Comments
Transcript
記事全文(PDF)をダウンロード - Manulife Asset Management / Home
米国の景気後退リスク ~当面はないが、注視が必要~ 2016年3月 米国の景気後退リスク ~当面はないが、注視が必要~ はじめに 銀行株への投資家の多くは年初来の運用成績が大幅に落ち込んでいます。石油関連株への投資家も同様で す。ソブリン債の利回りを追求する投資家も思うような運用成果を上げられていません。実際のところ、2016年 に安全かつ十分なリターンを実現する資産クラスを特定することは容易ではありません。 2016年に入って上昇した市場のボラティリティについては様々な要因が考えられますが、それらすべてに共通 することは、根強く続く世界的な需要の低迷に対して各国中央銀行が有効な対策を講じることが出来ていない 点です。市場のボラティリティは高まっていますが、マクロ経済全般が悪いわけではありません。この点は、先 進国中心の世界的な景気回復の主な牽引役である米国で特に顕著に当てはまります。 米国では市場とマクロ経済ファンダメンタルズとが互いにせめぎ合っています。市場が米国をリセッション(景気 後退)へと傾けるのでしょうか、あるいは経済ファンダメンタルズが市場を落ち着かせるのでしょうか。2016年に なって米国景気のリセッション入りの懸念が高まっていますが、弊社では2016年はファンダメンタルズが優勢に なるとの見方を維持しています。 ミーガン・グリーン チーフ・エコノミスト マニュライフ・アセット・マネジメント (US) 本資料は、Manulife Asset Management Limited (US) が作成した ”US Recession Isn’t Nigh, But Be Worried Anyhow” (2016 年2 月発 行) をマニュライフ・アセット・マネジメント株式会社が翻訳したものです。 -1- 米国の景気後退リスク ~当面はないが、注視が必要~ ボラティリティ上昇の引き金 今年に入って上昇した市場のボラティリティについては様々な要因が考えられますが、そうした要因はすべて世界的な需要低迷 に各国中央銀行が有効な対策を打ち出せていないことに関わっています。クリスマス休暇が明けた後、最初に直面した市場の 波乱は中国株式市場の急落でした。株式市場が急落した要因の1つは、中国金融当局が政策金利を引き下げ、人民元の下落 を容認する中で、中国からの資金流出に当局が対処できるのかどうか懸念が高まったことにあります。 人民元の下落により、中国は輸出競争力を高め、世界の総需要を自国に取り込むことが可能になります。中国政府は人民元の 1 大幅な下落を望まないことを明言し 、中国人民銀行(PBoC)は人民元を買い支えるために外貨準備の取り崩しを余儀なくされ 2 ているにもかかわらず、多くのヘッジファンドは現時点では人民元下落を予想したポジションをとっています 。こうした動きを受 けて、中国経済と通貨を保護あるいは下支えする中国政府と中国人民銀行の能力に対する懸念がさらに高まっています。 3 市場のボラティリティ上昇のもう1つの引き金は、2014年6月につけた直近の最高値から75%近く下落した原油価格です 。WTI (ウエスト・テキサス・インターミディエート)価格は1バレル30ドルを切る水準まで下落し、特にこれほど低い水準になると、実際 に原油価格の大幅な下落が世界経済へ与えるマイナスの影響の方がメリットよりも大きいことが明らかになりつつあります。 原油価格下落の要因は需要の減少というよりも、むしろオーバーサプライ(過剰供給)であると弊社は見ています。原油生産者 が負債・借入による資金調達を行っている限り、市場への供給が止まることはありません。過剰な借入金を抱える生産者は、債 務返済義務を負っている限り供給を削減する余裕はありません。おそらくどこかが破綻して債権者が株主として事業を支配する 4 ようになるまで、供給を継続して互いに潰し合いをすると思われます 。その段階になって、ようやく市場への供給は減少に転じ、 原油価格は安定化に向かうと見られます。 