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ピーター・タウンゼント作・間庭恭人訳『ナガサキの郵便
戦 後 は 原 爆 投 下 を 擁 護す る 発 言 を 繰 り 返 し、 著 書 「 私 は かか わった。 ヒ ロ シ マ ・ ナガ サ キ に 原 爆を 投 下 し た 」 で は 原 爆 投下 こ そ な る 野 望 を 達 成す る た め に 国 民 の 犠 牲 を 惜 し ま な か った 軍 の 司 令 か っ た 。 後 悔 と 罪 悪感 を 抱 く の は 日 本 の 国 家 の は ず で あ り、 偉 大 し て い る 。「 私は 爆 撃 した こ と に つ い て 、 後 悔 も 罪 悪 感 も 感 じ な 」が明 ( 戦争 の 終わり ) War's End 白 に 示 す と お り の も の で し か な い 。 著者 スウ ィ ー ニ ーは 、 こ う 記 う か 。 しか し、 内 容 は、 原 題 「 「告白」「悔恨」「懺悔」といった文章を期待するのではないだろ 邦 題 を 目 に した 時 、 日 本 人 読 者 の 多 く は 、 元 ア メ リ カ 軍 人 に よ る とは 大 き な ズ レ が あ る よ う に 思え てな ら な い 。 例 え ば 書 店 で こ の 事実 に 即 した もの で あ り、 決 して 嘘で はな い の だ が 、 本書 の内 容 「 私 は ヒ ロ シ マ、 ナ ガ サ キ に 原 爆 を 投 下 し た 」 とい う 邦 題 は 、 十四時間の情事」と邦題されたことをどう考えれば よいのか 。) ット・デュラスの映画「ヒロシマモ ナムール(ヒロシマ我が愛)」が「二 込 ま さ れ る 改 変 が 目 に 付 く よ う に 思う 。( ア ラン ・ レネ / マ ル グ リ の な い こ と で あ る が 、「 原 爆 」 に 関 る 海 外 作 品 の 翻 訳 に は 、 考 え 配 給 の 業 界 で は 珍 し く な い こ と で あ り、 目 く じ ら を 立 て て も 仕 方 販 売 促進 の た め に 刺 激的 な 邦 題を 付け る の は 、 翻 訳 出 版 や 洋画 」(一九九七年)である。こ ( 戦争 の終わり ) War's End の 本 につ い て 触 れ て お く 。 た 。 原 題 は「 下 した 」 とい う 本 は 、 二 〇 〇 〇 年 七 月 、 原 書 房 か ら 翻 訳 出版 さ れ こ の 記 事の 中に 出 てく る「 私は ヒロ シ マ 、ナ ガサ キ に 原 爆を 投 が戦争を終結させたとする持論を展開した。(共同) ピーター・タウンゼント作・間庭恭人訳 ― 重ね合わされた二つの声 田崎 弘章 『ナガサキの郵便配達』を読む ― はじめに チャールズ・スウィーニーが死んだ。二〇〇四年(平成十六年) 日、 長崎 原爆 投下作 戦を 指揮 日の も に 現 地 上 空 を 飛 行 す る な ど 、 広 島、 長 崎 の 両 作 戦 に 直 接 126 七 月 十 九日 の 朝 日 新 聞 社 会 面は 、 北 朝 鮮 拉致 被 害者 ・曽 我 ひ とみ 被 害 者 ・ 御 手 洗 怜 美さ んの 「 お 別 れ の 会 」 を、 大 き く 取 り上 げ て さ ん 一 家 の 帰 国 と 、 佐 世 保 で起 きた 小 学 生 によ る 同 級生 殺 人 事件 い る 。 そ の 片 隅 に 、 彼 の 死 亡 記 事 は、 小 さ く 出 て い る 。 長 崎 原 爆 投下 を 指 揮 チャールズ・スウィーニーさん (長崎原爆を投下したB 日、米 マサチュー 15 歳。 死 因 は明 らか に さ 爆 撃 機 の 機 長 )A P 通 信 に よ る と 、 れ てい ない 。 月 9 セ ッツ 州 ボ スト ン の 病院 で 死 去 、 年 8 爆 撃 機 「 ボ ッ ク ス カ ー 」 を操 縦 し た 。 同月 陸 軍少 佐 だ った し、 B 6 45 広島 原爆 投下 でも、原 爆を 投下した「 エノ ラ・ゲイ 」と と 29 84 29 官 た ち こ そ が 、 と が め ら れ る べ き で あ った 。 私 と 乗 務 員 が 長 崎 に 前の 一 九 九 五 年 に 亡 く な って い る 。 タ ウ ン ゼ ン ト は 、 スウ ィ ー ニ ー が 『 ではなかった。」そして、「もう二度と原爆投下作戦が行われない 』 を発表す る二 年 War's End 要 す る に 、 自 ら が 行 な った 原 爆 投 下 とい う 行 為 こ そ が 、 太 平 洋 戦 とい う 作 品 を 読 ん だ こ と が 無 か っ た 。 こ の 作 品 は 、 反 核 運 動 が 高 は 不 覚に も、 ピー ター ・タウン ゼ ント の 『 ナガ サキ の 郵 便配 達』 二 年 前 、 三 省 堂「 新 編 国 語 総 合 」の 教 科 書 を手 にす る ま で、 私 Ⅰ . 