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対話でみがくことばの力 互いの異なりを活かすグループワーク 26 グループワークのコーディネーター用マニュアル 本書のグループワークは,基本的にコーディネーターの 主導がなくても実施可能ですが,グループメンバーの人数 が多くなると,全員で同じような進度で展開することが難 しくなります。そのような場合は,参加メンバーをまとめ, 主導するリーダー(=コーディネーター)がいると活動が 円滑に進みます。本マニュアルは,そのコーディネーター となる人のために,グループワーク実施中の発問(メンバ ーへの指示)を中心に活動方法の手順を示したものです。 ペアワークの場合は,ペアの一方を A さん,その相手 を B さんとしています。もちろん,必ずしも本マニュアル どおりにおこなう必要はありません。その場の参加者にあ わせて自由にアレンジしてみてください。また,本書をお 手元にご用意しながらご覧ください。 1 目 次 ワーク 1……………………………………………3 ワーク 2……………………………………………5 ワーク 3……………………………………………7 ワーク 4……………………………………………9 ワーク 5…………………………………………11 ワーク 6…………………………………………13 ワーク 7…………………………………………15 ワーク 8…………………………………………17 ワーク 9…………………………………………19 ワーク 10…………………………………………21 ワーク 11…………………………………………23 ワーク 12…………………………………………25 ワーク 13…………………………………………27 ワーク 14…………………………………………29 ワーク 15…………………………………………31 ワーク 16…………………………………………33 ワーク 17…………………………………………35 ワーク 18…………………………………………38 2 ワーク 1 できること・できないこと 準備するもの □ 謎の物体。多くのメンバーが生まれて初めて目にするようなもの。 (例:自作のぬいぐるみ) □ 抽象度の異なる 3 種類の単語。 (例: 「腕時計」 「自転車」 ・ 「予定」 「天気」 ・ 「せめて」 「どうせ」 ) □ 非存在,過去,願望などのことがらを表現したもの。 (例: 「この部屋には象がいない」 「私は昨日怪我をした」 「ああ,今すぐケー キが食べたいなぁ」 ) □ それぞれの語句などを書いたパネルやカード。もしくは,書記できる黒板 など。 ワーク 1-A 発問:これから,おそらくみなさんが生まれてから一度も見たことのないもの を,A さんだけにお見せします。それを,ことばだけで B さんに説明してく ださい。絵や身ぶり・手ぶりを使ってはいけません。 ① コーディネーターの近辺に A を集める。 ② B に見られないようにして,謎の物体を A に提示する。 ③ A を B のところに返し,指示通り説明を始めてもらう。 ④ ある程度の時間をおいて,全員に物体を示す。 ⑤ A と B の役割を交替し,①に戻って B に別の物体を示す。 ワーク 1-B 発問:A さんに 1 つの単語を示します。A さんはその単語を使わず,それが何 3 という語かを B さんに説明してください。 ① B に目を閉じるなどをしてもらい,A だけに 1 つの単語を提示する。 ② 提示した単語を隠し(消し) ,指示通り説明を始めてもらう。 ③ 時間をおいて,全員に提示した単語が何かを示す。 ④ A と B の役割を交替し,①に戻って A に別の単語を示す。 ⑤ お互いのワークが終わったら,抽象度を上げた別の単語を提示する。 ワーク 1-C 発問:これから示すことがらをことば以外の手段を駆使して,表現してみてく ださい。絵を使っても,ジェスチャーでも結構ですが,話したり,文字を書い たりしないでください。 ① 準備してきたことがら( 「私は昨日怪我をした」等)を提示する。 ② 互いに表現し合う。 ※ 先のワークのように,ペアの片方だけに表現を示し,ジェスチャーゲーム のようにおこなってもよい。 留意点 本ワークを通して学ぶことは,定義には限界があるということです。説明が うまくできるかできないかを評価しないでください。仮に説明者の意図が相手 にうまく伝わらなかったとしても,それは説明をしている人が悪いのでも,説 明を理解できない人が悪いのでもありません。後段のワークでも体験しますが, 「理解」は対話という総体的な場面の中で発生しますので,場面に参加してい る特定の人や場面に登場する素材の一部だけに原因を押しつけることができ ないことを理解してもらってください。 4 ワーク 2 《こえ》を出そう 準備するもの □音楽記号を描いたカード,パネルなど(例:♪(音符) ,>(アクセント記号) , フェルマーター,スタッカート,など《こえ》の高さ,強さ,速さ……とは何 かが説明できるもの) 。もしくはキーボード等の楽器。 □ 様々な表情を示した顔の絵パネル(写真) ,もしくは文言を書いたカード。 (例: 「嬉しそうな」 「楽しそうな」 「つまらなそうな」 「怖そうな」 「悲しそう な」 「悔しそうな」 「寂しそうな」 「心配そうな」 「深刻そうな」 「冷淡な」 「軽々 しい」 「感動的な」絵,など) ワーク 2-A 発問:パートナーと「こんにちは」 「今日はとても良い天気ですね。 」といった 簡単な会話のセリフを考え,シートに記入してください。次に, 《こえ》の調 子をいろいろ変えながら,そのセリフを使ってお互いに会話してください。 《こ え》の高さ,強さ,速さ,長さ,リズム,間の空け方,声色,などをいろいろ 変化させてみて,できるかぎり今まで発したことのない,聞いたことのない組 み合わせを試してください。 ① A と B でその対話を交わしてもらう。 ② 一定の時間が経過したら,A と B の役割を交替する。 ワーク 2-B 発問:A さんは B さんにシートに示したセリフを,同じくシートに示した感 情を込めて言ってみてください。そして,B さんは A さんがどういうつもり で言ったのかあててみてください。 5 ① A には,B に向かってセリフを言ってもらう。 ② B が A の込めた気持ちを推測し,それを伝える。 ③ 一致しているかどうか確認する。 ④ A と B の役割を交替し,①に戻る。 ワーク 2-C 発問:まず, 「座ってください」 「立ってください」 「あっちを向いてください」 といったお願いごとをシートに記入してください。A さんは,記入した行為を B さんにやってもらってください。ただし,出せる《こえ》は「ぴ」だけです。 ジェスチャーを交えて伝えても構いませんが, (ひよこになったつもりで) 「ぴ ぴぴぴ……」と言うだけで,お願いしてみてください。 ① A が B に,記入した依頼を「ぴ」の連続を発声するだけでしてもらう。 ② A は,一定の時間がたったらどんな依頼だったのか(正解)を B に示す。 ③ 役割を交代し,①に戻る。 留 意 点 「調子を変える」とはどういうことなのかがうまく理解してもらえないよう でしたら,準備してきた音楽記号等のカードを提示して説明します。ワーク 2-B で,パートナーの感情をあてようとするとき,発話する代わりに絵カード で示すようにすると,スピーディーに活動をおこなうことができます。 うまく伝わるか伝わらないかは,気にしないようにしてください。むしろ, 多彩な《こえ》のあることを実感することが大切です。そして,どんな表現を するときにも, 《こえ》が必要不可欠であること, 《こえ》がなくては対話が成 り立たないことを味わってもらいます。 6 ワーク 3 《かたまり》の見え方 準備するもの □ うまく区切りを入れないと解釈しにくい表現,区切りの入れ方で解釈が変 わる表現。 (例: おしょくじけん,しかいぎょう,など) ワーク 3-A 発問:次の表現(本書に掲載した表現・準備してきた表現)について,意味が わかりやすくなるように,区切りを入れてください。その後,他のメンバーと 意味を確認してください。 ① 表現をメンバーに示す。 ② 各メンバーで独自に区切り( 「/」など)を入れてもらう。 ③ 区切りの入れた場所を他のメンバーと比較しながら,どんな意味なのかを 話し合う。 ワーク 3-B 発問:B さんは,A さんのやまびこです。A さんが言ったことばに続いて発話 してみましょう。ただし,まったく同じ発話(ものまね)をするのではなく, ほぼ同じ長さで別の表現に言いかえて言ってください。たとえば, A: が! B: ぎ! A: こんにちは B: こんばんは A: あの∼ B: えーと 7 A: 私は昨日財布を買いました B: 彼は明日公園へ行きます ① 発問の通り,A が何かを言って,B が応えるようにする。 ② ある程度やりとりをおこなったら,役割を交替する。 留 意 点 《かたまり》の切り取り方は,おそらくメンバーによって異なります。違い があるということ,そして,その大きさを自由に変えられること,この 2 点に 留意しながらおこなってください。 8 ワーク 4 《かたり》の流れ 準備するもの □ 様々な語句や絵をかいたカード,数十枚。既成のものでも可。 □ 新聞紙。メンバー全員に,読み終わった古新聞 1 部を持ってきてもらう。 □ はさみ。各自用意する。 □ のり。 □ 記事を張りつけるノートや模造紙など。 □ 3cm×20cm ほどの大きさの短冊を人数分。 ワーク 4-A 発問:A さんは B さんに,適当に 2 つの《かたまり》を言ってください。B さんはその 2 つの《かたまり》を使って,1 つの面白いものを考え出して,言 ってみてください。たとえば,A さんが[お守り] ・ [鉛筆]と言ったら[お守 り付き鉛筆] , [携帯電話] ・ [食べる]と言ったら[食べられる携帯電話] , [が] ・ [び]と言ったら[がび]などと言います。今までに,見たことも聞いたこと もないものでも構いませんので,楽しい組み合わせを考えてください。その後 で,A さんはそれが何かを B さんに説明してください。 ① A が B に適当な《かたまり》を 2 つ言う。 ② B は,その 2 つの《かたまり》を組み合わせ(順番はどちらが先でもかま わない) ,新しい 1 つの《かたまり》をつくり出す。 ③ B は,それが何かを A に説明する。 ④ 役割を交替する。 ※ 発展的に,A が言う《かたまり》を 3 つ,4 つと増やしてみてもよい。 ※ 3 人以上のグループワークにしても OK。その場合,トランプほどの大きさ 9 のカード一枚一枚に,違った絵(や文字)をかいておき,神経衰弱のよう に 2 枚めくって,その 2 つを組み合わせる,という方法がある。 ※ さらに,コーディネーターが,何かの物語を連想させる《かたまり》をい くつか提示し,最後にその連想をうち破るような《かたまり》を示して, その順番に並べた物語をつくってもらうのも面白い。たとえば, [おばあさ ん] [桃] [きび団子] [猿] [鬼] [ヘリコプター]といった具合。 ワーク 4-B 発問:用意してきた新聞の見出しや記事の一部を切り抜いて,混ぜ合わせ,組 み合わせて,みなさんだけの愉快な事件記事をつくってください。 ① 4∼5 人から成るグループをつくり,グループ毎に作成した記事を張りつけ る模造紙(ノートなど)を配付する。 ② 発問の通りに,新聞の一部を切り抜き,自由に組み合わせて,新しい見出 しや記事をつくり出していく。 