図1:産油国の政府系ファンド 投資先上位10セクター 出所:ストラテガス・リサーチ・パートナーズ、2016 年 2 月現在 原油価格が下がったことで、石油掘削業者や輸送業者だけでなく、石油産出地で開業した小売業やレジャー設備など、”OIL Town” のサービス業及びサプライ・チェーンすべてに影響が及んでいます。金融サービスも例外ではありません。ストラテガス・ リサーチ・パートナーズの調査によると、産油国の政府系投資ファンドの多くは、かなりの金融セクター株式を保有していますが、 それらを売却して資金を放出する必要に迫られています(図 1 参照)。これが銀行株下落の 1 つの要因です。 1 チャイナ・デイリー:”Li Stresses Stability of Renminbi”(李首相、人民元の安定を強調)、2016年2月6日 フィナンシャル・タイムズ:”Hedge Funds Target A Weaker Renminbi”(ヘッジファンド、人民元安をターゲット)、2016年2月9日 経済・市場統計は、別途記載のない限り、すべてブルームバーグ及びマニュライフ・アセット・マネジメント、2016年2月12日現在 4 Behavioral Macro:”Today, It Begins”、2016年2月8日 2 3 -2- 米国の景気後退リスク ~当面はないが、注視が必要~ 金融セクターについて 主要中央銀行によるマイナス金利政策(NIRP)の導入も銀行株の下落につながりました。日本では日本銀行(日銀)がマイ 5 ナス金利導入を発表した後、銀行株が35%近く急落し 、欧州でも、日銀の政策への対応策として欧州中央銀行(ECB)が金 利のマイナス幅を拡大せざるを得なくなるとの憶測から銀行株が大幅に下落しました。 マイナス金利は、中央銀行への預金よりもリスクのある借り手への貸出を銀行に促す政策であり、いわゆる「ポートフォリオ・ リバランス効果」を狙っています。しかしながら、その効果が現れるには時間がかかり、銀行は預金者に負担を転嫁すること を回避するため、マイナス金利は銀行の収益性を悪化させます。 欧州の銀行株急落の背景には、イタリアなどを中心に大量の不良債権(NPL)が積み上がり、その不良債権の処理や銀行 の資本増強を新たな規制や手法によってどう行っていくかが不明瞭であるという状況もあります。新たな銀行再建・破綻処理 7 6 8 指令(BRRD )では、アイルランドの国家資産管理機構(NAMA )やスペインの資産管理会社(Sareb )などのバッド・バンク (Bad Bank:金融機関が抱える不良資産を買い取り、管理・処分する機関)は政府支援の形態と見なされ、認められませ ん。そのため、現在は不良債権をバランスシートから切り離す方法ははるかに複雑になっています。イタリアでは、特別目的 9 10 会社(SPV )のバッド・バンクを創設し、そこに不良債権を移管して、シニア債に政府保証を付与しています 。しかし、誰が SPVのシニア債以外の購入に関心を持つのかは不透明です。 偶発転換社債(CoCo債)は、Tier 1資本を補完する資金調達方法として欧州で人気が高まり、昨年は好んで利用されまし た。CoCo債は債券として扱われるため、株式を希薄化することはありませんが、自己資本の増強が必要な場合は株式に転 換されます。ただし、どのような状況下で監督官庁から自己資本の増強が要求されるかについては、依然として明確ではあ りません。ドイツ銀行はおよそ35億ユーロのCoCo債を発行していますが、2015年通期で68億ユーロの損失を計上したこと 11 を報告しています 。そのため、投資家は資本保全のためクーポンの支払い停止か、株式への転換が行われるのではない かと懸念しています。 これまでCoCo債が株式に転換されたことはなく、株式転換されれば未知の領域に入ります。政策当局は、不良債権を償却 するまで、あるいは償却されずとも景気拡大などによって一部が正常化されるまで、実現損を計上する必要がないと決定す る可能性が高いと見られます。アイルランドやスペインなど、銀行危機に直面した欧州諸国では、こうした「問題債務の返済 期限を延長して問題がないよう振る舞う」アプローチが機能しませんでした。最終的に実現損が計上されれば、損失額はさら に膨らむ結果となることがあります。