読 み さ した 教 科 書 版 『 ナ ガ サ キ の 郵 便 配 達 』 飛 ん だ の は 戦 争 を 終 わら せる た め で あ っ て、 苦 し み を 与え る た め こ とは 、 私 の 心 か ら の 願 い で あ る 。 第 二 次 大 戦 に つ い て 学 ぶ 未 来 争 を 終 結 さ せ 、 そ の 後 も 核 戦 争 抑 止力 と し て 働 き、 全 面 的 な 世 界 ま り を 見 せて い た 一 九 八 五 年 、 早 川書 房か ら、 翻 訳 刊 行さ れ て い の世代など多くの人々にこの本を提供したい 。」とまとめている。 」 を 実 現さ せた の だ と い う こ と を力 説 War's End して い る ので ある 。 八十 年 代 後 半 に は、 書 店 の 棚 に 並 ん でい る の を 私 も 見 た 記 憶 が あ る 。 長 崎 で 中高 生 対 象夏 休み 課 題 図 書 に指 定 さ れ た こ とも あ り 、 大戦の 終わ り「 しか し、 こ の 書 物は 、 一 方 で は、 チャ ール ズ ・ス ウィ ーニ ーが る 。しかし、いつしか店頭か ら姿を消し、私はこの本の存 在を忘 何 と し て も 自 ら の 行 為 を 正 当 化 し な く て は な ら な く な った 背 景 の 存 在 を 感 じ さ せ る 。 それ は、 八 十 年 代 に 高 ま った 反 核 運 動 の う ね れ てい た 。 × う 話 を聞 いた 。三 省堂 は 旧版 の「 明解 国 語 Ⅰ 」 の 時 か ら、 この 作 の 郵 便 配 達 』 は、 今、 三 省 堂 の 国 語 教 科 書 で し か 読 め な い 」 と い に依頼され、編集の方と打ち合わせをしている中で、「『ナガサキ 二 〇 〇 二 年 、 初夏 、 私 は 三 省 堂 か ら 授業 案 集 に 原 稿 を書 く よ う り で あ り、 そ の 結 果 、 多 く の 人 々 が 核 兵 器 使 用 を 絶 対 悪 と 見 な す × よ う に な っ た 事実 で あ る の は言 う ま で も ない だ ろう 。 × 雨 』 や 林 京 子 『 祭 り の 場 』『 ギ ヤ マ ン ・ ビ ー ド ロ 』 とい っ た 教 科 品 を 取 り 上 げ て い る とい う 。 毎 夏 、 恒 例の よ う に 井 伏 鱒 二 『黒 い × 八十年代には反核をテーマとした小説・映画等が数多く発表 × さ れ た 。 そ の 中 の ひ とつ に 、 一 九 八 四 年 、 英 仏 両 国 で 発 表 さ れ た ス 人 が 書 き 、 文 部 科 学 省 検 定 教 科 書 に 採 録さ れ て い る 原 爆小 説 に 書 定 番 の「 原 爆 文 学 」作 品 を 授 業 で 取 り 上 げ てい た 私 は、 イギ リ ピ ー タ ー ・ タ ウ ン ゼ ン ト と い う 名 前 を 見れ ば、 私の 世 代 は、 恐 新 鮮 さ を 覚 えつ つ 、 読 み始 めた 。 『 ナ ガ サ キ の 郵 便 配 達 』 とい う 小 説 が あ る 。 そ の 作 品 に は 、 ス ウ の 一 人 と し て 描 か れ て い る 。『 ナ ガ サ キ の 郵 便 配 達 』 の作 者 は ピ ィ ーニ ー本 人が 実 名 で 登 場 、 原 爆 投 下 と い う 大 罪 に 深 く 関っ た 者 らく 大半 の者 が、 ロックバン ド「 ザ・ フー 」の メン バー で あった ー タ ー ・ タ ウ ン ゼ ン ト 、 第 二 次 世 界 大 戦 初 頭 に 活 躍 した 英 国 空 軍 ば、 一時 は ス ウィ ーニ ー と 同 じ立 場 に あ っ た と い う こ と に な る 。 の 元 大 佐 で あ る 。 連合 国 側 の 空 軍 パ イ ロ ッ ト と して 一括 りに 見れ 127 笑 した 。 だ か ら 、 教 科 書 本 文 を 読 み 始 め る 前 に 、 ま ず 作 品 末 に 略 さ か、 あの ピー ト が、 この 小 説 を書 い た わけ で は な い よ な、 と苦 と 、 い か に も 英 国 人 ら し い 作 者 名 を 見つ め な が ら 鼻 を 鳴 ら し 、 ま 鮮 明で ある 。 私 は、 教 科 書 初 見 の 時 、 片 仮 名 表 記 の「 ナ ガ サ キ 」 その テー マ 『 ピ ン ボ ール の 魔 術 師 』 に 胸 を 熱 く し た 記 憶は 、 今 も ピ ー ト を 思い 浮 か べ る に 違い な い 。 ロ ック ・ オ ペ ラ 『 ト ミ ー 』 と との英本土航空決戦 (バトル・オブ・ブリテン)において、戦闘機 者 ジョ ー ・ ブ ラ ッ ド レ ーの モ デ ル 。 