ワーク 4-C 発問:今から配付する短冊に,ひらがなで自分の名前を書いてください。書き 終わったらそれを隣の人と交換します。受け取ったら,一文字毎にはさみで切 り取ってバラバラにし,もう一度組み合わせて,新しい《かたまり》をつくっ てください。 留 意 点 好奇心旺盛なメンバーですと,壮大なストーリーを語ってくれることもあり ます。逆に,単に《かたまり》をくっつけるだけで終わりにする者もいます。 どちらにしても,良し悪しの問題ではないのですから,結果を評価しないよう にしてください。 《かたまり》をくっつけることだけに固執していても,数を こなすことで《かたり》の働きを知ることができます。 10 ワーク 5 複雑さと単純さの調整 準備するもの □ 4 コマ漫画をコマ割りし,それぞれのコマをパネルに貼りつけたもの。でき れば吹き出しがなく,絵のみで構成されているものがよい。 □ 1 コマ漫画を拡大し,その絵をパネルに貼りつけたもの。 ワーク 5-A 発問:50 音(辞書)の順番を順守したしりとりをしてみましょう。たとえば, A さんが「アメ」と言ったら,B さんは「メモリ」と言わなければなりません。 「メダマ」ですと, 「ダ(タ) 」は 50 音順で「メ」よりも前にくる仮名ですの で,使えません。このようにして,グループ内でできるだけ多くの《かたまり》 をつなげていってください。 ① グループ内のあるメンバー同士で,発問の制限をつけて,しりとりをおこ なう。 ② 何回続いたか(いくつ《かたまり》が出たか)をカウントし,グループ毎 に比較する。 ワーク 5-B 発問:しりとりをしてみましょう。ただし,前の人が言った《かたまり》のす べての仮名を頭にもってきてよいこととします。たとえば,A さんが「アメ」 と言ったら,B さんは「アシカ」とも「メダマ」とも言うことができます。 ① 発問の通り,しりとりをおこなう。 ② あまり長い時間をかけると飽きてくるので,4∼5 分程度で終了する。 11 ワーク 5-C 発問:グループメンバーから語り手を一人選んでください。これから 4 コマの 絵を順番に示しますので,語り手はその順番にしたがった即興の物語をつくっ て,聞き手に話してください。1 分たったら順番を入れかえますので,今度は その順番で物語をつくってください。このように,次々と順番を入れかえてい きますので,素早く考えて,素早つくっていってください。 ① 絵パネルを上から(もしくは右から)順番に,黒板等に貼りつけてメンバ ー全員に示す。 ② 1 分毎に,パネルの順番を入れかえ,メンバーに示す。 ※ おそらく, 全24通り示す前に活動が行き詰るので, その時点で終了とする。 ワーク 5-D 発問:グループメンバーから語り手を一人選んでください。これから 1 コマの 絵を示しますので,語り手はその絵から考えられる物語をつくって,聞き手に 話してください。1 分たったら終わりとしますので,別の人を語り手として選 んでください。選び終わったら,また違う絵を示しますので,同じように物語 をつくっていってください。 ① 絵をメンバー全員に示す。 ② 1 分ほどたったら,別の絵を示す。 留 意 点 5-A は, 《かたり》が複雑ですが内容が単純になります。5-B は, 《かたり》 が単純ですが内容が複雑になります。5-C と 5-D も,両極端を味わうにはもっ てこいのワークです。時間があれば,できるだけ多くのメンバーに語り手体験 をしてもらうようにしてください。また,5-B や 5-D が終了した後に,2 つの ワークの違いについて,グループ内で意見交換をしてください。5-C の後に 元々の順番とその物語を推測させ,種明かしをするのも面白いでしょう。 12 ワーク 6 意味を素材に託して 準備するもの □ 話しかけるための,いくつかのフレーズと,そのフレーズに託してもらう 意味を考えておく(本書参照) 。 □ 「あっ」 「うっ」 「おっ」 「あの∼」 「えっと」等を使用した対話例。 □ 「イヤ」と「ダメ」を使用した対話例や表現例。 ワーク 6-A 発問: 次のフレーズ(本書に掲載の表現)を使って相手に話しかけてみてく ださい。ただし, ( )の気持ちをもって発話してください。多少の演技力 が必要です。 ① A と B のペアをつくり,発問の通り,一方が他方へ話しかける。 ② 役割を自由に交替し,それぞれのペアのペースで対話をおこなう。 ③( )の気持ちが表現できたかどうかを話し合う。 ワーク 6-B 発問:次の対話(本書に掲載の対話)を 2 人でおこなってください。その後で, 下線部の表現を( )内の表現と言いかえてみてください。何か感じたこと はありましたか? ① 3 種類の対話をおこない,終了したら, ( )内の表現に言いかえておこ なう。 ② 前者の対話と後者の対話の違いなどについて意見交換をする。 13 留 意 点 何を選ぶのがよいのかと考えるのではなく,選んだ表現に託される意味が何 かを考えてもらいます。 14 ワーク 7 ミクロの変化 準備するもの □ 各自のノート等。 ワーク 7-A 発問:3∼4 人のグループをつくり,順番を決めてください。まず,最初の人 が仮名 3 文字から成る《かたまり》を言います。次の人は,その 3 文字のう ちの 1 文字だけをかえた《かたまり》を言います。こうして,1 文字ずつ入れ かえた《かたまり》をどんどんつくっていってください。自分が発話した《か たまり》は,順番にノート等に記録していってください。 ① たとえば,3 人グループの場合,A:「ブドウ(葡萄) 」→B:「サドウ(茶道) 」 →C:「サドル」→A:「ミドル」……などと続ける。 ※ 本節のワークにかける時間は,それぞれ 5 分ほどで十分。時間がたったら, 次のワークに進む。 ※ 本節のワークは,すべて 3∼4 人のグループ内でおこなう。