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家電・情報機器 - 地銀連携産業調査センター
産業 アウトルック 家電・情報機器 2015年3月13日 担当: 山鹿 亜紀子 ≫Summary 主要アプリケーションの世界の動向をみると、スマートフォンの 2014 年 10~12 月期の出荷台数は前年同期比 28%増となった。引き 続き中国メーカーの躍進が目立ち、その一方で韓国メーカーのシェ アの低下が進んでいる。また、同期間のパソコンの出荷台数は同 Regional banks Industrial research Center 1%増となった。新興国での需要は低迷しているが、他方で先進国 での買い替え需要が底堅く、前年並みを確保した。一方、テレビ用 液晶パネルについては、北米や中国でのテレビ需要が伸びているほ か、韓国や中国のテレビメーカーによる液晶パネルの在庫積み増し 需要があり、好調を維持している。 情報通信機械工業の国内生産については、2014年半ばから底打ちの 兆しが見られる。ただし、その水準は依然として低い状態にある。 当センターでは、2015年の家電情報機器の主要アプリケーションの 世界出荷台数について、液晶テレビを前年比5%増、スマートフォ ンを同15%増、パソコンを同2%減と予想する。全アプリケーショ ンとも2014年と比較して伸び率は低下、もしくはマイナス幅が拡大 すると見込んでいる。 ≫Overview ◆主要アプリケーションの世界市場動向 【テレビ:液晶パネルの出荷は好調を維持】 薄型テレビに使用され ている液晶パネルの世界 世界のテレビ用液晶パネル出荷台数の推移 百万台 前年同月比、% 25 30 出荷台数(ユニット数) は、北米や中国における 25 20 15 テレビ需要の拡大を受け、 15 2014年初頭から回復トレ 10 ンドを描き、2015年に入 5 ってからも好調を維持し ている。ただし、14年年 末から直近1月までの出 荷には、韓国や中国のテ 20 10 5 0 -5 9月前年比-17% -10 本レポートに記載されている情 報は、地銀連携産業調査センタ ーが信頼できると考える情報源 に基づいたものですが、その正 確性、完全性を保証するもので はありません。本レポートに記 載した内容は、レポート執筆時 の情報に基づくものであり、レ ポート発行後に予告なく変更さ れることがあります。ご利用の 際は、最新の情報をご確認くだ さいますようお願い致します。 -15 0 13 2012年 出荷台数(左軸) 出所: Display Search 14 前年同月比(右軸) 15 本件に関するお問い合わせ 地銀連携産業調査センター (浜銀総合研究所内) Tel 045-225-2375 5 レビメーカーによる液晶パネルの在庫積み増し ニーは、15年3月期第2四半期決算において、モ 需要が含まれていた模様である。中国や韓国のテ バイル事業の営業権の減損(1,760億円)を計上 レビメーカーは、15年のテレビの販売目標を強気 し、人員削減を含めた構造改革を行うと発表した。 に設定しており、液晶パネルの調達を積極的に行 っていた。なお、この在庫需要は、足元において 一巡した模様であり、3月以降の液晶パネルの出 荷増勢は鈍化する可能性がある。 【携帯電話:中国メーカーの躍進が目立つ】 2014年10~12月期のスマートフォンの世界出 荷台数は前年同期比28%増となった。先進国での する新興国での需要増に支えられ、出荷台数の伸 び率は同3割弱程度の水準を維持している。 メーカー別の出荷台数シェアをみると、1位が サムスン、2位がアップルという順位は不動だが、 【パソコン:出荷台数は底堅い動き】 2014年10~12月期の世界のパソコンの出荷台 3位から5位までが中国メーカーとなり、中国メ 数は、前年同期比1%増となった。企業向けの更 ーカーの躍進が目立つ。中国メーカーの出荷台数 新需要は一巡したものの、先進国での一般消費者 の伸び率は、3位の Lenovo が同 1.8 倍、4位の の買い替え需要は底堅い模様で、出荷台数は前年 Huawei が同 1.4 倍、5位の Xiaomi が同 2.8 倍と 並みを確保した。一方、新興国においては、パソ 大きく伸びている。一方、トップシェアのサムス コンの需要低迷が続いている。特に一般消費者向 ンについては、出荷台数が同 11%減少し、シェア けの情報端末については、パソコンよりもモバイ も9ポイント低下している。