一 九 四 〇 年夏 、 ナ チ スド イツ 墜 王 。 映画 『ロ ー マ の 休 日 』 で グ レ ゴ リ ー ・ ペ ッ ク 演 ず る 新 聞 記 ス 英 国 女王 の 妹 、 マ ーガ レ ッ ト 王 女 との 悲 恋 で 知 ら れ る 高 名な 撃 この 人物 な ら二、 三 度新 聞 等 で目 にした こと があ った 。エ リザ ベ か り は 瞬 く 間 に 氷解 した 。 夥 しい 数 の 情 報 が ヒ ッ ト し た 。 確 か に は 車 で 世 界 一 周 の ド ラ イ ブ を 敢 行 した 冒 険 家 に し て ジャ ー ナ リ ス ハ リ ケー ン を 駆 っ て 祖 国 防 衛 に 獅 子奮 迅の 働き を し た 英 雄 。 戦 後 ト。二十世紀中盤のマスメディアを大きく賑わわせた人物である。 記さ れている 作者 のプロフィール を一瞥した。 そこには、温 厚そ 一九 一四 (大 正 うな白人の老人の写真に添えて、次のような文章が記されていた 。 ある。が、映画『トミー』の冒頭で、主人公トミーの母親の情夫に撲 (もちろん、ザ・ フーのリーダー 、ピ ート・タ ウンゼン トとは別人で イ ギ リ ス の ジャ ー ナ リ ス ト 。 空 軍 大 佐 。 王 室 侍 従 武 官 。 戦 空 隊 長 で はな か っ た か 。 こ の 符 合 は偶 然 な の か … ? ザ ・ フ ー ? ) 殺さ れるトミ ー の実 父は 、第 二 次 世界 大 戦 中 、ド イツ 空軍と闘った 航 ピーター・タウンゼント ( Peter Townsend ) 三)年~一九九五年 (平成七)年 争 の犠 牲 に な っ た子 ども やベ ト ナ ム 難 民 に 取 材 した 作 品 が あ 本 文 は 『ナ ガ サ キ の 郵 便 配 達 』 に よ った 。 る。 作 者 の プ ロ フ ィ ー ル を 知 り 、 私 はま す ます 興味 を そ そら れな が 会」 等々 で精 力 的に活動 を続けて おら れる 谷口稜 曄氏 の被 爆体 験 英 国 人 の 生没 年を 元号 表記 す る 教科 書 編 集 者の セ ン スに 、 多 少 お よ び その 前後 の 人 生 を な ぞ る よ う に ス ト ー リ ー は 展 開 す る 。 デ 女の会」「核実験に抗議する長崎市民の会」「長崎原爆被災者協議 普段 なら 、 作 者 につ い て 少 し ばか り 不 明な と こ ろ があ って も、 ら 、『 ナガ サ キ の 郵 便 配 達 』 を 読 み 始 め た 。 現 在 も 「 原 爆 青 年 乙 何 は と も あ れ 、 まず 本文 を読 み 始 める の だ が 、 こ の 作 品 に つ い て ィ テー ル が 細 か く 書 き込 ま れ て お り 、 作 者 の 真 摯 かつ 熱心 な 取 材 ある 、 と微か に引 っ掛 か るも のが あった 。 は 、 第 二次 世 界 大 戦 中、 連合 国 側 の 軍 籍 に あ った 人 物 が「 ナ ガ サ 確 か に 非 常 に 痛 ま しく 、 辛 い 物 語 で は あ る が 、 長 崎 に 育 ち 、 幼い の 跡 が 感 じ ら れ る 。 だ が 、 谷 口 氏 の 被 爆 体 験 と そ の 後 の 人生 は、 の 違 和 感 を 覚 え な がら も、 こ ち ら の ピ ー ト も ど こ か で 見 た 記 憶 が キ 」の 原 爆 被 害 につ い て 小 説 を 書い てい る と い う こ と も あ り 、 作 も の で も あ る 。 素 材 の ま ま で は 、「 小 説 」 と し て の 「 ノ ヴ ェ ル 」 ば 、 幾 度 も 目 に し た り 、 耳 に 聞 い た り した こ と の あ る 馴 染 み 深い 頃 か ら 平 和 教 育を 受け て き た 者 に と って は 、 誤 解 を 恐れ ず に 言 え 者 が何 者 で ある の か、 ある 程度 の 知 識を 得な け れ ば 本文 を 読 み 始 め ら れ な い よ う な 気 が した 。 すぐに「ピーター・タウンゼント」、「空軍大佐」のキーワード で 、 ネ ッ ト 上 の 検 索 を か け て み た と こ ろ、 気 に な っ て い た 引 っ 掛 128 子 に し な が ら 同 時 進 行す る 構 成 を 取 る こ と に よ り 、 多 声 的 な 表 現 側 の ス ト ー リ ー お よ び日 本軍 部の 失 態 を 谷 口 稜 曄 氏 の 物 語 と 入 れ を 獲 得す る こ と は 難 しい 。 し か し 、 こ の 小 説 は 、 原 爆 を 落 と し た し か し 、 ア ッシ ュワ ー ス は そ の 命 令 に 背 き、 雲 の た め 長 崎 市街 中 爆 弾 を 大 洋 上で 投棄 せよ 」 と 上層 部か ら 命 令 を 受 け て い た こ と 。 