逐一メンバーを 変えない方がよい。 ワーク 7-B 発問:今度はしりとりをしてください。先ほどのワークと同じく,自分が発話 した《かたまり》は,順番にノート等に記録していってください。 ワーク 7-C 発問:今度は連想ゲームをしてください。最初の人が言ったことから連想され る《かたまり》を,次の人が言っていきます。先ほどのワークと同じく,自分 15 が発話した《かたまり》は,順番にノート等に記録していってください。 ① たとえば,A:「ブドウ」→B:「紫」→C:「茄子」→A:「トマト」……とい った具合に続ける。 ワーク 7-D 発問:最初の人は, 「いつ」 「だれが」 「どこで」 「何をした」という 4 つの《か たまり》が明確に表現されたフレーズをノート等に書いてください。次の人は, その文を読み,4 つの《かたまり》のいずれか 1 つを別の《かたまり》に言い かえたものを書いていってください。 ① たとえば,A:「昨日太郎が駅で友達を待った」→B:「昨日花子が駅で友達 を待った」→C:「この間花子が駅で友達を待った」→A:「この間花子が駅 で彼氏を待った」……といった具合に続ける。 ワーク 7-E 発問:今度は書かれたフレーズの終わりの部分の《かたまり》 (どんな大きさ でもかまわない)を頭にもってきて,新しいフレーズをつくっていってくださ い。 ① たとえば,A:「昨日太郎が駅で友達を待った」→B:「友達を待ったけれど も来なかった」→C:「なかったことにする」→A:「するすると壁を登って いく蛇」……といった具合に続ける。 留 意 点 7-A と 7-D,7-B と 7-E,7-C と 7-F はそれぞれ似たパターンで対応してい ます。 《かたまり》はその大きさに関係なく変わっていくことがわかりますが, メンバー各自の手元に記載される《かたまり》は,変化の結果であって過程で はないことに留意してもらってください。 16 ワーク 8 素材の制約と生成 準備するもの □ 何かの絵や写真。 □ 伝言ゲームのフレーズ。できれば,若干長めのもの(短歌程度の長さで, ひとまとまりの情報をもっているものが適切) 。 □ 書いたものを掲示できるもの(黒板等) 。 もしくは,模造紙をグループの 数だけ用意する。 □ 白紙のカード,メンバーの人数×3 枚ほど。 ワーク 8-A 発問:これから示す絵について,メンバーの 1 人がタイトルを考え,それを他 メンバーに言ってください。次に,別の 1 人がそのタイトルを変えて,言って ください。このように,次々とタイトルを変えて言ってみましょう。それぞれ のタイトルは,ノート等に書いておいてください。全員が言い終わったら,そ れぞれのタイトルを比べてみてください。何が違いますか? ① たとえば,A:「海岸の風景」→B:「海岸の景色」→C:「海辺にて」……な どと続ける。 ② それぞれのタイトルを比較して,何が変わっているのか意見交換をする。 ※ 言い方( 《こえ》 ) ,並べ方( 《かたり》 ) ,使っている語( 《かたまり》 )の違 いに気がつくだけでよい。 ワーク 8-B 発問:全員で伝言ゲームをしましょう。ただし,伝達は一回かぎりです。前の 人から伝言を聞いたら,それを自分のノートに書き,それを見ずに次の人に伝 17 えてください。 ① メンバー全員を一列に並べ,先頭のメンバーに用意してきたフレーズを耳 打ちする。 ② 最後まで伝達し終わったら,次の発問をおこなう。 発問:それでは,手元に書いてある伝言を順番に並べてみましょう。どのよう に,何が変化していったか,グループ毎に意見交換をしてください。 ③ 全員に伝言が見えるように,各伝言を黒板等に書き出す。もしくは,順番 に各自が書いたフレーズを発表していってもよい。 ワーク 8-C 発問:これから白紙のカードを 3 枚ずつ配ります。カード 1 枚 1 枚に,自分 の好きな平仮名 1 文字を書いてください。 ① カードを配付して平仮名を書いてもらい,その後カードをすべて回収する。 ② 回収したカードを,グループ毎に適当な枚数配付する。 発問:では,このカードを組み合わせたり並べたりして,グループ内でことば をつくってください。 ③ グループ毎に,自由にフレーズをつくってもらう。 ④ カードを並べ終わったら,ことばにする際に守らなくてはならなかった制 約は何かを考えてもらう。 留 意 点 ことばの変化とは現れの変化であり,制約に縛られながらも自由に変更が可 能であることを,本ワークを通して体験します。 「何に縛られるのか」という 点と, 「何を変えられるのか」という点を,とことん議論するようにしてくだ さい。 18 ワーク 9 時間よ止まれ:体系を創り出す 準備するもの □ 隣接する《かたまり》の一方にブランク(空欄)を付した表現(9-A) 。 □ 階層(包摂)関係を成すような《かたまり》群を十数個(9-B) 。 ワーク 9-A 発問:次の(本書に掲載の表現等) [ ]の中に入れることのできる《かたま り》を,グループ内でできるだけたくさん見つけてください。その後で,それ らの 《かたまり》 群がどのような性質をもっているのか, 考えてみてください。 ※ 1 では,たとえば[大きい] [かわいい] [私の] [きれいな]といったもの, 2 では[k] [s] [t]といったもの,3 では[翼] [重量] [パイロット]な ど,4 では[笑った] [仕事に行った] [眠っている]などが入ってくる。 ワーク 9-B 発問:次の(本書に掲載の《かたまり》 )10 の《かたまり》をきれいに分類し てください。 ※ できれば,10 枚のカードにそれぞれの名称を記入し,グループ内であれこ れアレンジ(位置を動か)しながら,分類してみるとよい。 ワーク 9-C 発問:同じようなことがらを,別の角度から捉えた表現を見つけてください。 また,考え出してみてください。