ドイツ銀行ほどの規模を有する銀行に大規模なベイルインまたはベイルアウトが発動さ れた場合、金融システム全体の問題に発展する恐れがあります。 足元の市場のボラティリティ上昇により、投資家は株式や社債(特にハイ・イールド債)を投げ売りして、資金を安全資産に逃 避させています。現時点では資金の安全な逃避先はごく限られていますが、日本、ドイツ、英国、米国のソブリン債などがあ ります。これらの国ではすべて、政府の借入コストが大幅に低下しており、特に日本の10年国債利回りはマイナス圏に突入 しています。米国でさえ、昨年12月に政策金利が引き上げられてから、10年国債利回りは低下しています。通常、銀行は短 期資金を借り入れて長期の貸付を行うことで収益を得ています。そのため、イールドカーブのフラット化も銀行収益を悪化さ せています。 5 日本銀行:「『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』の導入」、2016年1月29日 欧州委員会:”Bank Recovery and Resolution Directive – Delegated Regulation”(銀行再建・破綻処理指令 - 委任規則)、2016年2月4日 NAMA:国家資産管理機構 8 Sareb:銀行セクター再建により移管される資産の管理会社 9 SPV:特別目的会社。特別なプロジェクトまたは任務のために政府または企業によって設立され、一般的に資産の保有を目的とし、営利を目的としない事業体。 10 経済財務省:“Guarantee on Securitization of Bank Non Performing Loans To Be Introduced Shortly”(銀行不良債権証券化の保証が近々導入される予定)、 2016年1月27日 11 ドイツ銀行:”Earnings Press Release”(業績に関するプレス・リリース)、2016年1月28日 6 7 -3- 米国の景気後退リスク ~当面はないが、注視が必要~ マクロ経済指標は強弱混在 足元のマクロ経済データも悲観的な見通しの一因になっていると言えます。ユーロ圏における直近 の製造業購買担当者景気指数(PMI)の数値は、同地域の景気拡大ペースが鈍化していることを 示しており、12月にドイツの鉱工業生産が予想に反して減少したことはこれを裏付けています。 中国製造業の生産は、この1年間毎月縮小しています。貿易統計でも輸出入ともに減少しており、 中国の需要が縮小傾向にあることを示唆しています。 日本の製造業PMIは業況の拡大を示していますが、鉱工業生産は過去6ヶ月のうち5ヶ月で横ばい、 または減少となりました。小売売上高も2015年末の2ヶ月は減少しました。 米国のISM製造業景況指数は過去5ヶ月間の製造業が停滞または縮小していることを示しています。鉱工業生産は2015年末 の2ヶ月間は縮小、耐久財受注も減少しました。輸出は、2015年末の2~3ヶ月にこの数年来最低の水準まで減少しました。そ の要因の1つは、米ドル高による輸出競争力の低下です。米国の経済指標の中で最も明るい兆候を示していた雇用統計でさえ、 1月は15.1万人増と伸びが鈍化しました。 米国 – 消費者がすべてを牽引 しかし、悪いニュースばかりではありません。特に米国では明るい兆候も見られ、先進国の景気回 復を牽引しています。まず第1に、製造業の不振は見かけほど深刻ではありません。消費財および 製造業はS&P 500指数構成企業の収益のおよそ3分の2を占めていますが、製造業は米国の GDPの約12% 12、雇用の約13% 13を占めるに過ぎません。さらに、製造業全般の業績は低迷して いるものの、製造業の雇用者数の伸びは加速しており、賃金の伸び率も上昇しています。製造業 は米ドル高による打撃を受けていますが、同時にリセッションとは異なるサイクルで定期的に生じる 在庫調整の影響も一時的に受けています。 さらに今回の景気回復はこれまでの米国の景気回復がすべてそうであったように、主に消費者に 下支えされており、消費者需要は低水準ではあるものの底堅さを維持しています。この1年間の小売売上高は、前月比+1.5% から▲1%の範囲で変動しています。