は、 「 目 標 を 視 認 して 照 準 す べ き 」 「着 弾 点 を 視 認 で き な い 場 合 は 、 ダ 使 い に な る 」 と 自 ら 判 断 、「 レ ー ダ ー で 爆 弾 を 誘 導 」し て 原 爆 心 部 の 着 弾 予 定 点 を 視 認 で き な か っ た に も 拘 ら ず 、「 これ で は ム を 投下 す る よ う 命 じた こ と 。 そ して 、 原 爆 が 炸 裂 し た こ と を 確 認 に 成功 して い る 。 連 合 国 側 の 空 軍 パ イ ロ ット で あ った 作 者 は 、 谷 爆 撃 機 コ ク ピ ット 内 の 様子 、 歴 史的 な 任 務 を 遂 行す る 兵 士 の 気 分 口氏の被爆体験のディテールと同じ密度で、原爆投下出撃の経緯、 し た 後、 ボ ッ ク ス ・ カ ー 乗 務 員 た ち は 「 完 璧 に 任 務 を 達 成 し た こ × × × × 私は 、 こ の ボ ック ス ・ カ ー 乗 務 員 た ち が 快 哉を 叫 ぶ と こ ろ まで Ⅱ .重 ね ら れ た 二 つ の 声 くなった。 私 は、 こ こ ま で 読 み 進ん だ と こ ろで 、 本 文 を 追 う こ と がで き な × を称 えた こ と。 プを十万人殺ったところだ。』」と快哉を叫び、爆撃手のビーハン とを祝い合って」「『おい、ビー、おまえ、一発でばっちりジャッ に は 、「 ボ ッ ク ス ・ カ ー 」とい う 愛 の 高 揚 な ど を リ ア ル に 描い て い る 。 被 爆者 の 視 点か ら 描 か れ た 小 長崎に原爆を投下 した B 説に 欠落 して いる 外部 が、 そ こに はある。 ま で 、「 普 通 は F ・ ボ ッ ク 大 尉 が 操 縦 す る の で 〝 ボ ッ ク の 車 〟 と 称 が 付 け ら れ て い た こ と は 知 っ て い た 。 し か し、 こ の 小 説 を 読 む あ だ 名 がつ い て い る 」 と い う こ とを 、 私 は知 ら な か っ た 。 原 爆 投 と は 、 思い も よ ら な か った 。 深 刻 な 戦 争 に さ え も 、 ど こ か に ゲ ー 下 に向かう 「 空飛 ぶ 超 要塞 」を 日常的な 「 車 」に 譬えて いた など ム の 感 覚 を 持 ち 込 み 、 陽 気 で 軽 い も の に 仕 立 て よ う とす る 米 兵 の 性 向 は 、 原 爆 投 下 とい う 凄 惨 な 行 為 の 前 に も 発 揮 さ れ て い た の で ある 。(このことは、広島に原爆を投下したB の 機体に施された「エ 本 を 閉 じた 直 前 の 箇 所 を 引 用 す る 。 こ こ に は 作 者 に よ っ て 、 意 図 読み進んだところで、たまらず教科書を閉じた 。少し長くなるが、 た こ と 。 原 爆 投 下 時 は 、 予 備 燃 料 で 飛 行 し て い た た め、 長 崎 で の い な が ら、 小 倉 か ら 長 崎に 爆撃 目 標 を 変 更 し 、 無 理 な飛 行を 続け た ち は 毎 日 に よ う に 出 会 う こ の 友 人 に 手 を 振 っ た 。「 こ ん に で い る の が 見 え、 子 ど もた ち の 方 も 彼 の姿 を 認 めた 、 子 ども っ た 。 こ の細 い 道 を入 る と、 白 シャ ツ姿 の 子 ど もた ち が 遊 ん 道 が あ り、 そ の 先 の M 社 の 工 場 の 女 子 寮 に 配 達 す る 手 紙 が あ 十 メー ト ル ほ ど 先 に 行く と 、 右 手 に 住 吉 神 社 に通 ず る 細 い 的 に二 つ の 声 が 重 ね あわ され て い る 。 のアッシュワース海軍少佐および爆撃手カーミット・ビーハン 通 過 飛 行 は 一 度 し か や れ な い 状 況 に あ った こ と 。 搭 載 原 爆 責 任 者 す る チ ャ ー ルズ ・ ス ウ ィ ー ニ ー は、 給 油 系統 の 不 調に 気 がつ い て な い 数 々 の 事実 を 私 は 知 ら さ れ て い った 。 ボ ック ス ・ カ ー を 操 縦 小 説 を 読 み 進め る う ち に 、 原 爆 投 下 の 背 景 に あ っ た 思 い も よ ら ノラ・ゲイ」のノーズ・ペイン トにも明らかであろう 。) 29 129 29 ちは、稜曄さん、また明日ね。」 り ジ ャ ッ プ を 十 万 人 殺 っ た と こ ろ だ 。」 こ の 十 万 人 の 犠 牲 者 の 中 に、 風 に 払 われ た 葉 っぱ の よ う な 、 あの 白い も の も あ っ た 。 白 っ ぽ い も の は 、 た った 数 分 前 に 楽 し そ う に 稜 曄 に あ い その時突如として子どもたちが、彼の周りのすべての物が、 家 々 も 木 々 も、 す べ て が 、 か つ て 人 間の 耳 が 聞 い た こ との な ( ※ 傍 線 ・ 田崎 ) さつのことばをかけた、あの白シャツ姿の子どもたちだった。 