たとえば, 「勇気」と「無茶」 , 「専門家」と 「専門バカ」 , 「まだ半分」と「もう半分」 ,といったものです。諺にも「善は 19 急げ」と「急がば回れ」 , 「案ずるより産むがやすし」と「石橋をたたいて渡る」 といったものがあります。 ① グループ内でディスカッションをしながら,表現を見つけていく。 留 意 点 グループ毎に違ったものが出てくれば,成功と考えてください。9-B の分類 方法にしても,一般的な包摂関係を図にする(配置する)ことだけが正解なの ではないと思います。 さらに,出来上がった体系についても,新しい《かたまり》が 1 つ入ってく るだけで,その形を大きく変える場合があります。そのような「流動的」な側 面を味わう体験ができれば,素晴らしいでしょう。 20 ワーク 10 メ ゾ の 変 化 準備するもの □ 電話応対の対話(10-E) 。特に,友達口調のもの。 ワーク 10-A 発問:小さい頃,よく口に出していた言い回しを思い出してみましょう。たと えば, 「どちらにしようかな天の神様の言うとおり……」や「さよなら三角ま たきて四角……」とか,じゃんけんをするときの掛け声などです。グループ内 で出し合って,比較してみましょう。 ワーク 10-B 発問:周囲の話の意味がわからずに, 「∼ってなあに?」と尋ねていた頃を思 い出してみましょう。 「こしょうちゅうってなあに?」 「ざいせいなんってなあ に」などと大人の人に尋ねた経験はありませんか?どういう質問をしていたの か,グループ内で出し合ってみてください。 ワーク 10-C 発問:長い間勘違いしていた言い回しはありませんか。たとえば,次のような (本書に掲載の表現を例示)ものです。 また,次の例(2 つめの表現を例示)のように,家庭内やあなたが住んでいた 地域での独特の名称はありませんでしたか。思い出してみましょう。 ワーク 10-D 発問: 「あの時にはわからなかったけれど今ならわかる」と感じられる,発言, 著作, 文言等を挙げてみましょう。 特に, それらに初めて出会ったのはいつで, 21 次に出会ったのはいつで,どんな解釈の変化があったのかを考えてみましょう。 ワーク 10-E 発問:シートの対話(シート 10-E)は,ある会社での電話応対の様子です。 言いかえて,丁寧なものにしてみましょう。その後で,A さん B さんの 2 人 で,演じてみてください。 ① 対話を提示する,もしくは,書き下したものを各グループに配付する。 ② 対話を敬語などの表現を使って, (自由に)言いかえて(書き換えて)もら う。 ③ 言いかえたものを台本とし,ペアで新しい対話をおこなってもらう。 留 意 点 変化のプロセスを知るには,2 つの事象を引き比べなくてはなりません。本 節のワークはそのための課題です。さらに,メゾレベルでの変化は,今,まさ に発生している変化でもあることを最後のワークで確認しましょう。この際, 社会的に適切な言い方かどうかは置いておき,咄嗟に使いこなせるほどに変化 をしたものかどうか, 「丁寧にしよう」という意思がどれほど反映できるか, 考えてもらいます。 22 ワーク 11 マクロの変化 準備するもの □ 現代語と古語の活用表(本書のシート参照) 。 ワーク 11 発問:下に示したものは,現代語と古語の動詞活用表(抜粋)です。空欄に, 「あ」 「い」 「う」 「え」 「お」のいずれかの仮名一文字を入れてみましょう。 現代語 続く形 語幹 -ない -ます -とき -ば -ず -ながら -人 -ども -(さ)せる -つつ -瞬間 - -う 意味 (変化しない部分) -(ら)れる ik 行く あ い う え お oyog 泳ぐ あ い う え お os 押す あ い う え お ut 打つ あ い う え お omo(w) 思う あ い う え お tob 飛ぶ あ い う え お nom 飲む あ い う え お nor 乗る あ い う え お ar 有る あ い う え お sin 死ぬ あ い う え お ker 蹴る あ い う え お k 着る い い いる いれ いよ ok 起きる い い いる いれ いよ d 出る え え える えれ えよ tom 止める え え える えれ えよ k 来る お い うる うれ およ s する い い うる うれ いよ 23 古語 続く形 語幹 -ず -き -なり -ば -ざり -けり -らむ -ど -む -たり -めり -ども -まし -けむ -べし - 意味 (変化しない部分) ik 行く あ い う え え oyog 泳ぐ あ い う え え os 押す あ い う え え ut 打つ あ い う え え omoh 思う あ い う え え tob 飛ぶ あ い う え え nom 飲む あ い う え え nor 乗る あ い う え え ar 有る あ い う え え sin 死ぬ あ い うる うれ え k 蹴る え え える えれ えよ k 着る い い いる いれ いよ ok 起きる い い うる うれ いよ id 出る え え うる うれ えよ tom 止める え え うる うれ えよ k 来る お い うる うれ およ s する え い うる うれ いよ ① 上の表をグループ内で完成させ,次の発問を考えてもらう。 発問:現代語と古語で,似ている部分と異なっている部分を挙げてください。 留 意 点 ここでは,赤字で示したひらがなが入りますが,表が完成したら現代語と古 語の類似点と相違点を考えてもらうようにします。さらに,活用表のつくり方 は,これが唯一のものではありません。余裕があったら違う形の表の作成にも チャレンジしてもらうとよいと思います。 24 ワーク 12 変 化 の 方 向 準備するもの □ ことばの変化の実例(本書参照) 。 □ 何かの連続を現したものの一部を抜粋したもの(12-B) 。 ワーク 12-A 発問:ミクロ,メゾ,マクロのそれぞれの変化について,次の例(本書に掲載 の表現)と同じような経過をたどった変化を探してみましょう。 ※ 差異が発生する「分化」の方向と,同じものにまとまっていく「統合」の 方向,両方向が存在することを確認する。 ワーク 12-B 発問: (本書に掲載の各表現の)次に来るものは何でしょう。答えてみてくだ さい。 ① コーディネーターが上の問題をグループメンバーに示す。 ② 各人に一応の答えを出してもらう。 ③ 答えを示す。アは「27」 ,イは「め」 ,ウは「えっ,何の話?」を(現時点 での)正解とする。その後,本書に掲載の理由を発表する。 留 意 点 絶対確実な予測はけっしてできないこと,そして,予測や一般化や理論化の 基盤には,1 つひとつの差異を感じ取って,そこから「意味」を紡ぎだす方法 が存在していることを考えてもらいます。もちろん,出題の答えの理由も,い 25 かようにもつけられることを付言し忘れないようにしてください。問題自体を メンバーにつくってもらってもよいでしょう。 26 ワーク 13 よりそう:対話のはじまり 準備するもの □ メモ用紙。メンバーの人数分。 ワーク 13-A 発問:A さんと B さんが向かいあってください。向かいあってお互いの顔を 確認したら,思いっきり素敵な笑顔をつくってください。 ① ペアをつくり,向かい合って立って(座っても可)もらう。 ② お互いが相手に笑いかける。 ※ 相手が笑顔になると,もう一方も自然と笑顔になってしまうことを確認し たい。 ワーク 13-B 発問:今度は,向かいあったまま,指を立ててください。そしてそのまま腕を 相手に向かってゆっくりさしだしていき,お互いの指の先を近づけて,くっつ けてください。映画『ET』のワンシーンに出てきたポーズです。くっつけた ら,そのまま離さずに大きく円を描くように,ゆっくり腕を 1 回まわしてくだ さい。うまくいったら,握手をして終わりにします。 ※ 上の発話を,本書に掲載の写真のように行為しながら解説する。 ワーク 13-C 発問:まず,A さんと B さんが横に並んで立ち,同じ方向を向いてください。 それから,A さんはある場所を 1 点,見つめてください。どこでもかまいませ 27 ん。B さんは A さんの視線を追って,同じ場所を見つめてください。1 分ほど たったら,お互いがどこを見ていたのか,確認してください。同じことを,今 後は A さんと B さんの役割をかえて,おこなってください。 ※ このワークは「どこを見ていたのかをあてる」ワークでなく,確認のプロ セスとその後の気持ちを考えるもの。確認後,見ていたところがずばり一 致していればうれしく思うし,違っていても微妙な位置のずれを味わうの も楽しい。ワークの最後に,確認をどのようにしたのかを,もう一度意識 させるとよい。 ワーク 13-D 発問:各グループに何枚かメモ用紙を配ります。各メンバーはグループの人数 分その紙を取ってください。その後,話をせずに,メンバーそれぞれについて 自分が感じている「良い印象」を,1 人につき 1 枚,その紙に書いていってく ださい。いいですか,良い印象ですよ。全員分書き終わったら,最後の 1 枚に 「自分は他人からどのような印象をもたれているか」を考えて書きます。これ も, 「良い印象」としてください。以上の作業が終わったら,それぞれの紙を 対応するメンバーに渡してあげてください。 ① グループにメモ用紙を配り,発問通りメンバー全員の印象を書いてもらう。 ② 対応するメンバーに,印象を書いた紙を渡した後,次の発問をする。 発問:メモを読んで,自分の印象と比べてください。 ※ メモをすべて開示し,グループ内で意見交換をしても面白い。 留 意 点 相手と同じような行為をすることが対話のきっかけになることを味わって もらいます。ほかにも存在するきっかけづくりを,このグループワーク終了後 に考えてもらうのもよいでしょう。 28 ワーク 14 通じる,とは何か 準備するもの □ ボールなど。テニスボールくらいの大きさのものをグループ数分。 □ トランプ 1 式。 ワーク 14-A 発問:グループ内で M さん(代表を)選んでください。これからおこなうワ ークは,M さんの発することば以外のことばを話してはいけません。 ① コーディネーターが上のように発問し,M だけを周囲に集めて次の発問を する(もしくは,紙に書いたものを読んでもらう) 。 発問(M へ) :このボールを,メンバーの誰かに「ぷー」と言いながら渡しま す。次に,ジェスチャーを使うなどして,渡した人からボールを返してもらい ます。ボールを受け取ったら「びー」と言ってください。この一連の動作を, 何回か繰り返してください。M さんも「ぷー」 「ぴー」以外のことばを発しな いようにしてください。 ② 上の発問をした後,M をグループに戻し,ワークを始めてもらう。 ※ しばらく続けると, 「ぷー」がほぼ「どうぞ」の, 「ぴー」がほぼ「どうも」 の意味に理解されてきて,活動が円滑に進むようになる。 ※ 「ぷー」 「びー」の代わりに,メンバーが知らない言語を用いることができ れば,なおよい。 29 ワーク 14-B 発問:相手が引いたカードが何かをあてるゲームをしましょう。ただし,ここ で使えることばはトランプの 1 枚のカードを特定するための数字,符号,およ びマークです。それ以外のことばを発したり使ったりしてはいけません。次の 手順でおこなってください。当たった場合は, 「正解!」と言ってあげてくだ さい。 ① A はコーディネーター(もしくはトランプの山)からカードを 1 枚引く。 このとき B に見られないようにする。 ② B はそのカードを予想して,そのカード名を言ってみる。 ③ A はそれを聞き,正しかったら,その部分のみを強調して答える。 ※ たとえば,A の引いたカードがハートの 2 の場合,次のようになる。 B: ダイアの 8? A: ダイアの 8。 B: ハートの 5? (ハートの部分を強調する) A: ハートの 5。 B: ハートの 2? A: 正解! ④ 一連のやりとりをおこなったら,役割を交替する。 ※ トランプがなければ,適当なカードをノート等に記してから,それをあて させてもよい。 留 意 点 ワークの活動中に注意を向けてほしい点は,一方が了解している内容や中身 を,直接他方に伝達(説明)しているのではないというところです。一方の推 測力も欠かせないものなのですが,その推測をおこなうためには,他方の反応 や周囲からの働きかけが必要です。ですから,ワークの成功・失敗の要因をど ちらか一方に負わせることはできません。 「相手が悪いんだ」というような雰 囲気になりかけたグループには,そのことを言ってあげてください。 30 ワーク 15 つながる:対話を続ける原動力 準備するもの □ あるポーズをとっている人の絵(写真)を数枚。 ワーク 15-A 発問:これから A さんだけに,あるポーズをとっている人の絵(写真)を示 します。そのポーズを,B さんにも,とってもらってください。ただし,ジェ スチャー等は一切使わないで,ことばを発するだけで,絵のポーズに近づける ようにしてください。B さんに絵を見せてはいけませんが、B さんは,A さん に質問をしてもかまいません。 ① A に一人の人物があるポーズをとっている絵(写真)を示す。 ② その絵の通りのポーズを B にとってもらうよう, 「右手を斜め前に出して」 などとことばで説明する。 ③ おおよそ似たようなポーズになったら B に絵を示す。 ④ 役割を交替して,同様におこなう。 ワーク 15-B 発問:これから私(コーディネーター)のすることをまねしてください。まず, 前ならえをします。 次に, 手首を返して手の甲を向かい合わせます。 それから, このように手を重ねて握ります。そのまま手前にもってきて人差し指を軽く立 ててください。そうしたら,両方の人差し指で鼻をつまんで,指を鼻から離さ ずに握った手をばらしてください。以上です。同じようにできた人は,できな かった人にどうするかを話してください。 31 ※ 上の発話を,本書に掲載の写真のように行為しながら解説する。 ① コーディネーターの発問通りに,グループメンバーにやってもらう。 ② できた人とできなかった人が出てくるので,できた人ができなかった人に 方法を説明し,できるように導く。 ※ どのように説明する(教える)かは,グループメンバーに任せる。 ワーク 15-C 発問:グループ内で 5 分間おしゃべりをしてもらいます。まず,グループから M さん(司会者)を選出します。M さんは,おしゃべりのテーマを 1 つ決め てください。私が合図を出しますので,その合図に合わせてテーマを他メンバ ーに公表し,そのテーマに沿っておしゃべりをするよう,うまく進行していっ てください。5 分たったら終わりの合図をします。 ※ グループメンバー全員が司会の体験をするように,5 分毎に役割を交替する。 留 意 点 一方が行為や説明をあきらめると,その時点で流れが途切れ,対話が終わり になります。そうならないように,15-A や 15-B では,時間をじっくりかける ようにしてください。また,15-C では,他メンバーが M の進行をうまく手助 けするような雰囲気をつくり,進行の出来不出来を M だけに押しつけないよ うにすることが肝要です。もちろん,対話を持続することが一番の目標ですの で,うまくいったかいかなかったかを評価してはいけません。どのような工夫 が対話の持続に結びつくのか,考えてもらってもよいでしょう。 32 ワーク 16 立 場 の 違 い 準備するもの □ 各メンバーに,タオルなど目隠しができるものを用意してもらう。 □ 歩くコースを事前に(危険な個所はないかどうか)調査し,決めておく。 □ ドラマ,アニメ,寸劇など,数名の人物(動物なども可)が登場する 10 分 程度のシーンを,メンバー全員で鑑賞できるように準備する。音声だけの もの(ラジオドラマなど)でも可。準備できなかったら,物語などを読ん で聞かせるようにしてもよい。 ワーク 16-A 発問:A さんが B さんの手を引いて,これから案内するコースを歩いてもら います。ただし,B さんは,目隠しをしてください。歩いている途中,A さん は B さんがつまづいたり転んだりしないように,ゆっくり,そして,どこに 何があるかを語りかけながら,導いてください。B さんも,いまどういう気持 ちなのか,何が(どこが)怖いのか,体に何が触れたのか,などを A さんに 言ったり尋ねたりしながら,歩いて行ってください。 ① A は目隠しをし,B は A の手を引きコースを歩く。 ② スタートしたら,A は絶対に目を開けない(目隠しを取らない) 。 ③ B は A に声を掛けながら,ゴールを目指す。 ④ ゴールしたら A と B を交代し,②から始める。 ⑤ すべての活動が終了したら,次の発問をする。 発問:手を引く側,引かれる側になったときの気持ちはどうでしたか?また, 立場の違いは何でしょうか。意見交換してみてください。 33 ワーク 16-B 発問:まずは,これをご覧ください(お聞きください) 。 ① あるシーンをメンバー全員に鑑賞してもらう。その後,次の発問をする。 発問:インタビューを受ける人(A)と,インタビューをする人(B)に別れ てください。A は,今のシーンに出てくる登場人物の中から,適当な役を 1 人 1 人に割り振ってください。役を与えられた人は,その役の人物像・性格・ (シーンの中で) おこなった言動, などをおおまかに記述してください。