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川島労務経営コンサルティングオフィス通信

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川島労務経営コンサルティングオフィス通信
川島労務経営コンサルティングオフィス通信
発行:川島労務経営コンサルティングオフィス
〒141-0031 東京都品川区西五反田 7-22-17 TOC ビル 3 階
TEL 03-5436-1217 FAX 03-5436-1218
email:[email protected] 発行:2014 年 7 月 29 日
8
Aug
2014
人材育成⇒労働生産性向上⇒実質賃金の上昇
今年度の経済財政白書が 7 月 25 日公表されました。その中で、労働生産性の決定要因、企業の賃金決定の特
徴と人材育成についての記述があります。
ここで述べられていることを簡単にいうと、人材育成をしっかり行っている会社は労働生産性が高く、これが
企業収益を押し上げ、労働者に適切に配分されることを通じて賃金水準を上昇させているというものです。
経済財政白書は 250 ページ程もあるので、これに該当する部分を以下要約してみました。
1 労働生産性の上昇要因として“労働の質”のウェイトが増大
労働の質
労働生産性の変化率
資本装備率
全要素生産性
熟練の蓄積、年齢、勤続年数、学歴な
ど属性構成の違い
労働一単位あたりの資本投入量
技術進歩など上記の要因で説明できな
い部分
労働生産性の変化率を『労働の質』
・
『資本装備率』
・
『全要素生産性』の 3 つに分解すると以下の三点が指
摘できる。
① 1990 年代の労働生産性の低下は『全要素生産性』の寄与が低下した影響が大きい。これは、企業で
IT の有効活用が進まなかったこと、バブル崩壊後の需要の大幅な減少等が主な要因である。
② 『資本装備率』は 1980 年代の労働生産性の上昇に最も大きく寄与したが、その後はプラス寄与が縮
小傾向にある。これは、主に 1990 年代以降設備投資の抑制が図られたことが主な要因である。
③ 『労働の質』は、製造業と非製造業のいずれにおいても、安定してプラスに寄与している。この背景
としては労働者の熟練の蓄積、高学歴化や平均勤続年数の上昇等が挙げられる。さらに、1990 年代
以降、
『資本装備率』と『全要素生産性』のプラス寄与が大きく低下した結果、労働の質の影響度が相
対的に高まっている。今後とも、熟練の蓄積等を通じて労働の質を持続的に高めていくことが労働生
産性を向上させるために重要な課題となっている。
2 『人材育成』
・
『労働生産性』
・
『賃金決定要因』の関連
① 労働生産性を高め賃金カーブを上方にシフトさせることが重要
そのためには、企業の人材育成や社員の自己啓発等を通じて労働の質を高めて生産性の向上をはかり、
その結果として改善した企業収益が労働者に適切に配分されることを通じて、各年齢および各勤続年
数の賃金水準を持続的に上昇させることが重要。
② 職務遂行能力の向上で基本給が上昇し、それが賞与にも反映
厚生労働省の『就労条件総合調査』によると、基本給については『職務遂行能力』を重視する企業が
最も多い。
[企業規模別にみた基本給の決定要素]
企業の回答割合が 2 番目に多いのは、『職務・職種など仕事の内容』であり、企業規模が小さいほど
回答割合が上昇する傾向にある。この背景として、中小企業においては、専門的な仕事に従事する社
員も多いことから、その仕事内容を基本給に反映することによって、社員の能力を評価する傾向が大
企業より強いと考えられる。
また、2001 年から 2012 年にかけて大きく低下しているのは、
『年齢・勤続年数』、『業績・成果』
である。
『業績・成果』は、大企業を中心に 1990 年代後半から導入が進められた成果報酬制度が、
2000 年代後半になって見直され始めたことの影響と考えられる。
3 人材育成が産業別の賃金カーブに一定程度影響
[職業別の賃金上昇率と人材育成]
[人材育成と職業能力評価]
人材育成の実施状況と賃金上昇率(50~54 歳の給与額÷25~29 歳の給与額)を散布図に描くと、両者
に右上がりの関係が観察される。この結果は、人材育成の実施を通じて労働者の職務遂行能力等を高めら
れれば、賃金上昇率が大きくなることを示している。
また、企業の人事育成は職業能力評価と合わせて実施される傾向が強い。この背景としては、企業が人材
育成を効果的に行うために、職業能力評価の導入によって、労働者に職務遂行能力の向上を促しているこ
となどが挙げられる。