る 前 に 、 小 石が 一つ 、 砲 弾の よ う な 激 し い 力 で 彼 の 背 中 を 打 じ っ と 動 か な く な っ た か の よ う で あ った 。 彼 が 地 上 に 落 下 す 見た 。 そ れ はま る で 秋風 で木 の葉 が 吹 き 払 わ れ、 風が や ん で た き つ け た 。 彼 は 暗 や み の 中 で 一 瞬、 小 さ な 白 っ ぽ い も の を い い 。 焦土 か ら 復 興 し た 後 を ぬ く ぬ く 生 き る 者 の 甘 った れ た 感 傷 に 私 も 死 ぬ しか な か っ た 。 しか し、 そ う い う 自 分 語 り は ど う で も 一 時 」 そ こ に 居 合 わ せ た な ら ば 、「 風 に 払 わ れ た 葉 っ ぱ 」 の よう 和 四 十 年 代 」 だ っ た とい う こ と で あ る 。「 昭 和 二 十 年八 月 九 日 十 友達 と一 緒 に 幾 度 も 通 っ てい る 。 私の 場合 、 それ がた また ま「 昭 私も 子ど もの 頃の 遊 んだ 所で あり、 夏 には 「 白 シャ ツ 」を 着て 、 私 は 長 崎 市 の 北 部 で 育 っ た 。「 住 吉 神 社 に 通 ず る 細 い 道 」 は 、 を 読 みさ した 直接 の 原 因で ある か らだ 。 こ の箇 所 につ い て 、 ま ず少 し個 人的 な こ と を書 く 。 それ は 本 文 い す さ ま じ い 轟 音 を 伴 っ た 、 巨 大な ア ー ク灯 から 発せ ら れた った人々はこの激しい爆発を長く忘れることができなかっ 目 の 眩 む 閃 光、 青 白 色 の 恐 る べ き 輝 き の 中 に 消 え た 。 生 き 残 た 。 これ を〝 ピカ ド ン 〟 と 呼 ん だ 。す べ て が灰 塵 と 暗 黒 に 帰 っ た 。 彼は ぴく とも 動 け な か っ た 。 自 分 は 生 き て い る の だ ろ した 。 大 旋 風 よ り 激 し い 爆 風 が 稜 曄 の 体 を 持 ち 上 げ 大 地 に は う か 死 ん で い る の だ ろ う か 、 と い う 思い が 頭 を か す めた 。 体 ・ カ ー 機 長 ス ウ ィ ー ニ ー 少 佐 で あ り、 搭 載 原 爆 責 任 者 ア ッ シ ュ ワ に 過 ぎ な い 。 問 題 は 、 他者 で あ り、 外 部 で あ る 。 そ れ は ボ ッ ク ス ース少佐であり、ビーハン爆撃手であり、 『ナ ガ サ キ の 郵 便 配 達 』 に 異常 を 感 じ た 。 自 分 が倒 れて い る 地 面が ぐら ぐら 揺れ てい す る と自 分も 路 上 で 野 垂 れ 死 に を す る の で はな い だ ろ う か と の 作 者 タ ウン ゼ ン ト その 人で ある 。 る の だ 。 だ が す ぐ に 、 恐 怖 に とら われ た 。 結 局 は あ と何 秒 か 恐 れ た の だ 。 し か し 生 の 本能 が 勝 った 。 稜 曄 は 気 力 を 奮 い 、 「 い や だ 、 死 ぬ も ん か 、 死 ぬ の は い や だ 。」 とい う 谷 口 少 年の 声 に 出 し て つ ぶ や い た 。「 い や だ 、 死 ぬ も ん か 、 死 ぬ の は い や だ 。」 な ん と か 意 識 を は っ き り さ せ よ う と し て い る と、 高 人 殺 っ た と こ ろ だ 。」 と い う ボ ッ ク ス ・ カ ー 乗 務 員 の 言 葉 を 一 箇 言 葉 と 、「 お い 、 ビ ー 、 お ま え 、 一 発 で ば っ ち り ジ ャ ッ プ を 十 万 所 に書 き 込 む こ と が で き る の は 、 こ の 小 説 が 視 点を 限定 しな い 自 燃 料も 少な く な っ て き た あ の〝 ボ ッ ク ス ・カ ー〟 が 基 地 へ と 向 か っ て 飛 ん でい た の だ 。 乗 員 た ち は、 完 璧 に 任 務 を達 成 し 被爆者か らも 原爆を投下した 米軍 側か らも 等しく距 離を置 ける 者 由な三人称で書き進められていることによる。この自由な視点は、 空 を飛 んで い る 飛 行 機の 爆 音 が かす か に 聞 こ え て きた 。 予備 に 大 声 で 話 し か け た 。「 お い 、 ビ ー 、 お ま え 、 一 発 で ば っ ち た こ とを 祝い 合 っ てい た 。 だれ か が機 内通 話装 置で ビーハン 130 協和音 (絶対的な他者 性の対峙 !)を鳴り響かせる効果は、この視 れ て い る 例 を ほ とん ど 見 な い 。