消費者信頼感指数は金融危機後の最高水準で推移しています。消費者需要を金額ベー スではなく数量ベースで評価する(つまり米ドル高の影響が排除される)重要な指標の2つである新車登録台数と新築住宅販売 件数は好調です。 1月の雇用者数は前月比で15.1万人増加し、失業率は4.9%に低下して、完全雇用の状態に達しました。賃金上昇率は前年同 月比2.5%の小幅上昇となりましたが、これは一時的要因によるものです。労働力化率は小幅上昇し、職を見つける求職者の数 14 が職探しを断念して労働市場から撤退する求職者の数を上回っていることを示唆しています 。 12 世界銀行:”Manufacturing as a percentage of GDP” 米国労働統計局:”Employment by Major Industry Sector” 14 米国労働統計局:”The Employment Situation”、2016年2月5日 13 -4- 米国の景気後退リスク ~当面はないが、注視が必要~ 市場よりマクロ経済が優勢か: 2016年のリセッションはない見込み 米国景気がリセッション入りの瀬戸際にあることを示唆する市場ボラティリティと、米国の個人消費 が引き続き景気回復を牽引することを示すマクロ経済指標と、どちらの指標を重視すべきでしょう か。市場には先見性があり、マクロ経済指標(特に雇用統計)は景気変動に遅行するため、市場は 今後の景気低迷の前兆を示していると主張するアナリストもいます。 しかしやはり、弊社は市場が消費者をパニックに陥らせるよりも、マクロ経済のファンダメンタルズ によって市場が落ち着きを取り戻す可能性の方が大きいと考えます。市場心理の大勢、もしくは“信 認の幻想(Confidence Fairies)”により、市場は変動します。“信認の幻想”はファンダメンタルズの 裏付けがなければ、勢いを失い、やがて消滅します。 これについては、私の見通しとは全く異なる2つの展開が起こりえます。1つ目は市場が誤る場合であり、この場合は市場のパニ ックが信用収縮を誘発し、消費者の借入能力を大きく制限します。市場のボラティリティ上昇と低金利が投資や年金への懸念を 増大させ、消費者は将来に備えてより多くの資金を貯蓄に回す可能性があります。消費者の支出が減少すれば、企業は生産と 投資を縮小し、市場の弱気に拍車がかかります。すると、経済と市場の悪循環が生じる恐れがあります。米国経済の主要な牽 引役である個人消費が低迷すれば、米国は急速なリセッションに陥ることになります。 2つ目として、誤った政策が実施された場合にも、2016年にリセッションに入る可能性があります。ジャネット・イエレン米連邦準 備制度理事会(FRB)議長は先日の議会証言の中で、3月の追加利上げの可能性を排除しませんでした。連邦公開市場委員会 15 (FOMC)の発表資料 によると、2016年中に25 bpsの利上げを4回実施する可能性があります。現在、市場ではFRBが2016 年に利上げを行う可能性よりも利下げの可能性の方が高いと見ています。FRBがあくまで主張を押し通し、性急に利上げに踏 み切った場合、米国の消費者は信用収縮に直面し、景気回復への道が完全に閉ざされる恐れがあります。 15 FRB:”Economic Projections”、2015年12月16日 -5- 米国の景気後退リスク ~当面はないが、注視が必要~ 低迷脱出の難しさ 16 米国の企業収益はすでに減速していますが 、景気後退とそれが市場にもたらす悪循環は投資家 にとってさらに打撃となる可能性があります。実際に景気後退局面入りしても何ら不思議ではあり ませんし、低成長でも悪影響を及ぼす可能性があります。慰めを見出すとしたら、米国では景気後 退が必ずしも生活水準の大幅な悪化につながるわけではないということです。この20~30年間の 日本の状況を見れば、それは明らかです。低インフレまたはゼロ・インフレの環境では、実質GDP 成長率が低くても生活水準はさほど低下しません。 最も重要な問いは、米国が景気後退局面に入った場合、どのような対策を講じることができるのか です。足元の市場ボラティリティ上昇の要因がすべて、世界的な需要の低迷に対して各国中央銀行が有効な対策を打ち出せて いない点に起因するのであれば、1つの選択肢として挙げられるのは別の主体が介入することです。 