これは、高価格帯端 ル機器(スマートフォンやタブレット)が選ばれ 末ではアップルとの競争が、低価格帯~中価格帯 る傾向が強い模様である。 端末では中国メーカーとの競争が激化しているた 世界のパソコン出荷台数の推移 百万台 めである。 なお、日系メーカーではソニーが中国市場を重 Regional banks Industrial research Center 出荷台数は減少傾向にあるものの、中国を初めと 前年同期比、% 120 40 100 30 80 20 60 10 40 0 20 -10 0 -20 点市場として拡販を図ってきた。しかし、比較的 高機能で安価な端末を販売する中国メーカーとの 競争に打ち勝つことはできなかった。結果的にソ 百万台 世界のスマートフォン出荷台数の推移 前年同期比、% 60 400 350 50 2007年 2008 300 40 250 2009 2010 出荷台数(左軸) 2011 2012 2013 2014 前年同期比(右軸) 出所: Gartner 30 200 150 20 一方、国内の家電・情報機器の出荷状況をみる 100 10 50 0 0 2013 2012年 出荷台数(左軸) 出所: IDC ◆国内の黒物家電は出荷低迷が継続 2014 前年同期比(右軸) と、2014年の春先から低迷した状況にあり、15 年に入ってからも回復の兆しは見られない。 映像機器や音声機器、カーAVCといった黒物家 電の国内向け出荷金額の推移をみると、消費税増 6 6 税に伴う駆け込み需要の反動もあって、14年4月 おり、国内の生産はいまだ低迷した状況にある。 から直近15年1月まで10か月連続で前年同月比 また、円安が進んだことによる国内生産への回帰 マイナスとなった。黒物家電の出荷金額の中で最 が一部のメーカーで行われている模様であるが、 も構成比の高い映像機器の動向をみると、薄型テ 全体の生産指数の水準を押し上げるほどまでは レビについては出荷台数自体は底堅く推移して 寄与していない。国内需要の低迷や日系メーカー いるものの、単価下落によって出荷金額が減少し の競争力低下などを勘案すると、国内生産がこの ている。特に、日系メーカー各社が注力している 先一貫して回復していく展開は見込みがたいだ 4Kテレビについては、競争激化を背景に14年後 ろう。 半から急速に単価下落が進んだ模様で、テレビ事 ◆地域別の生産動向の差は今後ますます拡大 れたメーカーもあった。今後についても国内需要 足元の情報通信機械工業の生産指数(季調済) の大幅な伸びは期待しがたく、国内黒物家電の出 を地域別にみると、近畿や東北、中部が回復傾向 荷金額は低迷した状況が継続しよう。 にあり、他の地域でも概ね底打ちの兆しが現れて いる。東北についてはパソコンや携帯電話などが、 黒物家電の国内向け出荷金額の推移 十億円 前年同月比、% 400 30 近畿についてはカーナビや携帯電話が、中部につ 350 20 10 いてはパソコンなどの生産が回復している。 300 0 250 200 -10 -20 150 -30 100 -40 -50 50 -60 0 -70 2011年 12 13 14 映像機器(左軸) カーAVC(左軸) 15 音声機器(左軸) 前年同月比(右軸) 出所: JEITA 今後については、前述したように円安による国 内生産への回帰はあると考えられるものの、その 場合は、新規に工場を建設するのではなく、既存 の生産設備を活用するケースが多いと考えられる。 つまり、国内生産への回帰の恩恵を受ける地域は 限定的であり、それ以外の地域については拠点の 集約が進められる可能性が高いと考える。よって、 地域による生産動向の差は今後ますます拡大して ◆国内の生産動向は底打ちながらも低い水準 国内の情報通信機械工業の生産指数(季調済) いくと見込まれ、全地域が一貫して回復トレンド を描く展開は見込みがたいだろう。 をみると、2014年中ごろから底打ちの兆しが見ら れる。これは、消費税増税後に積みあがった在庫 Regional banks Industrial research Center 業に関する業績見通しの下方修正を余儀なくさ 季調済、2010年=100 の調整が、一巡したためとみている。