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レンコン田での太陽熱消毒マニュアル
農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業 レンコン田での太陽熱消毒マニュアル 太陽熱消毒前後の生育状況 消毒前の生育 消毒後の生育 はじめに 全国のレンコン産地では土壌病害虫被害が急速に増加しており、産地によっては壊滅の 危機に瀕しています。その原因としては一度発生すると連年発生し大幅な減収をもたらすレ ンコン腐敗病やレンコンの表面が荒れ、ゆずの表皮のような状態になる「ゆず肌症状」が挙 げられます。 これら病害は、長い間難防除病害とされてきましたが、徳島県、東京農工大学および茨 城県の共同研究の結果、腐敗病、ゆず肌症状対策として、太陽熱消毒で防除効果があるこ とがわかってきました。そこで、環境への配慮も踏まえ、太陽熱消毒の技術を紹介します。 レンコン田での太陽熱消毒とは 夏季の太陽熱による地温上昇による熱効果と石灰窒素の腐熟促進効果による熱効果を 併せ持った土壌消毒方法です。 フィルムでレンコン田を被覆することで、レンコン腐敗病の 病原菌であるフザリウム菌やピシウム菌を主に「熱」で殺菌します。その他、土壌中のセン チュウ類に対しても効果があります。 フィルム被覆したレンコン田の土壌は日中の太陽熱で高温になります。レンコン腐敗病の 原因菌であるフザリウム菌やピシウム菌は、約40~45℃で活動を停止します。この状態が 30~40日程度続くとフザリウム菌やピシウム菌は死滅してしまいます。そのため、レンコン 田内のレンコン腐敗病菌の密度が下がります。また、石灰窒素が圃場中の残さを腐熟し、 その際に発生する発酵熱で通常の被覆よりも高い温度が発生するためと考えられていま す。その他、石灰窒素が含有するシアナミドの直接的な殺菌・殺虫作用も考えられます。 レンコン田での太陽熱消毒の手順 注意すること 1 しばらく晴れの日が続くときに行いましょう。*週間天気予報で確認。 2 太陽熱消毒の処理後の廃ビニールは適正に処理しましょう。 3 次年度れんこんを作付けする場合は、石灰窒素の窒素成分が多く残量していますので、 無肥料で栽培しましょう。 前日までの作業 石灰窒素散布 ○水たまりができない状態まで 水を落としてください。 ○石灰窒素散布 早朝の無風な時間帯(5:00 頃)に、動散等を利用して全 面にムラなく散布します。 *薬害に注意 近隣の水稲等、他の作物に かからないよう十分に注意し てください。 べたびき 全面を水平にならし、シートを張るときに、 よく密着するように水がないようにします。 太陽熱消毒に必要なもの(費用) ○資材費 ①石灰窒素:10袋(200kg) @約2,900円 × 10袋 = 約29,000円 ②透明フィルム:0.05mm厚、6m(2つ折り)×100m 2本 @約16,000円 × 2本 = 約32,000円 ○労力 ①石灰窒素散布 2人 × 0.5時間 × 1,000円 = 1,000円 ②透明フィルム被覆作業 5人 × 1.5時間 × 1,000円 = 7,500円 ③透明フィルム除去作業 2人 × 3時間 × 1,000円 = 6,000円 ○透明フィルム処分費 ① 6m(2つ折り)×100m 2本 60kg × 2本 × 25円 = 3,000円 費用合計 約78,500円 当日の作業 手作業編 ○被覆作業は無風な早朝の時間帯に行いましょう。 ○人手は多い方が作業は楽です。 1 フィルムロールをほ場端に設置します。 フィルム引き出し シート張り 2 フィルムを引き出し、ほ場の反対側まで引っ張り ます。 このときフィルムをほ場面に付けないよう、担い でいきます。 仕上げ作業へ→P4 機械作業編 1 被覆機のロール掛けに フィルムの開き口を上になる ようロールを掛け、フィルム をほ場の端より50㎝位引き 出して、動かないように固定 します。 2 ロール掛けを下げ、フィ ルムを引っ張り被覆します。 フィルムの端を広げ、ほ場の 端まで広げ固定します。 3 被覆機の走行に伴い、 被覆機の後ろでフィルムを 展開、被覆します。 このときフィルムを持ち 上げず、フィルム上を滑らせ る様に広げます。 同時に所々踏み込み固 定します。 シート張り 仕上げ作業へ→P4 作業機械の省力効果 1 フィルム被覆作業に被覆機を導入すると、作業時間を約6割減少できます。 2 機械導入で作業の労力を1/3に低減できます。 3 機械導入で身体への作業負荷を低減できます。 仕上げ作業 被覆できれば、フィルム を30cm程度重ね合わせて 足で踏み込んでいきます。 継ぎ目踏み 太陽熱消毒後のフィルムの処理方法 処理方法 フィルムはそのままでは重いので、カッターであらかじめ切っておきます。 カッターでフィルムを切る処理例 処理方法 フィルムの両端をまくる処理例 田に水を入れ、フィルムを巻き取ると作業が楽に進みます。 機械編 2011年度~2013年度(3年間) 共同研究機関 徳島県立農林水産総合技術支援センター ・鳴門藍住農業支援センター ・高度技術支援課 ・経営推進課 茨城県農業総合センター園芸研究所 ・茨城県県南農林事務所 東京農工大学大学院農学研究院 株式会社福本ボデー 株式会社タイガーカワシマ 問い合わせ先 農林水産総合技術支援センター 鳴門藍住農業支援センター 088-692-2515 高度技術支援課 088-674-1922 経営推進課 088-621-2430