だ が、 引 用 部 分 の よ う な 強 烈 な 不 にの み 可 能な も の で あ り、日 本の 「 原 爆文 学 」 に おい ては 採用 さ そ の 翻 訳 に おい て は、 それを フ ラン ス 語 ( 英語 )か ら 再 び 日 本 語 々 日 本 語 で 書 か れ た り 語 ら れ た り した も の を ソ ー ス と し て い る 。 で 特 殊 な も の で ある こ と に気 がつ か さ れ る 。 原 作 の 大 部 分 は、 元 本 語という 言葉 の 往復 運動 は、 普通 の洋書の 翻訳 とは異質な 作業 に 戻す 作業 をす る こ とになる 。日 本語→ フ ラン ス語 ( 英語 )→日 を 訳 者 に 強 要 して く る 。日 本を 良く 知 る 読 者 の 批評 眼に 堪え ら れ 点なら ではの功 徳で あろう 。この手 法を、あ ざとさが目 に付く、 つ の 声 を 重 ね 合 わ せな け れ ば、 見え て こ な い 外 部 が 存 在 す る の も る よ う、 原作 の手 直 し が 必 要に な るの で あ る 。 劇 的 に 過 ぎ る 等 々 批 判 す る こ と は容 易い が、 これ く らい 露骨 に 二 確 か で あ る よ う に 思う 。 ター ・タウン ゼン ト が取材 した 人々に、内 容の 確認 を 取り、 修 正 実 際 、「 訳者 あ と が き 」 を 読 む と、 訳 者 ・ 間 庭 恭 人 氏 は 、 ピ ー Ⅲ . 読 書 再 開 。 た だ し、 早 川 書 房 版 『 ナ ガ サ キ の 郵 便 配 達 』 係 か ら ダイ ジェ スト 版 に な っ て い る 。 原 文 の 掲 載 は、 原 爆 投 下 前 教科 書 に採 録さ れた 『ナ ガ サ キの 郵 便配 達』 は、 ペー ジ数 の関 古 代日 本の 語 彙 や 五 七 調が 持 っ てい る 荘 重 さ は 剥 ぎ 取ら れ、 天 皇 も す る 。「 海 征 か ば 」 が 、 フ ラ ン ス 語 ( 英 語 )で 表 記 さ れ る 時 、 に な っ てい た の だ ろうか 。 原詩 に戻 され てい るの が少 し惜 しい気 くる 「 海征かば」の 歌詞などは、どのよう なフランス語 ( 英語 ) を 加 え な が ら 翻 訳 を 完 成 さ せ てい る 。 それ に して も、 文 中 に 出 て 物 足 り な さ を 感 じ てい た こ とも あ っ て、 早 川 書 房版 で 一 気 に 全 体 後 の 部 分に 限ら れ る 。 教 科 書 を 読 み さ し た 私 は、 ダ イ ジ ェ ス ト に 想 さ せ る 不 気 味 な ス ロ ー ガ ン に 変 貌す る の で は な い か 。 こ の 作 品 の た め に は 死 を 辞 さ な い と い う 、「 一億 総 玉 砕 」 や 「 神 風 」 を 連 で 、 欧 米 の 読 者 は 、「 海 征 か ば 」 を 読 ん だ の で は な い 。 この ス ロ を 読 ん で し ま う こ と に し た 。( 長 崎 県 内 の 図 書 館 な ら ば 、 常 備 さ れ 本書 の表 表紙 は、 真っ赤 な 下 地に、 粗い筆 致の 白い 線 描で 画か ており、すぐ に借りられる 。) このように見ると、『ナガサキの郵便配達』を、「翻訳」を意識 ーガ ンを 読ん だ はず であ る。 異 質 な 「 声 」 を 、 重 ね 合 わ せ て い く こ と で も あ る 。「 海 征か ば 」 し な が ら 読 み 進 め る 作 業 は、 フ ラン ス 語 ( 英語 )と日 本 語 とい う 一 面 、 ピー ター ・ タ ウ ン ゼ ン ト の 肖像 写 真 。 世 紀 の 悲 恋の 主 人 公 れた 、 郵 便配 達 用 自 転 車 の イ ラス ト で ある 。 そ し て、 裏表 紙は 、 は 、 高 齢 に な っ て も 大 写 し に 堪 え る ハ ン サ ム で あ り、 精 悍 な 顔 立 例え ば、 阿南 陸 相 の 最 期 は 次 の よ う に 記 さ れる 。 の よ う に 表 現 さ れ る の か を 想像 し 、 私 は立 ち 止 ま っ た 。 L'ENFANT DE の 「日 本語 」が 出てくる度 に、 それら はフランス 語 ( 英 語)で ど に 限 ら ず、 昭 和 天 皇の 御 製 や 玉 音 放 送、 阿 南 陸 軍 大 臣 の 辞世 な ど ち は 優 れ た 軍 人 で あ った こ と を 髣 髴 さ せ る 。 本書の原作はフランスで出版された『 』(英語版『 The Postman of Nagasaki 』)である。早川書 NAGASAKI 房版 は そ の 邦 訳 で ある が、 読 み 進 むう ち に 、 こ の 翻 訳 が あ る意 味 131 ク ー デ タ ー は 失 敗 し た 。 