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研究・技術情報 - つくば研究支援センター

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研究・技術情報 - つくば研究支援センター
No
研究・技術情報
140012
技術分野
タイトル
電子・情報・通信
キーワード
断面矩形性、濡れ広がり、微細化、スクリーンオフセット印刷、
フレキシブルデバイス
スクリーンオフセット印刷技術注)
-高い断面矩形性を有する微細印刷パターンの形成に成功-
【目的と効果】
スクリーン印刷技術は、太陽光発電パネル、積層セラミックコンデンサ、タッチパネルなど、さ
まざまな電気電子素子の配線・電極の形成に用いられる。印刷されるパターンは技術の発展に伴っ
て年々微細になってきており、現在は量産検討開発品レベルで幅 50μm 前後と言われている。
しかし、インクは流動性があるため基本的に濡れ広がりが生ずる。そのため、これ以上の微細化
がとても難しい状況である。この発明は、この濡れ広がりをコントロールすることで、上記の線幅
レベルよりはるかに微細な幅 15μm 以下のパターン形成をも可能とするものである。
【技術の概要】
(1)技術の内容
図1(a)に直線状の銀パターン(設計値 50μm 幅)を従来のスクリーン印刷で形成した場合、図
1(b)にスクリーンオフセット印刷で形成した場合の 3 次元像を示す。上記の通り、一般的なスク
リーン印刷ではインクの濡れ広がりが制御できず、その結果、インクがダレてパターンが広がり、
断面もかまぼこ状になってしまう。
図1 (a)スクリーン印刷、および(b)スクリーンオフセット印刷で形成した
設計線幅 50μm の直線状銀パターン。印刷基材は PET フィルム。
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一方、スクリーンオフセット印刷では、直接基材に印刷せず、まず転写体にスクリーン印刷し、
その後転写体からインクを転写する。この際、転写体とインクをうまく相互作用させてインクの濡
れ広がりを抑えることがポイントである。これにより、図1(b)のように高い断面矩形性を持つパ
ターンを転写成形することが可能となった。濡れ広がり制御のための条件についてさらに最適化す
れば、図2に示すような幅 15μm の細線形成も安定的に行うことができる。
スクリーン印刷技術をベースに、高い断面矩形性を持つ高品質な微細配線を得ることができるこ
の手法は、上記の既存デバイスへの適用はもちろんのこと、半導体チップの再配線用途など、多方
面に利用できると考えている。また、近年注目を集める印刷・フレキシブルデバイスを生産する際
の配線形成手法として、あるいはそういったデバイスの実装用電極の形成法として利用価値の高い
ものになるのではと考えている。
図2
スクリーンオフセット印刷で形成したライン/スペース
(L/S)=15/15μm の銀パターン。印刷基材は PET フィルム
(2)適用分野
電気電子素子の配線・電極への適用が考えられる。具体的には、太陽光発電パネル、積層セラミ
ックコンデンサ、タッチパネルの周辺およびグリッド配線・電極の形成、デバイス実装用電極の形
成、半導体チップ再配線への適用等が可能である。
【用語の説明】
◆スクリーン印刷
孔版印刷の一つ。木や金属の枠に張った絹・ナイロン・ステンレスのワイヤーなどを版材とし、そ
の細かい編み目を通してインクを定着させる印刷法。
◆濡れ
固体の表面に液体が接触している状態を指す。
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◆オフセット印刷
印刷技術の一つ。実際に印刷イメージが作られている版と被印刷体が直接触れないのが特徴。版に
付けられたインクを、一度ゴムブランケットなどの中間転写体に転写(off)した後、紙などの被印
刷体に印刷(set)するため、オフセット印刷と呼ばれる。
◆フレキシブルデバイス
薄さ・軽さ・持ち運びやすさ・柔軟性を兼ね備えた電子機器の総称。ガラスやシリコンなど硬くて
脆い材料の代わりに、プラスチックフィルムや有機半導体など柔らかくて軽い材料を用いることで
実現される。ディスプレイ、センサ、太陽電池などへの応用が期待されている。
【参考文献】
(1)「スクリーンオフセット印刷技術 − 高い断面矩形性を有する微細印刷パターンの形成に成功
− 」
、産総研 TODAY、Vol.14-10(2014)
(2) K. Nomura, Y. Kusaka, H. Ushijima, K. Nagase, H. Ikedo, R. Mitsui, S. Takahashi, S.
Nakajima, and S. Iwata, “Continuous fine pattern formation by screen-offset printing
using a silicone blanket”, J. Micromech. Microeng., Vol. 24, 095021-1-095021-7 (2014)
(3) K. Nomura, H. Ushijima, R. Mitsui, S. Takahashi, and S. Nakajima, “Screen-offset printing
for fine conductive patterns”, Microelectron. Eng., Vol. 123, 58-61 (2014)
(4)「パターンの形成方法(Method for forming pattern)」
、国際公開番号 WO2014/050560(国際公
開日:2014.4.3)
(5) 野村健一、
「スクリーンオフセット印刷を用いた高品質細線形成」、日本印刷学会誌、Vol. 50,
479-483 (2013)
(6) 野村健一、
「スクリーンオフセット印刷技術」
、産総研 TODAY、Vol.13-01(2013)
注)
:本技術シーズは、産総研 TODAY 2014-10(16 頁)に掲載の「スクリーンオフセット印刷技術 − 高
い断面矩形性を有する微細印刷パターンの形成に成功 − 」と関連文献に基づき、TCI が加工
し、本文については、研究者の追加説明とチェックを得、図表及び写真については当該研究
所の転載認可を得て、紹介するものである。
研究者所属
氏
名
(独)産業技術総合研究所 フレキシブルエレクトロニクス研究センター
先進機能表面プロセスチーム
研究員 野村 健一
TSNET コメント
種々の印刷技術の中で、エレクトロニクス製品の量産では殆どの場合にスクリーン印刷が利用さ
れているが、パターンの微細化が進むにつれて、次のような問題が顕在化してきた。すなわち、イ
ンクが乾燥する過程で印刷パターンの側面にダレが生じ、結果として線が太くなるなどの問題が生
じていた。今回は、その解決につながる極めて有効なスクリーンオフセット印刷技術を紹介した。
研究担当者は、中間の転写体(ブランケット)として平滑性が高く、インク中の溶媒をある程度
吸収するシリコーンゴムの一種でできたブランケットを用い、それにスクリーン印刷でパターンを
形成した後、印刷対象の基材にパターンを転写する方式を考案した。
基材として PET フィルムを用いて実験を行い、設計線幅 50μm の直線状銀パターンに対しては、
従来のスクリーン印刷より遥かにインクの濡れ広がりが少ないことを確認した。また、従来方式で
は極めて困難であった 15/15μm のライン/スペース(L/S)を実現した。
今後の当面の技術開発課題として、担当研究者は次のような課題解決を目指している。
①15μm よりさらに細い線幅を実現したい。それによりタッチパネルのグリッド配線等への利用が
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可能となる。
②40~50μm の線幅に対して、アスペクト比で 0.5 以上の膜厚を実現したい。これにより太陽電池
の電極形成にも利用可能となる。
③フレキシブルな電気電子素子用の引出電極の形成など、実装技術に資する技術を確立したい。
これらに対して何らかの希望や構想をお持ちの企業、あるいは本件について少しでも興味を持た
れた企業におかれましては、是非、積極的なご提案やご質問を頂ければ、誠に幸甚です。
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つくば創拓ネットワーク担当
野崎
E-mail: tsnet-j@tsukuba-tci.co.jp
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