主要先進国のほとんどが過剰債務を抱えていることを考えると、政府には需要創出のために財政出動を実施するだけの財政 的な余力はほとんどありません。景気浮揚のため、あるいは世界の既存需要を取り込むべく通貨を切り下げるためのいずれに しろ、実施可能な手段は金融政策しかありません。各国政府は、金融政策と並行して、財政対策を各国協調の上実施し、需要 を創出することが可能ですが、その場合、協調行動をとれるかどうかが問題となります。日本および中国政府はすでに財政対 策を打ち出しています。米国は年内に選挙を控え、承認を得ることが極めて難しい状況にあります。欧州では、ドイツ政府が財 政責任の考え方をかつてないほど重視しており、ほとんどの欧州諸国では財政再建目標を大幅に緩和する可能性は極めて低 いと言えます。 需要を創出するもう1つの方法は、富の再分配です。支出性向は低所得者層の方がはるかに高いため、その層に富を再分配す れば、消費者需要全体を増大させることができます。しかし、富の再分配政策は政治的なリスクを伴うため、2016年の米国大 統領選挙、2017年のドイツ及びフランスの選挙に先立って実施することは絶対的に不可能です。 世界的な需要の低迷に対応する2つ目の方法は、中央銀行がこれまでと同様の政策をさらに拡大することです。この方法の問 題点は、中央銀行がすでに実施している政策は大した成果を上げていないこと、また、さらなる政策実施の余地が限られている ことにあります。これは、FRBが金融政策正常化への舵を切るにあたり、インフレ目標を達成する時期は近づいたと判断する根 拠となった、米国のブレーク・イーブン・インフレ率(5年)を見れば紛れもなく明らかです。米国のインフレ期待は2009年以来の 低水準となっています(図2参照)。 図2:米国ブレーク・イーブン・インフレ率の推移 (10年国債利回り-10年インフレ指数連動債利回り) 出所:ブルームバーグ、マニュライフ・アセット・マネジメント、2016年2月11日現在 16 ファクトセット:“Earnings Insight”、2015年2月12日 -6- 米国の景気後退リスク ~当面はないが、注視が必要~ 結論 各国中央銀行総裁は、発言によって自国通貨安へ誘導しようと力を尽くしていますが、声明を発表するたびにそ の効果は薄れています。主要数ヶ国の中央銀行はゼロ金利、またはマイナス金利を導入しています。マイナス 金利の効果はあまり芳しくありません。金利をマイナス圏まで引き下げても、貸出の増加や通貨の下落といった 点で期待するほどの効果を上げる可能性は低いと思われます。例えば、日本円は日銀がマイナス金利導入を発 表する前と比較して大幅に上昇しています。 また、中央銀行による金利のマイナス幅拡大にも限界があります。人々はある時点で、資金を自ら保有するコス トの方が銀行に預金するコストよりも安いと判断する可能性があります。量的緩和策は債券利回りの低下に寄 与しましたが、景気を大きく浮揚させることはできませんでした。ECBと日銀が資産買入プログラムの拡大と期間 延長を発表したとしても、それが政府の借入コストと通貨下落以外に、どのような影響をもたらすのか明白では ありません。 これまでに試されたことのない政策の1つとしてヘリコプター・マネー(ばらまき政策)が挙げられます。ヘリコプタ ー・マネーは一種の金融緩和ですが、恒久的であるという点で主要中央銀行がこれまで実施している政策とは 17 異なります 。マネタリーベースの拡大が恒久的に行われれば、将来的に価格水準は恒久的に上昇し、商品が 比較的安価である今のうちにより多く支出しようとするインセンティブが働きます。こうしたマネタリーベースの恒 久的な拡大は財政補填にまわすことができます。この概念は1948年にミルトン・フリードマンが最初に提唱し、 18 最近ではベン・バーナンキが日本の政策について助言した際に言及しました 。これによって短期的に支出が拡 大する可能性はありますが、法に触れる恐れがあります。あからさまな財政ファイナンスは特にECBの条約に明 らかに違反します。また、いかなる国の中央銀行にとっても、露骨な財政ファイナンスは中央銀行の独立性への 深刻な懸念を引き起こします。 