それ を 知 った 阿 南 陸 相 は 辞世 の 歌 部 を 糾 弾 す る 作 者 の 姿 勢 は 、 最 後 ま で 一 貫 し て お り、 ブ レ る こ と て い る 。 一 九 八 五 年 の 段 階 で ピ ー タ ー ・ タウ ン ゼ ン ト は、 本書 で が な い 。 作 者 の 思い は「 日 本 語 版 に よ せ て 」 の 中 に 全 て 尽 く さ れ 一 死 以 テ大 罪 ヲ 謝 シ 奉 ル を詠んだ 。 次 の よ う に 指 摘 して い る 。 っ てい る 。 現 在の 超大 国 指 導 者 た ち やす べ て の 責任 ある 国 家 原 爆犠 牲 者 で あ る 被 爆 者 た ち の 訴え に は 何 の 新 し さ も な く な 神 州 不 滅ヲ 確信 シツ ツ そ の あ と 阿 南 は 長 時 間 に わ た っ て 酒 盃を 挙 げ、 軍 刀 を 腹 に 彼ら は一 方で は、 相互 に 不 安 と不 信の 念か ら、 あの 呪う べ き 指 導 者 た ち も す で に 声 高 に そ れ を 宣 言 した 。 に も か か わ ら ず か か し を 誇 示 しつ づ け て ゆ か ね ば な ら な い 、 と 考 え て い る 。 突 き 立 て 、 右 一文 字 に 引き 切 っ て 、 ま た 元 にも ど し た 。 割腹 国 家 の 名 誉、 陸 軍 の 名 誉 を 護 り ぬ こ う と し た 阿 南 の 激 しい ― も っ と 恐 ろ しい 自 刃 の 形 式 ― で あ っ た の で あ った 。 っ た 日 本 語 に よ る 原 爆 表 現 ( 証 言 ・ 訴 え ・ 文 学 等 )に 、 新 し い 生 こ の 作 品 が 書 か れ た 背 景 に 、 ヨ ー ロ ッ パ で も 既 に 失 効 しつ つ あ れに劣らぬ激しい苦痛に呻きながら、教室に横たわっていた 。 そ の 企 図 は 成 功 した 。 早 川 書 房 版 の 表 紙 見 返 し に は 、 当 時 、 欧米 命を吹き込もうとする作者の意志があったことが覗える。そして、 意 志 の 犠 牲 者 の 一 人 で あ った 稜 曄 も ま た 、 自 刃す る 阿 南の そ そ れ ま で 無 感 覚 だ っ た、 焼け た だれ た 皮 膚が がま んで きな い ■ をえ ない が、 ピー ター ・ タウ ン ゼ ン ト の こ れ は、 公刊 史 原 爆被災 物語は どう しても似 た りよった りにならざる 掲 載さ れ てい る 。 の 有力 紙 が こ の 作 品 を ど の よ う に評 価 し た か 、 レ ビ ュ ー の 一 部 が ほど痛み出したのである。(※傍線・田崎) こ の 部 分に も 、 異 質 な 二つ の 「 声 」 が 重 ねら れ て い る 。 阿 南 陸 相の割腹 の痛 みと、稜 曄少 年の 原爆に よる 火傷 の痛 み とが直 接に 結び 付け られ 、 苦 痛 に 呻く 「 声 」 が 二 重 に 響く の で ある 。 こ の 二 には ない ディ テ ール が鮮 やか に書 き こまれ てい て 最高 傑 者 の 無 雑 作 な 重 ね 合 わ せ は、 日 本 語で は 思 い も よ ら な い 表 現 で あ 作 の ひ とつ 。 ―ク ウ に し て、 ど う して も こ の 本 を 書 か ない で は い ら れ な か っ ある。「 この人たち ( 被爆者たち)の苦しみを目のあたり 美しい長崎の町の余りにも残酷な一被爆少年の証言で ォ ン テ ィ デ ィ ア ン ・ド ・パ リ紙 よ う な 雄 勁 な 筆 致 で 描 き 出 した 感 動 的 な 物 語 原爆の恐 ろしさと犠牲者の痛みがじか に伝わってくる ―オブザ―ヴァ―紙 ろう 。 こ の 表 現 は、 も は やア イロ ニ カ ルな も の に 達 し てい る 。 そ ■ ■ の 中 に あ っ て、 原詩 に戻 さ れ た 阿 南陸 相 の 辞 世 は 、 ど う し よ う も な く 浮 き 上 が っ て 見 え て しま う 。 Ⅳ .読 了 自由な視点を駆使した三人称小説だが、原爆の悲惨さを告発し、 投下 責任 者 で ある ア メ リ カ 大 統 領 お よ び 投 下 に 至ら しめ た 日 本 軍 132 ■ ■ た。」と著者は述懐する。―エル誌 マーガレット王女の悲恋の相手であった著者は、今や 立 派な 作 家 で あ る 。 原 爆 の 悲 惨 を 伝 え て 余 す と こ ろの な 小 説 の 中 に は、 現 在 の 国 際 情 勢 に 向け て 発 せ ら れ た の で は な い か とい う 言 葉 も 出て く る 。 