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数学が未来を拓く - COE
数学が未来を拓く ー 特異性と非線形性からみた 数学の広がりと深まり ー COE拠点リーダー 理学研究科教授 小澤 徹 COEホームページ http://coe.math.sci.hokudai.ac.jp/ 北大数学COEが提案する 新しい数学 の視点 従来 代数 北大数学COE パラダイムシフト 幾何 解析 対称性 特異性 各分野の融合 非線形性 これらの視点から、旧来の数学的枠組みにとらわれず、 理論・応用の双方から数学の深化・拡大をはかる。 非線形性とは? • 非線形とは=線形でない. • 線形とは – 1+1=2 – 入力が二倍なら出力も二倍になる – 「比例」の考え方(小学校以来慣れ親しんだ考え方) – 予測が容易であるが、適用範囲も限られる • 世の中の現象の多くは非線形現象である. – 投資を二倍しても利益が二倍になるわけではない. – 三人よれば文殊の知恵(1+1+1=∞) – 一般に予測は難しいが,解析ができれば,より現実的な問題 の理解が可能になる. 非線形現象の例(水面に立つ波) 池に石を投げると振幅の小さな波が立つ. 波の大きさが非常に大きくなると 波と波がぶつかると... 波と波がぶつかると... 二つの波を「足し合わせた」波ができる. 大きな津波のような構造が現れる. 線形波の足し合わせ(重ね合わせの原理) 非線形の現象 成果① 西浦廉政教授グループ (プラズマパルスの衝突実験) プラズマのスポットが衝突して消えたり,新しくできたり…. (線形の理解では無から有は生まれない) このような現象をどう理解し,これを予測するか? 非線形偏微分方程式 考える物理量を変数として,その時間変化について成り立つ関係を 方程式にすると,非線形偏微分方程式(反応拡散方程式)が得られる. ut = Du ∆u + λu − u − κ 2 v − κ 3 w + κ1 3 τ vt = Dv ∆v + u − γ v θ wt = Dw ∆w + u − w 化学反応物質3種類 u , v, w は3種の化学物質の濃度 数学による解析:関数解析(偏微分方程式論),力学系理論,数値計算など 多様性の源の解明 方程式の解析・数値計算 ⇒ 二つのパルスがぶつかると? 1+1=? 消滅 反射 融合 このように非線形性は,現象に多様性を生み出す. 3種のパターン形式メカニズムの記述・予測が可能になった. ⇒ 「うつろひゆくもの」の科学の創成 特異点とは? • 周囲と異なる特徴を持ったところ • 特異点は厄介物? – – – 特異点は重要? • – – – • 連続的に変化していたものがジャンプする 近似理論がつかえない 様々な不変量や関数が発散する 目立つ点には注目が集まる 情報が集積している 現実世界は特異点に満ち満ちている 特異点は避けては通れない 特異点の例1(輪郭) 物を見る時,輪郭を見ている 建築物の見え方は「建築デザイン」で重要. 輪郭を見るメカニズムの 数学的説明 スペイン,バレンシア市の 水族館の屋根 ロシア,スズダリ村の 木造の教会 – 単純な直線の集まりからなる曲面 (線織面)でも様々な形が現れる – その輪郭を見ると益々面白い形となる 南京玉簾 スペイン,バレンシア市の 地下鉄の入り口 プリュッカーコノイド スペイン,バレンシア市の 科学博物館のモニュメント 新しい「映像理論」の展開(北大で研究集会を定期的に開催中) 成果② 泉屋周一教授グループ (焦線と光錐曲面の研究) – 光がレンズなどで屈折して集まって出来た光り輝く曲線 (焦線) – 焦線自身は特異点の集まりであり特異点を持つ曲線でもある – 平面上の焦線は「大抵の場合」尖点(カスプ)型をしている • 光の形を見る – 平面に時間軸を付け加えて空間(3次元ミンコフスキー時空という)にすると焦線を立 体化できる(光錐曲面) – 焦線の尖点はツバメの尾となる – – 楕円から垂直に光が出ているとした 場合の焦線とそれに対応する光錐曲面 楕円の比を変化させると4つのツバメの尾が動き,円となるとき衝突して錐点となる ブラックホールの形状,重力レンズなどの特異性に深く関わる 構造を解明した. 対称性 − 自然科学における基幹概念 − <雪の結晶と中谷宇吉郎博士> − 対称性とは「変換による不変性」をさす − 変換群が対称性を記述 − 対称性の大きさ ⇔ 変換の豊富さ 正多面体とその対称性 − プラトンの多面体定理 − 正4面体 正6面体 正8面体 正12面体 正20面体 24 48 48 120 120 変換群の幾何学的研究 ディンキン図形 正多面体を不変にする 変換群(自己同型群) 変換で不変な 形の分類 滑らかな曲面(とその構造) クライン特異点 z =x +y 2 2 2 z = y −x 2 2 3 z = y( y − x ) 2 2 2 特異性解消理論 変換群の代数的研究 正多面体を不変にする 変換群(自己同型群) 代数学的研究 群の既約表現の構造 r ρ ⋅ χi = ∑ aij′ χ j , i =0 ディンキン図形 C ( ∆ r ) = 2 E − ( aij′ ) ~ 成果③ 中村郁教授グループ (対称性の背後にある豊かな構造) ディンキン図形 一つの対象からスタートして、異なる二つの方法から 見つかった「ディンキン図形」: これらが偶然一致するのはなぜか? ヒルベルトスキームの理論で解明 (代数学、幾何学を横断する新しい分野へ) 北大COEの3機能 交流機能 • 外国人研究者の招聘 • ポストドクターの受入 • 研究集会の開催 情報文献機能 • 数学文献の管理 • 学術雑誌の刊行 特異性から見た 非線形構造の 数学 先端研究機能 • 他分野の数学的問題の 発掘 • 数学情報の提供 交流機能の活動の一例 (次世代の研究者育成のための教育および交流活動) I. 