Comments
Description
Transcript
臨床研修センターニュース No.7(2013.12.20発行)
長野赤十字病院 No.7 2013.12.20 発行 ~医科・歯科初期臨床研修、後期臨床研修に関する院内のニュースをお伝えします~ ◆平成 26 年度医師臨床研修マッチング◆ 11 名フルマッチ致しました!! 臨床研修センター長(副院長)和田秀一 平成 25 年も残りわずかとなりました。1 年が過ぎるのは本当にはやいものです。 さて、10 月 24 日に平成 26 年度の臨床研修マッチング結果が発表され、当院はフルマッチすることが できました。本当にうれしく思います。ひとえに皆様のご指導のおかげと感謝申し上げます。 本年は信州大学から定員を 1 名頂き、それまで 1 学年 10 名であった定員を 11 名に増やすことができま した。このタイミングでフルマッチしましたので今後この定員を実績にすることが期待できます。今年の 長野県内各病院のマッチング結果は概ね良好で、信州大学も 37 名フルマッチ、長野県での全マッチ者数 は昨年の 106 名に対して 119 名と増加しています。また全国での臨床研修病院と大学病院のマッチ者数の 比率は 54.8%、45.2%で昨年より臨床研修病院の比率が少し上がりました。当院はこれから一人でも多く の医師を育てていけるよう研修の質や研修環境の整備に努めていきたいと思っています。よろしくお願い 申し上げます。 また、平成 26 年度より信州大学における医学生の臨床実習が 51 週間から 72 週間に拡大されます。これに伴い信州大学以外で臨床実習を行う学生が増えるこ とになります。当院では平成 27 年秋から 5 年生を対象に 9 月から 2 月の 1 ヵ月ず つ、各期間最高 8 名の学生実習を担当する予定となっています。これにより当院 の病棟で、 「学生」 「初期研修医」 「後期研修医等を含む若い指導医」の 3 者が診療 をしながら教え学び合う環境が生まれます。なかなか楽しい状況が想像できます。 どうか、引き続き皆様方のご協力をお願い申し上げます。 「信州型総合医養成プログラム(長野県限定)」後期研修医募集中 総合診療科 総合診療医って御存知ですか? 金児泰明 そうです。何を専門にしているか解らな いと言われてきたやつです。臓器別に偏らず、プライマリ・ケアを中心に幅 広い領域の診療を行う総合診療が注目されるようになったのは研修教育面で の役割が増した 2004 年の新医師臨床研修制度以降です。最近ではテレビにも 取り上げられるようになり、認知度が少しずつ上がってきています。地域医 療の崩壊が叫ばれるなか、地域に求められる多様な医療サービスを包括的か つ柔軟に提供出来る総合診療医の需要が高まってきました。長野県では全国的にも珍しい試みですが、総 合診療医を目指す後期研修医の受け皿作りを始めました。初年度(2014)は「信州型総合医養成プログラ ム」として県内 12 施設を認定して研修医を募集しています。2017 年の新専門医制度より「総合診療専門 医」が新たに設けられ、総合的な診療能力を有する医師の専門性が確立されることになります。何の専門? と言う問いに「総合診療」と答えて良い時代がやってきます。 1 当院でも信州型総合医を養成してゆきますが、一方で日本プライマリ・ケア連合学会が 2017 年の新専 門医制度への移行を視野にいれて改定した「家庭医療専門医後期研修プログラム Ver.2」 (諸事情により名 前は家庭医療ですが、病院総合医と家庭医の両方に共通する資格としてプログラムされています)を同時 に履修できるようにプログラムを組みました。興味のある方はお問い合わせください。 ✿信州型総合医 4月 研修プログラム例✿ 5月 6月 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月 1月 2月 3月 1年 内科研修(当院選択 6 ヵ月) 小児科研修 (当院 3 ヵ月) 救急科研修 (当院 3 ヵ月) 2年 領域別研修(当院選択 6 ヵ月) 総合診療研修Ⅰ(飯山赤十字病院 6 ヵ月) 総合診療研修Ⅰ(勤医協系列クリニック 6 ヵ月) 3年 総合診療研修Ⅱ または (当院 6 ヵ月) 総合診療研修Ⅱ(当院 6 ヵ月) 後期研修医より研修・発表報告 『交換留学』 呼吸器内科 後期研修医 秋山達也 11 月 18 日から 2 週間、石巻赤十字病院に研修に行かせ ていただきました。 