B は, それぞれの登場人物への質問を(1 つの役につき,最低 1 つは)考え,記述し てください。 ② ノート等に記述してもらったら,A と B のグループメンバーが向かい合う ように配置するなどしてから,次のように言い,活動をはじめる。 発問:ただ今から,記者会見を開きます。B は手を挙げて,指名されたら自分 の所属と名前を言い, 「○○さん(役名)に質問します」と述べた後で,質問 をおこなってください。名指しされた A(の中の一人)は,その質問に的確に 答えてあげてください。それでは,どうぞ。 ③ 活動が終了したら,次の発問をおこない,グループ内で意見交換をしても らう。 発問: (B に)相手が快く発話をしてもらうためには,どうしたらよいでしょ うか。 (A に)答えやすかった質問は何でしたか。 (B に)逆に,不快に思われ るような言い方は何でしょうか。 (B に)答えにくい質問は何でしたか。 留 意 点 うまくいくと,大いに盛り上がるワークなのですが,やりっぱなしにしない で,その後での,グループ内での意見交換の時間を必ず取るようにしてくださ い。時間があったら, A と B の役割を交替しておこなってください。 34 ワーク 17 ひびきあう:異なりを活かす共鳴へ 準備するもの □ 本書に掲載の説明書(ワーク 17-B)をグループの数だけ用意する。下線の部 分をグループ毎に別の表現にしておく。実際に配付する紙には,下線をつ けない。 ワーク 17-A 発問:A さんと B さんで,1・2・3 の数字を言い合います。A さんが「1」 ,B さんが「2」 ,そして A さんが「3」 ,それから B さんが「1」……というよう に,1・2・3・1・2・3……と続けてお互いに言い合ってください。はじめは ゆっくりやってかまいませんが,慣れてきたら,リズミカルに,素早く,掛け 合いをしてください。 ① 発問通りに,言い合いをしてもらう。しばらくたったら,次の発問をおこ なう。 発問:では,次に, 「1」と言う代わりに, 「1 回の拍手」をしてください。つ まり,パン(実際に手をたたく) ・2・3・パン・2・3……と続けます。くれぐ れも, 「1」と口に出して言わずに,拍手 1 回でお願いします。 ② 発問通りに,やりとりをしてもらう。しばらくたったら,次の発問をおこ なう。 発問:では,さらに, 「2」と言う代わりに, 「1 回の足踏み」をしてください。 つまり,パン(実際に手をたたく) ・ダン(実際に足踏みをする) ・3・パン・ 35 ダン・3……と続けます。くれぐれも, 「1」や「2」の数字を言わないでくだ さい。 ③ 発問通りに,やりとりをしてもらう。しばらくたったら,次の発問をおこ なう。 発問:最後に, 「3」と言う代わりに, 「万歳」をしてください。パン(実際に 手をたたく) ・ダン(実際に足踏みをする) ・万歳(実際に両手を上げる) ・パ ン・ダン・万歳……というやりとりになります。 ※ このワークは 3 人のトリオでも可能。その場合は数字を 4 まで使う。やり とりのスピード,タイミング,つっかえたときの修復の仕方,といった秩 序は, (誰に教えてもらうものでもなく)やりとりの中で発生することを実 感したい。 ワーク 17-B 発問:数とりゲームをします。このゲームのルールは,今から各グループに配 付する紙に書いてありますので,声を出さずに読んでください。わたしの合図 にしたがって,ゲームを開始し,移動をしてください。ただし,ルールにも書 いてありますが,ゲームがはじまったら,数字以外のことばを口に出してはい けません。ジェスチャーをするのはかまいません。 ① ルールの紙を,各グループに配付し,黙読してもらう。 ② 合図をして,ゲームをはじめる。ただし,何が起こっても絶対数字以外の ことばを発しないように注意する。 ③ 頃合いを見計らって合図をし,負けた人に隣のグループに移動してもらう。 ※ グループの人数は 4∼5 名が適切。本番の前に,グループ毎で(負けた人の 移動なしの)ゲームのリハーサルを 1∼2 度しておくとよい。その間に,ル ールの紙を回収する。 36 留 意 点 17-B の下線の文言を変える場合,あまり極端な変え方をしないようにして ください。また,変更箇所も 1∼2 か所程度にするなど,微妙に(メンバーに 気がつかれない程度に)変えるのがコツです。 37 ワーク 18 対話による意味づくり 準備するもの □ 本書に掲載の 2 つの対話の台本。 ワーク 18-A 発問:各グループに,台本 1 と台本 2 を配ります。A さん,B さん(や演出, 助手など)の役を決め,グループ毎に練習してください。役者になった人は, セリフを覚えて演じてください。後で発表してもらいます。各台本の中で最後 の B のセリフは,自由に変えてもらって結構です。 ① 十分な時間を取り,2 種類の劇を練習してもらう。 ② 発表する。 ③ 次の発問を示し,グループ内で意見交換をしてもらう。 発問:役者の人は,台本 1 と台本 2 の場合で,演じながら感じた気持ちの違 いを述べてください。演出や助手だった人は,2 種類の劇の違いを具体的に述 べてください。 留 意 点 たとえ同じ言い回しだとしても,紡ぎだされる意味には異なりがあること, どんな《こえ》を出し,どの《かたまり》を使い,どのような《かたり》をす るかによって,表現される意味が違うこと,そして何より,互恵的な関係を生 み出し,維持していくためには,対話に参加する者の協働が必要不可欠である ことを,このワークを通して考えてもらいます。 「台本」という形を取ると, 《かたまり》と《かたり》が一定になるという 38 短所があります。そこで,本節のワークの応用として,もう少し自由度を与え た(状況や場面だけを提示した)ものを用意するのもよいでしょう。 39