4 人材確保および定着と賃金上昇率は相互に影響
人材育成についての問題点としては、
『鍛えがいのある人材が集まらない』
・
『育成を行うための時間がない』
と言った理由の割合が大きい。この 2 つの理由と賃金上昇率の相互関係を示したのが次の図である。
優秀な人材が確保出来ない産業や人材がなかなか定着しない産業では、人材育成を通じた職務遂行能力向
上が見込みにくいことなどから、企業経営者は労働者の賃金上昇を抑制させる傾向にあることを示してい
る。他方、労働者側からみると、能力の高い人材は賃金の上昇が見込めない企業に就職したがらないこと、
長期間勤務せずに転職してしまうことを意味する。こうした問題が大きい産業としては、
『宿泊・飲食』
・
『医
療・福祉』
・
『生活関連・娯楽』が挙げられる。
企業側の理由、労働者側の理由、双方の理由により負のスパイラルに陥っているこれらの産業は、これま
で『人材育成』関する諸施策が他の産業と比較し注力されてこなかった可能性もあり、逆にとれば、
『人材
育成』を軸とした人事制度の構築とその効果的な運営が成されれば、同業他社との大きな差別化、競争力
に繋がる可能性があるかもしれない。
最新情報
ストレスチェック制度などの創設(労働安全衛生法の一部を改正)
最近の経済社会情勢の変化および労働災害の動向に即応し、労働者の安全と健康の一層の確保を図るため、労
働安全衛生法の一部を改正することとされました。
具体的には、次のような改正を内容とする「労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成 26 年法律第 82
号)
」が、本年6月 25 日に公布されました。
労働安全衛生法の一部を改正する法律の概要
改正事項
施行時期
1. 化学物質管理のあり方の見直し
公布の日から起算して2年以内
2. ストレスチェック制度の創設
公布の日から起算して1年6か月以内
3. 受動喫煙防止対策の推進
公布の日から起算して1年以内
4. 重大な労働災害を繰り返す企業への対応
公布の日から起算して1年以内
5. 外国に立地する検査機関等への対応
公布の日から起算して1年以内
6. 規制・届出の見直し等
公布の日から起算して6か月以内
このうち、「ストレスチェック制度の創設」と「受動喫煙防止対策の推進」については、平成23年12月にも、両制
度の導入を盛り込んだ改正法案が国会に提出されましたが、一度は廃案とされたという経緯があります。
しかし、労働者の安全と健康の確保のためには欠かせない制度ということで、一部修正の上、今回正式に導入される
ことになりました。
これらは、一般的な事務所を含むすべての業種について適用される規定であり、要注意です。概要は次のとおりです。
◆◆ストレスチェック制度の概要◆◆
●労働者の心理的な負担の程度を把握するための、医師、保健師等による検査(ストレスチェック)の実施を事業
者に義務付ける。ただし、従業員 50 人未満の事業場については、当分の間、努力義務とする。
●ストレスチェックを実施した場合には、事業者は、検査結果を通知された労働者の希望に応じて医師による面接
指導を実施し、その結果、医師の意見を聴いた上で、必要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮その他の適
切な就業上の措置を講じなければならないこととする。
◆◆受動喫煙防止対策の概要◆◆
●受動喫煙防止のため、事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずることを努力義務とする。
ストレスチェック制度については来年の 12 月ごろ、受動喫煙防止対策については来年の6月ごろまでには
施行されます。まだ期間はありますが、近い将来、会社にこのような義務または努力義務が課されることに
なることは、知っておいた方がよいでしょう。具体的な制度内容などについては、ご質問ください。
トピックス
本年 10 月から、企業型の確定拠出年金の拠出限度額が引き上げられます
企業型の確定拠出年金の掛金には、拠出限度額(上限)が設けられていますが、その拠出限度額が、本年
10 月から引き上げられることになりました。
確定拠出年金の企業型年金における拠出限度額
①
企業型の確定拠出年金の加入者であって、次の②以外の者
②
企業型の確定拠出年金の加入者であって、他の企業年金(確定
給付企業年金など)に加入している者等
改正前
改正後
月額 51,000 円
月額 55,000 円
月額 25,500 円
月額 27,500 円