約半年前、私が話をした政策アドバイザー達の間では、ヘリコプター・マネーは蔑みと不信感を持って受け止め られていました。ところが、低成長・低インフレへの対応に行き詰まった状況の中で、徐々にヘリコプター・マネー は実行可能な政策対応と見なされるようになってきています。 17 Bruegelに掲載されているヘリコプター・マネーの詳細な説明はこちら http://bruegel.org/2015/01/permanent-qe-and-helicopter-money/ FRB:”Remarks by Governor Ben Bernanke, Deflation: Making Sure "It" Doesn't Happen Here”(ベン・バーナンキFRB議長の発言、デフレ:「それ」が我が国で 発生することのないよう徹底する)、2002年11月21日 18 -7- マニュライフ・アセット・マネジメントについて Manulife Asset Management は、カナダのグローバル金融サービス企業であるManulife Financial Corporation の資産運用ビジ ネス部門です。運用拠点はカナダ、米国、英国、日本、香港を含む世界16ヵ国・地域に構え、伝統的資産からオルタナティブに至る まで多岐にわたるグローバル投資戦略をご提供しています。 トロント Manulife Asset Management Limited 200 Bloor Street East Toronto, Ontario, M4W 1E5 Canada TEL:+1-416-852-2204 ボストン Manulife Asset management (US) LLC 197 Clarendon Street Boston, MA 02117 United States TEL:+1-617-375-1500 ロンドン Manulife Asset Management (Europe) Limited 18 St Swithin’s Lane London, EC4N 8AD United Kingdom TEL:+44-20-7256-3500 ボストン(実物資産運用/森林・農地投資) Hancock Natural Resource Group 99 High Street, 26th Floor Boston, MA 02110-2320 United States TEL:+1-617-747-1600 東京 マニュライフ・アセット・マネジメント株式会社 〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-8-1 丸の内トラストタワーN 館15 階 TEL:03-6267-1940 (セールス・顧客サービス部) 香港 Manulife Asset Management (Asia) 16/F, The Lee Gardens 33 Hysan Avenue Causeway Bay, Hong Kong TEL:+852-2910-2600 上記以外のアジアにおける資産運用拠点一覧 • 中国(北京市) Manulife TEDA Fund Management Company Ltd. • 台湾 Manulife Asset Management (Taiwan) Co., Ltd. • シンガポール Manulife Asset Management (Singapore) Pte. Ltd. • インドネシア PT Manulife Aset Manajemen Indonesia • マレーシア Manulife Asset Management Services Bhd • タイ Manulife Asset Management (Thailand) Co., Ltd. • ベトナム Manulife Asset Management (Vietnam) Co., Ltd. • フィリピン The Manufacturers Life Insurance Co. (Phils.), Inc. 