2011 年の震災の際に、当時救護班として行かれた呼吸器 内科の先生方があちらの先生方と親交を深めたのがきっ かけです。今回は石巻日赤の呼吸器内科の先生と、格好 良く言えば「交換留学」という形で呼吸器内科を見て参 りました。私は初期研修から現在までの 3 年間当院で過 ごしてきたため、ほかの病院がどの様な研修や医療を行 っているのか全く分かりませんでした。いくつか箇条書 きにして、見てきたことや感じたことを書いていきます。 石巻日赤の先生方と <前列左が筆者> ① 呼吸器内科 スタッフ 5 名+後期研修医 2-3 人+初期研修医。毎朝 8 時半から 1 時間弱カンファレンスを行い、前日 入院、前日退院、当日予定入院患者のプレゼンを一人ずつ行います。毎日 3~4 人の新入院患者(緊急 入院)がおり、常に満床(57 床)の状態でした。年間 20~30 件の挿管症例があるようでとても active な 科でした。カンファレンスでのディスカッションや気管支鏡検査前の画像吟味などは、 「もう少しでき れば」という印象がありました。 ② 救急外来 平日は、日中は 10~20 人、準夜帯は 30~40 人、深夜帯は 20~30 人ともの凄い数の患者さんが来て いました。休日は 100 人超えが当たり前だそうです。石巻医療圏の病院が震災の影響で救急対応が出 来ないためです。救急車対応は準夜や深夜も含めて救急部+αの医師が指導医となり、研修医が対応す る形をとっていました。準夜は救急車対応と walk in 対応を分けて、救急車対応に研修医 1 人と指導 医(救急部)、walk in 対応に研修医 2 人と指導医 1 人の体制で、深夜は全患者を研修医 2 人と指導医 1 人で診療する体制でした。深夜にこれだけの患者数がいれば、研修医の先生に頑張ってもらうしかな 2 いのでしょう。ちなみに研修医は、深夜明けは必ずお休みをもらえるそうです。 ③ 初期研修 毎年 12 人がフルマッチしており人気研修病院だそうです。理由を研修医に聞くと、忙しそうだから? とのことでした。確かな実力はつくようです。1 年目は 4 ヶ月外科、2 ヶ月ずつ呼吸器、消化器、循 環器、1 ヶ月ずつ救急、麻酔のローテーションで、内科系を回る際受け持ち患者は 15-20 人ほどのよ うです。一つ例を出すと 1 年目のこの時期で CV カテ挿入 10 件以上、と経験値は長野より断然上でし た。指導医がまだまだ少ないのが玉にきずで、症例ひとつひとつをもっと掘り下げることが出来れば、 当院の研修医は敵わないかもしれません。また、2 年目に、救急研修で沖縄のかの有名な浦添総合病 院に 1 ヶ月行くことができるカリキュラムとなっており羨ましかったです。だいたいコンスタントに 2~3 人ほどは後期研修医として残るそうです。他の研修医も大学に入るのではなく、都内やその他の 研修病院で後期研修を続ける人が多数とのことでした。 以上簡単ではありますがご報告です。非常に勉強になり、また大きな刺激にもなりました。まだまだ頑張 らないといけないと実感している身であります。以上。 第 3 回信州英語フォーラムに参加して 呼吸器内科 後期研修医 會田有香 9 月 14 日に信大病院で行われた第 3 回信州英語 フォーラムに参加させていただきました。このフ ォーラムは、 『長野県から世界に通用する医師を育 てよう』という主旨で開かれていて、県内の初期・ 後期研修医が自ら経験した症例を英語で発表する ものです。4 名が 5 分の Oral Presentation を行 い、引き続き質疑応答・Dr. Branch のアドバイス を受けた後、発表内容・発表方法についてグルー プ(県内の病院の英語力に長けた先生方と発表者) に分かれて練り直し、再び Presentation を行うと いう流れでした。その後、4 名による Poster Presentation、信大整形外科内山先生による Model Lecture もありました。私は、『Leptomeningeal carcinomatosis with good response to Erlotinibin a patient with non-small cell lung cancer』と いう題で Oral presentation をさせていただきました。 