蔵本由紀氏(COE特任教授,京大名誉教授) レクチャーシリーズ 『振動場のダイナミクス』(2004.October - ) II. 特別月間 (Special Month)における講演会 <Navier-Stokes 方程式月間>(2004.1,2月) 5 件 <非線型分散方程式月間>(2004年 8月,9月) 5 件 <数理物性学の展開月間>(2004年 10月-2005年3月) 5件 III. COE ポスドク連続講義(5件) (1) J. Saal (2004.2.5-2.6), (2) 有馬 研一郎 (2004.6.4, 6.11) (3) 阿部 孝之 (2004.6.16, 6.23, 6,30) (4) 梅田 典晃 (2004.7.7, 7.14, 7.21) (5) 渡邊 道之 (2004.12.13-12.15) IV. 大学院生による研究集会の企画 数学総合若手研究集会2005年2月14日-17日 北大大学院生が主催する全国規模の研究会 http://coe.math.sci.hokudai.ac.jp/sympo/ccyr/index.htmlI.ja 先端機能の活動の一例 国際研究集会の開催 ・札幌に数学の国際的研究拠点を形成, ・国内外からの多数の来訪者, ・札幌天神山国際ハウスとの連携 [2003 年] 第28回 偏微分方程式論 札幌シンポジウム 7/23-7/25 北大理学部 特異点論とその応用 9/16-9/25 札幌コンベンションセンター 3rd Japanese-Polish Singularity Theory Working days 9/27-29 北大理学部 Mathematics of Nonlinear Structure (主催者:北大数学教室,ソウル国立大数学教室) 10/18 Seoul National University, Sangsan Building Sapporo Guest House Symposium " Evolution Equations " 11/15 -11/16 札幌天神山国際ハウス 数論幾何学シンポジウム Symposium of Arithemtic Geometry 11/18-11/21 北大理学部 Mathematical Aspects of Image Processing and Computer Vision 2003 11/27-11/29 北大理学部 Symposium on current topics in Mathematical Science (COE Workshop 2003) 12/9-12/10北大理学部 [2004年] 非線形ダイナミクスに内在する不安定軌道の数理 2/20-2/21 北大電子科学研究所 第5回北東数学解析研究会 2/23-2/24札幌コンベンションセンター 複雑系生命科学のゆくえ-動的生命像を求めて- 5/30-5/31 北大電子科学研究所 第一回中日特異点論研究集会「特異点論とその応用」 6/1-6/3 東北師範大学・数学系(中国,吉林省) 局所等長埋め込み問題, 7/1(木)北大理学部 h-path processes and related topics 7/3札幌天神山国際ハウス 2nd HU and SNU Symposium on Mathematics(第7回ソウル大-北大ジョイントシンポジウム) 7/9北大理学部 Floer thoery and related topics, II 7/16-7/18北大理学部 アファインはめ込みと情報 7/21北大理学部 第29回 偏微分方程式論 札幌シンポジウム 8/4-8/6北大理学部 国際高等研究所 課題研究「ダイナミックスからみた生命的システムの進化と意義」 8/8-8/11札幌アスペンホテル 語ろう 「数理解析」 8/11-8/12札幌天神山国際ハウス 4th Polish-Japanese Singularity Theory Working days 8/30-9/8 北大理学部 幾何学とトポロジーにおける特異点 (第3回 日仏特異点シンポジウム) 9/13-9/17 北海道大学 微分同相写像の周期点の個数の増大度に関する Kaloshin 理論とその周辺 9/15-9/18 北大理学部 The Dynamic Brain Forum, Antonio C. Roque, Ichiro Tsuda, Minoru Tsukada 9/19(日)-9/24(金) サンパウロ大学(ブラジル)Univ. Sao Paulo, Sao Paulo COEシンポジウム:非線型分散方程式 9/23-9/24札幌コンベンションセンター 有界変動関数と自由境界問題に関する研究会 10/8-10/11ニセコエーデルワイス はこだて特異点研究集会 10/27-10/30サン・リフレ函館(函館勤労者総合福祉センター) Mathematical Aspects of Image Processing and Computer Vision 2004 11/18-11/19 北大理学部 情報文献機能の活動の一例 数学の海 (数学電子文献情報サーバ) • 数学版 Google を作る. • メタデータの利用 – 国際標準規格の採用 – 日本における数学文献コンソーシアム構想に関与 その中核技術として貢献 現在の書誌情報数 検索したい文字を入力 検索ヒット数 検索結果一覧