リラ
2015/08/02
2015/07/02
2015/06/02
2015/05/02
2015/04/02
2015/03/02
2015/02/02
2015/01/02
2014/12/02
2014/11/02
2014/10/02
2014/09/02
2014/08/02
2014/07/02
2014/06/02
2014/05/02
2014/04/02
2014/03/02
2014/02/02
2014/01/02
2013/12/02
2013/11/02
2013/10/02
2013/09/02
2013/08/02
2013/07/02
2013/06/02
2013/05/02
2013/04/02
2013/03/02
2013/02/02
2013/01/02
1.5
出所:トルコ中央銀行
15
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