日本における資産運用業務の展開 日本における資産運用業務は、1999年にマニュライフ・ファイナンシャル・コーポレーションが旧第百生命保険との生命保険事業に おける合弁を開始したことにさかのぼります。弊社の前身はマニュライフ生命保険会社の資産運用部として保険資産を中心とした 業務を行なってきましたが、2005年に投資顧問会社MFC グローバル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社(※)として 設立、国内の資産運用ビジネスに参入し、年金基金を含む機関投資家向けの投資一任業務を開始いたしました。今日弊社では、 マニュライフ・グループの保険資産のほか、年金基金をはじめとする機関投資家のお客様向けに国内債券および日本株式を5年 超に亘り運用しているほか、近年実物資産としての注目の高いグローバル森林投資やグローバル農地投資、また成長期待の著し いアジアにおける債券および株式運用、さらにモーゲージ証券等を活用した債券ソリューション戦略商品をご提供しています。 (※2011 年1 月11 日に社名を変更、マニュライフ・アセット・マネジメント株式会社となる) 日本国内向け主要運用商品一覧 <株 式> 日本株式クオンツ・アクティブ(バリュー型) グローバル株式 アジア太平洋小型株式 <債 券> 日本債券アクティブ・コア 日本債券ストラテジック・アクティブ グローバル債券 エマージング債券 アジア債券アクティブ 証券化資産 バンクローン <オルタナティブ> グローバル森林投資 グローバル農地投資 ディスクレーマー 本資料は情報の提供のみを目的として作成されており、特定の商品について勧誘・販売を行うものではありません。また、作成時における信頼でき ると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、適時性, 信頼性、完全性を保証するものではありません。また、資料に掲載さ れた過去の実績等は将来の結果を約束するものではありません。 投資一任契約に関する留意事項及び投資対象となる有価証券等に係るリスク 投資一任契約はお客様から金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部の一任を受け、その投資判断に基づきお客様のために 投資を行うのに必要な権限を委任されお客様の財産を運用する契約です。当該契約に基づき投資を行う場合、資産種目ごとのリスクは以下のと おりです。投資対象資産の種類や投資制限、投資対象国等によりリスクの内容や性質が異なります。なお、以下はすべてのリスクを網羅したもの ではありません。 ① 株式 株式市場および投資先となっている企業の株価が下落するリスクがあります。株式市場全般における株価が下落する場合や株式の発行体の 業績が悪化した場合には、投資先の株価が下落し、損失が生じることがあります。 ② 債券 金利の上昇により債券価格が下落した場合や発行者の信用状況の悪化等の場合に損失を被ることがあります。従って投資一任契約のもとで 投資した元本は保証されているものではなく、欠損が生ずるおそれがあります。 ③ 証券投資信託受益証券 組入れた有価証券等の値動き(外貨建証券の場合には為替市場の変動の影響も受けます)や当該有価証券発行者の信用状況の悪化等によ り基準価額が下落し、損失を被ることがあります。従って投資元本は保証されているものではなく、欠損が生ずるおそれがあります。クローズド 期間がある証券投資信託受益証券については、クローズド期間中は換金することができません。 ④ 外国籍ファンド(外貨建) 組入れた有価証券等の値動きや当該有価証券発行者の信用状況の悪化、為替相場の変動(組入れた有価証券がファンドの表示価格と異な る場合)等により、基準価額(表示通貨建)が下落し、損失を被ることがあります。また、表示通貨での基準価額が元本を割り込んでいない場合 でも、ファンドの基準価額の表示通貨と円との為替相場の変動により、円換算時に損失を被ることがあります。従って資本元本は保証されてい るものではなく、欠損が生ずるおそれがあります。クローズド期間があるファンドについては、クローズド期間中は換金することができません。 ⑤ 為替リスク 為替変動により外貨建資産の円換算価値が下落することがあります。