まず、英語という難関から始まり、日本と海外での発表様式の違いやスピーチの仕方・定型的な文言の 勉強、Presentation の練習など、事前の準備は初めてづくしでした。力を注いだつもりではありましたが、 いざ発表となると原稿を見ずには Presentation できない状態で、Dr.Branch から「発音は良いけれども、 もっと顔を上げてスピーチするように」という御指摘をいただきました。これは日本でも同様ですが、自 分の考えを巧く聴衆に伝えるためには『表現力』が重要だと再認識しました。県内の若手医師が英語で発 表する姿に刺激を受け、英語で難なく debate する先生方のようになりたいと思い、自分の英語力・表現 力を磨こうと思いました。 当院の研修では、英語の論文を読んだり各科の抄読会に参加する機会はあるものの、生の英語に接する 機会が少ないのが現状ですが、全国を見渡すと沖縄などの研修病院では(県内でも)院内に海外のドクタ ーが定期的に来て症例検討会や病棟ラウンドを行っているところもあるようで、将来海外に通用する医師 になるためにはやはり生の医学英語に触れる機会は必要と考えます。当院でも今年度 Native のドクター を招いて症例検討会を行うことになっており、非常に楽しみにしております。 今回発表の機会を下さった和田先生、清水先生(現信大)に深謝致します。 3 ~*~*~2年次研修医症例発表会開催~*~*~ 去る 10 月 30 日に初期研修医 2 年次の症例発表会を開催しました。午後 6 時より 9 時過ぎまで、 やや緊張した面持ちの研修医の発表とフロアからの活発な質問が続きました。研修医は症例に関 わった指導医の援護も受けながら丁寧に質問に答えていました。座長は後期研修医 1 年目の 3 人 が、これも恒例のことで自主的に引き受けてくれ、スムーズな進行に一役買ってくれました。 発表演題は次のとおりで、このなかから病院長賞が選ばれ中央医局会新年会にて表彰されま す。 演題・演者(発表順) ★妊娠糖尿病を合併し出産数日後に発症した 劇症 1 型糖尿病の 1 例 中島 雅子 ★自己免疫性肝炎に合併した巨大肝血管腫 荒木 太亮 ★発熱で発症し消化管生検より多数の肉芽腫 が発見された 1 例 鈴木 宏 ★MRI で片側基底核に T1 高信号を呈した 髄膜血管型神経梅毒の 2 例 石黒 泉 ★Opsoclonus-Myoclonus 症候群で発症、 抗 Hu 抗体陽性で肺小細胞癌と 原発不明腺癌の合併と診断された 1 例 池田 淳司 ★精神症状で発症し髄液中抗 CCP 抗体が診断に有用であったリウマチ性髄膜炎の 57 歳女性例 一之瀬峻輔 ★原因不明の低カリウム血症で入院し致死的不整脈を認めた 1 例 後藤 憲彦 ★早期に診断し良好な経過をたどったツツガムシ 病の 1 例 江原 毅人 ★肺炎球菌性肺炎/敗血症の救命しえなかった 1例 ~敗血症は 1 分を争うか~ 水間 悟氏 ★エベロリムスによる薬剤性肺障害の 2 例 由井 寿典 ★肺高血圧症を契機に診断された POEMS 症候群 永山 隆史 ★生着不全に陥るも臍帯血再移植で救命し得た 難治性急性骨髄性白血病 平成 26 年 2 月 26 日(水)には医科・歯科 1 年次の症例発表会を開催します。 御期待ください。 4 貝梅 紘子 地域医療研修報告 初期研修医2年次 江原 毅人 10 月 22 日から1ヶ月間、地域医療研修として信越 病院と戸隠診療所に2週間ずつ行ってきました。 信越病院は長野市から車で 50 分ほどのところにあ る信濃町の病院です。すぐ隣は新潟県に接しており、 冬は雪が 2m も積もるような豪雪地帯です。病院がで きる前は深い雪のせいで病院に行くことができずに亡 くなる方もいたそうです。そういったことをなくすた めに 60 年ほど前に設立されたのが信越病院です。 病床数 106 床、常勤医師は 8 名の病院で、周 囲には野尻湖や黒姫高原、スキー場があり、自然 がとても豊かなところです。僕が行った頃はちょ うど紅葉がまっさかりで、毎朝色とりどりの紅葉 に彩られた黒姫を眺めながら、通勤することがで きました。写真は黒姫です。 戸隠診療所は診療所なので入院設備がなく、医 師も一人しかいません。周辺には他に医療機関は なく、どんな患者さんが来ても対応しないといけ ません。農村なので腰痛・関節痛などの整形疾患 の患者さんも多く受診します。 