は 、 こ れ が 正 義 の 戦 争 を や る と 公 言 した 文 明 国 の 所 業 と は と 人 の 殲 滅 を はか る こ と に よ って 勝 利 を 得 よ う な ど と す る こ と 道 徳 的 見 地 か ら す れ ば、 〝 非 人 道 的 兵 器 〟 を 使い 敵 国 民 間 ― マタン紙 い 本書 には 、 並 々 な ら ぬ 文 才 と 史 眼 がう か が われ る 。 長崎の被爆少年を 主人公にすえた、厳粛かつ感動的な ても、それに 非常に近いの だ 。 う て い 思 え な い の で あ る 。 テロ リ ズ ム その も の で は な い と し こ れ は ト ル ー マ ン を 非 難 した 言 葉 だ が 、 二 〇 〇 四 年 の 現 在 、 一 物 語 で あ る 。 著者 は 原 爆 投 下 の 最 終 責 任 者 にト ル ー マン ―フィガ ロ紙 大統領をあて、この上なく峻烈に批判しているのである 。 部の イ ラ ク 民衆 の 心 中に 渦 巻 く、 ア メ リカ 批 判 を 言い 当て た 言 葉 最 後に とし て 読 め るの は 驚 きで ある 。 この レビ ュ ーを 読み な が ら、 私は 海外 での 「 原爆 文学 」受 容 を 思 わ ず に は い ら れ な か っ た 。 一 九 六 九 年 、 井 伏 鱒 二の 『黒 い 雨 』 が 英訳 され 、 好評を 博した とさ れる 事実 は知 って いる 。また 、 映 し 、 私 は 、 そ れ 以 上 の 知 識 を 持 た な い 。 具 体 的 に ど の よ う に 受容 画 『ゴ ジ ラ 』 が ア メ リ カ で 人気 が あ った こ と も 知 っ て い る 。 しか 原爆 被害 につ いて、海 外の 関心は高く 、証 言や 文学 作品 が翻 訳 な ら な か っ た 。 し か し 、「 原爆 文 学 研 究 Ⅲ 」 に 必 ず 寄 稿 す る とい ま と ま り の あ る 文 章 に 構 築す る に は、 あ ま り に 散 漫 な メモ に し か 思い つ い た こ とを ノ ー ト に と っ て い っ た が 、 系 統だ った 内 容 の 、 『 ナガ サ キの 郵便 配達 』 という 本を 読 んで 、 考 え込 まさ れた 。 され てい る こ とは 、 幾 つ かの 資 料 で目 に した こ とは あ った 。 し か う 、 花 田俊 典 先 生 と の 約 束 は 、 何 と し て も 果 た し た か っ た 。 こ の さ れ た の か と な る と、 全 く 知 ら な い 。 郵便 配 達 』 を読 んで か ら の こ とで ある 。 「 あ んた 、 自 分の 思い つ き ば 、 そ の ま ま 書 い て み ん ね。 あ んた で 、 こう 諭 さ れた 。 」 るのです)も、くれぐれもよろしく哀愁。 HANADA Toshinori 以 前、 花 田 先 生 は 、 中 々 文 章 を 書 こ う と し な い 私 に 、 あ る 酒 席 「 次 号 の 原文 研 と 敍 説 の 執筆 ( 田 崎 さ ん 、 あ な た が 「 執 筆 」 す 春 、 花 田先 生か ら 頂 い た メ ー ル は、 こう 結 ば れ て い る 。 し、 そ の 受容 に つ い て 具 体 的 に 意 識 し た の は 、 こ の 『 ナ ガ サ キ の ピ ー タ ー ・ タウ ン ゼ ン ト が「 原 爆犠 牲 者 で あ る 被 爆者 た ち の 訴 が経 とうとしてい る。この状況に向けて「ノヴェル (新しさ) 」 え に は 何 の 新 し さ も な く な っ て い る 。」 と 指 摘 し て 、 も う 二 十 年 を 創 り 出 す こ とは 可能 な の だ ろ う か 。 Ⅴ . 二 〇 〇 四 年の 『ナ ガ サ キ の 郵 便配 達 』 133 とん しゃ あ ごた る 。 それ ば書 い て みる と さ。 そこ から 始め てみ ん は お 喋 り や け ん 、 自 分の 思い つ き ば何 で も 喋 っ て しも う て 満 足 し 爆を投下したB 「ボックス・カー」は、予備燃料も尽きたため、 『ナ ガ サ キ の 郵 便配 達 』 にも 記 さ れ て い る こ と だ が、 長 崎 に 原 し てお ら れ た 二 つ の テ ーマ は、 一九 四五 年八 月 九 日 、 ボ ック ス ・ 時着している。「原爆」と「沖縄 」、花田先生が最後まで興味を示 テ ニ ア ン 空 軍 基 地へ の 帰 還 が で き ず 、 占 領 し て 間 も な い 沖 縄 に 不 今 回 は 、 さ さ や か な がら そ れ を 実 践 して みた つ も りで あ る 。 貧 カ ー が 辿 った 軌 跡 と重 な っ て い た の で あ る 。 ね。」 相 な 内 容 で は あ る が、 自 分 自 身 が 考 え を 深 め てい き た い と 思 え る ( 了) 種 粒 が 、 幾つ か 見 え て き た よ う な 気 が し て い る 。 134 29