外貨建資産を保有する場合、円高局面では円換算により資産価値が減 少し、損失を生じる場合があります。 ⑥ 金利変動リスク 金利変動により公社債等の価格が下落するリスクがあります。一般に金利が上昇した場合には、既に発行されて流通している公社債等の価 格は下落し、損失が生じる場合があります。 ⑦ 信用リスク 有価証券等の発行体が財政難、経営不振、その他の理由により利息又は償還金をあらかじめ決められた条件で支払うことができなくなる(債 務不履行)リスクをいいます。この場合、有価証券の価格が大きく下落することが予想され、損失が生じることがあります。また、発行体の信用 力に対する市場参加者や格付機関の見方が悪化することにより、有価証券の価格が下落することがあり、損失が生じることがあります。 ⑧ 流動性リスク 有価証券等を売却(または購入)しようとする際に、需要(または供給)がないため、有価証券等を希望する時期に希望する価格で売却(また は購入)することができなくなるリスクをいいます。一般的に、規模が小さい市場での売買や、取引量の少ない有価証券等の売買にあたっては、 このリスクが大きくなります。また、一般的に市場を取り巻く市場環境の急変があった場合には、市場実勢価格での売買ができなくなる可能性 が高まります。市場での流動性が低下する場合、有価証券等の価格が下落し、損失を生じる場合があります。 ⑨ カントリーリスク 投資先となっている国の政治・経済・社会・国際関係等が不安定な状態、又は混乱した状態に陥った場合に、当該国における資産の価値や当 該国通貨の価値が下落するリスクをいいます。このような国に投資している場合、有価証券の価格低下、通貨下落等により、損失を生じる場 合があります。 ⑩ カウンターパーティリスク 取引の相手方の倒産等により、意図した取引ができなくなるリスクをいいます。債務不履行が生じたり、契約を履行するコスト等により損失が 生じる可能性があります。 ⑪ 投資手法・対象に伴うリスク 空売り、貸し株、各種スワップ、コール・プットオプション、株価指数オプション、差金決済取引、先渡し取引、その他のデリバティブ取引などの投 資手法を用いるリスク、確定利付証券、未公開・譲渡制限付・非流動性証券、償還制限証券、財務状況の困難な企業に投資するディストレス 投資など投資対象に伴うリスクなどにより損失が発生する可能性があります。 ⑫ レバレッジリスク 少額の投資により、高い投資効果を得るためにレバレッジを利用することがあります。高い効果が得られる反面、想定が外れた場合多額の損 失を被る可能性があります。さらに、先物証拠金等においては、レバレッジによって元本を超えた投資を行う結果として、元本超過損失が生じ る可能性があります。またこのレバレッジの比率は投資方針や国内外の市場環境の変化等により、随時変えていきますので事前に表示するこ とができません。証拠金はデリバティブ取引を行なう期間、発注先証券会社の計算に基づき当社が妥当であると判断した金額を契約資産から 預託します。 ⑬ 実物投資のリスク 森林あるいは農地投資は火災、天災、灌漑設備、水源、天候等、実物投資特有のリスクが顕在化する場合があります。 ⑭ 複合的なリスク 上述のリスクが複合的に重なり、多岐にわたる未曾有のリスクが発生し、想定外の元本超過損失が生じる場合があります。 マニュライフ・アセット・マネジメント株式会社との投資一任契約に際しお客様にご負担いただく報酬等は各種商品、サービス等により異なるため、 事前にその合計額または上限額等を表示することができません。投資一任契約の締結にあたっては、必ず「契約締結前交付書面」や「金融商品販 売法に基づく重要事項説明書」等をご確認の上、お客様ご自身でご判断下さい。 本資料の著作権・知的財産権の一切の権利はマニュライフ・アセット・マネジメント株式会社に帰属しており、弊社の書面での許可なく本資料を使用 またはその他の行為(複製、改変、譲渡、貸与、販売、出版、及び営業活動または営利を目的とする使用等すべて)を行うことを禁止させて頂きま す。 商 号 : 登 録 番 号: 加 入 協 会: マニュライフ・アセット・マネジメント株式会社(金融商品取引業者) 関東財務局長(金商)第433 号 一般社団法人 日本投資顧問業協会