所長の先生はもともとは内科が専門だったので、診療所に赴任するにあたって覚えたことの一つが関節注 射だとおっしゃっていました。僕も湿布は相当数処方しました。 どちらの研修でも訪問診療に多く同行させて いただきました。個人的には地域医療というと 訪問診療(往診)というイメージが強いです。 訪問診療では患者さん本人だけでなく、介護を している家族の様子やどういった所で生活し ているのかも見て、介護・療養のアドバイスを 行っていました。 戸隠診療所では外来を多くやらせていただ きました。日赤の救急外来とは違い、内服薬を もらうために定期的に通院している方がほと んどですが、時折発熱などの患者さんが来ま す。日赤とは違い、できる検査に限りがあるの 戸隠診療所で研修中、初雪が降りました。 で毎回本当に検査が必要なのかをちゃんと考 初雪でこの量です。 えるようになりました。 地域医療は固い言葉を使うと一次予防の実践と急性期病院から退院後のフォローという表現になるかと 思います。しかし、どちらかというと病める時もそうでない時もずっと住民に付き添うということを学んだ 研修だったと思います。 5 開催予告! Dr.ブランチのケースカンファレンス → → → 2014.2.8 開催予定 今年の 10 月に Shinshu Medical English Forum (SMEF/信州医学英語フォーラム)が信州大学で開催されました。 県 内の病院から若手医師が集まり、英語によるプレゼンテーションを勉強する会です。当院からは會田有香先生が発表 してくれました。そこで講師をしていたのが Dr.ブランチです。彼はイギリス出身の糖尿病内分泌を専門とする内科 医であり、イギリス流のプレゼンテーションと診察のスキルを教えてくれます。詳しくは羊土社から上記と同様のタ イトルで本が出版されていますのでご参照ください。常日頃から日本の病院でもグローバルな医療人を育てるための 教育が必要と感じていましたが、それは簡単なことではありません。ダメもとでお願いしてみたところ快く講師を引 きうけてくれました。清水郁夫先生、和田秀一副院長のご尽力のもと 2014 年 2 月 8 日土曜日に Dr.ブランチをお招き して当院でもケースカンファレンスを行うことになりました。片言の英語でも一向に構わないと思います。ぜひ多く の先生方の出席をお待ちしております。初期研修医、後期研修医の皆さんは全員出席でお願いします。 (第二呼吸器内科部長 倉石 博) 本年も臨床研修において院内外の皆さまに大変お世話になり、ありがとうございました。 はやいもので今年もあと数日です。 それぞれいろいろあった一年だったと思いますが、 新しい年が皆さまにとって良い年でありますように。 臨床研修の基本方針 臨床研修の理念 (1) 患者及びその家族と良い人間関係を持ち、しっかりしたインフォームド・コンセントのもとに、守秘義 務に配慮した医療を行うことができる。 人道、博愛、奉仕の (2) 同じ職場の医師同士はもとより、看護師・薬剤師・検査技師・放射線技師・栄養士など多くの医療を 赤十字精神のもと、 行う仲間、他の医療機関の人々と協調して真に患者のためになる医療を考えて行うことができる。 医療チームの一員と (3) 常に進歩している医学知識を習得し、基本的な知識や能力の研鑽に励み、その時代の社会状況に して患者中心の医療 合致した医療を行うことができる。 を実践し、将来の専 (4) 医療事故防止対策や院内感染対策などを理解して、安全な医療が行えるようにチームの中心となっ 門にかかわらず幅広 て活動できる。 い疾患・病態に対応 (5) 医療全体の進歩のために、院内はもとより地域、全国的、国際的な関連集会に主体的に参加し、症 できるプライマリ・ 例呈示や討論に参加できる。 ケアの診療能力を身 (6) 病院内外における保健・医療・福祉の状況を理解した上で、診療計画を立て、入退院の判断をして につける。 患者の社会生活に配慮した診療ができる。 (7) 保健医療に関係する法律や制度を理解し、その時代の社会や経済の状況に対応した医療を行うこ とができる。 発行 長野赤十字病院 〒380-8582 臨床研修センター 長野市若里 5-22-1 TEL026-226-4131(医師業務支援課 E-mail:[email protected] 6 臨床研修係) web:http://www.nagano-med.jrc.or.jp/