注.従業員(加入者)の拠出を認めるマッチング拠出を採用している場合、次のようなルールがあります。
○ 加入者の掛金を設定する場合、その額は、事業主の掛金を超えないようにする。
○ 拠出限度額は、事業主の掛金と加入者の掛金の合計額に適用される。
☆
確定拠出年金を導入している場合、掛金の額の引き上げが可能となりますが、規約の変更が必要となることに
ご注意ください(マッチング拠出の場合、上記のルールにも注意が必要です)。
【参考】確定拠出年金の概要
○確定拠出年金は、事業主または加入者が掛金を拠出し、その掛金(年金資産)を加入者が自己責任で運用し、その
運用実績に基づいて給付額が決定される年金制度。
○個人型と企業型の2種類がある。
○加入者が転職した場合等に、自己の年金資産を、個人型の確定拠出年金または他の企業型の確定拠出年金に移換す
ることが可能。
メリット
デメリット
事
業
主
側
○掛金の追加拠出義務は生じない
×加入者ごとの詳細な資産運用の記録等の管理が必要
○退職給付債務に基づく会計処理は不要
×資産運用状況が良好であっても掛金は軽減できない
○税制上、事業主が拠出した掛金は、全額損金算入
×加入者に対して投資教育が必要
従
業
員
側
○加入者ごとの年金資産が明確
×運用成績により給付が変動するため、将来の退職後収
○運用方法や資産構成割合を選択できる
○運用が好調であれば高い給付が期待できる
○税制上、加入者が拠出した掛金は、全額所得控除
入としての保障が劣る
×運用リスクを負う
☆今回の企業型確定拠出年金の拠出限度額引き上げの背景には、
「貯蓄から投資への転換」の推進の観点に加え、
「公
的年金給付のスリム化」、「厚生年金基金の大幅縮小」に伴う受け皿制度の整備の観点からの要望が高かったこと
があります。このような経緯から、政府が確定拠出年金制度の導入を推進していることが窺えます。実際に、退
職金制度を廃止して、確定拠出年金に移行するケースも増えており、中小企業でも普及が進んでいるという特徴
があります。確定拠出年金を導入していない場合でも、その概要は知っておきたいところです。
お仕事
カレンダー
8/10 ●一括有期事業開始届の提出(建設業)
主な対象事業:概算保険料 160 万円未満で
かつ請負金額が 1 億 9000 万円未満の工事
●7 月分の源泉所得税、住民税特別徴収税の
納付
8/31 ●7 月分健康保険料・厚生年金保険料の納付
●個人事業税の納付<第 1 期>
8/31 ●6 月決算法人の確定申告・12 月決算法人
の中間申告
●9 月・12 月・翌年 3 月決算法人の消費税
の中間申告
●個人事業者の当年分消費税の中間申告
●個人の道府県民税・市町村民税の納付<
第 2 期>
❏事務所だより❏
兼務している合同会社マーケティング・コンサル・オフィスにて下記のセミナーを開催予定です。是非、ご参加く
ださい。
『スーパー、ドラッグストア等業態間競争時代への対応』
~メーカー・卸売業が対応すべきリテールサポート戦略~
昨今の流通業界は市場環境の変化、業界の再編などにより大きな変革が求められています。 その状況
下でメーカーや卸売業が活性化し、発展していくためには、今まで以上に小売業のマーケティング戦略や、
業績改善に貢献する戦略的な問題解決能力を習得し、小売業への効果的な支援策が求められています。 本
セミナーは、得意先小売業の業績改善に繋がるマーケティング戦略と物流戦略の革新方向について学びま
す。 皆様のご参加をおすすめします。
【開催日時】 平成 26 年 9 月 5 日(金) 13:00~17:30
【会
場】 東京五反田TOCビル地下 1 階 B2 会議室
【受 講 料】 15,000 円(税込)
【講
師】 加藤弘貴・紙谷佳伸・田村隆一郎・宮下正房
『
“人を育て”他社に打ち勝つ人事制度の作り方』
次のような課題を抱えている中小企業の方々に是非参加していただきたいセミナーです。
・そもそも人事制度が存在しない。
・貢献度に見合った処遇になっていない。
・人が育たない。
・人件費が予算内に収まらない。
・なぜか、優秀な社員から辞めていく。
【開催日時】 平成 26 年 9 月 24 日(水) 13:30~16:30
【会
場】 東京都港区立商工会館 第二会議室
【所 在 地】 東京都港区海岸 1-7-8 東京産業貿易会館 6 階
【参 加 費】 10,000 円(税込)
【講
師】 川島寛(かわしまひろし)
※詳細につきましてはホームページ http://www.llc-mco.com/study.html を御覧ください。
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