ただし、生 120 産指数の水準は依然として低い状態に留まって 100 情報通信機械工業生産指数の推移 (2010年=100、国内地域別) 80 季調済 2010年=100 情報通信機械工業 生産指数の推移 (2010年=100、全国) 60 120 40 110 100 20 90 0 80 70 2011年 60 東北 50 12 関東 13 中部 14 近畿 15 中国 注:九州は生産指数が電気・情報通信機械でまとめられているため、図表には含まない。 出所: 経済産業省 「鉱工業指数」 40 30 ≫Forecast 20 2011年 12 生産指数(全体) 通信機械 その他の情報通信機械 出所: 経済産業省 「鉱工業指数」 13 14 電子計算機 民生用電子機械 当センターでは、2015年の家電情報機器の主要 アプリケーション(液晶テレビ、スマートフォン、 7 7 パソコン)の世界出荷台数を以下のように予想す 年の高い伸びをけん引した中国については、15 る。主要アプリケーションの中で2ケタ%の出荷 年にも第4世代モデルへの買い替えが進むと見 台数の伸びが見込めるのは、14年と同様、スマー 込むものの、新規ユーザーの増加率は低下すると トフォンのみとなろう。ただしスマートフォンに 予想している。一方で、インドやインドネシア、 ついても、出荷台数の増勢は先進国での需要一巡 マレーシアなど、スマートフォンの普及率が高く を背景に鈍化すると予想する。 ない地域については、出荷台数の高い伸びが期待 できよう。 世界のスマートフォン出荷台数 百万台 前年比、% 50 2,000 5%増と堅調な伸びを予想】 当センターでは、2015年の世界の液晶テレビの 40 1,500 30 出荷台数を前年比5%増の2億3,300万台と予想 する。Display Searchによると、14年の液晶テレ ビの出荷台数は同7%増(見込み値)となった模 20 1,000 10 0 500 -10 様である。14年の出荷台数が比較的高い伸びとな -20 0 13 2012年 ったのは、北米や中国などの主要マーケットの出 14 出荷台数(左軸) 15予想 前年比(右軸) 荷が堅調だったことや、サッカーワールドカップ 出所: IDC、予想は当センター 開催によるテレビ需要の押し上げがあったこと 【世界のパソコンの2015年出荷台数は前年比 などによる。一方、15年については、サッカーワ 2%減とマイナス幅が拡大する展開を予想】 ールドカップとオリンピックの端境期に当たる 2015年の世界のパソコンの出荷台数は、前年比 年であることから、14年と比較してテレビの出荷 2%減の3億1,000万台を予想する。Gartnerによ 台数は伸び悩むと見込む。なお、北米や中国での ると、14年の出荷台数は前年比微減となり、13 買い替え需要は引き続き底堅いと見込んでいる。 年の同11%減よりも軽微な減少に留まった模様 である。しかし、当センターは15年の出荷台数に 世界の液晶テレビ出荷台数 百万台 前年比、% 250 40 ついて、前年比のマイナス幅が再び拡大すると見 200 30 込んでいる。その主な理由は、①14年はWindows 150 20 XPのサポート終了にともなう企業の更新需要が 100 10 50 0 Regional banks Industrial research Center 【世界の液晶テレビの2015年出荷台数は前年比 あったが、15年にはこれが見込みがたいこと、② 新興国の需要が引き続き低迷する見込みである こと、による。特に②については、スマートフォ 0 -10 2009年 10 11 12 出荷台数(左軸) 13 14 15予想 前年比(右軸) 出所: Display Search、予想は当センター ンの大型化が進むことによってパソコンとの製 品間競争がより激しくなると見込んでおり、新興 国におけるパソコンの出荷台数は4年連続で前 年を下回ると予想している。 【世界のスマートフォンの2015年出荷台数は前 世界のパソコン出荷台数 百万台 年比15%増を予想】 当センターでは、2015年のスマートフォンの世 前年比、% 20 400 300 10 200 0 100 -10 0 -20 界出荷台数を前年比15%増の14億9,600万台と予 想する。IDCによると、14年の世界のスマートフ ォン出荷台数は同28%増と高い伸びとなった模 様である。当センターでは15年の増勢は14年より も鈍化すると見込む。成長鈍化を見込む理由は、 先進国および中国での需要一巡である。特に14 2009年 10 11 12 出荷台数(左軸) 出所: Gartner、予想は当センター 13 14 前年比(右軸) 15予想 8 8