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学位記番号 博士論文名 副査教授 原利昭
」 皿’一一▽^一甲苛〔 輪竺一…〔工 一一一 様式9(課博要項第8第4項関係) 博士論文の要旨及び審査結果の要旨 1/2 頁 ふ り が な 氏 名 学 位 てづかしげき 学位記番号 新大院博(工)第268号 手塚繁樹 博 士(工 学 ) 学位授与の日付 学位授与の要件 平成20年3月 24日 博士論文名 人間と自動車系の運転行動推定によるアクティブステアリング制御に関する研究 論文審査委員 学位規則第4条第1項該当 主査 教授 谷藤 克也 副査教授 原利昭 副査 教授 大橋 修 副査 准教授 相馬 仁 副査 准教授 横山 誠 博士論文の要旨 自動車の操縦安定性および安全性の向上を図るため,ドライバ特性を重視した車両走行性能の向上や運 転支援システムの研究・開発が行われている.このようなドライバ特性を重視した自動車の開発において は,ドライバと自動車とをクローズドループ系としてみた人間一自動車系として捕らえ,人間と自動車と を協調させることが必要となってくる.しかし,現時点ではドライバの特性をリアルタイムに計測し状態 を判断することが難しいため,ドライバ特性の平均値で自動車や自動車に搭載する運転支援システム等が 設計されており,個々人の差異はドライバの適応力に頼るシステムとなっている.そのため,このような システムに対してドライバは齪酷や違和感,煩わしさなどを感じてしまうことが少なくない.また,シス テムにドライバが依存しきってしまうこともある.このように,人間と自動車との協調を図れる状態では まだないのが現状である. この大きな原因の一つは,一人ひとりのドライバの運転行動を推定する手法が確立していないことであ る.また,ドライバ特性と車両の関係が明確になっていないことと,最適な支援方法が確立していないこ とも挙げられる. そこで本論文では,自動車の操縦安定性および安全性を向上させ,そしてドライバのスキルや能力を大 幅に拡大させることができるような,高いレベルでの人間と自動車との協調を実現することを目的とする. そのために,ドライバの運転行動を推定する手法を開発し,この手法を用いて人間一自動車系の協調制御 を行う手法を提案する.そして,この協調制御をアクティブステアリングに適用することによって,緊急 回避時の自動車の操縦安定性および安全性が大幅に向上し,その結果,ドライバのスキルや能力を大幅に 拡大できることを検証する. まず第1章では,本論文の目的,問題の所在と研究方針,従来の研究および本論文の構成などについて 述べている. 第2章では,アクティブステリングにおいて,人間一自動車系の協調制御を実現するためのドライバ’ 転行動推定モデルの構築手法と協調制御手法について提案している.ドライバの運転行動推定手法として, ベイジアンネットワークを用いた確率推論の方法が示されている.また,車両がドライバの意思に追従す - 397 - 様式9の1(課博要項第8第4項関係) 2/2 頁 るための人間一自動車系の協調制御の手法として,運転行動推定とモデル規範型適応制御の関係について述 べている. 第3章では,ベイジアンネットワークを用いて人間行動の持つ文脈性や心理機能の階層性を表現した運転 行動推定モデルの提案を具体的に行っている.また,提案された運転行動推定モデルを用いた運転行動推定 の妥当性評価が,ドライビングシミュレータを用いて行われる.また,従来の隠れマルコフモデルを用いた 運転行動推定モデルとの比較を行い,本手法の推定率が高いことについて述べられている. 次に第4章では,第3章で提案した運転行動推定モデルを用いて,アクティブステアリングにおける具 体的な人間一自動車系の協調制御について述べられている.協調制御の方法として,運転行動推定モデルを 用いてドライバの緊急回避行動を推定し,緊急回避時にドライバが求める車両特性に適応するためにヨーレ ート追従制御から横加速度追従制御に切り替える運転行動推定型ハイブイリッド制御を提案している.ま た,この協調制御の有用性を,1次予測による前方誤差補正ドライバモデルを用いたクローズドループの緊 急回避シミュレーションにより検証している. 第5章では,第4章で提案した運転行動推定を用いた制御の問題点である不確実性への対応について述 べられている.具体的には,非線形規範モデルの適用効果について代表的な場合を想定してシミュレーショ ンを行い検証している. 第6章では,本研究の結言として次の項目についてまとめ,本論文の成果が人間と自動車との協調制御に 有効であることを総括している. (1)アクティブステアリングにおける人間と自動車系の協調手法 (2)提案した運転行動推定モデルの妥当性 (3)提案した運転行動推定型ハイブリッド制御の有用性 (4)非線形規範モデルの不確実性への対応効果 (5)本研究の発展性 審査結果の要旨 本論文は,自動車の操縦安定性および安全性を向上させ,そしてドライバのスキルや能力を大幅に拡大さ せることができるような,高いレベルでの人間と自動車との協調を実現することを目的に,緊急回避におけ るドライバの行動推定手法とそれを利用したアクティブステアリングの制御方法を提案し,人間と自動車と の協調制御の可能性を示している. 自動車の操縦安定性と安全性を格段に向上させるためには,個々人に適合した車両運動制御や運転支援が 必要であるが,現時点ではドライバの特性をリアルタイムに計測し状態を判断することが難しいため,ドラ イバ特性の平均値で車両は設計され,個人差は無視されている.特に,ドライバが何をしようとしているの かが分かれば,それに応じた車両運動制御や運転支援ができるようになるため,自動車の研究・開発におい て大きな課題となっている,これに対し,ドライバ操作量からドライバが何を意図しているかを推定する手 法として,ベイジアンネットワークを用いた運転行動推定手法を新たに提案し,これにより従来は困難であ ったドライバの運転意図の把握ができる可能性が示されている. また,運転行動推定の結果に基づき,アクティブステアリングとモデル規範型適応制御を利用した人間と 自動車の協調制御手法を提案し,運転行動推定の応用を具体的に示すとともに,人間一自動車系の協調制御 手法を示し,緊急回避時の安全性向上が図れることを示している. さらに,本手法を実用化する上では避けて通れない,運転行動推定や協調制御の不確実性への対応をも示 しており,理論展開を単に示すだけにとどまらず,実用性の評価も行っている. このように,本論文は人間と自動車の協調制御手法を提案するだけにとどまらず,今後の自動車の性能向 上と安全技術に寄与するところが大きい.よって,本論文は博士(工学)の学位論文として十分であると認 定した. - 398 -